・・・・・・・・。

ここは、どこだろう。

真っ暗で何も見えない。

わたしは一人で闇の中を歩いている。

どうしてだろう?

わたしは、前も後ろも、右も左もわからない闇の中を、一人で歩かなくてはならないことになっている。

わたしはすごく不安になり、泣きだしそうになった。

ふいに、目の前に白い光が現れた。

その光の中にわたしの父と母がいる。

わたしは走った。

父と母のもとへ。

でも、どんなに走っても追いつかない。追いつけない。

すぐそこにいるはずなのに・・・

わたしは一生懸命走った。何度も父と母の名を叫びながら・・・

でも、追いつけない。

やがて、光は消えた。

わたしは、また不安になり、ついに泣きだした。

すると、今度はわたしの背後から光が現れた。

その光の中には、シスターがいた。

闇の中、遠近感さえわからない。

わたしはシスターに向かい必死に走った。

追いつけない。なぜか追いつけない。

やがて、光はシスターと共に闇の中へと消え去った。

わたしはとうとう力尽きて、その場に座り込んだ。

もう歩きたくない。

どうしてわたしは歩くことを止めてはいけないんだろう・・・。

じっと座り込んでいたわたしは、自分の体が、足元から闇の中へと引きずられていることに気がついた。

わたしの体は、どんどんと闇の中へと沈んでいく。

わたしは必死で助けを呼ぼうとした。が、声がでない。

どうして・・・声が、声がでないの?

すでに闇は、わたしの胸の辺りまで来ていた。

誰か・・・

誰か助けて・・・!

わたしがすべてに絶望しそうになったとき、

わたしの目の前に光が現れた。

その光の中には、彼がいた。

彼はわたしのそばまで来ると、かがみこんで、両手を差し延べてきた。

わたしは、さっきのように、寸前で光が、彼が、消え失せてしまうんじゃないかと、ビクビクしながら、その手を握った。

彼の手は、確かにそこに存在した。

そして、暖かかった。

彼はわたしを闇の中から引き上げてくれた。

「ありがとう」

声がでた。でなかったはずの声がでた。

声が・・・

 
「パオラちゃん!パオラちゃん!」
「・・・・・・!?」
気がつくとパオラは、一室のベッドの上にいた。
窓から射し込む朝日に照らされて、眩しそうに目を細める。
「ひどくうなされていたわよ・・・大丈夫?」
シズクの気遣いに、パオラは肯定する。
「起きる寸前だけ、一瞬笑ったようにも見えたんだけど、すごい汗かいてたから起こしたのよ。ちょうど、いいわ。着替え持ってきたの。はい」
パオラはシズクから、着替えを受け取った。
「それじゃあ、わたしは仕事があるから。また来るね」
そう言い残し、シズクは部屋をでた。
「・・・・・」
パオラがあの夢を見るのは、これで三回目だった。
そう、異星人の攻撃でシスターを亡くし、この研究所に連れて来られた時から、ずっとだ。
パオラはあの夢が気になって仕方がなかった。
会いたい・・・彼に、会いたい。

 
コウヘイが修行に出て、もう二週間がたとうとしていた。

第五話「天に日輪輝く限り」


「来おったか、異星人どもめ・・・」
引き締まった表情が、ディスプレイの薄明かりに照らし出される。前回憂国機団相手の戦闘で自爆を遂げながらも、強化改造を受けてよみがえった64式ロボ。
その操縦者2名(車長兼操縦手一人、通信手兼射撃手一人)、ともに気を引き締める。
(・・・そう簡単に負けはせん)
前回に比べ武装を強化した64式ロボ改のほかに、多脚式自走機動光線砲「マーク」十二台、多砲身200ミリ砲を主砲とする空中自衛艦「栄光丸」、大型自由電子レーザー砲と新型質量弾頭超高速ミサイルで武装した空中要塞「富士三号」まで持ち出している。
それに加えて通常戦力とはいえ、練馬の第一機甲師団・習志野の第一空挺団と、事実上関東の全戦力を集中している。
「敵は!?」
「宇宙悪魔帝国です。箱根山中に降下したのち、陸路で東京進入を目指す模様!兵力は、量産型の半人型戦闘機を直衛に、大型宇宙ビーストが十数体!これとは別に、静岡県・富士一帯に人型戦闘機の部隊が分散効果!富士教導団と自衛艦隊で対空戦闘にあたるもようです!」
「っち、豪勢な話だ。前回葛飾に単体降下したやつは、ただの探りだったか・・・」
正直つらい。宇宙人に比べて圧倒的に劣勢な技術力は、数や士気や作戦で埋まるレベルを、すでに超越している。
それでも、彼らは退くわけにはいかなかった。
国民を守り抜く。それが彼らの、自衛隊の、命を捨ててでも成し遂げねばならない使命だった。たとえ何度滅びても、決して変えられない防人の宿命だった。
「偵察隊より報告!目標接近!」
伝令の叫び。戦車のキャタピラがきしみ、空中戦艦が唸りを上げ、マークが特徴たる長い足をがちゃつかせて、配置に付いた。
「さぁて・・・おっぱじめますか!」
パチッ!
軽快に入れられたスイッチは、兵器のものではない。せめてもの士気高揚のために、隊長が個人的に持ち込んだものだ。
ぱりぱり、とやや古いテープが鳴り、しばらくしてスピーカーから勇壮なマーチが流れた。
ぱぱぱぱ、ぱーんぱーんぱーんぱーんぱぱぱぱぱん!ぱぱぱーんぱーんぱーんぱぱぱーんぱーんぱぱぱぱぱーんぱーんぱーんぱぱぱんぱんぱぱぱ!
伊福部明作曲・怪獣大戦争マーチ。
宇宙人の襲来などという特撮映画じみた現状に対する、せめてもの反撃。
そして、滅茶苦茶にやられながらもいつも最後は怪獣同士の戦いや新兵器や正義の味方に助けられ、侵略者を撃退する彼らへの、憧れ。
「目標補足!」
「撃てぇ!」




影山研究所。
「そっちにも現れたのか!?」
「うむ。どうやら我々を各個撃破するつもりのようじゃな。」
映像の呉石博士の顔は厳しい。
何しろ今回の敵は半端ではない。上に、稼動するロボットは、それぞれの部隊に一体ずつ。正確に言えば宇宙ロボット研究所には試作品のロボット「クイーンフェアリー」があるが、実戦に耐えるほどの能力は無い。
それに対して敵は、潤沢な兵力を両方に対してたっぷると振り分けている。
「いや、各個撃破というほどではないだろう。そちらは足止め・・・狙いは修理途中のロボットと研究施設そのもの、といったところか?」
「ありうるな。だがそうなるとまずい。ゲッP一体では守ることは出来ても突破は無理、クイーンフェアリーでは戦闘能力に不安がある。」
「博士!」
画面の向こうで、呉石博士に声がかけられる。ゲッP−X空戦形態、ゲッP1パイロットの百舌鳥恵一だ。
「宇宙悪魔帝国が来たぜ!」
「むう、バリアー発動!パリンと割れてしまうまでにゲッPマシンの出撃準備を整えるんじゃ!・・・そういうわけで、こちらは戦闘状態に入る。」
「・・・検討を、祈る」
慌てて指示を飛ばすと、手早くトラキチに別れを告げた呉石博士。

宇宙ロボット研究所上空を、宇宙悪魔帝国量産型兵器・・・ザッキュンが覆いつくす。その数は、100を下るまい。
「フフッ、まずは弱いほうを徹底的にか・・・ヒッサーにしては上出来の作戦だ。さて・・・」
にやりと笑い、宇宙悪魔帝国もう一人の将軍・ジャーグは、仮面の下の目を愉快げに細める。
「相手になってもらおうか!ゲッP−X!」
瞬間、将軍専用の赤く塗られたザッキュンが、圧倒的高速で飛び出した!

ずしん、ずしん、ずしん・・・
地を揺らし、歩みゆく機械仕掛けの巨獣。
「くくく・・・少しはやってくれたようだな、地球人ども・・・だが所詮我ら宇宙悪魔帝国の敵ではない!」
美しいが、派手なメイクと髑髏をかたどったティアラのせいで酷く険のある表情に見える女性・・・宇宙悪魔帝国ヒッサー将軍は、司令室で嗜虐的な笑みを浮かべた。
今回は、防衛軍も健闘した。直援にあたっていた半人型戦闘機「ザッキュン」タイプ、その全機を撃墜したのだ。
だが、それよりもはるかに装甲・攻撃力共に超越する主力兵器・巨大獣型兵器宇宙ビーストの大軍の前には、その火力はまったくの無力だった。なんとか一部戦力は離脱に成功したものの、事実上これで関東の守りは空になった。
もはや宇宙悪魔帝国の東京蹂躙を停止させられるものはない。
そう考えるヒッサー、その鋭いまなざしが僅かに潜められる。
「なんだ、あいつは?」
たしかに、もはや宇宙悪魔帝国の東京蹂躙を停止させられるものはなかった。・・・ただ一体の、鋼鉄の機神を除いては。

大型トラックの荷台の上で、デッキアップされたバクサイオーはそれまでの胴・手・足と分解された状態からくみ上げられた。
極めてヒーローロボットっぽくない移動方式だが、l今回は修理するだけで精一杯だった。
横倒しの上体から持ち上げられ、徐々に高くなるコクピット。
その中でコウヘイは出撃前、研究所でのことを思い出していた。


「シズクさん。今の間にパオラちゃんに会っておきたいんだけど」
コウヘイの願いを。パオラは快諾した。
「パオラちゃんなら空き部屋だった部屋で休んでいるわ」
「ありがとう」
コウヘイはさっそくパオラのいる部屋に行き、ドアをノックした。
コンコン
「パオラちゃん、俺、コウヘイ。ちょっと入るよ」
ドアの向こうには、ベッドから起き上がるパオラの姿があった。
「ただいま」
パオラはニコっと少し微笑んだ。
コウヘイには、それが『おかえり』という意味なのだとわかった。
「ケガは大丈夫?軽傷だったみたいだけど、一応ちゃんと病院に行った?」
パオラは首を縦に振った。
「そうか、よかった。あのクソオヤジにまかせといたもんだから、心配でさ、変なことされなかったか?」
コウヘイが冗談気味に尋ねた。
こくり、とまたパオラの首が縦に振られる。顔には僅かながら、微笑が浮かんでいる。
「うちのオヤジ変な奴だろ?いつもアニメばっかり見ててさ、いつ仕事してるのかわからないし、コロッケにマヨネーズかけて食うし、ホント変な奴なんだよな。ハハハ」
パオラがクスっと笑うの見てコウヘイは、次に言おうとした言葉をためらった。
(言わなきゃな・・・戦いに行く前に、あのことを・・・)
「・・・・・・あのさ、パオラちゃん」
コウヘイは少し悲しそうな顔でパオラの方を見た。
パオラにはそのコウヘイの表情で、次にコウヘイが言おうとしていることが予想できた。
「・・・クレアさんのことは、オヤジから聞いた?」
静かに、頷くパオラ。
「そうか・・・」
コウヘイにはパオラを励ます言葉が出てこなかった。
二人の間で少しの沈黙が流れた時、
「コウヘイ!出発の準備が出来た。行くぞ」
ドアの向こうからアンドーの声がした。
「はい。今、行きます」
コウヘイは視線をパオラにもどし、少しだけ、ほんの少しだけ微笑みながら言った。
「パオラちゃん・・・俺、今から異星人と戦いに行くよ。でも、安心しててくれ、絶対帰ってくる。負けたって帰ってくる」
パオラは心配そうな表情でコウヘイを見ている。
「・・・・じゃあ、行ってくるよ」
「・・・・・!」
パオラがコウヘイの服をつかんだ。震えるように、首が何度も横に振られる。声を出せない、代わりに頬を伝う涙。
「パオラ・・・ちゃん」
しばし逡巡していたコウヘイは、己の迷い諸共断ち切るようにきっぱりといった。
「・・・・・・。ヒーロー大原則ひとーつ!ヒーローは愛すべき者を守らなくてはいけない!」
「!?」
驚いて、手を離すパオラ。すがすがしいとさえいえる表情で、コウヘイは続ける。
「俺の師匠の教えなんだ、これ。人は自分のために戦うより人(他人)のために戦うほうが大きな力がだせる。だから一番大切な人のためなら一番大きな力がだせる。そして俺の力を、キミを守る力を出せるのはバクサイオーに乗って戦うことなんだ!シスターの代わりってわけじゃあないけど、俺がキミを守る!だからキミは一生懸命生きてくれ、クレアさんのためにも・・・今、キミにできることはクレアさんよりも、一日でも長く生きてあげることだよ。天国で心配させないように・・・」
そう言い、部屋を出たコウヘイをパオラは必死で追いかけようとした。
「ついて来ちゃだめだ!キミはそこで待っててくれ。・・・・・うまい肉ジャガでも作ってさ」


「コウヘイ!バクサイオーの準備が整ったぞ」
父の声が、回想を打ち切った。
「よし、行って来い!コウヘイ」
「よっしゃぁぁぁ、一丁やるか!」
ばしん、と拳を掌に打ち合わせるコウヘイ。
「コウヘイ、いざという時のためにちゃんと脱出装置をつけてある。その右下のレバーだ」
「そうか、オヤジにしては親切設計だな」
コウヘイは仰向けになっているバクサイオーの胸から、コクピットに乗り込んだ。
トラキチ達がバクサイオーから離れたのを確認したコウヘイは、スー、ハー、と一度大きく深呼吸をした後、コクピットのハッチを閉め、モニターを見る。
「さて、まずは立たないとな・・・」
ゴゴゴゴゴ・・・
「・・・・・」
パオラが心配そうにみつめる先には、2本の足でズシリと大地に立つ鋼鉄の巨人の姿があった。
「さあ行くぜ!バクサイ・ゴォォォォ!!!」
ちなみにそのころ。
「あの、研究長・・・・」
「なんだ?雨宮くん」
「たしか脱出装置は、まだ修理中でしたよ」
「・・・・・・・・・なにぃぃ!それを早く言わんかぁぁぁぁ!」
「だって、多少壊れてたって平気って言ったじゃないですか!」
「そんなこと言ったっけ?」
「言いました」
「・・・・・・・・・」
「ま、いっか・・・・」

果たしてコウヘイの運命は!?

「それでは!」
バクサイオーを起動させ、コウヘイは、声を張り上げた。
「天知る、地知る、人が知る!天に日輪が輝く限り、この世に悪は栄えない!鋼鉄機神バクサイオー、正義に燃えてここに参上!」
バキシィィィィィィン!
両眼が輝き、スパークが飛ぶ。
バクサイオーは拳を前に突きだし、ポーズをキメた。
ヒッサーの紫のルージュが引かれた唇が凄絶にゆがむ。
「面白い・・・行け!そのガラクタごと叩き潰してやれ!」
髑髏をかたどった杖が、振り下ろされる。

と同時に、宇宙ビーストの群が一斉に砲火を放った。

「コウヘイ!危ない!」
「うわっ!?」
かろうじてかわすバクサイオー。
「あ、危ねえ、危ねえ・・・」
「ばかもん!油断するな!」
モニターにトラキチの顔が映った。さらにアンドー、シズクと順に映し出される。
「オヤジ!武器は!?」
「ない!」
「・・・へ?」
あまりといえばあまりの即答ぶりに、コウヘイは一瞬石になった。
「オプション装備開発の計画があるとはいえ、バクサイオーは基本的に格闘専用機だ。言ってみれば、お前の技量と努力と根性、それが武器だっ!」
「むちゃくちゃ言うな!」
「何が無茶だ!かの有名な仮面ライダーだって、武器なぞ無くともヒーローとして立派に戦ったではないか!」
「最近のやつは武器使うぞ・・・」
「小さいことは気にするな!俺としたあの特訓を思い出せ!そうすれば道は開ける!」
コウヘイは精神を集中し、気を整え、改めて特訓の日々を思い出した。
・・・きめ台詞と発進の掛け声を考案した。
・・・叫びを習得するため滑舌と肺活量を鍛えた。
・・・ヒーローの心構えを学ぶためと称して、今話題のロボットアニメ「南国防衛指令!」を見た。魔窟堂がビデオに撮っていた全話。かなり時間がかかった。
「駄目じゃん、おい!」
思わず叫んだ瞬間、敵大型ビーストの攻撃が右腕を直撃、肘から下がちぎれとんだ。
「くっそ〜、こうなったら、殴って殴って殴りぬいてやる!」
武装が無い以上、それしか手は無い。コウヘイは気合とともにバクサイオーを突っ込ませた。
「オオオオオオ!」
再びビースト軍団の兵器が火を噴く。
「バカ!まっすぐ突っ込むやつがあるか!狙い撃ちにされるぞ!」
「たしかに・・・」
カッ!
閃光が放たれる。
「わわ!」
ドゴォォォン!
バクサイオーは転ぶように右に大きく転倒し、かろうじて閃光をかわした。
「ちくしょー、これじゃあ近づけねえ。どうすりゃいいんだ・・・」
「コウヘイ!考えるな、感じるんだ!さすれば道は開かれる(多分)」
「そ、そうか、よーし!行けぇぇぇぇ!」
バクサイオーは再び宇宙ビーストの群に向かい突っ込んだ。
「オオオオオオ!」
謎の物体が光輝く。
「やっぱ、ムリ!」
カッ!
閃光が放たれる。
ドゴォォン!
またもや転ぶようにかわしたバクサイオーだったが、コウヘイの方はすでにフラフラだった。
ザザザ〜・・・
いつの間にか、雨が降っている。が、今のコウヘイには雨に気づく余裕もなかった。
「コウヘイさん、来ますよ!」
カッ!

「おわっ!」

ドゴォォォン!
牡丹の声のおかげで、なんとかギリギリのところでかわせたバクサイオーだった。
「はぁ、はぁ、危なかった〜、間一髪だったぜ」
「コウヘイ、もっとうまくかわせねぇのか!避けるたびに転んでたら反撃もできねえぞ!?」
「コウヘイ!機械に使われたいのか、機械を使いたいのか、どっちだ?」
「やれやれ、見てられないねぇ」
「コウヘイさん!次の攻撃が来ます!」
ギャラリーが多いので、声も多い。岡目八目多くして船山に登る(なんだそりゃ)というとおり、コウヘイにしてみればうるさいだけである。
「あぁー!もう、コウヘイコウヘイってうるさいなぁ!わかってるよ、もう」

カッ!

宇宙ビーストの群から閃光が放たれる。
「こなくそぉぉぉ!よけてくれぇぇぇ!」
ドゴォォォォン!
バクサイオーはぎこちなく体をひねり閃光を回避した。
「まったく、危なっかしくて見ておれん」
「でも、接近できないままだと、いつかやられちゃいますよ・・・」
「うむ、なんとかせんと・・・」
「はぁ、はぁ、はぁ・・・なんとか、かわせた・・・」
「やばいな、コウヘイのジャスティが下がってきている。このままじゃ、次の攻撃は避けきれんぞ」

 
・・・・・・・」
心配そうにみつめる瞳の中が白く光った。
次の攻撃だ。
カッ!
パオラは閃光の眩しさと、怖さに、おもわず目をつぶった。
ドゴォォォン!
パオラが目を開いた先には、敵の閃光をモロに受けたバクサイオーの姿があった。
「うわぁぁぁあぁぁあ!」
モニターの画面が大きく揺れ、コウヘイの身体がぐらりとコクピットごと傾く。ほとんど振り回されるような感覚でバクサイオーは地面に崩れ落ちた。シートベルトをしていたとはいえ、衝撃は激しく、コウヘイは気を失った。
「コウヘイ!コウヘイ!大丈夫か!?コウヘーイ!」
トラキチの声がモニターごしに響き渡るが、コウヘイには聞こえなかった。
パオラはおもわずバクサイオーの方へ走りだした。
「あ!?パオラちゃん!?」
パオラに気付いたシズクがとっさにパオラの腕をつかんだ。
「ダメよ、これ以上近づいたら危険よ!それより、なんでここにいるの?研究所で待ってなさいって言ったじゃない」
シズクが怒るように言ったが、パオラは止まろうとしない。パオラの目には涙が溢れている。
「落ち着いて、パオラちゃん!あなたが行っても何にもならいないわ」
「そのとおりだ。あとは俺にまかせて安全な場所へ」
「ちくしょぉぉぉぉ!やっぱ、脱出装置は直しておくべきだった・・・・」
「急がなければ、コウヘイが危ない!」
すでに宇宙ビーストの群はバクサイオーにトドメを刺そうと次の攻撃の準備を始めている。
「コウヘーーーーイ!!!」
アンドーがバクサイオーに向かい走りだしたが、すでに宇宙ビーストの群はキュィィィィンという音を立て、エネルギーを蓄積している。発射前だ。

 

やめて!やめて!これ以上、大切な人を奪わないで!

お願い!・・・誰か・・・。

もう何も、失いたくない・・・。

 

 

わたしの意識が飛んで行く・・・。

目の前が真っ暗になった。

・・・・・・・・・。

ここは・・・前にも来た暗闇の中。

「パオラちゃん・・・」

クレアさんの声がわたしの耳に響いた。

「クレアさん!」

わたしの目の前にクレアさんの姿が現れた。

「パオラちゃん」

でも、わたしはとっさにうつむき、目をそむけた。

「どうしたの?パオラちゃん」

「・・・・・・・・・。クレアさん・・・わたし・・・・」

わたしはいつの間にかポロポロと涙を流していた。

「パオラちゃん・・・あなたは、恐れ、うつむかなければならないようなことをしたのですか?いいえ、そんなことはあなたにはないはずよ。あなたは優しくて、がんばり屋さんで、わたしを困らせたことなんて一度だってなかったわ。」

「顔をあげて、パオラちゃん。」

「顔をあげて」

わたしはゆっくりと顔をあげた。

そこには優しく微笑んでくれているクレアさんがいた。

「悲しい涙なんて流しちゃだめよ、よけい悲しくなっちゃうから。流すならうれしい涙じゃなきゃ、ネ。」

「でも、わたしのせいで・・・クレアさんは・・・わたしなんか、わたしなんかのために!」

「パオラちゃん・・・・悲しみが深いということは愛情が深かったということです。あなたは、こんなに悲しむほどわたしを愛してくれていたのね。うれしいわ。でも、あなたは充分に悲しんだわ。だから、これからは笑って。」


「クレアさん・・・・」

 

「さあ、笑って」

そして。

それまでと。

今と。

これからが。

笑顔の架け橋で、つながった。 

「悲しい涙がうれしい涙に変わったわ。それでいいの、それでいいのよパオラちゃん」

「クレアさん・・・わたしも残したい。あなたがわたしを残してくれたように、わたしも生きている証を残したい」

「そう。じゃあ、わたしは空であなたのことをずっと見ているわ。あなたが幸せになるように願って」

「クレアさん・・・」

「さあ、もう行かなくちゃ。あなたもわたしも、それぞれの道へ・・・」

「はい」

「パオラちゃん・・・あなたに会えてよかったわ。本当に、心からそう思う」

「わたしもです。クレアさん」

「さようなら、パオラちゃん」

「さようなら」

クレアさんは光の中へと去って行った。

わたしも行かなきゃ。

時はどんどん流れてゆくし、過ぎ去っていったものは、帰ってこない。

でも、今のわたしは、もう、過ぎ去った昔にとどまりたい、とは思わないし、未来に対しても怯えていない。

恐れることより前に進むこと。

クレアさんと、あの人が、教えてくれた。

「さあ、生きよう」




パオラの瞳に再びバクサイオーが映った。
「ダメだ!間に合わない!」
頭を抱えるトラキチ。
「逃げてぇぇぇぇぇ!!!」
悲鳴を上げるシズク。
「うおおおおおおおおお!!!」
アンドーの叫び。

コウヘイには皆の呼び声は聞こえなかった。

 

「コウヘイさぁぁーーん!」
ただ、彼女の、パオラの声が。


カッ!

ドゴォォォォン!!!!

ビーストの一斉射撃が、炸裂した。閃光、振動、轟音、爆煙が周囲を蹂躙し、覆い尽くす。


「コウヘイ・・・・」
呆然とするトラキチ。思わず膝をつく。
「ど、どうなったの?」
口元を押さえたままの姿勢で硬直し、何とか言葉を搾り出すシズク。
それを打ち破るように、一瞬でアンドーの目が鋭くなった。
「・・・・・・・こ、これは!?」
「どうした!?」
アンドーの驚愕に、振り返るトラキチ。その声は、希望を求める用でもあり。
「コウヘイのジャスティが・・・・上がってきている!!」

ゴゴゴゴゴ・・・・


そこには、閃光が直撃したはずのバクサイオーが立っていた。
装甲にはあちこち穴が開き、角は折れ、右手は吹っ飛んでいるが、確かに、しっかりと。

バクサイオーは、立っていた。

 

「うおぉぉぉぉぉおおお!」
コウヘイの叫びと共に、バクサイオーに変化が現れた。
顔を覆っていた仮面のような装甲が左右に分かれ、その下から若武者を思わせるりりしい顔があらわになる。
「オープンフェイスだ。爆砕モードに入ったぞ!」
その意味を知るトラキチは、感動に打ち震えた。今まさに、「正義の心を力に動くロボット」として、バクサイオーは完全に始動している。
「すごいジャスティだ!7300、7400・・・どんどん上がるぞ!まさに、心機一体!」
アンドーも叫ぶ。

バクサイオーは宇宙ビーストの群に向かい、突進した。
「こ、こけおどしを・・・撃て!撃って撃って撃ちまくれぇぇ!!」
ヒッサーの命令一下、一斉にビーストたちが動いた。ミサイルが、ビームが、弾丸が、火炎が、次々と放たれる。
「いや・・・」

炸裂!!

「今のコウヘイなら・・・」
「でえぇぇぇぇぇぇい!」
バクサイオーは大きく跳躍し、迫り来る攻撃を全てかわした。
「勝てる!」
空中にいるバクサイオーは曲芸のようにくるりと宙返りをすると、急降下と共に蹴りを放った。
「クォア!?」
一体がその蹴撃をまともに受け、砕け散る。間髪いれずに着地姿勢から脚払い、自分に向けて崩れ落ちてくるビーストの顎へ、相手が回転するほどのアッパーカット!
「ゲウアアアアアアア!」
一瞬ののち振り下ろされるビーストの巨大な手。それを左手でがっきと受け止めると、引き摺り下ろすようにその腕をひっぱり、肘から先をなくした右手、その断面部で胴をぶち抜いた。
「うおおおりゃああああああああああ!!!」
そのまま串刺しにした右腕を振りぬき、投げ飛ばしたビーストは他の機体を巻き込んで爆発する。
爆煙を突き破り一気に隣接すると、タックル!倒れたビーストの上で逆立ちをするようにして、両足を回して周囲の敵を吹っ飛ばす!
あっという間に、ビーストは一機だけとなった。
「お・・・のれぇぇぇぇぇぇ!!」
ヒッサーが唸る。それを超えて、コウヘイが叫んだ!
「くらえぇぇぇぇぇ!!!!」
バクサイオーの左手が光った。
そして、再び天空高く跳躍する。
バクサイオーのシルエットが、太陽と重なった。その煌きが、まるで後光のようだ。
「天に、日輪、輝く限り・・・」
つぶやきが、もれる。
「・・・見よ・・・あの姿を・・・」
避難誘導を終え、戻ってきた姫夜木研究所グループ・・・魔窟堂老人の低い呟きは、誰に聞かれることも無く、ただ、語られる。
「滅んでは、いなかった・・・命賭けるに足る正義は・・・それをなさんとする者たちは・・・」
老いた喉が震える。和服の袂の中で、手が握り締めたのは、かつて・・・
「ミア=アリス、イクサー1・・・ワシらはまだ、戦えるようだ・・・」
彼が、戦士と呼ばれた時の、思い出か。
「爆砕袈裟斬りチョォォォーップ!」
叫びと共に、バクサイオーが、コウヘイが、一心同体一つとなって!
何よりも鋭く、手刀を一閃!

ドドドドドド・・・・ドバァァァァアァァァン!!!

「やったぁぁぁ!勝ちましたよ、研究長!」
飛び上がって叫ぶシズク。
「まったく・・・危なっかしい戦いだったな・・・」
といって、トラキチは汗をぬぐう。
「勝ったんだし、いいじゃないですか」
「いや、でも、もう少しスムーズにだな・・・」
「もう、素直じゃないんだから」
事実だったのか、苦笑いを浮かべてトラキチは頭を掻いた。

「ふう・・・なんとか、勝てた・・・・」
バクサイオーのコクピットから這い出すコウヘイ。散々振り回されて、ややぼろっちくなっているが、無事だ。
「見事な戦いぶりだったぞ、コウヘイ」
歯を都合よく光らせて笑うアンドー。
「パオラちゃん・・・どうしてここに?」
「無視かい・・・」
コウヘイは、まずパオラのところへ向かった。ま、当然である。
「コウヘイさん・・・よかった、無事で」
澄んだ、心底嬉しそうな、安堵の声。それはパオラの唇から響いて。
「あれ、パオラちゃん、しゃべれ・・・」



パオラの瞳にはうれしい涙があふれた。
「よかった、コウヘイさん・・・よかった・・・。ふぅえ〜ん」
「おいおい、泣くなよ・・・」
そんな二人の様子を、祝うように見つめる影山研究所・姫夜木研究所の面々。
何とか敵撃退に成功したゲッPチームも、通信画面の向こうから見ている。

いつの間にか、雨は止み、一筋の美しい虹が出ていた。

 

クレアさん・・・わたしにも残せますよね。

あなたがわたしを残してくれたように、

雨と風が虹を残したように、

わたしにも、生きている証を・・・


次回予告
コウヘイ
よ〜やく起動したバクサイオー!
トラキチ
長かった、本当に長かった!これも読者のみなさんの応援のおかげです!ありがとう、私たちのことを忘れないで
作者
あほかっ!最終回はまだ遠い!
トラキチ
・・・あ、そか。
作者
え〜、ごっほん。気を取り直して。
姫夜木博士
空に!陸に!海に!迫り来るツイミ星人の三大地上げ獣!
呉石博士
さらに憂国機団も負けじと幹部たちが出陣する!
魔窟堂
対して我らがガイアセイバーズは、ついにその総力を結集し、敢然と立ち向かう!
柚子
ごろちゃんは怪我で動けない!でも紫音さんの窮地に忽然と現れた猿皇!パイロットは一体誰なの!?
牡丹
さらに、近頃町で噂の「幽霊ロボット」!その正体とは!?
アンドー
次回過去最大のロボット大決戦!やまぴかりゃー第六話「モンキー・マジック」!
パオラ
・・・見てくださいね。

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