突撃!パッパラ隊三次創作小説「うづラブ幕間」
「うづラブ」ここまでの粗筋。
一人「うづうづの湯」に入り続けていたせいで、女の子の「いずみちゃん」の人格になってしまった水島一純。
元に戻すためにランコたちはまず女装用の衣服を没収し、「うづうづの湯」を封印したのだが・・・
次の日の朝。
「朝ですよ〜、ランコさん。朝ごはんなくなっちゃいますよ。起きてくださ〜い。」
「んみゅ?」
物音に気づいて、ランコはエメラルドグリーンの目を眠そうに瞬かせ目を覚ました。
昨日は一晩かけて「うづうづの湯」を洞窟ごと埋め立てていたので、とても疲れていたのだ。とはいえ作業は完了し、これで愛する水島君も元に戻るわと、安心してベッドに入ったのだが・・・
「あっ、おはようランコちゃん。」
「・・・・えええええええええええええええっっっっっ!!!!?」
朝一番大絶叫。
眠い目の一気にぱっちり覚めたランコは、ベッドから飛び出すとパジャマ姿で部屋に入っていた相手にしがみついた。
「ちょっとちょっとちょっとちょっとどうして!どうして元に戻ってないの〜〜〜!?」
そこにいたのは、「いずみちゃん」だった。昨日全部処分したはずの女物の服を着て、きちんと化粧までしている。鬘は被っていないのだが、普段はぼさぼさにしている髪の毛を丁寧に櫛で梳かしており、ショートヘアだが女性らしい髪形に纏めてあった。
「元に戻るって、何ですかランコさん?」
きょとんと首をかしげる「いずみちゃん」。昨日から、全く症状は改善されていないとしか見えない。
「それより聞いてくださいよ、ランコさん。今朝目を覚ましたら、私の服全部なくなっちゃってたんです。誰かが盗んじゃったんでしょうか?ストーカーかもって思うと、私怖くて・・・でも隊の皆さんがプレゼントしてくれましたから・・・」
それを聞いた途端、ランコは「いずみちゃん」を置いて全力で走っていった。
きょとんとして、首をかしげる「いずみちゃん」。
「どうしたのかしら、ランコさんったら・・・」
そして基地に、連続して爆音が木霊した。
「ぜえ〜っ、ぜぇ〜っ・・・」
怒りの余り手持ちの全兵器を総動員して「いずみちゃんファンクラブ」を結成していたパッパラ男子隊員を殲滅したのち、ランコは再び『水島いずみクン(ちゃん)対策本部』を開設した。
「どーゆーことよとびかげちゃん!全然直ってないじゃないの〜!!」
「いやまあ、私もあくまで推測で対策をたてただけですから。原因のほうは断言できるのですが、アレでだめだったとなると・・・」
「ワウ。」
くってかかられたとびかげだが、思案投げ首といった有様だ。達磨そのものの首の無い体では首も傾げられず、寸胴なので腕も組めない。
「と、ともかく、きちんと男らしい格好をさせましょう。そもそもアホどもが服をプレゼントしたせいなんだし・・・さあ水島君、脱いで脱いで!」」
いらいらとした様子でそれを聞いていたランコ、とびかげの言葉を聴き終わるや否や立ち上がると「いずみちゃん」の服を引っぺがしにかかった。
が。
「きゃああっ!や、止めてくださいランコさん!どうしたんですか!?」
「う・・・」
必死に、しかし暴漢に襲われたか弱い女の子そのものの抗い方をする「いずみちゃん。」
元から整った顔立ちでしなやかで一見華奢にも見える体つきの水島が女装した「いずみちゃん」である。
半端に脱がされた服を必死に手で押さえて身を震わす姿は、哀れだが被虐的な美しさを漂わせる美少女にしか見えない。
「あわわっ、博士に何をする〜!」
「何あんた顔赤らめてんのよ!?」
ついついランコを水島から引き剥がしてしまう桜花。
「い、一体どうしたんですかランコさん!おかしいですよイキナリ!」
服を直し、涙目で必死に抗議する「いずみちゃん」。
桜花が引き剥がしたランコに、マイが慌てて耳打ちした。
「ら、ランコさん。対策もなしに行動に出ても駄目です。ここは一旦落ち着いてください。」
「ヴぬぬ〜〜」
歯軋りしながら、一旦退くランコ。
そして午前の間中ランコ・マイ・桜花・とびかげ・轟天の五人は必死の研究を行った。埋める前にサンプルを取っておいた温泉の湯を分析し、やたら多いパッパラ隊の蔵書を引っくり返し・・・
しかし、全く成果は出ず、水島は「いずみちゃん」のままだった。
そうこうして昼食時となり、ランコはひとまず食事を取ることにして食堂に訪れた。
「ねぇ、水島君・・・」
「やだなぁランコさん、「いずみ」って読んでくださいよぉ。」
「いずみちゃん」と昼食を取りながら、尚もランコは会話を試みるのだが。
効果は上がらない。やはり「いずみちゃん」のままだ。
それを確認するだに、それを「水島の精神的防御」と説明したとびかげの言葉が、ランコの心に痛かった。
「ねえ、水島くん。そんなに女の子になりたかったの?そんなに今の「水島君」であることがつらかったの?そんなにあたし・・・」
「えっ、あ、どうしました?ランコさん。大丈夫ですか?」
思わず暗い表情をして、胸を抑えるようにして食事を止めてしまうランコに、「いずみちゃん」は心配して手を差し伸べる。それは見かけこそ女性に変わってしまっても、その愚かしいまでの優しさは紛れも無く水島一純そのもので。
「・・・うん、そうだよね、ごめんね、ごめんね・・・」
だから、それを追い詰めてしまったランコには、尚刃となる。
と、その時!
「嫉妬の心は父心、押せば命の泉湧く・・・嫉妬の心は父心、押せば命の泉湧く・・・」
突然、地の底から響くような不気味で重々しい呪文が響き始めた。
「な、何ですかこれ、ランコさん・・・怖い・・・!」
怯え、ランコに縋りつく「いずみちゃん」。対してランコは、その可憐な美貌をきりっと鋭く引き締まらせた。
「これは・・・あんの変態集団どもね!!」
そしてランコが「いずみちゃん」を背後に庇って身構えた、刹那!
「見よ!嫉妬魂は暑苦しいまでに燃えている〜〜〜〜!!」
食堂の床をランコたちを囲むようにぶち抜いて、紅蓮の炎が立ち上った。
同時に不気味な呪文が、雄叫びに変わる。
「モてない男の味方!愛と正義と嫉妬の戦士しっとマスクあ〜〜んどしっと団!見参!!」
その炎の中から現れたのは、目の周りに炎の模様を描いた覆面レスラーもどきと、チョッパーグラスにふんどし一丁のむきむき男の軍団。
モてない男の味方を名乗りカップルを襲うスットンを騒がす変態軍団、しっと団の連中だ。
「何であんたたちが出てくるのよ!」
「知れたこと!」
ランコの鋭い詰問に、何故か意味無くポージングするしっとマスク。それだけ大量についてても全然水島に勝てない無意味な筋肉が膨張する。
「我等の怨敵、モテる男の代表水島一純が折角美少女〜な人格になってしまっているというのに復活させるなど神が許しても我等が許さん!モて男が消えるわ美女が増えるわ一石二鳥!我がしっと団の誇る闇の人脈でもって、完全に女に改造して我等の共有彼女としてくれるわ!」
ちなみにその闇の人脈というのは、カツ丼一杯で買収される安い性格のマッドサイエンティスト・シルヴィーだったりする。
「ふ、ふざけるんじゃないわよ!誰がそんなことさせるかっての!」
怒りの叫びと共に躊躇無くマシンガンを構え、引き金を引くランコだが・・・
かきっ、かきっ、
「あ、あれ、弾が・・・しまった!今朝の大暴れで・・・!」
今朝方「いずみちゃんファンクラブ」をぼこぼこにしたときに、全弾打ちつくしてしまっていたのだった。後光院財閥自慢のレーザー衛星も、充電中。
見る見る青ざめるランコ。卓越した武器の扱いを誇る彼女だが、丸腰の状態では平均的な少女の体力でしかない。対して相手は、ゴキブリなみにしぶとい屈強の男数十人と、水島や桜花と比べたら雑魚同然とはいえ超音速で空を飛び目から炎を放つ変態超人。ランコに勝ち目は無い。
「ぷっふ〜ぅ、既に我等しっと団の別働隊が偽情報で桜花を基地から外におびき出している!もはや袋のネズミ・・・我等の共有彼女第二号にしてくれるわっ!」
ぬずいとせまる、しっとマスク以下団員の筋肉の壁。
「う・・・み、水島くん、助け・・・!」
「ランコさん、わ、私・・・とてもこんな怖い人たちの相手なんて無理です・・・!」
「あうっ」
咄嗟に助けを求めるランコだが、今は「水島一純」ではなく、「いずみちゃん」だった。見るも哀れなほど怯えすくみ、とても戦える状況ではない。
「むっふっふ。ランコちゅわ〜〜ん・・・」
「いぃずぅみぃちゃああああああん・・・」
にじにじと迫るしっと団の包囲網。
それを見たランコは、焦燥と一瞬の悩みの末、一つの決断を下した。
身を翻す。流れる綺麗な金色の髪。
「な、ランコさん!?」
「ぬお!?何だと!」
ランコは、背中に庇っていた「いずみちゃん」に向き直ると、その細い腕を回して抱きついた。
驚くしっと団、そして「いずみちゃん」。かまわず、ランコは呟いた。
「水島くん・・・水島くんは男の子なんだよ・・・「いずみちゃん」なんかじゃなく、あたしが好きな「水島君」なんだよ・・・思い出して!」
必死に、切実に。
「ごめん、あたし馬鹿だから水島君に苦労かけちゃって・・・そのせいでこんなになっちゃったのに、戻って助けてなんて思って、浅ましいけど、それくらいあたし水島君のことが好きなの・・・!」
「ら、ランコ、さん・・・!?」
驚いて、声を何ども途切れさせる「いずみちゃん」
僅かに、体を見せるように上半身をそらせて離したランコが、服の前ボタンを引きちぎるようにして全部外してしまったのだ。
夏に海に行くときなど周囲の視線を総て掻き集めてしまう綺麗なボディラインが露になる。薄いウェストに控えめな臍、鎖骨の窪み、そしてレースのあしらわれた富豪の娘らしい高価そうなシルクのブラジャーに包まれた胸の谷間まで・・・
「ねぇ、あたし、何でもするから、水島君に・・・だから・・・お願い、女の子として、あたしを見てよ・・・!」
そして、再び抱きついた。今度はじかにランコの肌が触れていく。
胸に押し付けたランコの耳に、抱きついた相手の鼓動が、度動悸が伝わってくる。そして。
「ぬおおおおっ・・・!」
刺激的極まりない光景に悶絶するしっとマスクとしっと団員。
しかしそれと同時に懊悩してもいた。美女二人のからみと見ればこのまま目と脳に焼き付けたいところであるが、ランコちゃんと水島が目の前でいちゃついとるととるならばしっと団にとっては攻撃対象である。
どうするか・・・!一瞬迷ってしまったしっとマスク&しっと団員。
それが、勝負を分けた。
「やっ、止めろランコ・・・!」
その言葉に、一瞬拒絶されたかと思って涙ぐむランコだが、直後気づいた。
今、自分は「ランコ」と呼ばれた。「ランコさん」、ではなく。
「み、水島くん・・・」
「ああ・・・だから早く服を着ろ!」
頬を赤らめ、顔を背ける「水島一純」。
「し、しまった!ものどもかか・・・」
「遅い!」
慌てるしっとマスクだが、もはや遅い。
幾多の戦場で「死神」と恐れられた水島の、まさに死神が命を刈り取る鎌の切っ先が如き鋭い視線がしっとマスクを射る。
しっと団が壊滅して感極まったランコが水島に抱きつくまで、5秒かからなかった。
「ところで、あたしのこと女の子として見てって言ったけど・・・ねえ、返事は?」
「いいからはやく服を直せ!」