run rabbit junk Oh Clione, Clione! why are you Clione?


「そういえばよ。」
ある時、俺ことマシロ=トヴァ、改造人間ラビットジンは、相棒のクリオネにふと聞いたもんだった。
いつだったか?そうだな。確か島を出るよりゃ前だったな。

「なーに?」
「お前ってどの辺がクリオネなんだ?」
ソファーの上に猫のように伸びていたクリオネに、俺は言う。・・・いや、実際気になったんだよ。力を振るって事件を解決した後だったんでな。こんときはまだ知らなかったからな。
「俺は見てのとおり兎だ。跳ねるし、良く聞こえる。」
ご丁寧に、それを示すように、俺は足を延ばしながら、兎耳を立てて見せた。
つまり、俺には改造人間としての強化として、単に普通の人間を何倍も上回る力とか速さとかくたばりにくさとかだけじゃなく、兎の要素が備わってるわけだな。
むろん、改造人間である俺と、バイオ強化体であるクリオネとは若干違うが、クリオネだって、少しは通常の人間よりは強く、速く、正確で、死ににくい。
けど、そこにクリオネの要素はあるのか?ってのが。
気になった。
っていうか。
無かったんだよな、このときまで、そういう固有の能力を出したこと。いや、車の運転とか時計屋と一緒になっての電脳捜査とか、いつもそういうスキルで助けられちゃいるんだが。

「あー。水中で呼吸は出来るよ。あと、つらいけど実は長時間食べなくても平気。」
素朴な疑問に対し、クリオネも・・・あれ?という表情を浮かべた後、しばらく考えて、そう言った。
おい、まさか、自分でも自分のそういう面、忘れてやがったのか?
・・・視線をそらしながらうろ覚えなのを気まずげにいいやがったから、こりゃ、十中八九そうなんだろうな、たぶん。
「後者はともかく、前者は別にクリオネ以外の海産物でも出来るだろ。」
だから、ついつい突っ込みつつ問い詰めた。
実際、そういう海産物系のバイオ強化体をした相手とやりあったこともある。俺の同族の水中戦闘用改造人間程じゃあなかったが、面倒な相手だった。
ただ、そいつはまあ、前にもさんざん言った気もするが、「・・・けれどもそれはまた別の物語。いつかまた、別の時に話すことにしよう。」 ってやつだがな。
・・・そう、確かこん時はまだ、ロブスター野郎と出会う前だったが、アイツも水中活動はもちろんできただろうな。
それっぽい角はあるけどさ。クリオネって別に頭の突起で何かする事はないよな」
「・・・逆に言うとさ、マシロ。そこまでクリオネに詳しいなら。」
確認をすると、クリオネはぷっと頬を膨らませたあと、ぐわーっ、と、大きく口を開けた。吠えたつもりらしかったが、可愛い以外の要素はなかったな。あとまあ、八重歯がちょっと尖ってたくらいか。
「あたしが変な生き物に首から上乗っ取られた怪物や大ミミズの化け物みたいに、顔を六分割してぐわばーっと噛みつく力でも持ってりゃよかったの?」
ちょっとむくれたようにそういう。ああ、いけねえな。そういうスキルが無くても、別にいいんだ。さっきも思ったように、助けられちゃいるんだし、気になったってだけなんだから。
「そーゆー能力よりお前の可愛い面のほうが強いからいいさ。それ以外にも、俺にできないこといろいろ、いつもやってもらってるし。」
だから、思ったところを素直にそう言った。
「なんってえか、可愛いやつが身近にいるほうが、やる気が出るんでね。いい加減な俺にやる気が出ださせて全力を発揮させることが出来る方が、グロ画像めいたえげつない噛みつきの力より強かろうよ。」
・・・こん時はまだ、クリオネをロブスターから取り戻すために俺がどんだけやる気を出すかはわかってなかったが、実際、後日そいつは証明されたわけなんだけどさ。

「・・・一応まあ、無いでもないんだけどね、クリオネ由来の力。」
俺がそう言ったら、突っつかれた猫のように少し驚いた後。
「けどそう、大したもんじゃないよ?微妙過ぎて使いどころがなくてさ。使いどころも限られるし。」
もそもそと少し言い訳めいてるんだけど。
後ろめたそうなそのくせ、嬉しそうでもあるような様子で、クリオネは。
「・・・それでもいいんだよね。」
俺を見て、念押すように言った。
「ああ。俺よりオマエのが賢いだろうし、自分の力は自分が一番良く知ってるだろ。使える時に使やいいさ。」
俺はそんなクリオネを、見てないようで柔らかくでも頭のてっぺんからつま先見て、適当に答えているようでしっかり聞きながら、クリオネを信じて、委ねるようにゆったりと答えていた。

のんきに過ぎていく、こんな話題が出るほど暇な昼下がりだった。

・・・そんなことがあったのさ。昔な。
最終回の後だってのに、のんきなことを思い出したもんだ。あの事件じゃ、まさにそのクリオネの力が俺を助けたからな。
だけど、言ったろ?「終わってしまわないための最終回」だってさ。
俺の物語は、こんな風に。
あの前の事もあれば、あの後の事もあるのさ。

アンタの心の中にあるのかもしれない。アンタが書くのかもしれない。
そいつぁこれから公開されるものもあるかもしれないし、公開されないものもあるのかもしれない。

ただ、いずれにせよ。

俺たちは、これまでも生きてきたし。
これからも、生きていく。


終わって、続いて、また終わって・・・そして、また、どこかで。


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