第七話「冥王襲来」

憂国機団中国支部。広大な大陸の奥地、かつてダオス帝国が栄え、そしてゴーマ族とダイ族との戦いの果て滅んだといわれる、森林地帯。
そこに、その基地はあった。
鉄鋼竜。ハウ・ドラゴンの異名を持ち、その所持する八卦集と呼ばれる巨大ロボットの力は、事実上憂国機団最強と恐れられていた。
その力と、指導者幽羅帝を皇帝とあがめる独立性から今までは対宇宙人の切り札として、幾度と無くゲドーの降下兵を蹴散らし、ツイミの地上げ獣を粉砕してきた、つわもの中のつわもの。だが日本における連敗からついに、憂国機団総帥三剣流星から、出撃の依頼が届いたのである。
「我が兵たちよ!我ら鉄鋼龍は、憂国機団は、蜂起以来地球を狙う宇宙人共を撃退し!腐敗した各国の軍隊を討伐し!世界に正義を示してきた!」
居並ぶ幹部たちを前に、演説をする幽羅帝。中国風の表面積の広い絢爛な装束と、羽を広げる龍を象った大きな冠。拡声器もなしに響き渡る朗々たる声は、まさに堂々たる「皇帝」であった。
「我らの前には超過額を誇る宇宙人とて退き、ましてや腰抜けの軍隊など鎧袖一触に蹴散らしてきた!だが、近頃ガイアセイバーズを名乗る愚者の軍団が分不相応なるロボット兵器を持って反逆し、もって大幹部犬神狂四郎を死に至らしめた!」
演説に熱が入り、皇帝はばさりと袖を翻した。施された金属の装飾と、帝自身の長い黒髪が揺れる。
そう、帝は女性であった。だが顔を硬質に彩る紅の化粧と、何より本人が作り出す緊迫したカリスマが、彼女をして堂々たる支配者としていた。
「これ以上ガイアセイバーズによって被害が生ずれば、我が憂国機団百年の大計は危うくなろう。誰ぞ、彼奴等を討伐するものはおらぬか!」
そして、前回鋼鉄双葉山を破壊されながらも何とか帰還した飯田博士が、怒号のごとく号令する。
「出でよ、八卦集よ!」
その命に、待ってましたとばかりに進み出る八卦集たち。
まず進み出たのは、いかにも屈強そうな巨漢の男。
「この祗鎗の操縦する、山のバーストンにお任せあれ!全身に搭載せし五百発ものミサイルで、叛徒どもを木っ端微塵にしてくれましょうぞ!」
無骨な顔を震わせ、咆える。それを抑えて出たのは、瓜二つの姿をした双子の姉妹。髪の分け方が左右逆でなければ、おそらく誰にも見分けられまい。声もぴたりとそろえて訴える。
「「我らシ=アエン・シ=タウの姉妹にご命令を。火のブライスト、水のガロウィン、二体そろえば敵はありません。」」
それに続いたのは、色気のある容姿と短く切りそろえた髪が不思議なバランスを持つ女。ややハスキーな声を限りに叫ぶ。
「地のディノディロスをお使いください!地脈を刺激しマグマを操る力もて私、ロクフェルが奴らを裁きましょう!」
次の声は、打って変わって静かに。だが迫力を持って響く。不思議とこもった声は、つるりとした銀色の仮面から放たれていた。
「月のローズセラヴィー、我が名・葎に賭けて、レーザーの剣で切り刻んで見せましょう・・・」
そして、もう一人恩間時くらい静かな声を発したのは、傍らの壁にやや不真面目に寄りかかる、赤い髪をなびかせる気障な男。
「我が雷のオムザック、未完成といえどこの塞臥の技量をもってすれば、他の八卦ロボに優に勝りましょう・・・」
自信たっぷりの一言に、他の八卦集が塞臥をにらめつけるが、塞臥は気にせず受け流した。
「飯田博士、どう見る?」
そんな確執などそ知らぬ様子で、幽羅帝は飯田に下問する。対する飯田も、また冷静である。
「確かにオムザックは、主砲プロトンサンダーがいまだ未完成。じゃからしてそもそも設計思想の異なるほかの八卦ロボとでは、比較する行為は不可能だろうて。」
そして、「八卦集七人最後の一人」。
名乗りを上げようとしないその男に、幽羅帝は視線を移した。だがその視線は叱責するものではなく、愛しきものに注ぐ優しさを僅かながら湛える。
「耐爬・・・お主はどうじゃ?」
耐爬と呼ばれた男は、オールバックの長い髪を後ろで束ねた、長身の青年。そのすらりとした、だが同時に鍛え上げられた体を折り、彼は言う。
「私は、敬愛する幽羅帝を信じております。ただ、ご命令を待つのみ。」
その言葉が、幽羅帝の心を決めた。
「わかった。ガイアセイバーズ討伐は耐爬と、風のランスターに任せようぞ。必ずや驕敵を撃滅するのだ。」
「ご期待にお答え、日本支部を救ってごらんにいれまする、我が帝。」



今まさに風雲渦巻き、戦いの嵐が巻き起こらんとしている、その時我らがガイアセイバーズは!

休業していた。

前回、憂国機団の撃退に成功し、幹部の一人を撃破することに成功した。純軍事的には戦果拡大のため、追撃するなり近隣の憂国機団基地を攻撃するなりするべきところなのだが。
それとは別に、彼らはツイミ星人の地上げ獣とも戦った。
そして彼らは、もともとはガイアセーバーズの先輩とも言うべき、地球防衛のロボットたちであった。
(わしらは待ち続けたんだ… 何年も待ち続けたんだ! 闇の底をはい回り、血の涙を流し、手塩に掛けて積み上げてきたその答えが、これかぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!!!)

そういわれれば、やはり追撃の手は鈍る。

「っったくな〜。」
暇に「なってしまった」コウヘイがぼやく。
学校からの帰り道、榊たちガクセイバーチームではない、普通のクラスメートとの話題にはふさわしくないが。
つらつら、事情を語るコウヘイ。それは相手に理解させるというよりは、むしろ時間を稼ぐ意味合いが多かった。
なにしろ。
その、一緒に帰るクラスメートというのは、失踪した勇二の女友達二人。それが、「相談がある」とわざわざ一緒に来たのだ。
普段研究所で女性パイロットが多くいるからといって、彼らは「仲間」であり、こういう状況とはちと少年の心理に与える影響が違う。
そして、相手の少女たちはなかなか「相談」を切り出せないらしく、沈黙が続いてはたまらないコウヘイがしゃべり倒す羽目になるのである。
(勇二って・・・女の子に人気あったからな〜・・・)
本人は格闘一筋で、まるで気が付いていなかったが。それもまた、人気の一因になっていて。
それで友人のコウヘイに、相談が持ち込まれるわけだ。はっきり言うと、友人についてそういうこと女の子に質問されるのって、男は非常につらいのだが。ほら、いろんな意味で。たとえその子が意中の人、というわけでなくても。
だが、今回の二人の相談は、それとはやや趣を異にしていた。
「あのね・・・コウヘイ君。「幽霊ロボット」の噂って、聞いたことある?」
おずおずと切り出したのは、勇二の幼馴染、秋月渚だ。優しそうな風貌と、ふわっとしたショートカットの髪の毛からやや気弱そうな印象を受けるが、芯はしっかりしておりよく無茶な大会に出場したり道場破りと戦う勇二に率先して付いて周り怪我の手当てや食事の用意など、勇二の妹の恵とともに率先して行動していた。
「幽霊ロボット・・・?」
聞いたことの無かったコウヘイとしては、首をひねるしかない。そんなコウヘイの反応に、じれったそうな声が飛んだ。
「知らないんですか、コウヘイ先輩?最近、深夜の町とかに半透明の現れたり消えたりするロボットが出るって言うの!」
期待するような声でコウヘイに迫るのは、仁藤美咲。仁藤流柔術継承者で、勇二と同じ格闘部に所属する後輩だ。戦うときの横顔はしばしば凛々しい少年のように見えることもあるが、少年にしては美しすぎる。だが、普段は快活で、むしろ猫のような気まぐれな可愛さを感じさせることが多い。
「う〜ん、話は聞いたことは無いけど・・・ひょっとしたら、って心当たりは。」
そう、話は聞いたことは無い。だが前回の戦いで、コウヘイはそれと似たような経験をした。まるで別の次元の同じ場所に、何かがいるような感覚。
「そうですかっ!?」
「わっと。」
突然勢い込んだ美咲に、コウヘイはたじろいだ。一体それにどういう意味があるのか、はかりかねたからだ。
その疑問には、秋月が答えをくれた。
「私、この間の夜・・・見たんです、その幽霊ロボットが現れるの。窓の外でそのロボットが消えて・・・なんか、パイロットみたいな人が足元に降りるの見えたんですけど、それが勇二君みたいに、見えたんです・・・。」
「えぇ?まさか・・・」
あの事件以来、勇二の消息はまったくの不明となっている。それがどうして、謎の幽霊ロボットのパイロットに。
「いや・・・案外、ありえない話じゃ・・・」
何しろ自分も、いまやガイアセイバーズ所属のスーパーロボット「バクサイオー」のパイロットである。あながち無いとも言い切れない。
「それで、ロボットに乗っているコウヘイさんなら、何か知ってるんじゃないか、って・・・」
事実そう考えていた秋月の声が、コウヘイも知らなかったという事実に尻すぼみになる。そこには、明らかに期待が外れた失望が聞き取れた。
申し訳ない気分になるコウヘイ。
「ご、ごめん。でも・・・どうするの?」
聞いてから、愚問だとコウヘイは思った。自分でも確実にほうっておかないだろう。ましてや、この二人なら。
「・・・探します。探して、見つけて・・・。勇二君の家族ががどうしてこんなことになったのかわからないけど、何か、何かしてあげたいと思うの。」
静かに、だが決意を込めて言う秋月。そして美咲も、意外な事実と、ともに決意する。
「ボクはあの日、あの鴉丸って男に立ち向かって・・・何も出来なかったんだ。殺気に気圧されて、みっともなく怯えて。それで助けてくれた勇二先輩が、逆に・・・。ボクが、勇二先輩を危地に・・・。だから、今度こそ・・・今度こそ・・・」
その声は、痛々しいほどに、罪の意識に震えて。
空気が、重い。殺された勇二の家族の幽霊と、鴉丸羅喉という男の幻影が、そろってのしかかってきたかのようだ。
打開策を見失ったコウヘイは、どうしようもなくきょろきょろと辺りを見回した。
「ぉ。コウヘイじゃねえか。お〜い。」
「あ、まりも。」
「俺はもうまりもなのか・・・」
「え、あ、いや」
何とか、道は見つかった。たまたま買い物に来ていたらしい、まりもたちと合流する。まりもの他、牡丹、紫音、パオラ、沙羅沙。
そしてひと時互いに始めて会うもの同士、挨拶が暗さを緩めた。だが、今度は別の、物理的な闇が。
「え、あれ!?」
唐突に、世界が暗転したのだ。風景が一瞬にして、宇宙のような空間にモノリスが浮かぶ異空間に変貌する。
「な、何がおこったの?」
不安げな渚。辺りを見回す紫音。コウヘイの腕にすがりつくパオラ。その戦闘力の無い三人を守る形で、牡丹、美咲、まりも、沙羅沙、コウヘイ
はたして、その選択が正しかったことはすぐに明らかになった。
「きゅえっきゅえっきゅえっ・・・」
「ひゅい〜っひゅひゅひゅひゅひゅ・・・」
「ほぉう〜ふふふふふ・・・」
不気味な笑い声とともに現れた「それら」は、明らかに人ではなかった。いや、現れた当初は人であった。さっきまで歩いていた商店街の、ごく普通の通行人たち。だが見る間ぐずりと頭部が崩れ、皮膚が破れ、下からまるで寄生虫を触手に生やした油虫色のオウムガイとでも言うべき怪物の顔があらわになる。
「キャアアアアアア!」
悲鳴を上げる渚、ぎゅっと目を閉じる紫音。コウヘイは、自分の腕にかかる力がますます強まるのを感じた。
美咲もまた、顔色を蒼白にしている。だが、必死に自らを奮い起こし、だっとばかりに打ちかかった!
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
バシッ!
美咲の拳は、防御動作をとろうとしない怪物にクリーンヒットした。
「やっ!とぉ!せぇぇぇぇぇぇい!」
正中線に沿って連撃を叩き込む美咲。
だが。
「ひゅい〜っひゅひゅひゅひゅひゅ・・・」
「き・・・きいてない!?ならっ!」
すばやく間合いを取った美咲は、今度は腰を落とした構えから、一気に宙返り気味に頭を狙うけりを放つ。街路樹程度の木ならへし折れる一撃だ。
「仁藤流奥義ッ!!紅鶴強襲脚!!」
ガッツン!!
「ぁあ・・・っ!!」
だが苦痛のうめきは、美咲の口から漏れた。怪物の頭部は硬い甲殻で出来ており、美咲の脚のほうが耐えられなかったのだ。
っごぉがっ!!!
次の瞬間、美咲の拳より数倍重い音。怪物が、触手の束と化した腕をよろめく美咲へ横殴りに叩きつけたのだ。技量も何も無い力任せの、だがそれでも美咲の技に圧倒的に勝る一撃。
「・・・ぁ・・・ぁ・・・っ・・・!
絶息し、倒れることも出来ずに硬直する美咲。そこ向かって怪物は一気に絡めとろうと触手を伸ばした。
「危ない!」
乾いた破裂音。沙羅沙が瞬時の神業で、怪物の伸ばした触手を銃でちぎった。ようやく倒れこむ美咲を、すばやく、だが優しく支える。
「大丈夫・・・じゃないわね。でも、貴方たちを死なせたりはしないわ。」
男に向けるよりか千倍優しい声。だが、美咲の頬は安堵ではなく悔し涙ににじむ。
「負ける・・・もんか・・・・・・あの時のように、気圧されたりするもんか・・・」
そう呟いても、もはや体は動かない。気ばかりが空転し、それが己の弱さを残酷に突きつける。
無論彼女は常識で考えれば明らかに「強い」。だが、それはあくまで人間の肉体の・・・少女の体の限界を超えるものではなかった。
美咲を抱えて動けない沙羅沙に、怪物が迫る。それを真っ向から見据えた沙羅沙は、躊躇無く発砲した。
「キィィィィィィ!?」
両目を押さえ、のけぞる怪物。弾倉を交換する沙羅沙は、最初に体に当てた一発で効果が無いと知るやすぐさま両目を打ち抜いたのだ。そして、次に入れた弾倉は強力な火薬を使った強装弾。
それを人間で言うのど笛に突きつけ、弾丸が頭部の内側に入るように一気に放つ。跳弾が脳内をぐしゃぐしゃに駆け巡り、さしもの怪物も倒れる。
だが、怪物は一体ではなく、強装薬はこれで最後。
「くっ・・・」
美咲を抱えて下がろうとする沙羅沙に、怪物は触手を放つ。それは皮膚を破り肉に突き刺さり、そのまま体内を食い荒らす恐ろしい攻撃。
「飛翔皇極波!」
ドッカァァァァァァァァァァァァン!!
それは明らかに爆発。手榴弾どころか、バズーカ砲でも炸裂したような勢いの音だ。だがそれは、閃真流皇応派・桜小路牡丹が、紛れも無く拳ではなった技なのだ。
直撃を食らった怪物は、頭部がざくろのようにはじけてひっくり返る。
「流星!降滅拳〜〜〜〜〜〜〜!!!」
叫びとともに牡丹の両腕に宿った青い光が放たれ、2、3匹の怪物をまとめて吹っ飛ばした。
「ふぅ〜〜〜、大丈夫ですか!」
「ええ、ありがとう牡丹ちゃん。さすがにやるわね。」
牡丹、沙羅沙。二人に助けられたことを、美咲は、素直に喜ぶことが出来なかった。そして、そんな喜べない自分にも嫌悪を抱く。
沙羅沙も、それに気が付いてはいた。だが、今はどうすることも出来ない。
一方まりもは、紫音たちのほうに来る怪物と戦っていた。
「いくぜっ!とりゃあああ!」
だが、その拳はむなしく空を切る。
「ありゃ?」
続いてキック。だがそれも届かない。
「あ、そっか!この体になってから身長も値脚の長さも変わってるから・・・おうわっち!」
納得したところで敵の攻撃を危うくかわす。と同時に、スカートの後ろ側のベルトに手を伸ばした。
「そんなら、じっちゃんの作ってくれた武器を使うぜ!それっ!」
そこに収まっているのは、それまで猿藤が使っていた棍では大きすぎるからと、魔窟堂がわざわざ製作した武器。
が、それはどう見ても魔女っ子用のマジカルバトンか何かにしか見えなくて。
「確か音声入力だったな・・・マジカル・レインボー・シャワーーー!!」
きらきらきら・・・と、宝石をちりばめたような光がバトンから放たれる。それに撃たれた怪物は、ひとたまりも無く消えうせていく。
「・・・すげぇ威力・・・じっちゃん、さすがだぜ・・・」
「というか、よくあんなせりふきちんとポーズつけて言えたな。」
コウヘイの突っ込みに、思わず固まるまりも。
「慣れていくのね・・・自分で、自分が怖い・・・」
「あのな。」
ともあれ、これで現れた怪物たちは全滅した。
が、すぐまた現れた。
「わ〜〜〜〜〜〜っ!」
「くっ・・・これは!?」
「ちょっと・・・」
後から後から、ぞろぞろと湧き出してくる。
「くっくっくっく・・・」
今度の笑い声は、不気味だがまだ人間のものだ。怪物たちを率いるように現れた、はげ頭の東洋人が発している。
「なにもんだ、てめぇ!」
「別に名乗る必要は無いでしょう。あなた方どうせこれからベデムたちに殺されるんですから。」
ベデム、というのがどうやら怪物の名前らしい。
周囲を素早く見回すコウヘイ。沙羅沙・・・短機関銃の残弾なし。美咲・・・戦闘不能。牡丹・・・大技の連発で疲れている。
(まずい)
あと頼りになりそうといえば、まりもの持っているバトンくらいか。だが、そのバトンを持つまりもの顔は暗い。
(どうした?まりも?)
(まりもって言うんじゃねえ!あ、いや。このバトンなんだがよ・・・)
(何か?)
(「魔法は番組後半に一回」と但し書きが・・・)
「げ〜〜〜〜っ!」
希望は消えた。
「ど、ど、どうし・・・」
「さあ、それでは死んでください、ねげべぇっ!?」
「!?」
唐突に、その東洋人が背後から張り飛ばされた。完全に気配をたっての一撃だったらしく、もろに入った。が、男もさるもの、すぐさまに起き上がる。
「お前は・・・」
闇の向こうから現れたのは、青年が一人。コウヘイは、その名を知っていた。
「魔神・・・勇二!」
「李 飛孔・・・貴様、俺を狙うだけでは飽き足らず・・・」
勇二は自分に向き直った禿頭の男を鋭く見据えると、静かな怒りに燃える声で言った。対する・・・「李 飛孔」は、事務的な、だが同時にそれを楽しんでいるような口調で。
「ふ、同じなのですよ、イクセリオエナジーを受けた貴方と。我々にとってはね。同じ・・・「邪魔者」です。」
同時にベデムたちが一斉に数百本もの触手を放ったが、一瞬で蹴散らされる。あまりに早い動きで、まるでベデムたちが勝手に砕け散ったかのように見えた。
「な・・・すげぇ・・・」
「「邪魔者」・・・それだけの、理由で!許さん!とぁぁ!」
「しゅっ!」
両者同時に跳び、凄まじい連撃の嵐が交わされる。さっきベデムを蹴散らしたように、どちらも人間業の領域ではない。李が突き出した手刀が、勇二に避けられて異空間に浮いていた奇妙なモノリスにかすった途端、強烈な酸を使ったようにそれが溶け落ちる。
だがそれを潜り抜け、勇二は一気に踏み込む。そして、一撃!
「地竜、鳴動撃!」
「ぐほっ!」
勇二の一撃に体をくの字に折り曲げた李は、闇の中へと溶け込むように消えていった。それと同時に、この奇妙な異空間も消えて、もとの商店街に一瞬で戻る。
「ゆ、勇二くん・・・」
そして、勇二もそのまま。確かに消えたあの日のままの姿で、そこにたっていた。
震え声だが、渚が声をかける。その答えとして帰ってきたのは、悲しげな微笑み。
そして勇二は身を翻すと、あっという間にわき道へと消えた。すぐさま追ったが、すでに姿は無い。
「一体、なんだったんだ・・・」
とりあえずまりものその呟きが、ガイアセイバーズメンバーの共通の感想だった。が、コウヘイ、美咲、渚・・・その三人はさらに複雑で。


その後基地に帰ったコウヘイたちは結局これを憂国機団の攻撃と判断。もはやこれ以上待つわけには行かないと、最も近い憂国機団の三浦半島基地へ攻撃を仕掛けた。

対して憂国機団側は前回の先頭のダメージを修復していたのか、迎撃の準備をしていなかった。こちらが接近して初めて、格納庫から気体を出し始める。
「ぬっふっふっふ、前回は出番が無かったが、今度こそこの大天才吉外が作りし征服獣一号の威力、思い知らせてくれるわ!」
そういって、じじぬさい外見とは裏腹のすばやい動きで、仰向けに地面に横たわり整備を受けていた征服獣一号に飛び乗る、が。
「ぬ・・・お?」
手足をじたばたと動かす征服獣一号。
じたばたじたばた。しかしその稼動範囲は、胴体の厚さによって地面から離れた距離を逸脱することは無い。
つまるところ。
「ぬおおおおおおお!起きれんでわないか〜〜〜〜〜!」
このマジボケには、敵も味方も思いっきりずっこけた。
「アホか〜〜〜〜!」
総大将の見せる情けない姿に、涙する憂国機団兵士。
「も、もうだめだ〜〜〜!おしまいだ〜〜〜!」
「あ、あう。どうしよう。ミス・ラーさま達は先に本部に引き上げちゃって、後は私たちだけなのに・・・」
早くも負けたような声を明日者もいる。げっ歯類の動物を象ったデザインのロボット・ファラビットのパイロットだ。
「咲・・・」
沢野口咲。前回初めて出撃したものの、結局出番も無く終わってしまった娘だ。幹部の一人であり、資金面のスポンサーを務めるほどの金持ちである皇聖院舞の家に仕えるメイドである。
それを慰めるようにかばうのは、同じ家に仕えるこちらはお庭番、霧島影美だ。こちらは前回飯田博士を救出したが、しんがりの撤退を援護するため基地に戻ったのだ。
「大丈夫。大丈夫だから。貴方は、私が守ってみせる。」
顔を硬く引き締める影美。同じ癒えに使える仲間である二人は、憂国機団結成以前からの友人だった。

そんな相手の姿勢みて、コウヘイとまりもがたじろぐ。
「しまった!今回俺たちのほうが悪役っぽいじゃんこれじゃ!」
「むうう・・・これはまずい!」
たじろぐ。と、そこに出来た隙に風が舞い込んだ。
風といってもただの風ではない。自動車を巻き上げ家を壊す竜巻が、まるで意志があるように憂国機団とガイアセイバーズの間を区切った
そして、その風の向こうから響く、堂々の名乗り上げ。
「憂国機団八卦集が一人、風のランスター推参!」
空中の一転に、腕を組んだ姿勢で止まっているロボットからその声は発せられた。鋭く長い角と、背中から生えた本体よりも大きな翼が、シルエットに強烈な個性を与えている。
「八卦集・・・だと!まずいぞこれは!」
「知ってるのか親父!」
父のただならぬ表情に、コウヘイもさすがに緊迫する。
「ああ。地球防衛計画の初期に作られたロボットのうち、最高傑作と言われた八体だ。そのうち一体は事故で失われ、残りは憂国機団の所属として異星人を迎撃していたと聞いたが・・・ついに来たか。」
呉石博士もまた、ゲッPXチームに忠告する。
「あれは風のランスター。八卦集の中で最も機動性に富むロボットじゃ。十分注意するのじゃぞ!」
「おう!わかったぜ!」
早速飛び出していくゲッPX。空中戦闘用のX1、パイロットは百舌鳥恵一だ。

突撃してくるゲッPX1を見据え、耐爬は一人呟く。
「ご照覧あれ、帝。八卦集最強の兵が誰かを。・・・私が、貴方を愛するに足る男であるという証明を!」
心に燃えるは愛、脳をよぎるは記憶。
出撃前。

幽羅帝の、寝所。
支配者と、兵士。今となってはまるで違う存在となった二人ではあったが、憂国機団結成以前、地球防衛の兵士として過ごした三年間。
数度の逢瀬を重ねるほどに、二人の間には恋が芽生えていた。だが、こうして組織の一員となった以上、なかなかそういうわけにはいかない。ましてや幽羅は、鉄鋼竜の長となったのだ。
「帝・・・貴方がおっしゃるのであれば、私はどんな死地にも赴きましょう。ですが・・・」
僅かに、逡巡する耐爬。
「此度のご命令・・・鉄鋼龍の長の夫となる男にふさわしいということを他の八卦集に示せと・・・愛するが故のご命令であると・・・。一言、ただ一言、おっしゃってくだされば・・・」
対して幽羅帝は、化粧を解いた顔を壁に向け、沈黙を守る。
「・・・失礼を・・・いたしました。」

「照準セェェェット!」
最高速度で一直線に接近しながら、照準を合わせる恵一。急激に間合いが詰まり、それだけ回避される危険が減る。
「エックスッ、ビィィィィム!」
X1の放つ光線は、空しくランスターのいない空間を切った。
「なにっ!?」
「遅い・・・!」
既に、ランスターはX1の背後を取っている。反応どころか目視すら出来ないスピード。
「ブレイウェイン!」
ランスターの両肩から発射されたのは、空気に出来た真空の切れ目。
「見たか!このブレイウェインはいわゆるカマイタチ現象を人為的に起こしたものだが、威力の桁は段違いだぞ!」
両翼を切断され、落ちるX1。地上にぶつかる寸前に分離し、陸専用のX3へと変形する。
「わしにまかせんしゃい!エックス大砲じゃ〜〜〜!!」
轟然炸裂。同時に砲弾内部の子爆弾が広範囲を巻き込む三式弾だ。が・・・
「甘い。」
「なんやてぇ!?」
それすらもランスターはかわしきった。機体動作の鈍いX3の上空を占位する。
「デッド・ロン・フーン!」
先ほど起こしたものより、さらに巨大な竜巻だ。まるで、風の龍。一気にX3が巻き上げられる。
「させるかぁ!十二ともちゃんウルトラ暴走女子高生アターーーック!」
ガクセイバーの援護射撃は、見事に命中した。・・・ゲッPX3に。
「あーーー!」
「馬鹿ぁ!何やってるんだ!」
対処するまもなく、高速で突っ込んできたランスターの放つ衝撃波で飛ばされるガクセイバー。
「おひゃああああ!」
「ええい!ガクセイバー、弾幕薄いぞ!なにやってんの!」
などと言うても仕方が無い。何か手は無いか。
姫夜木は、その手をひらめいた。
「そうだ!牡丹君!沙羅沙君!まりも君!合体するんだ!」
猿皇・爆砕姫・爆撃姫の三体は、合体して巨大ロボット「爆猿皇」となる能力を備えている。今までは、沙羅沙の反対で使用できなかったが。
「そうですお師様、合体しましょう!」
「おい、でも、沙羅沙は・・・」
だが、今回は急に。
「いいわよ・・・まりもちゃん。」
と、きた。
「へぇ?何でまた・・・」
戸惑う猿藤だが、その理由は思いついた。今自分は「阿寒湖まりも」なのだ。
が。
「そっ・・・それは俺のほうがいやだぁぁぁぁ!!だめ!合体反対!」
「おおまりもよ、なんということを・・・」
「まりもじゃねぇ!」
せっかく沙羅沙が賛成したというのに、今度はまりもが反対。合体への道は険しい。
「なにをごちゃごちゃ言っている!ボーンフーン!」」
ごちゃごちゃしているうちに、ランスターが次の一手を撃った。二つの竜巻を連続発生させ、こちらに向けて突進させてくる。
「うわっ・・・このっ!」
沙羅沙が反撃のミサイルを放つが、竜巻に巻き込まれてどれも届かない。牡丹の流星降滅拳は気の弾丸を放つ技だから風の影響は受けないが、ランスターはそれすら完璧にかわしきった。
「当たらん!風は誰にも捕まらない、誰も風を殺すことなど出来ないのだ!」
目にも留まらぬ速度で空中を舞いながら、ランスターは次々と風を操り攻撃をしてくる。今までの憂国機団を、上回る気迫である。
「こいつは・・・出来る!そして・・・」
そして、必死だ。だが突き詰めて考えれば、今まで戦ってきた敵、それらは皆全て必死だったのだろう。彼らなりの理由、彼らなりの事情、彼らなりの正義、彼らなりの、譲れないもののため。
だが。
コウヘイは、思う。自分もまた負けられない。自分の命だけではなく、負けられない、理由が。
考えはまりもも同じらしく、ちらりとこちらに目をやると、すぐさまランスターに向かう。
「飛べっ、猿迅丸!」
金斗雲にのる孫悟空のように、空中へと舞い上がる猿皇。それを見たランスターは、上昇して間合いをとり、攻撃の構えを見せる。
「この風のランスターに空中戦を挑むか!・・・叩き落す!ブレイウェイン!」
迫り来る鋭い真空の刃を、ぎりぎりでよけるまりも。そしてランスターに如意棒を向け、叫びで持って音声入力式の武器を作動させる。
「如意棒伸撃!」
圧縮されていた棒が、言葉とともに解き放たれ一気に延びる。ランスターに届くほどに!
「なにぃっ!!?」
間一髪、ぎりぎりでかわしたランスターは、その棒を逆にがっきと抱え込む。同時に、ブレイウェインの発射態勢に。
「しまった・・・動きが、とれねぇ!」
「これなら回避できまい!」
「な〜んて、な。」
僅かに汗を流しながらも、不適に笑うまりも。
「コウヘイ!」
「おう!うおおおおおおおおおおおお!!」
伸びた如意棒・・・それは、ランスターのいる上空だけにではなく、バクサイオーのいる地面へとも伸びていたのだ。
その棒で出来た細い道を、バクサイオーは一気に駆け上がる!
「くっ!」
「おわっとと!」
咄嗟に棒を投げ捨てるランスター。バランスを崩しかけたコウヘイだが・・・
「とりゃっ!負けるかぁぁ!」
棒から飛び移り、ランスターにしがみついた。
「ぬおっ!ええい、離れろ!」
バクサイオーを振り払おうと、ランスターは一気に加速した。連続宙返り、高Gバレルロールなど曲芸クラスの飛行技を繰り返す。
だが、コウヘイもしつこく食らいつく。最初にしがみついた脚からじわじわとのぼり、攻撃すべきポイントを探る。
「おのれっ・・・!やるな、バクサイオーとやら!だが私は、負けてやるわけにはいかんのだ!」
今度は急降下、地面すれすれまで接近してから超低空水平飛行、地面にバクサイオーをこすり付けるランスター。火花を散らし、バクサイオーの装甲が磨耗する。
「乗機を失い!中立なるがゆえに皇帝として祭り上げられたあの人に!俺は言葉を!思いを!笑顔を取り戻してやらねばならぬのだぁぁぁぁぁ!!」
高層ビル群に、バクサイオーをぶち当てる。連続した衝撃がコクピットまで揺さぶる中、コウヘイはひどく静かな気分であった。
それは悟りとは違い、あきらめとはむしろ正反対。戦うこの一瞬一瞬に悔いが無い、強いてならばそういえるか。
「俺も・・・同じだ。」
「何!?」
目を閉じれば、いつでも浮かぶ。バクサイオーで最初に戦った日、自分を優しく迎えた、温かい涙。
「俺はもう、あいつに悲しい涙は流させねぇ!お前と、その皇帝には悪いと思う。が、俺は死ぬわけには行かないんだぁぁぁぁ!!」
ついに、コウヘイはたどり着いた。ランスターの最大の武器、翼に手の届くところまで!
「おりゃあああああああ!!」
「何だとっ、しまった翼を!」
バクサイオーの拳が、ランスターの背中、翼の付け根の草稿を破りめり込む。同時に失速したランスターとバクサイオーが、もつれ合って墜落した。
ドドォォォォォォォォォォン!
激しく巻き起こる土煙。飛び散る破片、部品。
だがその中から、なおも二体は立ち上がった。
「まだまだ・・・この風のランスター、翼を失ったとて戦えなくなったわけではない!」
「こっちこそ、この程度なんともないぜっ!」
双方ダメージを受けながらも、闘志はまさに滾らんばかり。この戦いたとえどちらが勝ってもおかしくは無く、その結果に納得したであろう。
だが・・・・・・!
「クククククク・・・馬鹿どもめ・・・」
「なっ!?」
「誰でぇ!男の決闘に水さすやつは、ゆるさねぇぞ!」
腹立たしい侮蔑の匂いのする笑いを撒きながら、現れたのは、見たことも無いロボット。無表情な単眼の顔、重厚な、エネルギー量の大きさを思わせる機体だ。胸、それと両腕に輝く球体が付いているのが特徴だ。
それを見た途端、耐爬の表情が変わった。現れたのは、驚愕、ついで憎しみ。
「あれは・・・天のゼオライマー!」
耐爬の見立てに、トラキチも同意する。
「間違いない、アレは確かに八卦ロボ、天のゼオライマー・・・なぜ、ここに!?」
「何故って、敵の増援じゃ・・・」
「違う!」
まりもの声を、耐爬は弾き飛ばすように否定した。
「あれは、我が帝国より裏切り者木原マサキの手によって持ち出された、幽羅用の八卦ロボ!」
「裏切った・・・?それは心外だな。俺はこのゼオライマーを作り力を手に入れるため、貴様らを利用して、価値がなくなったから捨てたにすぎん。」
「ッ・・・貴様ぁぁぁ!」
逆上する耐爬。その気持ちは拳を交えたコウヘイにも痛いほど理解できた。なんとなればあのゼオライマーを盗んだ男・木原が、そんな己の野心でどれほどのものを奪ったかわかるから。
「許さん!貴様を引きずり出し叩き潰し、その機体帝に献上してくれる!」
がっとばかり、ランスターがゼオライマーに飛び掛る。だが、その背に翼はもはや無い。
「無茶だ、その機体じゃ!」
コウヘイがとめようとするが、その暇はゼオライマーは奪った。
「ふん・・・たとえ完全状態であろうが、貴様らごときこのゼオライマーの敵ではないわ!死ね!」
突き出された腕の球体が発光し、強力な光弾が打ち出される。
「ぬおっ!?」
かわそうとするランスターだが、やはり機動性が低下しよけきれず左足が消し飛ぶ。よろめき倒れるランスター。
「耐爬ぁ!」
「くくくくくくくっ!・・・消えてなくなれぇぇ!」
嗜虐的な木原の笑い声。そして、ゼオライマーの胸の球体から、大爆誕を思わせるほどの眼を焼く光が放たれる。
「幽羅・・・・・・・!!」
最後に、愛しい人の名を空気に刻んで。耐爬は、風のランスターごと完全に消滅した。
「あ・・・あ・・・・・・」
破片すらも残さない。研究所の観測機のデータは、ランスターを構成していた原子そのものが完全に消滅したことを示していた。
あまりにもあっけない消滅に、呆然とするコウヘイ。
「ふん・・・それにしても使えん。ガイアセイバーズを一機も始末できないとはな・・・」
その物言いに、コウヘイは怒りとともに一つの考えが浮かんだ。こいつは・・・
「・・・お前、李 飛孔とかの仲間か!?」
「ほう、よくわかったな。そのとおりだ。」
意外にも木原はあっさりと認めた。
「お前たちは一体なんだ!なぜこんなことをする!答えろ!」
しばしの無言、だがそれは笑いを押し殺しているのだと知れる嫌な間隔。
「言ってやろう。この世界には、「正義のヒーロー」なんてものは必要ない。」
「何だと!?」
「世界を粛清しようとする秘密組織も、無償で戦う正義の味方もな。あっていいのは、だらだらと兵器と人命を消費して続く戦いだけだ。」
「く・・・っの野郎言わせておけば!爆砕袈裟斬りチョーーーーップッ!」
殴りかかるコウヘイ。だが、バクサイオーの手刀はゼオライマーに届く前に空中で押しとどめられた。
「バリアーか!?」
ここまで近距離の物理攻撃を防げるとは、ガクセイバーの持つそれよりも優秀といわざるを得ない。
「ちぃ!加勢するぜコウヘイ!」
だが。
コウヘイやまりもたちの格闘技も、宣戦復帰したゲッPXやガクセイバーの兵器も、ゼオライマーのバリアを破ることは出来ない。そしてゼオライマーは自らは安全な壁の内側から、光弾を無限に乱射してくる。
「くっそぉ!、いったいどういう構造してるんだ!いんちきだぞこれは!」
「ふん、それが正しい「戦い」だ。損害を受けないように、有利な状況を作り出して一方的かつ確実に敵を叩く・・・勝つためには当然だろうに。」
木原のこの言葉に、牡丹が怒った。彼女は武闘家、正々堂々の戦いに命を賭けて生きるもの。
「・・・貴方の言うそれは「戦い」ではありません。ただの、破壊です!」
「別にそれでもかまわん。お前たちが破壊されるだけのことだ。この次元連結システムにな!」
「次元、連結システム・・・!?」
研究所では、分析データからその意味を理解した紫音が青くなっていた。
その意味するところは、別の高エネルギーを持つ次元とこの世界を接続し、そこから動力を得る・・・それは事実上、無限の力を得られるということ。
「そんな・・・!」
絶句する。無限に挑んで敗れた戦士の魂と、これからそれの攻撃を受ける仲間に。
「ゼオライマー、エネルギーを集中させています!」
シズクの報告も、まるで悲鳴のよう。
「これは、さっきランスターを消滅させた、素粒子分解攻撃です!それも、全方位型!」
「何〜〜〜〜!いかん!いかんぞ!」
トラキチも慌てる。だがその拍子に、計器が示す妙なデータに気づいた。
「ん?これは・・・次元歪曲が、二つ?」
しかももう片方のゆがみは、どんどん大きくなっていく。まるで何かが別の世界から現れようとしているかのように。
「・・・これは!」

その現象は、近くから見ると雷のように見えた。青い稲妻のような光が走ったからだ。だがそれは、稲妻ではない。空間に入った「裂け目」だ。
そして、その裂け目が一気に広がる。
ズシン!
足音を立ててロボットが現れ、ゼオライマーの前に立ちはだかる。その姿はある意味重厚で角ばったゼオライマーとは対照的、すらりとして均整の取れた、滑らかな意匠だ。ヘルメットをかぶったような頭部と、長く伸びた両肩のアーマー、全体の優美なスタイルにはそぐわない両手の鋭い三本の鉤爪と、まだ幾分ランスターとデザインに共通点のあったゼオライマーと違い、他に類のない独特のデザインだ。
そして、全体の印象から結構以前から稼動していた感じなのに、今世界にいるどのロボットよりも新型のように見える。
「馬鹿な・・・イクサーロボだと!ありえん、そんなはずは・・・」
驚愕するトラキチ。魔窟堂、姫夜木、木村もまた同じく。一方シズクうや紫音には、彼らが何故こうまで驚いているのかがわからない。
それは、過去の苦い記憶。
「あの時、イクサー1は確かに・・・」

「イクサーロボ・・・継承されているようだな・・・」
一方で、木原もまたこのロボットを知っているようなそぶりを見せる。それも今のイクサーロボについては、トラキチたちより詳しいほどに。

「お父様、スキャン終わりました。パイロットは一名、コクピットは頭部にある模様です。」
紫音の報告。それを元にさらに姫夜木たちが考える。
「パートナーは無しか。パイロットの詳しいデータはわかるかね?」
「え?ええ・・・一応、人間の男の人みたいなんですが・・・」
「ですがじゃと?」
魔窟堂が問い返す。
「その、男の人の体、たぶん右手の部分に妙なエネルギー反応が。それにあのロボットが呼応しているようにも見えるんですけど・・・」
「むう・・・!」
唸りながらも、老人の脳はほぼそれを理解していた。かつて、星から来た女の置き土産。だがそれは・・・
(おそらくは、あの少年に運命を背負わせてしまっただろう。だが・・・しかたがないのか・・・)

イクサーロボ。そう呼ばれた機体は、拳法の達人のような滑らかな姿勢で、鋭い爪をゼオライマーに向ける。
その動きに、コウヘイは不意に商店街の事件を思い出していた。この動きは、あの時見た。そしてそれが、渚たちから聞いた話と結びつく。
「・・・勇二か!勇二なんだな!」
横顔だけ見せて、僅かに頷くイクサーロボ。そんな控えめな動作の端々も、確かに友人の日ごろの動作に似ている。
牡丹も、何かしら気が付いた様子である。
「事情を説明したいところだが・・・あいにくそれどころではない。」
そうぶっきらぼうに言い置くと、勇二はゼオライマーに向けて歩を進めた。
「魔神勇二・・・李のやつがしくじったせいで俺に番がめぐってきた。丁度いい、まとめて消し飛べ。」
あくまで見下す態度をとる木原の言葉に、勇二は怒り心頭に発した。それまでのこと・・・ここでたった今起こったこと・・・それら全てが、炎と化す。
「お前などにやられるものか!戦いを汚し、戦士の魂をすら侮辱する貴様らなどに!・・・このイクサーの力のせいで俺はお前たちに狙われ、家族を、全てを失った・・・だが今は!この力でお前のような下衆を叩きのめせる!!いくぞ!!」
「ふん・・・」
勇二乗れ朴の気合を聞いて尚余裕の態度を取る木原だったが、次の瞬間それはうせた。
光弾を放とうと思った瞬間、イクサーロボは既に至近距離まで来ていたのだ。
「ぬあああ!?」
「いくぞっ!正拳! 肘打ち! 裏拳! とりゃぁっ!」
まさに流れるような動き、ベデムや李を叩きのめしたときそのままの動きを、イクサーロボは再現して見せた。爆砕姫とてあそこまでの動作に追随しうるかどうかは難しいほどだ。
ガガガガガガガガガガガガ!
だが、その拳すらもゼオライマーのバリアは弾く。
「ふん・・・無駄だ!貴様のしていることなど、所詮無駄に過ぎん!」
「甘い!」
確かに木原の言うとおり一軒無駄な攻撃を繰り返しながら、しかし勇二はきっぱりと言い切った。
「この世には、無敵も絶対も存在しない!いかなる物とて・・・歯向かい爪を立てられぬものは無い!たとえエネルギーが無尽蔵でも、それを支える体は物質で出来ているもの!出力最大を持続して、いつまで持つかな!」
「何ぃ・・・・・」
と、突然小さな爆発がゼオライマーの装甲の継ぎ目で起こり、同時にバリアが一瞬ゆらいだ。
「しまっ・・・」
「今だ!閃真流人応派奥義!!」
「やはり・・・」
頷く牡丹。最初に見たときから、自分のわざと勇二のそれに類似点を感じていたらしい。
「飛翔竜極波ぁぁぁぁぁぁ!!!」
ズガガガガガガガガ、ガガァン!!!!
咄嗟に受け止めようとした手足を引きちぎり、勇二の一撃はゼオライマーのボディを吹き飛ばした。
「おおっ!」
「やった〜!」
ギャラリーから上がる歓声。
だが、勇二の表情は以前険しい。
(まだだ・・・まだこの男の気は生きている!だが、このぼろぼろになった機体でどうする気だ・・・!?)
ぐごごごごごご・・・・
両腕を損傷し、装甲版も大半が剥離したゼオライマーが起き上がる。だが、もはやふらふらといった感じだ。
「へへん!どうだ、まいったか!」
「あんたがやったんじゃないでしょ」
自分がやったわけでもないのにはしゃぐまりも。思わず周囲はつっこみを入れそうになるほど余裕が出来ていたが、それは間違いだった。
「くっくっくっ・・・馬鹿どもめ、ゼオライマーの力、次元連結システムの力ははこんなものではないぞっ!!人工引力・分子結合システム作動!」
「なにぃぃぃぃっ!!」
その時目前で起こった光景は、あまりにとんでもなくてあいた口がふさがらないほどだった。もげた腕や吹き飛んだ装甲版が浮き上がり、また元のようにくっついたのだ。完全に自己再生し、一体化する。
「い、いんちきだ〜〜〜〜!」
思わず叫ぶコウヘイ。
「くっ・・・」
さすがに、勇二もあせりの色を浮かべる。
「ふははははははは!貴様らごとき操り人形が、舞台と脚本を決める存在である我々に勝てるとでも思ったか!」
「ここまでか・・・?」

「大馬鹿者ぉ!!!!!!」

唐突に、戦場を一喝が支配した。コウヘイ達はそれまで各ロボットに積まれている無線機で話していたのだが・・・これは違う。ロボットのコクピットに届くほどの「声」だ。
「なっ、何だ!誰だ!何処にいる!」
ゼオライマーの単眼がせわしなく動いて、声の主を探す。
「あ、ああああ〜〜〜〜!」
ゼオライマー以外のロボットのパイロット、そこからの画像を見ている研究所の職員、皆が声をそろえる。だが、ゼオライマーには相手が見えない。
その内木原は、皆の視線がある一点に集中していることに気が付いた。そう、それは・・・
「ゼオライマーの頭の上に・・・」
「人が立ってるっ!?」
そう。その男は・・・声を発するまで誰にも気配を悟らせることなく、動き回る巨大ロボット・ゼオライマーの頭の上にすっくと立っていたのだ!
その容姿は。厚い胸板、がっしりした型を持つ立派な体格を、黒を基調とした軍服のような服に包み、首には白いマフラーを靡かせる。その顔は、咆える猛虎を象った精巧なマスクに覆われ見えないが、鋭く、だが同時に暑さを感じさせる視線がその両眼から放たれている。
「あ、貴方は・・・」
「ガイアセイバーズの諸君には始めてお目にかかるな。私の名はタイガージョー。」
先ほどの一喝とは打って変わって、静かな、包容力を感じさせる声で名乗る。
「影山コウヘイ君。猿藤吾郎君。」
「は、はい!」
「お、押忍!」
なぜかコクピットの中で気を付けをしてしまう二人。無理も無いほどに、その虎頭の男からは気迫と威厳があふれていた。
「愛する人を守るため、己の身すらなげうつもの・・・戦いの中で敵と心をかわし、戦いの真の意義を知り、正々堂々臨むもの・・・その意気やよし!」
「はいっ!」
「だが・・・勇二よ!お前は体術には勝れるとも、心・技・体のうち心は、まだ・・・未熟っ!!」
くわっ、とタイガージョーの眼が勇二を射すくめる。
「この世には、無敵も絶対も存在しない。いかなる物とて歯向かい爪を立てられぬものは無い。・・・たしかにそうだ。だが!真の漢たるもの、爪を立てるだけでは不十分!己の譲れぬもののため、守るべきもののため、戦い勝ち抜き、守り抜いてこそ真の漢というものだっ!」
「く・・・。だがタイガージョー。全てを失った俺に、守るべきものなど・・・」
「馬鹿者!」
「!!」
びくっ、と身をすくめる勇二。一喝だけでそれほどの威力があったが、それだけではない。
「ふむ、普段ならここで「漢」として拳で語ってやるところだが、今回はよかろう。これからなのだからな。命ある限り、魂ある限り、人は決して人であることを終わることは無い。勇二よ、これからお前はガイアセイバーズと行動をともにし、学び、・・・生きるがいい。」
・・・・・・
「ええい、いつまで俺のゼオライマーの上に乗っている!」
説教の間中踏み台にされていた木原マサキが切れた。
「ふん・・・貴様ごとき小物が、点を名乗るとは笑わせる。私の足下で反省しておれっ!!」
「なんだとっ!」
激昂したマサキは、いきなりゼオライマーの手でタイガージョーを潰そうとした。
「ふっ、笑止!」
だがその腕を軽くタイガージョーはかわした。長い跳躍をし空中を舞いながら、タイガージョーは勇二に向けて叫んだ。
「よいか!力とは、闇雲に振るえばよいものではない!相手の動き、呼吸、急所を見極める「技」があってこそ、初めてそれは役に立つのだっ!」
そういい終えると、空中で身をひねり、巨大なゼオライマーと相対する。
「はあああああああっ!」
「!?」
勇二のそれより数十倍素早く重い乱舞、一瞬にしてバリアが破れる。
「閃真流人応派奥義!閃斧!!破砕陣!!!」
炸裂!
タイガージョーの素手の攻撃は、ゼオライマーの胸の球体を捕らえ、そして打ち砕いた。
「おおおおおおおっ!?!?!?」
何がおきたのかすらわからないといった様子で、今度こそ砕け散るゼオライマー。
「では、さらば!」
そして、消えるタイガージョー。
「す・・・すげぇ・・・」
跡に残されたもの。皆の心に、一つずつ。そして、魔神勇二。

「耐爬・・・ああ、耐爬・・・!」
鉄鋼龍基地。幽羅帝はただ愛した男の死を、独りで嘆くことしか出来ない。
「私は、鉄鋼竜の皇帝・・・あなただけに、貴方だけに生きて帰ってとは、言えなかった・・・!」
泣き伏す幽羅。それを見つめる視点が、一つ。それに気づいた幽羅は、慌ててその正体を探る。
「誰、か!」
「妾だ。・・・お前も、哀れな女だな。」
いかなる手段を用いてか警戒厳重な基地に軽々と忍び込んできたのは、両柄頭と言われる昔の満州人女性がした、髪の毛を左右で結い上げる格好をした女だ。
だが服装は中華皇帝じみた幽羅帝と違い、まるですずらんの花をより合わせたような、華美であると同時にフィットして動き安そうな格好をしている。
鋭いまなざしとどこか高貴な、それでいて不思議と年齢はよくわからない。ひどく大人びているような、それでいて幼子のような印象も垣間見える。あるいはそれは、彼女の髪のせいかもしれない。阿寒湖まりもに類似したそれは、この世にあらざる薄桃色。
深い暗黒に通じる、純粋無垢な仙人。そんなわけのわからない、支離滅裂な印象。それは突出していて、いびつで、危うげな美。
「鈴麗蘭・・・中国暗黒街を束ねる鈴家党首にして最強の殺し屋が、何のようだ?仕事を頼んだ覚えは無いぞ。」
きっとにらみつける幽羅帝に、鈴麗蘭は心配と玩弄、二色が混ざった視線を送る。
「やはり、お前にその皇帝の装束は似合わぬよ。せいぜい泣くのだな、無力な。」
「何も無い・・・から、お前には理解できないのだろうな、麗蘭。」
無力な女、空っぽの女。互いをそう評価した二人の女は、僅かに双方に共通の色を認めてため息をつく。
「まあ、よい。お前が悲しむ半分は、消えてなくなることを教えに来てやっただけだ。昔・・・」
そういうと同時に、麗蘭の背中からまるで天使のような純白の鳥の羽が生えた。だが麗蘭は、その羽が厭わしいものであると声色で告げる。
「この羽が生えるまで、共にすごしたよしみだ。」
だが、幽羅帝は麗蘭のその言葉に覚えが無いらしく、怪訝な顔をする。
「何・・・どういうことだ?」
「わからずともいい。いや、真実などわからないほうが、知らずに死ねるほうが幸せなのだ。」
また、不思議な笑い。木原マサキや李飛孔のようないやらしい笑いではない。むしろ、さびしげに見えることすらある。
「ガイアセイバーズを滅ぼせとは、また面白い依頼がきたものよ。」
そう端的に、あくまで自分本位に告げると、麗蘭は去った。いや、向かった。日本へ。

宇宙のどこか、遠い果て。
「入るぞ。」
ノックも無く、確認も無く。傲慢に鋭い人相のサイボーグの男ギル=バーグはその扉を開けた。それは大船長として当然の行為だった。
「勝手にしろ。」
だが、部屋の中から帰ってきたのは、さらなる傲慢な返事。まるで、そんな肩書きなど何の意味も無いとでも言うかのように。
苦々しい顔をするギル。だが、とうに慣れたような反応でもある。僅かな駆動音と共にサイボーグ化された隻眼が部屋を見回すが、探す人影は見つからない。
いや、いた。薄暗いがゆえに実際より大分狭く見える部屋の片隅、明かりもつけていない浴室から出てきた。
「一体、なんの用だ?」
気だるげに、女は問う。そう、女。
赤く癖の無い、滑らかなストレートのロングヘア。そこから突き出た、妖精のようにとがった長い耳。ほっそりとした濡れた裸身には、一糸も纏っていない。
全体的にははかなげに見えるはずのそれら身体的特徴を裏切るのは、その美貌。より正確に言うならばすっと通った鼻筋と、きれいに子を描く眉に縁取られた、その目。抜き身の諸刃、それも鍔も握りも刃で出来た、触ることすら出来ない狂った剣の輝きをもつ、鋭い目。
それゆえに、相手のそんな姿を見ても、ギルは特に反応を見せない。赤毛の女も、それを知っているからこんな姿をしているのだろう。
「次の目標が決まった。地球だ。」
単刀直入に、ギルは言った。相手の驚きを期待して、ギルの口元には僅かな笑みが宿る。
そう、あの「思い出の土地」なら。
だが。
「まだあの女の尻を追っているのか、ギル=バーグ。そんなにミアに虐めてもらいたいのか?」
帰ってきたのは、手ひどい嘲弄。完全にギルを見下した笑いが、暗い部屋にゆるゆると流れる。
「!!」
瞬時に怒りに駆られたギルは、いきなり右手の鋭い爪を繰り出した。サイボーグ化された体の放つ一撃は、戦闘用の生物兵器であろうとも反応すら出来ずに頭を砕かれただろう。
だが赤毛の女はそれを軽くさばくと、ギルの太い腕をひねり上げて、首筋に手から発生させたレーザーの刃を突きつけた。
僅か、一瞬の出来事。
「むぅ・・・っ!!」
「ふん・・・馬鹿馬鹿しい。つまらん。」
唸るギルに呟くと、女は出し抜けにレーザーの刃を消した。反射的に腕を振るったギルに弾き飛ばされ壁に激突するが、いつでも殺せることを示した女にはどうでもいいらしく、苦痛の表情は見せない。
見上げているのに、見下しているような、複雑な視線。それを維持しながら、ゆるゆると女は立ち上がった。
しばらくのにらみ合い。再び彼女は笑ったが、それはひどく退廃的な、虚無の匂いがする笑いだった。
「私には、もうどうでもいいことだ。・・・私は、イクサー2。イクサー1を倒すためだけに作られた。ただ、それだけ。」
そういうとひらりと身を翻し、イクサー2はベッドに腰掛けた。
そのベッドには先客がいた。死んでいるのか、眠っているのか。身じろぎもせず、朽ち果てもせず。ただその最後の日の姿のまま眠り続ける、黄金色の髪を持つ、とがった耳の女・・・彼女の姉、イクサー1。
物言わぬ姉の隣に寝そべり、裸身を絡めるように抱きながら、眠そうに、虚ろに、イクサー2は笑った。
「その私が、今更何をするというのだ?あの星で。私にはもう、何も無い・・・」
静かに、そのまま目を閉じようとするイクサー2。
「あの星で、イクサーロボが戦っているとしてもか?」
「・・・何?」
その言葉で、今度こそイクサー2の気を引くことに成功したギルは、満足げに笑みを浮かべる。一方イクサー2は、それにも気づかないくらいの勢いで跳ね起きた。
「どういう、ことだ?」
「イクサー1め、地球人のうちにシンクロ出来るやつが生まれたら、そいつにロボの支配権が渡るように細工していたらしい。つまり、あの女の半分は今も生きている、ということだ。」
どうだ、とばかりにイクサー2を見たギルは凍りついた。一瞬で、これだけの言葉で、イクサー2の雰囲気は完全に変わっていた。
絶対零度の、殺気の炎。
「ふ、ふふふ・・・・そうか、そうか・・・・・・ははっ、それはいい、ははっ、あ〜〜〜〜っはっはっはっはっはっはっはっはっはっは!」
解き放たれた飢狼の哄笑が、巨大な竜王船に響き渡った。

次回予告
コウヘイ
憂国機団、宇宙人、そして俺たちガイアセイバーズ。戦いは、その三つの間で複雑ながらも、眼に見える形で行われているはずだった。
まりも
だが、俺たちは知らなかった。それが舞台の上で演じられる、かりそめの戦いだったことに。
勇二
雪山の戦い。その中で明かされはじめる、遠い日、始まりの因縁。
トラキチ
次回、「雪山大脱走VS地上最強の居候」!
タイガージョー
なんだそのタイトルはぁ!!
トラキチ
ぶげらはっ!(鉄拳を見舞われた)

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