「ああ・・・」
コウヘイは、頭を抱えていた。場所はいつもの影山研究所・・・ではない。まだ真新しい印象のある、戦艦の艦橋だ。
それもそのはず、富士一号を撃墜された自衛隊が新たに建造した大型空中戦艦「東雲」の艦橋に、今コウヘイはいた。
ガイアセイバーズはあくまで民間の研究機関所属、自衛隊とは関係がない。それが何故、自衛隊の最新兵器を持っているのか。実は、それが今コウヘイを悩ませる問題の一つである。
「まったく・・・、いてっ!?」
そして、もう一つの悩みが湯飲みの形を取ってコウヘイの後頭部を直撃する。
「何を気の滅入るため息をしておるか、このつんつん頭が。そんな暇が有ったらとっとと妾に茶を入れて参れ!」
湯飲みをぶっつけた相手は、完全に支配者態度だ。ある意味これら悩みの大本と言えるその女は、艦長席に堂々と腰掛けている。人に有らざる桃色の髪を頭の左右でまとめた女・・・中国暗黒街を束ねる鈴家党首にして最強の殺し屋、鈴麗蘭。
これを確認したコウヘイは、心底めいりながら、こうなった経緯を追憶せずには居られなかった。
第八話 雪山大脱走VS地上最強の居候
そもそもの始まりは、前回の戦闘直後から。
謎のロボットに乗って現れた魔神勇二。戦闘終了をまるで逃げるようにその場を後にしようとする彼を
「勇二よ、私は先ほど「これからお前はガイアセイバーズと行動をともにし、学び、・・・生きるがいい。」と言ったであろうがぁ!」
と、唐突に現れ皆が苦戦する「天のゼオライマー」を一蹴した、これまた超人タイガージョーが言うと同時にはったおし、彼はガイアセイバーズに身を寄せてきた。
その結果分かったのは「勇二にもこの状況はほとんど理解できていない」ということだけだった。彼の話ではゲドー星人の攻撃があったあの日、鴉丸に叩きのめされた後急にあのロボット召還能力と、それまでを超える超人的肉体能力が発現、同時に家は焼かれ家族は殺され、李飛孔や木原マサキのような刺客が次々と送られるようになったという。町で幽霊ロボットの噂が出たのはそのころ、他にも多数現れた刺客を撃退するとき力を振り絞った勇二に呼応して、普段は異空間に隠されているイクサーロボの姿が現出したものらしい。
そしてあのタイガージョーも、刺客たちとの戦いで窮地に陥ったり勇二が自信を喪失しかけたときに唐突に登場、鉄拳とともに説教をぶちかます謎の人だと言うこと意外、やはりその正体はようとして知れなかった。ただ、勇二と同じ「流派閃真流人応派」の使い手だという以外は。勇二と叩きのめした鴉丸は「流派閃真流神応派」と名乗ったので、牡丹の「皇応派」とで三つ、閃真流の三流派が全てそろったことになる。
イクサーロボの正体も、なぜ勇二にそんな力が備わったのかも、それを狙う謎の敵の正体も目的も・・・そして、何故魔窟堂やトラキチがあのロボを「イクサーロボ」と一目見た途端呼んだのか、も。
それをトラキチに問いただす暇もなく、思ってもいなかった客人が訪れたからだ。
「国連軍特殊部隊「イルダーナ」隊長、キリヤマコウイチロウだ。」
そして、さらに唐突な、彼が携えてきた命令。
「活動停止命令!?どういうことだ、それは!」
「どうもこうもない。」
猛るトラキチとは対照的に、キリヤマはあくまで冷徹に告げる。
「地球防衛のために登録された民間ロボットは、出撃時に軍に届出を行うこと・・・それをしていないからな。二週間謹慎だ。」
「・・・知ったことではないわ。」
そうキリヤマが告げた途端。
ぎしっ、と空気が凍り付く音を立てたと錯覚するほど鋭く、殺気と言えるほどの気配を魔窟堂が放った。思わず身を退くキリヤマの頬に、不意に熱い感覚。反射的にさしのべた手が、細い傷から溢れる血にぬるりと触れた。
「な・・・」
魔窟堂の視線が皮膚を貫いた・・・ように見えて、キリヤマはすぐ後ろの壁に丸ペンが突き刺さっていることに気が付く。
「これかっ!何投げつけて・・・・・・・・・・・うっ・・・」
からくりを見破ったとくってかかるキリヤマだが、落ち着いて考えれば抜く手も見せずに壁面に突き刺さるほどにペンを投げていることに気付き、声が途中でしぼむ。
「ワシらは、この戦いを鎮めると誓い結集した。それまではひたすらに邁進するのみ。お主らに邪魔されるいわれなど、存在せん。」
「お前達に・・・それが出来るものかっ!」
気圧されたか、身を翻すように国連軍の使者は去っていった。だがその言葉の端には、何か魔窟堂やトラキチ、姫夜木などとの因縁を感じさせるものがあり、コウヘイの心に僅かに引っかかった。
実はそれとほぼ同時、これはコウヘイたちのあずかり知らぬところでこのような会話が交わされていた。
「ようこそ、鈴麗蘭」
その闇にそろうのは、いずれも異形のものだ。
前回現れた李飛孔などまだいい方で、巨大な機械仕掛けの義腕をつけている者、怪しげな妖術使いのごとき服装の者、まるで昆虫のような格好をした、人間とは思えないような奴まで居る。
「世界の平和を目指して健気に戦いよるヒーローを殺せとは、つくづく御主等は因業な連中よの。」
そんな集団に囲まれながらも、桃色の髪の少女・・・以前幽羅帝のところに現れた鈴麗蘭は、終始余裕の表情を浮かべている。それどころか、まるで自分のほうが彼らの主人であるとでも言うべき、尊大な威圧感を周囲に振りまいてさえ居る。
「ふふふ、世界をあるがまま、本来の姿に保つ行為、と言ってもらいたいわね。そう、いうなれば世界を守っているのよ、私達は。」
と、
その声は確かに二人の口から発せられたはずなのだが、口元を見ていない限りどこで区切られるのか皆目見当が付かないほど、まるっきり同じ声だ。百個あっても百個全部が全く同じ形の小学校の音楽で使うリコーダーとて、もう少しそれぞれに違いがあるだろう。
そして、その声を発した二人は、その顔まで同じ型からぬいて作ったフィギュアのように同じだった。強いて違いをあげるなら、髪型と目の色くらいしかない。片方は青い目でショートヘア、もう片方は茶色の目をしていてロングヘア。
服装もまた似通っている。上半身は全く同じ、ボリュームのあるデザインだが胸元の大きく開いた黒い軍服と、頭に大きめの筒型の帽子。
下半身は、それぞれ違う。ショートヘアのほうは股間がぎりぎり隠れる程度のミニスカートに、太ももの付け根まであるようなロングブーツ。ロングヘアのほうはチャイナドレスをさらに過激にしたような、素足が完全に露出するような大きな切れ込みのロングスカート(と、言えるのか良くわからないもの)に、ふくらはぎまでのブーツ。
えらく趣味的で、逆にいうなればそんなアレンジが通せるだけの力のある人間だということを誇示している、といえなくもない格好。そして一見美女の双子だが、立ち上る気配は恐ろしくもまがまがしい、何か別種の生物のような威迫がある。
「御主等が寄生し、戦争から血を吸い取れるままの、この世界を、な。」
「暗殺業も、血から糧を得ることに変わりはないわ。」
双子の女と麗蘭の間に、びりびりと沈黙が張りつめる。周囲もまた息を呑む。彼らもまた暗殺や破壊に特化した能力を持つものたちなのだが、この双子、そして麗蘭に勝てるほどではない。
そんな威圧感の中、一人我感せずの態度をとるものも居た。双子の女と似たような服を着た、もう一人の少女だ。こちらは十四歳ほど、人形のように美しい小さな顔や細い手が、大き目の軍服の襟や袖に埋まりそうだ。下半身は双子のショートヘアのミニスカートよりかは幾分長いスカートと、踝までほどの短くもごついブーツ。同じ服の女達の静かな争いを無視するように、一言も発せずだが同時に穏かな無表情で立っている。
「ふ・・・たしかにそうだな。」
ため息をつくと、麗蘭が肩をすくめた。だがそれは、折れたという意味ではない。
「何しろこれだけ手駒をもっていて、誰一人として目標を殺せないのでは、妾のような商売も血にありつけようて。」
これには双子の女より、その周りが気色ばんだ。
「っこの・・・」
「何のようか、イクセリオエナジー後継者・魔神勇二に一番最初に敗れて逃げてきた、露西亜支部暗殺者・バリッシャー。所詮まがい物か。」
「ぐ・・・」
前に出かけた昆虫人間が、やりこめられてあとずさる。その様を見て同じく失敗した李飛孔が、床に頭が着きそうなほど身をかがめた。
「わざわざ麗蘭様のお手を煩わせてしまうとは、面目次第もございません。今は組織雇われたる私ですが、、中国暗殺組織の支配者たる鈴麗蘭様には、変わらぬ忠誠を誓っておりまする。」
コウヘイたちを襲撃したときはあれほど不遜な態度をとっていた李飛孔の態度の変わりようは、明らかに麗蘭の力の強大さを示していた。
そんな李に対し、麗蘭は笑いか嘲りか目を細めると、
「忠誠、か。では李飛孔、跪いて私の靴でも舐めてみるか?」
若干の躊躇の後、李は麗蘭に跪いた。
だがその李の顔を、麗蘭はサッカーボールでも蹴るかのように蹴飛ばした。
「愚か者めっ!お主の下等な下で妾の靴を穢す気か!もういい失せろ!」
あまりといえばあんまりに理不尽傲慢な仕打ち。だが李は煮えくり返る心中を必死に押さえて退散する。
「あらあらぁ、残酷なことするわねぇ。」
「ふん。従順な振りをして餌をねだる犬より、差し伸べた手に噛み付く野良猫のほうが好きなだけだ。それに私は平等に、速やかな死を持って接する。お主らのように相手をもてあそぶような真似はせん。そちらのほうがうよほど残酷ではないかな?」
にらみつけると、汚らわしいものからするように身を翻す。
「行くぞ、ガルム。」
「虞縷縷縷縷縷(ぐるるるるる)・・・」
と、それまで麗蘭の影とばかり見えていたものが、低い唸り声を上げる。まさに影のような、漆黒の豹だった。だがこの飼い主から察するに、ただの豹ではないだろう。
姿を現しても尚陰のごとく付き従う黒豹、ガルムとともに、麗蘭は消えた。あとにひとひら、白い羽が残る。
そんなことは露知らず、ガイアセイバーズは雪山での特訓を行っていた。イクサーロボの件に関しては、ごまかされたまま。
「流派!閃真流は!」
「侠者の覚よ!」
「前進!」
「激烈!」
「天下!」
「総覧!」
「見よ当方に!」
「迎撃の用意あり!」
ドッカ〜〜〜〜〜〜〜ン!!!!!
凄まじい轟音が山を揺るがす。自身と間違うほどの衝撃に、小規模な雪崩まで発生した。
「なな、何だぁぁぁぁぁぁぁ!?」
頭から雪を被ったコウヘイが、這い出しながら叫ぶ。
「互いの力量と、人を護る戦士たる人応派・力もて先頭に立ち、人々の勇気を鼓舞し導く皇応派の心構えを確認する、閃真流の伝統挨拶だ!」
高い木の上にたって雪崩をかわしたアンドーが答える。
「は、はぁ・・・」
最近は随分とまた非常識に慣れてきたコウヘイだが、今度のこれは少々ベクトルが違うだけに戸惑いを隠せない。
「しかし、あっちはいかにも特訓らしいことしてるのに、俺がいままでやらされたのってヒーロー特撮やロボットアニメ鑑賞、きめ台詞の叫び方とかだもんなぁ。やっぱ師匠が違うからかなぁ」
「ぬぬっ!聞き捨てならぬその発言!一体誰のおかげで初陣を勝利で飾れたと思う!」
「パオラちゃんの応援っす。」
「ぐはっ、はっきり言いやがった!」
木の上で仰け反りもだえるアンドー。
「くっそ〜、そんなこと言うてもお前のバクサイオーは格闘技がフィードバッグされるわけじゃないだろうが!」
「それならそれで別の教え方があるだろうが!」
「ぬぅぅ・・・師匠に向かってなんという口のききよう!もう怒った、今日は教えてやらん!南国防衛司令の最新話も見せてやらん!その雪の中で反省してろ!」
そういうと、たしかに師匠を名乗れるレベルの体術で木から木へと飛び移り、あっと言う間に去っていくアンドー。
「えっ、あ、ちょっと、すいません、待って〜〜〜〜〜〜!!」
なんだかんだ言うて南国防衛司令!にはまっていたコウヘイは叫んだ。だがアンドーは既にはるか彼方。そして、雪の中にこちらは物理的な意味ではまっていたコウヘイは、這い出すのにえらく苦労するのだった。
そして、そこからの帰途コウヘイは思っても居なかった人に再会する。
「!・・・君は、確か・・・あのときの・・・」
あの時、神社に現れた栗色の髪の少女だ。だが、今回は前回と違って、随分と場に似合わない格好をしている。それは強いて言うなら銀色のレオタードのような衣装で、この雪山には不適切なまでに寒々しかった。が、少女の表情には寒さを思わせるものは無い。して言うならば、憂いに近いものはあるが。
「ええ。巡り会いましたね。」
「私の名は、有須美亜。・・・」
しばらくの躊躇の後、ミアと名乗った少女は告げる。
「この名を、貴方の父に、その仲間に・・・私の仲間達に伝えてください。私は今、アウトフィットが一角、アヴァルダに居る・・・とも」
最後に一瞬苦悶するような動きを見せた途端、ミアは消失した。見間違いではなく、本当にすっと幽霊のごとく消えたのだ。
その後を、一陣の雪風が通り過ぎた。
「そもそも、今回の騒ぎの始まりは何だと思う?」
宿としてとったロッジでその話を聞かされたトラキチは、唐突にそういった。ややしどろもどろになりながらも、コウヘイはそれに答える。
「何って、三年前に沖縄沖に宇宙船が落下したことから・・・じゃないのか?」
「それが、まず違うのだ。いいか、よく考えても見ろ。たった三年間で、遥かに高度な異星のテクノロジーを吸収し、巨大ロボット制作技術を一から造りあげるなどと言うことが、出来ると思うか?それに第一、得体の知れない侵略予告を、何故信じられたと思う?」
「あ・・・」
確かに、そうだ。タイムマシンか何かで原始時代に唐突に自動車を持ち込んだところで、石器を作るのが精一杯の当時の人間ではとてもまねなど出来るはずがない。
その問いの意味を皆が理解したのを見計らい、コウヘイ、そしてその同志たる魔窟堂、姫夜木・・・ガイアセイバーズの最初の三人が語り始めた。このへん、昔の某SF特撮ドラマなどでは人物はシルエットになり背景にきらきらした効果が出る感じである。
「そう、それ以前に異星からの来訪者はあった!侵略するものと、我々地球人の友としてともに戦ったもの、二組が存在した。侵略者の名は漂流民族クトゥルフと宇宙海賊バンカー、それに立ち向かった宇宙の戦士は、四人のエスパーチームによって操作される合体サイキックロボ「ダンガイオー」とクトゥルフに作られ、もともと平和的民族だったクトゥルフを乗っ取った機械生命体ビッグゴールドを倒さんとする人造人間イクサー1と、その半身イクサーロボじゃ。」
「イクサーロボって、あの勇二が乗ってる奴か?」
「そう、同時にイクサー1のエネルギー、イクセリオを継承したことにより、勇二の身体能力は大幅に向上している。クトゥルフの主力生体兵器だったベデムをなぎ倒せたのはそのためじゃ。元のままだったら牡丹君と同じく、二、三倒したところで息が上がったじゃろ。」
だがそれだけじゃあない。バクサイオー、猿皇ともに語尾に「オー」がついとるだろ?こいつらは、ダンガイオーのデータを元にして作られている。爆砕姫、爆撃姫も実際は同じなんだがな。合体した状態の爆猿皇になると、やっぱり「オー」がつく。本当は後もう一体「守礼皇」という機体があるはずだったんだが・・・あ、いや、それはいい。敵の「天のゼオライマー」はイクサーロボのデッドコピーだし、あの鴉丸羅侯という男が使う勇二君と同質の力は、打倒イクサーロボのためクトゥルフが作ったイクサーΣ。」
「でも・・・そんな戦いがあったなら、そのことが一般常識になってて当然じゃないのか?あんな巨大ロボが何体も暴れまわったら、隠しきれるわけないぜ?」
「うむ、そのとおり。事実その戦いで地球のかなりの面積が廃墟となった。復興には時間がかかっただろうて。」
「なってないじゃん!」
「そりゃ、「この地球」ではないからな。」
「へ?どゆこと?」
聞いていて理解できず、思わず目が点に、頭の上に疑問符が浮かぶ・・・などの表現が漫画ならば行われたであろう。
「ワシらもともに戦った、バンカー・クトゥルフとの最終決戦。(注・このとき語られた若き日の魔窟堂たちの戦いは、非常に長く、そして凄まじいものであった。この話はまた舞台を新たに語られねばならない。詳しくは次回の予告を参照せよ)その戦いで結局、ワシらは戦いには勝ったが、ヒーローとしては敗れた。」
「護るべき大地は荒れはて、仲間達はみな倒れた。そして、その、わしらが助けられなかった仲間、その最後の力に逆に助けられ、わしらは並行次元、「侵略を受けなかった」パラレルワールドたるこの世界に転送されたのじゃ。」
「ってぇことは親父達、この世界の人間じゃないのか!?」
「まあ、地球の人間ではあるが、パラレルワールドからやってきたという点では確かにそうかも知れないな。」
「シャドウミラーかよ・・・」
コウヘイは思わず特訓と称してアンドーに見せられた「南国防衛司令!」の敵集団、パラレルワールドからやってきた武闘集団をたとえに出した。
「うむ、まあ近いかも知れない。あれ見たときはわしらのことかと思ったほどな。もっともばらばらに転送されたためこちらの世界に現れる時間が少しずれてしまい、各人の年齢に差が出てしまったがな。当時一緒に戦っていたころは、大体同じくらいの年齢だったんじゃがの。」
「ううん、驚いたけれどわかったぜ。でもよ、それとあの娘、あの娘の言っていたアヴァルダやアウトフィットってのと、どういう関係に有るんだ?」
「順を追って話そう。まずはアウトフィットからじゃ。」
「作業集団、組織、一そろい、会社、企業・・・本来そういった意味がある。その実態は軍需産業・犯罪組織・研究機関・各国の政府や軍部の一部まで抱き込んだ、巨大な戦争演出者集団だ。」
「奴らは政治を裏から操り、戦争を誘発することで兵器を売り、利益を得る。そこから蓄えた莫大な金どもって世間に先駆けて開発した新技術による兵器をばら撒き、また戦争を誘発する。そして、そのサイクルを繰り返してきた。そうたとえば、巨大ロボット、とか、な。」
「な・・・!それじゃつまり!」
「そう!今回の事件の発端である宇宙船の落下は、連中の仕組んだでっち上げだったんじゃ。やつらは残された異星技術を回収し、既にかなりのレベルで実用化している。それは以前からだったのだが、ワシらと同じようにこの世界にパラレル・シフトしてきた宇宙人メカの残骸を分析することにより、さらに強化されたのじゃ。」
「ロボットによる地球防衛軍の結成。その空振りによる憂国機団の蜂起も、奴らの予測範囲だったはず。」
「だが、実際に宇宙人は来た。しかしそれすらも、戦局の混沌化というやつらへの餌を増やしただけじゃ。」
「・・・と、わしらがアウトフィットについて知っている、あるいは推察できるのはここまでだ。何か」
「一つ、質問があるわ。」
話の終わりを待たず、沙羅沙が問うた。その表情は、警戒を表している。
「どうして、そのアウトフィットとやらについて、そんなに詳しいの?」
一瞬の間と、虚を突かれたようなトラキチ達の表情。そしてやや長い逡巡の後、沙羅沙が予想したものと近い答えが返ってくる。
「それは、・・・わしらがかつてアウトフィットの一員だったからじゃよ」
「えぇ〜っ!?」
今度は若い衆が全員顔を見合わせた。
「イクサー1やダンガイオーチームが居なくなってから、ワシらは半狂乱じゃった。本来地球を護る義理もなかった、そして何より仲間だった連中を犠牲にしてしまった己の力不足が悔しくてな。」
「そして、もう一つ理由があった。あの世界で宇宙人が居たのならば、こっちの世界にも居るかもしれない。そして、同じことが繰り返されない保証はどこにもない。」
「そうなってはいかん、早急に力を蓄えなければならない・・・その思いを、奴らにつけ込まれてしまった。」
「そんな時じゃ、連中が我々の解析した技術で地球防衛ロボットを作ろうと持ちかけてきたのは。それで、この話に乗ってしまってな」
「結果として考えるなら、連中の今の技術の半分くらいはワシらに責任があるようなものじゃな。」
「だが、それでも研究があまりにとんとん拍子に進みすぎる。どこから来るのか分からない潤沢な予算、こちらの要求にこたえうる基礎技術。それを不自然に思ってしらべ・・・そして、奴らの正体を知ったわしらは試作ロボットの事故に見せかけて騒ぎを起こし脱出したんじゃ。」
「やっと話が戻ってきたな。それで結局、あの娘は誰なんですか?」
「うむ、有須美亜、ダンガイオーチームの一員じゃ。最終決戦で行方不明となったのだが、アウトフィットに捕われたとはな。しかし、アヴァルダとはな・・・」
「アヴァルダ、ってのにも何か問題が?」
「うむ。アヴァルダとは最近国連主導で結成された対異星人機関のことじゃ。つまり、そこまで連中の手が伸びているということだ。」
そこで、話は途切れた。国連すら自由にする、まさに世界をその掌の上に置く敵の存在に、自然沈黙が満ちる。
「なぁに。」
にか、と姫夜木博士は笑う。
「連中が襲撃してくるのは、それだけ私達を恐れている証拠だ。逆に言えば、巧みに戦い諸君が日々の向上を怠らなければ、勝てない相手ではない!そして、これまでの奴らの所業、戦わず屈する理由はどこにもない!」
普段は全然威厳のない、上にあまり仕事もしない姫夜木だったが、この一言は値千金だった。ガイアセイバーズに再びの闘志、戦いの目標を与えたのだから。
「た、大変だ〜〜〜!」
唐突にロッジの外で叫び声がした。話も一区切り付いていところだったので、すぐさまアンドーがいかにもそれっぽい動作で飛び出し、とおりすがった人に尋ねる。
「どうしたんですか!?」
「宇宙悪魔帝国のロボットだ!」
「何ぃ!?」
その時、山の稜線の向こうから、巨大な飛行戦艦を主軸とした宇宙ビースト部隊が出現した。
戦い自体は激しかったが、そこまで窮地に追い込まれることはなかった。既にかなりの戦いを経験し、また新たに魔神勇二とイクサーロボという仲間を得、さらに今後の戦いの目標、さらなる巨悪アウトフィットの存在を知ったガイアセイバーズと、あいも変わらず力押ししが能がなく、兵器の大半が単純な人工知能で制御されている宇宙悪魔帝国では、勢いが違った。
だが、ヒッサー将軍が直接指揮する大型宇宙戦艦「大宙魔艦」にはさすがに苦戦を強いられた。宇宙ビースト数体分の火力を持ち、しかも倒された途端艦首が分離、高性能タコ型宇宙ビースト・「オクトパスG9」に変形し再び襲い掛かってきたのだ。
素早く雪の中に隠れ、また現れては攻撃するオクトパスG9に翻弄されるコウヘイに、アンドーがアドバイスを与える。
「えぇ!?」
「バクサイオーのエネルギー源・ジャスティストーンは、宇宙悪魔帝国のメカの動力と同種のものだ。バクサイオーと呼応したお前なら、敵の波動を感じ取れるはず!」
しばしの逡巡。だが、一応師匠は師匠だ。
「どこだ・・・」
アドバイス通りに目を閉じ、周囲の気配を探るコウヘイ。物語の中で良くある手とはいえ、成功かどうかは半信半疑だった。
が、瞼の裏に、確かに何かが見えた。聞こえたとか勘とかではなく、雪に隠れた敵が明確に像を結ぶ。
「そこっ・・!?」
「そこだぁぁ!!」
何故か唐突にまりもが叫び、コウヘイが感じていた方角とは全く違う方向・・・空に向けて如意棒を投げつけた。ぐんぐんと空を飛んだ如意棒は、何かに命中して大爆発を起こす。
「よっしゃあ命中!見ててくれましたかお嬢さん!」
ガッツポーズを取るまりも。コウヘイは首を傾げるばかりだ。
「おっかしいなあ・・・。確かにそっちにこうなんか、気配みたいなのが・・・」
「何ぶつぶついってる。俺がきちんととどめ指しただろ。」
と、ぐぐっとまりもが胸を張った瞬間。
コウヘイが指さしたポイントから雪煙を蹴立ててオクトバスG9が現れた。
「わああああっ!?」
そのあとさらに死闘一時間の後、ようやくこの山の宇宙ビーストは全滅した。司令官であるヒッサーを失った宇宙ビーストの人工知能は、命令を受け取れずに混乱していたが、重装甲の機体ばかりなので意外と手間取ってしまった。
「あーやれやれ・・・」
山を下りながら、コウヘイがぼやく。
「な〜にが命中よ、何が。」
思いっきりハズしていたまりもに、沙羅沙でなくとも突っ込みたくもなる。
「でも・・・それならあれは、一体何に当たったんだ?」
それは、少し歩いたら容易に判明した。
地面に、砕け散った機械の残骸が転がっている。それはどう見ても宇宙人の兵器ではなく、地球産・・・それもロボットではなく、輸送機か何かだ。コンテナがハッチを下にしてひっくり返っている。あれでは中身は取り出せないだろう。
結構原形をとどめている、コクピッらしき部分が動いた。がらがらと瓦礫が落ちる、
「ト〜ラ〜キ〜チ〜・・・貴〜様〜・・・」
「ぐぇげっ!?、キ、キ、キリヤマ!どうしてこんな所にっ!?」
そこから這い出してきたのは、見る影もなくぼろぼろになってはいるが確かに研究所に尋ねてきたキリヤマだ。
「活動停止命令を破ったあげく、国連軍を攻撃するとはいい度胸だな・・・・・」
「ちち、違う、誤解だ!」
「やかまし!国連軍に連絡して攻撃対象にしてやる!」
ぼろぼろになったコクピットにあった無線機をひっつかむキリヤマ。
結果・・・逃走!
だが、夜までかかって国連軍を撒き、ようやく麓までたどり着いたとき、コウヘイたちは国連軍と戦ったほうがはるかにましな相手と、出会う羽目になる。
始まりは、柔らかな香りだった。水中や真空、有毒ガスが散布されている状況でもないので外気を取り入れていたコクピットの中に、花の香りが入ってきた。
それが鈴蘭であると気づく前に、今度は声がかけられた。ロボットたちよりも少し高い、高層ビルの天辺からだ。
「妾の名は鈴麗蘭・・・汝等に死の羽ばたきを与えに来た。」
余りにも唐突な宣告。だがコウヘイは、いやその場にいた全員が見惚れたように静まり返っている。
その理由は、冴え冴えとした月の光に照らし出されたその少女、鈴麗蘭の背中に生えた、非現実的なまでに美しい純白の羽。
「死の羽ばたき・・・刺客かっ!」
他のガイアセイバーズと違い、勇二は即座に反応する。
「そのとおり。大人しく死の運命を受け止めるがいい。」
路地裏で怪物をけしかけてきた李や憂国機団との戦いをみはからってゼオライマーを繰り出した木原のような卑劣なそれまでの連中とは違う、静かながら堂々とした様子で、麗蘭は告げた。
それは同時に、自信でもある。だがつい最近までただの高校生だったガクセイバーチームにそれが分かるわけはなく、ましてやともはそんなことを気にするタイプではないので一気に突っ込んでしまった。
「や〜い、ロボット乗るの忘れてるぞ〜!やっつけちゃる〜!」
「無礼者!」
ズバァァァン!
一喝と共に繰り出された麗蘭の細腕は、音速を超えて衝撃波をまとわせ、一撃でガクセイバーを弾き飛ばした。放物線を描いて無様に頭から地面に突き刺さったガクセイバーは、そのまま機能を停止する。
「ん何ぃぃぃ!?」
仰天するまりも。それはほかの仲間も同じだ。背中の羽と髪の色を除けば普通の少女にしか見えない彼女に、こんな力があるとは。
だが。タイガージョーという存在がある意味彼らを助けた。素手で無敵のバリアーと無尽蔵のエネルギーを誇る天のゼオライマーを退けた男。あんな奴が居るのであれば、その同類が居てもおかしくは無いということだ。
そしてそれはこの鈴麗蘭という少女が油断できない敵であるという事実を理解せしめ、全員が全力で攻撃を行った。
だが。
「ボム・スマッシュ!」
「素粒子ビームッ!」
「ゲッ・Pィビィィィィィィィィィィィィィィィィイムゥゥッッ!!!」
凄まじい爆発。しかし、その中に麗蘭の姿は無い。既に緩やかに宙に浮かび、絶対運命を黙示する死神のごとく周囲を睥睨する。
「我が翼、闇に羽ばたく時、千億の死と絶望が舞い降りる・・・白羽殲風陣!」
麗蘭の命じるがごとき声。それと同時に舞い落ちてきていた羽毛が瞬時に高速の刃と化し、鋼鉄の機体を次々と切り裂いていく!
「きゃああああ!」
「うおおおおおっ!?」
ミサイルやビームの直撃にも耐える鋼の巨人達が、まるでシュレッダーにかけられた紙切れのようにひとたまりもなく寸断されていく。
「にゃ、みゃおううっ!?」
そしてその動きは到底捉えきれるものではなく、回避しようとしたミーアのビストームも巻き込まれて破壊された。
「うあっ!」
爆砕姫・・・牡丹のように防御の体制をとっても、小さな羽根は防御を軽々と潜り抜け、あっという間にばらばらに解体してしまう。
守勢に回ったらやられると判断したまりもとコウヘイは、羽を出し続けている・・・すなわちその部分においては羽の動きが直線になる麗蘭の元へと詰め寄ろうとする。
途中避けきれなくなったバクサイオーが両手両足を寸断され地面につっぷす、その上を武器の如意棒を使い棒高跳びの要領でまりもが飛び越える。
「まりもっ、頼んだっ・・・!」
「おう!うおりゃあ〜〜〜〜っ!」
二人の男の叫び。其れに対して麗蘭はうっとうしそうな、いや、むしろ哀れんでいるかのような表情で迎え撃つ。
「この死は運命だ。逆らうな・・・白羽刃。」
ぽつりと呟き、己の羽から一片の羽毛をむしる。その羽一本をまるで剣のように使い、猿皇の一撃を麗蘭は受け止めた。
「なぁにぃぃぃぃ!?」
「終わりだ。」
真っ二つに、猿皇の赤い機体が切り裂かれる。
「さぁ、これで分かったであろう?妾には野に咲く花を摘むがごとくたやすく、おぬし達の命を奪う力が有る。諦めろ、運命を受け入れるのだ。」
「ふざけるなぁ!」
麗蘭の言葉に、もはやただ一人戦闘力を保つ勇二が激発した。その怒りが力を与えたように、空中・地上を縦横無尽に死の羽を避けながら麗蘭に迫る。
「死の運命だと!?そんなもの、認めてたまるかぁぁぁぁぁっ!」
自分の羽をかわしたイクサーロボに、麗蘭は僅かにそれまでの超然とした態度を改めた。それまで腕組みをしてただ立っていたものを、両腕を前に突き出しまるでオーケストラを指揮する指揮者のように動かす。
同時にそれまで夜目にも鮮やかに目に映った白い羽がすっと姿を消した、否見えぬほどの超・高速に加速されたのだ。
「目に映るは影、影もまた現・・・死ね。」
「ぬあっ!?」
こうなっては避けることも出来ず、両足を切り落とされつんのめるイクサーロボ。
の、顔のコクピットが唐突に開き、勇二が躍り出た。一気に麗蘭の居るビルの屋上に飛び移る。
「愚かな・・・」
だが、瞬時に麗蘭の羽は勇二を捉えた。機体ではなく、今度は生身の肉を羽が切り裂く。イクセリオの力で強化された勇二の肉体だが、巨大ロボットすら引き裂くこの羽にかかってはひとたまりもない。
しかしそれでも勇二は倒れなかった。それどころか、一歩一歩であるが強引に歩を進める。
その姿に、氷のように冷徹に相手を見据える麗蘭の瞳が僅かに動いた。
「・・・そなたに問う。何故にそこまで、生に執着する?」
一時攻撃を停止させてまで、麗蘭は問いかけた。それに対し勇二は全身からの痛みに食いしばる歯の隙間から搾り出すように返答する。
「決まっている・・・俺から愛するものたちを奪った、運命に抗うためだ!」
「運命に抗う・・・か。無駄なことをする。逆らうことかなわぬからこそ、運命というのだ。妾の死の翼に抱かれ、逝くがよい魔神勇二。」
それを最後に、麗蘭は無言で白羽殲風陣を放った。もはや語るべき言葉を持たなかったのか、それとも。とにかく、羽は以前にもまして凄まじい速さで勇二を切り裂いていく。
「ま、死ぬものかぁぁ!」
ザシュッ!」
「ぐっ・・・まだまだ!まだだぁぁ!」
ザッ、ザシュザシュッ!
「まだ、死ねない・・・死ねるものか!」
ズバッ!ドシュッ!ザクッ!
「死に・・・負けない!負けはしない!まだだ・・・・負けるものかぁぁぁぁぁっ!」
不可視の刃の結界を、強引に一歩一歩歩きぬき、ついに勇二は麗蘭のすぐ前までたどり着いた。
「ガルム!止めを刺せ!」
その姿に一瞬得体の知れない感覚を覚えた麗蘭は、咄嗟にガルムに命じ、そして驚愕した。
「虞縷縷縷縷縷・・・縷縷縷縷縷縷。」
彼女の黒豹・ガルムは、まるで勇二を護るように、二人の間に割って入った。そして、何かを訴えるように主の顔を見る。
「ぬ・・・・・・・」
その時になって、ようやく麗蘭は気づいた。勇二は力を使い果たし、既に失神している。それも、立ったままで。
「この男・・・」
麗蘭は呟いた。それまでとは違った、複雑な表情が顔に浮かぶ。
「う・・・?」
目を覚ましたとき、コウヘイはもうそこに居た。勇二も、まりもも、トラキチも、全員そろっている。
「ここは・・・!麗蘭!?」
「うむ。」
まるで戦艦の艦橋のような部屋。その艦長席に類するであろう場所に、堂々と麗蘭が腰掛けている。彼女がガルムと呼んでいた黒豹も一緒に、傍らに寝そべっている。
慌てて身構え、あるいは逃げようとするコウヘイたちを、麗蘭は笑い飛ばした。
「愚か者どもめ。妾がその気であれば、今まで生かしてはおかぬわ。」
「・・・では何故、生かしておいた・・・」
「たわけ。それが命を救ってもらっての態度か。」
「う」
勇二の問いかけも、麗蘭にこういわれてしまっては続けようが無い。正確には命を救ったのとは違うのだが、少なくとも見逃してもらったのは事実だ。
「ちと気が変わってな。殺し屋業は一時休業じゃ。営業再開まで命永らえた、そう思うが良い。その間、妾のヴァカンスに付き合ってもらうぞ。・・・どの道、御主等も逃げねばなるまい。妾はそれをば特等席にて、ゆるりと見守ろうという寸法じゃ。」
気だるげな微笑。支配者としての態度が空恐ろしいほどにさまになっている女だ。
「逃げなければならない、だと・・・?」
麗蘭は「阿呆か」といったような表情を勇二に向ける。
「お主ら、国連軍の連中の輸送機を撃墜したであろうに。だからあのまま放って置いては連中に捕まるであろと思って、妾自らわざわざ自衛隊が近くの基地で作っていた空中軍艦を奪って、おぬしらのロボットを乗せて、こうして発進させてやったのじゃ。ありがたく思うが良い。」
「な、なんちゅうことをーーーー!!」
トラキチは頭を抱えた。輸送機誤射に関してはまだ弁解の使用もあっただろうが、ここまでやってしまってはもはや話も聞いてもらえないではないか・・・!
トッ!
「ひえぃ!」
いきなりトラキチの顔をかすめ、麗蘭が投げた羽が壁に突き刺さる。その威力は先の戦いで全員嫌というほど思い知らされている。
「ありがとうはどうしたのじゃ・・・?」
「は、はいひぃ!ありがとうございまするぅ!!」
平身低頭するトラキチ。激しく情けない。だがそんな超然とした態度をとる麗蘭に見とれている姫夜木は、もっと情けなかった。
昼間の話は一帯どこへ行ったんじゃい。内心突っ込みを入れざるを得ないコウヘイだが、彼自身も水戸黄門の印籠を突きつけられた悪代官みたいな有様なので、ぜんぜん人のことは言えない。それれにしてもこういう場面で最も騒ぎそうな木村がいなかったが・・・
「あやつらは船に収まりきらなんだので、別に分かれてもらった。」
と、麗蘭から言われた。そして言われてから、既にしっかりと仕切られてしまっていることに気がつきげんなりとする。
・・・そして、今に至る。
中途で地上に寄っての家財道具運搬から炊事洗濯に黒豹の毛のブラッシングまで、なれない家事を山ほど押し付けられて勇二は辟易した。体は武術のため鍛えに鍛えているのだが、こういうことに使うのは体も神経もどこか別の部分で、どうしようもなく疲れてしまう。
「っ、はぁ、はぁ、はぁ・・・」
空中軍艦「東雲」の甲板に仰向けにひっくり返り、荒い息をつく勇二。
「勇二!この程度の事で倒れてどうする?」
「!?」
全く唐突なその言葉に、反射的に勇二は顔を上げた。しばしば同じような状況を体験した、その声の主は虎頭の男。
「タイガージョー!?」
全く気配を感じさせず、まさに風のようにその男は現れる。強烈な夕日に黒いシルエットと化し、鋭く細長い艦首に腕を組んで立つ様は、まるで一枚の絵のようだ。
「立て!立ってみせるのだ、勇二!!私は倒れたお前に、手を差し延べたりするような真似はせぬぞ!聞け!!獅子は、わが子を谷底に突き落とし、這い上がってきた子のみを育てるという・・・だが、甘い!甘過ぎる!!!私ならば、這い上がってきた子を、再び谷底に叩き落としてみせよう!!そう、何度でもだ!! 男の人生は、苦難の嵐!!地獄の針山より険しいものと知れっ!!」
「だ、だがタイガージョー!こんな風にこき使われるのが、男の人生の苦難だとは・・・」
みなまで言わせず、タイガージョーの重くて早い鉄拳が炸裂する。そして後から大声が追い打ちをかける。
「このすっとこどっこいがぁぁぁ!何もわかっとらんのかっ!」
「な、何もとはどう言う意味だタイガージョー。」
その気になれば巨大ロボットすらぶち壊す鉄拳に張り飛ばされた勇二は、悶絶しながらも何とか気力で起き上がる。
「そんなことも自分で考えられんのか!だぁからお前はあほなのだぁ!よいか、彼女がお前の命を、何故助けたと思う!」
そういうと、びしりと勇二に指と問いを突きつけるタイガージョー。その鋭さに、勇二はたじたじとなる。
「そ、それは・・・彼女は気まぐれだと・・・」
そんな勇二のたどたどしい答えを、ふっとタイガージョーは笑い飛ばす。
「それが分からんようでは、まだまだ未熟!精進するがよい勇二よ!」
素早く消え去るタイガージョーに取り残された勇二は、もう倍疲れたような気がしていた。
次回予告
作者
と、いきたいところだが、そうもいかない。
コウヘイ
何っ!?ま、まさか打ち切りかぁ!?
作者
するか、そんなこと!・・・そうではなくてだな、ここから先、ストーリーが分岐するのだ。
勇二
と、いうと・・・
魔窟堂野武彦
一つはわしらの回想、そもそもの発端となった過去の戦いを描くAルートその一過去と現在の輪舞・それまで。
トラキチ
残り二つは現代編、東雲に乗り込んだ姫夜木研究所の面々とバクサイオーチーム、イクサーロボを駆る魔神勇二のBルート エイリアン使いと少女、
呉石博士
そしてもう一方は宇宙ロボット研究所のゲッピーチームとガクセイバーのCルート 強襲、SOME-LINE
パオラ&紫音
を、お送りいたします。
鈴麗蘭
・・・もちろん、見るであろうな?