原作コミックス11巻、ないしは13巻までの内容(ネタバレ)を多く含んでいます
ので先に読み返して頂くことを推奨します。
本文中、演出の為、空白改行が多いことをご容赦下さい。
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うづラブ
パッパラ隊の基地の近くには『うづうづの湯』という温泉がある。
とびかげのインチキ本によって『ラブラブの湯』と入れ知恵された一人の冒険家を振り回し、また、蓮花によって破壊された基地の再建に予算を取られ温泉旅行に行けなくなったパッパラ隊が偶然見つけた温泉。
入ると多少体がうづうづすることを考えなければ、普通に入れる温泉である。
もっとも、基地にはちゃんと風呂はあるのでわざわざ出向く必要はない。
そもそも温泉旅行は12月の初めに隊員の慰安の為に行われるのだが、普段、街まで遠い辺境のパッパラ隊基地にカンヅメ状態な隊員達にとってみれば『温泉』よりも『観光』の方が重要なのである。(とはいえ『温泉』に『覗き』という漢のロマン(?)を見出す者もいるが)
そういうわけで、『うづうづの湯』は放置されていたのだった。
そんな忘れ去られつつある秘湯にも、時折訪れる利用者がいた。
水島一純、その人である。
「ふぅ・・・、どうしても長湯してしまうなあ。」
水島にとっては喧し過ぎる程のパッパラ隊員達。
それでなくても、事あるごとに神経を逆撫でする後光院ランコやとびかげ達など。
元来、『集団』というものにあまり馴染めない水島にとって、早朝や深夜にこっそり入りに来る一人風呂は唯一とも言える安息の時間であり、それに比べれば体がうづうづすることなど些細なことであった。
「さてと、そろそろ出るか・・・。」
ババババババババババ・・・・・・・
「朝刊と郵便物でーす。」
「うむ、ごくろう。」
スットン共和国の地の果て、最前線のスノッブ岬に位置するパッパラ隊基地。
ここへは軍用ヘリで朝刊や郵便物などが届けられ、それを白鳥沢隊長が受け取りに行くのが朝の日課となっている。
ほとんどの隊員たちは寝付きが頗る良く、銃声や爆音も聞き慣れているので(半分はランコの所為)朝からヘリの音が鳴ろうが問題なく熟睡できるのだが、(いいのかそれで・・・)
寝坊すると朝食を食べ損ねかねないので大体それを合図に起きてくるのである。
「博士、はかせー。」
「あら、どうしたの?桜花さん。」
「あ、牧野先生。博士を見ませんでしたか?」
「水島クン?見てないけど。部屋にいなかったの?」
「はい、お部屋にも食堂にもいらっしゃらなかったので・・・。」
「うーん・・・。またランコさんやとびかげさんと遊んでるのかしら?」
「博士ー。どこですかー?」
「どうした?桜花。」
「あ、博士。どこに行ってらしたんですか?」
「いや、ちょっとな。それより何かあったのか?」
「いえ、朝食の準備ができましたので・・・。」
(あれ?博士の髪が濡れてる・・・?)
「そうか、じゃあ行こうか。」
「は、はい・・・。」
スタスタスタ・・・
「おお、水島。」
「あ、隊長。おはようございます。」
「おはようございます。」
「うむ、おはよう。それと水島、お前宛に手紙だ。」
「はあ、ありがとうございます。」
「確かに渡したぞ。さあ、朝食だ朝食。」
「誰からだろ・・・。なっ!姉さんから?!」
「博士の御姉様からですか?」
「ああ・・・。あ、とにかく先に朝食にしよう。」
「はい、わかりました。」
食堂では既に他の隊員達がおかわり争奪戦を展開していたのだった。
朝食後・・・
〜ミーティングルーム〜
「ん〜〜〜・・・。」
「ねーねー、何見てるの?水島クン。」
「姉さんからの手紙。『今年は帰って来れないの?』だってさ。」
「今年ぐらい帰ってあげたら?」
「バカ言うな!会うのが姉さんだけならともかく、親父と会うのはまっぴら御免だ。」
「ところで今度の連休、私は家に帰るんだけど水島クンも「行かない。」・・・まあいいわ。そのかわりに大晦日には二人でスキー場で紅白見て年越ししようね。」
「あー、わかったわかった。」
やがて白鳥沢隊長が入って来た。
「全員揃ったな。」
「「「「「「は〜い。」」」」」」
「では今日の訓練内容を発表する。今日の訓練は・・・。」
「アメ玉食い競争特訓だ!」
「「「「「「は〜い。」」」」」」
「うう・・・、もーいやだ。最近こんなのばっかり・・・。」
「まあまあ水島クン。おもしろそーだからいいじゃない。」
そして、夜・・・
「ふう〜。今日の『草津の湯』の温泉の素もなかなか良かったですね。」
「そ〜ね〜。・・・ふぁ〜あ、・・・もう寝よっと。」
(・・・あれ、博士?こんな時間にどちらへ・・・?)
そろそろ消灯時間も近いというのに水島がどこかへ出かけようとしているのを見かけた桜花。
「どうしたの?桜花ちゃん。」
「え?な、何でもないです。先に行っててください。」
「そう?じゃおやすみ、桜花ちゃん。」
「おやすみ〜。」
「おやすみなさい。」
(今日は夜警の係じゃなかったはずだけど・・・)
そして今朝のことを思い出し、不審に思って後を追ってみることにした桜花だった。
うづうづの湯の洞窟へ入って行く水島。気づかれないように後を追いていく桜花。
(博士はこんなところでいったい何を・・・?)
やがて奥にあるうづうづの湯に辿りついた。
(あの妙な温泉の研究でもしてるのかな?)
そして桜花がいることなど知らず、服を脱ぎ始める水島。
(え?!あ、まさか!あわわわ・・・)
カツンッ!
「ッ!誰だ!?」
「あ、あの・・・、御免なさい。」
「お、桜花!?なぜここに!?」
「そ、その・・・、こんな夜遅くに博士が外出されるのでどこへ行かれるのかと思って・・・。」
「そっか・・・。ここは一人でゆっくりできるいいところだったんだけどなぁ。」
「『ゆっくり』・・・ですか?」
「ああ。普段は落ち着いて風呂に入れないからなぁ。」
パッパラ隊で女湯を使うのはランコ、牧野親子、桜花の4人だけだが、男湯は40人近くが使う。隊員達は隙あらば女湯を覗こうとする(又は潜入)ので唯一ともいえる止め役である水島は常に監視をしていなくてはならず(白鳥沢の前ではやらない)とてものんびりできる状況ではないのだ。
「できればこの事は秘密にしておいてくれないか?」
「勿論です。博士がそう仰るのであれば!」
「ありがとう。じゃあお礼に、今度の休みには一緒に買い物にでも行こうか?」
「本当ですか!?」
「ああ。ちょっと早いけどクリスマスプレゼントでも買ってあげるよ。」
「わーい!」
そして待ちに待った連休・・・
〜イーストシティ〜
「♪」
「楽しそうだな、桜花。」
「はい!だって博士と二人っきりで出かけるなんて久しぶりですから。」
「そっか。」
「いらっしゃいませー!」
「わぁ〜、いろいろな服がありますね。」
「ああ・・・。あ、すいません。」
「はい、何か御用でしょうか?」
「ちょっと、この子の服を見立ててあげてください。私にはよく分からないもので。」
「はい、かしこまりました。」
「桜花。しばらく、どれがいいか選んでてくれ。私はちょっと時間を潰してくるから。」
「あ、はい・・・。」
(博士に選んで欲しかったなぁ・・・)
一方、その頃・・・
「パパ〜、ただいま〜。」
「おお〜、お帰りランコ。パパ寂しかったぞ〜!」
「そうか。今年の正月は水島君と過ごすのか。
「うん。年末にスキー場に行ってそのまま年越しする予定なの。ごめんねパパ。」
「なに、構わんさ。それよりも今度来るときは是非孫の顔を見させておくれよ。」
「も〜、パパったらぁ〜。」
〜再び、イーストシティ〜
「桜花、決まったかい?」
「あ、はい博士。あれ?その袋は・・・?」
「ん?ああ、これはランコやマイさん、牧野先生にと思ってな。」
「博士、今日はありがとうございました。」
「ああ。今日は楽しかったかい?」
「はい!あの金髪女がいなかったのでとっても有意義でした!」
「ははは・・・。」
そして・・・
「やっほ〜轟天ちゃん!連休最後にたっだいま〜!」
「ワウ。」
「あ、あら。お帰りなさいランコさん。」
「あ、牧野先生。水島クンどこにいますか?」
「えっ!?み、水島クン!?さぁ・・・。」
「ワゥ・・・。」
「むっ、何か隠してませんか!?」
「いえ、ランコさんは知らないほうが・・・。」
「水島クン、出てらっしゃ〜い!」
ドドドドド・・・・・
「あらランコさん。戻ってらしたの?」
キキィッ!
「・・・・・・・・・・。」
「どうしたの?ランコさん。」
ランコと相対する女性。彼女をどこかで見たような見てないような。ついでに、着ている服にも見覚えが。思い出しそうで思い出せない、というかなんか思い出したくないというか・・・。
やがてランコは意を決し・・・。
「・・・・・・あんただれ?」
「や〜ね、ランコさんってばジョーダンばっかり!」
「へ!?」
「私は水島いずみよ(は〜と)。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「え、江口夏海!出てこーい!!」
ズドドドドドド・・・!!
「どうしちゃったのかしらランコさん・・・。」
「・・・み、水島さんもどうなさったんですか・・・?」
「博士・・・。」
ちなみに、服に見覚えがあったのは以前江口が水島に着せたものと似ていた為であった。
〜食堂〜
「あっ、いずみちゃんだ!!」
「なにっ!!」
「ねーねー、どうしたの?いずみちゃん。」
「んー?ちょっとね、お菓子でも作って食べよっかなーと思ってね。」
「い、いずみちゃんお手製のお菓子!?」
「いずみちゃん、俺にも作ってくんない?」
「てめー何言ってやがる。俺だって食いたいんだぞ!」
「いずみちゃん!俺は君の作った味噌汁を毎日「「「お前は引っ込んでろ!!」」」」
「はいはい、みんなにも作ってあげるから大人しく待っててね。」
「「「「「はーい!!」」」」」
〜隊長の自室〜
「・・・よし。もういいぞ水島。」
「ふ〜〜。絵のモデルって結構キツイですね。」
「すまんな。どうしてもイメージが湧かなくてな。」
「いいえ。お役に立てて光栄です。頑張ってくださいね。」
「うむ、ありがとう。」
・・・やはりこの隊の人間はどこかズレているのだった。
さて、ここはパッパラ隊基地のある一室。『水島いずみクン(ちゃん)対策本部』と書かれた看板が部屋の入り口に置かれているこの部屋には、後光院ランコ、牧野マイ、桜花、牧野レイの4人が集まっている。
「アホ江口の所為じゃないなら、なんで水島クンがおかしくなっちゃったのよ!?」
「さあ・・・。」
「とにかく!他のアホどもはあてにならないから、私たちでなんとかするしかないわ!」
「でもどうすれば・・・。」
「少なくとも、医学的には病気ではないみたいだけど?」
「まずは水島クンがああなった原因から調べる必要があるわ。最近、何か水島クンに変わったことなかった?」
「いえ、特に・・・。」
「私もこれといった心当たりは無いわ。」
「む〜〜、桜花!あんたは!?」
「え〜と・・・。」
「あるのね!?」
「そうは言っても・・・、近くの洞窟にある温泉に入ってたことぐらいしか・・・。」
「洞窟の温泉って、あの『うづうづの湯』のこと?」
「桜花ちゃん。どうして水島さんはわざわざそこに行ってたの?」
「博士が言うには『一人でゆっくりしたかった』らしいです。」
「『一人でゆっくり』ねぇ・・・。」
じーーーーーーーーーーーーっ
「な、なんでみんな私の方を向くのよ!?」
「・・・それはそうと、結局原因ってなんなのでしょうか?」
「「「「うーーーーーん・・・・・・」」」」
しかしこれといった打開策も無く、考え込む4人だった。
その時・・・
バタンッ
「みなさん、お困りのようですね。」
とびかげと轟天号が入って来た。
「とびかげちゃん、何か知ってるの!?」
「まあまあランコさん。まずはこの紙に『うづうづ』と200回書いてみてください。」
「いったい何よもう・・・。」
カリカリカリカリ・・・・・・
一分後・・・
カリカリカリカリ・・・・・・
五分後・・・
カリカリカリカリ・・・・・・
十分後・・・
カリカリカリカリカリカリカリ・・・・・・・・・・・・・・・
「・・・・・・っと。・・・あー、もー、なんなのよ!?」
「ランコさん。最後の方は『うづうづ』じゃなくて『ラブラブ』に見えますね。」
「しょーがないでしょ!200回も書いたんだから!」
「そういうことですよ。」
「だからどういうことよ!?」
「『うづうづの湯』はただの温泉ではなかったということです。」
「なんですって!?」
「『うづうづの湯』に入ると体がうづうづするのは知ってますよね?」
「知ってるわよ!」
「何の訳も無く体がうづうづすると思いましたか?」
「いや・・・、とびかげちゃんが関わったら何でもアリだと・・・。」
「確かに、『一緒に入ったものは、たちまちのうちに相思相愛ラブラブな間柄になれる』という効能はインチキですが、それでもラブラブになれる可能性はあるんですよ。」
「ええっ!?なんで本当のこと言わなかったのよ!?」
「ですから『インチキ大百科』なんですってば。」
「う・・・、そりゃそうだけど。」
「本当にそんなのがあったら調べてみたいわ。」
「そもそもそこに入ろうとする人達なんてのは全くラブラブな間柄に無い人達だけですから。そういう場合、片方は無理矢理入れさせられるものでしょうからねぇ。」
「ぐぅっ・・・!」
「あら、どうしたの?ランコさん。」
「い、いえ。なんでもないです・・・。」
「結果だけを求めて無理矢理ラブラブになろうとして入った場合なら、インチキと思い入るのは止めるでしょう。しかし最初からある程度ラブラブな関係で、願掛けのような意識で入ったのならば話は変わってきます。愛し合うもの同士が温泉で裸の付き合いをする。そんな環境の中で、健康的に言って男女の仲が燃えないワケないですから。ねぇランコさん?」
「な、なんで私に振るのよ。」
「ランコさんの書いた字のように、温泉に入ったばかりの頃は『うづうづ』ですが、回を重ねる度に段々と『ラブラブ』に変わっていくんです。まぁ、それが『うづうづの湯』でなくてもそう変わらないのかもしれませんが。」
「で?それと水島クンがおかしくなったのとどういう関係があるのよ!?」
「パッパラ隊は一人身の男ばっかりですからね。同性なら多分問題ないと思うのですが、一応見た目をマグマの様にしたり成分を『みそ』と言っておいたのですけど・・・。」
「水島クンは『いつものことだ』と思ってあまり気に留めてなかった、ってわけね。」
「でも博士はお一人で入ってたのにどうして・・・。」
「そこなんですよ。先程私が『多分』と言ったのは、男と女のラブラブだけでなく、同性愛やナルシシズムなどの可能性もあるからなんです。最近、変な噂もありますからね。」
「そーよね〜、気持ち悪くてしょーがないわ。」
「マイおねーさま、『どーせーあい』とか『なるししずむ』ってなんですか?」
「お、桜花ちゃんも大人になったら分かるわ・・・。」
「でも水島クンの様子はナルシストとは違うと思うけど?」
「彼の場合、”防衛本能が過剰に働いた”といったところですかねぇ。」
「どういうこと?」
「水島くんの性格や体質からして、彼は孤独を好みますからね。先程の桜花さんの証言のように、一人になれる時間が欲しかったのでしょう。そして一人で『うづうづの湯』の入り続けたと。・・・さあ、そこでお立ち会い!」
「な、なによ突然・・・。」
「ズバリ、水島くんが惚れるような女性とは誰でしょう?」
「そりゃあモチロン、このとってもキュートでちょっぴりカゲキな夢見る乙女、ランコちゃんでしょ!」
「・・・貴様、寝言は寝てから言え。」
「何言ってんのよ。私はいつでも200%本気モードよ!」
「・・・敵ハ、殺ス!」
「ま、まあまあ桜花ちゃん落ち着いて!」
「ワウワウ。」
5分後・・・
「えー、場が落ち着いたところで話の続きに参りましょう。」
「それで?とびかげちゃんはそれが誰だか知ってんの?」
「水島さんが心を奪われるような人って・・・。」
「それは・・・。」
「「「「それは?」」」」
「いずみちゃんです。」
ガクッ
あんまりといえばあんまりな答えにズッコケる4人だった。
「な、何なのよそれ・・・。」
「おやおやランコさん、お忘れですか?パッパラ祭のとき、ランコさんだって『キレイだ』って思ったでしょう?」
「あ・・・、ま、まぁ確かに・・・。」
「ら、ランコさん・・・?」
「水島くんはもともとイイ顔をしてますからね。自分の美しさを初めて意識した瞬間とでもいいましょうか。」
「まったくよ。水島クンももっと自信持って積極的になって欲しいのにな。」
(ランコさんに積極的な水島さん・・・?)
(・・・絶対有り得ない。)
(・・・絶対有り得ないわね。)
(・・・絶対有り得ないですねえ。)
(・・・ワウ。)
「水島くんは女性どころか、他者そのものを遠ざけようとする傾向が見られますからね。まあ、彼の境遇を考えると仕方ないのかもしれませんが。」
「ところで、それがどういう関係があるんでしょうか?」
「わかりませんか?先程言った『うづうづの湯』の効果、そして水島くんが心を奪われる人が『いずみちゃん』であること・・・。」
「ま、まさか・・・!」
「そう・・・。水島くんは、いずみちゃんとラブラブなのです!」
ガァァァーーーーン!!
「で、でも水島クンはいずみちゃんでもあるわけだからそれっておかしいんじゃ・・・。」
「その謎を解くのが先程言った『過剰に働いた防衛本能』なのです。」
「それって、とてもショッキングな出来事に直面した場合に失神したり脳が記憶を改変するみたいなことかしら?」
「まあ似たようなものです。近頃の水島くんはとても情緒不安定だったみたいですからね。」
12月・・・、この時期になると水島にはどうしても考えずにはいられないことがある。
それは12月24日、自分の誕生日でありクリスマスイブでもある『年に一度の特別な日』・・・。
年末年始も近く、人々がお祭りモードに移りだすこの時期。しかし水島は、軍隊に入り姉と離れて暮らすようになってから、よもや自分の姉が会いに来るのではないかと思うと昔の地獄の光景に苛まれるのであった。
今ではランコやとびかげなどがいて『とんでもないこと』には慣れてきてはいるが、それでもこればかりは特別、自身を戦慄させることだった。
「で?水島クンは何がショッキングだったわけ?」
「いえ、水島くんの場合は突発的なものではなく、精神をじわじわと蝕まれるような症状です。」
「じわじわ?」
「日々のストレスが溜まりに溜まった結果とでも言いましょうか。」
「日々の・・・。」
「ストレス・・・?」
じーーーーーーーーーーーーっ
「な、なんでみんなまた私の方を向くのよ!!」
「通常、ストレスなんてものはヤケ食いとか衝動買いとかして発散させるものなんですが、水島くんには捌け口というか趣味が無い様でしたので今回のようなことになってしまったんだと思います。」
『人生には生き甲斐を持つべきだ』
どこかで聞くこの言葉は、そんなところから来ているのかもしれない。
「で、その結果が女装・・・ですか?」
「もうちょっと詳しく言うと『現実逃避の為の多重人格症状』ってところかしら?」
「ま、そんな感じでしょう。」
「それで結局どうしたらいいのよ!?」
「そうですねえ・・・。連休前までは普段と変わりないようでしたから連休の時に女性ものの服を購入したのがきっかけのようですね。あと念の為、うづうづの湯に入るのもやめさせた方がいいでしょう。」
「よっし。早速行動開始よ!!」
「あ、その前にサンプルを・・・。」
・・・というわけで、水島が寝ている隙に服や装飾品は全て回収され、『うづうづの湯』も永久封印された・・・。
(この二つの文の間に、この小説を読んだ悪の博士が書いた三次創作小説「うづラブ幕間」が入る。注意・この部分はえりのき殿の文にあらず。管理人・悪の博士の説明的追加)
で、その後の水島はというと・・・。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「あ、あの〜・・・。水島さん・・・。」
「博士・・・。」
”いずみちゃん”になりきっていた時の記憶は残っていたらしく、激しい自己嫌悪に陥っていたりする。
「これは暫く立ち直れそうにないわね。」
「あ〜、もう今に始まったことじゃないでしょ!」
さらに・・・
「水島く〜ん!!遂にその道に目覚めたのねぇーーーっ!!」
「私のサロンに来れば特別価格で徹底的にやってあげるわよぉーーーーっ!!」
「うわああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっっ!!!」
ドドドドドドドドド・・・・・・!!!
どこから聞きつけたのか、例の二人が水島を追っかけ回す日々がしばらく続いたのだった。
「ところで、水島クンの部屋にこんなものがあったんだけど・・・。」
水島の部屋に忍び込んだ日の翌日、ランコが水島の部屋で見つけた袋を持って来た。
「ラッピングがしてあるからどうやら誰かにあげる予定のものみたいなんだけどさ・・・。」
「3つですか・・・。桜花ちゃん達に買った物なんじゃないんですか?」
「・・・やっぱりそう思う?」
「あ、その袋・・・。」
「良かったわねアンタは。水島クンからプレゼント貰えて!」
「いや、それは博士がお前とマイおねーさまと牧野先生にって買ってきた物だけど・・・。」
「えっ・・・。」
「まあ・・・。」
「あら・・・。」
というわけで、プレゼントは思わぬ形でそれぞれに届けられたのだった。
「でも、桜花ちゃんはもうプレゼント貰ったの?」
「はい!あと梅花と菊花、・・・それと江口さんやミラルカっていう娘にも当日届くようにしたって言ってました!」
「そう・・・。よかったわね、桜花ちゃん。」
「はい!」
そしてクリスマスイブ当日。
心配されていた水島の姉の来訪も無く、一安心。
うづうづの湯の一件のお詫びも兼ねて水島は改めて、ランコ、牧野親子、桜花にクリスマスプレゼントを贈ったのだった。(とびかげと轟天号には棒付きのナス)
ただ疑問なのは、水島がそれらを買いに行って帰ってきた時の荷物と比べて品物の数が少ないということであったが・・・・・・。
<終>
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いかがでしたでしょうか。
最後の方、とびかげがかなり説明調なのが自分でも違和感が拭えないところです…。
お眼鏡にかなうかどうかわかりませんが、「突撃!パッパラ隊」のファンの方々に楽しんで頂けたら幸いです。