突撃!パッパラ隊2
ミッション8 パッパラ隊S、壊滅す
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シーン1 決壊
その日はやっぱり晴れていた。
水島はこの事件が起こったとき、ああやはり天空には皮肉好きのどなたかがいらっしゃられるにちがいない、人間をおもちゃ扱いしてげらげら笑う何者か画居るに違いないと確信したという。
もっとも、そんな嫌な存在も、この事件を起こした者達の邪悪さには足元にも及ばなかったが。
ドドッ、ドドドドーッンッ!
「何がおきたの!?」
唐突にパッパラ隊S基地と周囲の市街地で連続した爆発が起き、激しく地面が鳴動した。
状況を確認しようと江口少々が部下に叫ぶ。
素早くレーダーに目を走らせた部下は、予想した最悪の事態であることを確認した。
「ジェラシーエネルギー反応多数確認!!しっと団の攻撃と思われます。恐らく国家クラスの兵力量があります!」
「おちついて!」
慌てる部下達を江口は制した。
「私達が何度あいつ等の企みを粉砕したと持ってるの?敵はどうせ装備は大したことのない烏合の衆よ!大丈夫、勝てるわ!」
部下達を落ち着けるためにとりあえず言ってみたが、江口本人その言葉を信じてはいなかった。
「警報発令!全部隊発進準備急いで!水島司令は!?」
「もう来ている」
騒ぎを聞きつけて、すぐさま水島も現れる。
現状を確認しようと、モニターに目をやる。そこにはしっと団兵士と、今まで見たこともない奇妙な兵器達が映っていた。
「ろくでもない代物に違いなさそうだな」
「各国へ連絡を!」
「はっ!」
通信兵が無線機をいじり始めた、その時。
ドーンッ!ドーンッ!ドーンッ!
「わーーーっ!」
「きゃっ!」
更に地面が激しく揺れ、江口はバランスを崩して転倒した。
一人立ちつくす水島は、モニターの映像に驚愕した。
「しっとぉ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」
そこには、何匹もの巨大な人型の怪生物・・・目の回りに燃える炎、耳まで裂けた口、覆面のようにのっぺりした、それでいて明確な羨望と憎悪に引きつった顔をもつもの、嫉妬怪獣ジェラシアンの姿があった。
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シーン2 敵
「く・・・」
出撃する部下達を見ながら、水島は必死に思考を巡らせた。
相手の動きを全然予想できなかった。この事に気づき、対策を組むのがあまりにも遅かったのだ。それもこれも宮本達が目の前の小競り合いに没頭して・・・そう言えばあいつ等は今どこだ?、今はそんなときじゃないか。
とりあえずさしあたって考えるべきは自分の無力ではなく味方の無力であると思い直し、水島は敵をにらんだ。
ジェラシアンをあれだけ用意している、相当準備していると言うことだ。娘達なら怪獣を倒せるだろうが、彼女らはしっと団との戦いになれていない。慣れていないどころか、今の兵士達でしっと団と戦ったことのある者はほとんどいない。もうずいぶん昔のこととなったのだ。
画面に映る新兵器の数々・・・それは、水島をして憂慮させるに足るものだった。
「連絡は付いたの!?」
江口の問いに、通信兵の声はひきつって、厳しい答えを出した。
「駄目です!ぜ、全世界規模で連中の蜂起は発生しているらしく、シュバルツランドもヴァジュラムもロンズ・ワイリナーも自国に現れた敵のとの交戦で精一杯だそうです!」
「なんですって!」
「独力で片を付けるしかないと言うことか。」
危機的状況も、蘭美香達姉妹に取っ手はスリルにしか過ぎなかった。
「そーれっ、いくよ!」
「とりゃーっ!」
「十分出方をつけてやるぜ!凛名ロボR、発進!」
「大きい怪獣・・罠の掛けがいがありそう。くすくす」
「何か馬鹿そうな連中ね・・・」
軽口すら叩きながら、意気揚々と敵に向かっていく。だが、今回の敵は普段の相手とは勝手が違った。
「わああああああ!」
「ぎゃああああああ!」
町を兵士達の悲鳴が満たしていく。
多数のジェラシアン。
シュバルツランド帝国軍が開発したものの制御の難しさ故に放棄した秘密兵器、念波砲の改良完全版。
一時しっと団に協力していた三体のロボット・・・雪花、迅花、轟花のコピー量産型。
各国の兵器の捕獲、コピー生産品。
初代しっとマスクの息子達と噂される、それぞれ違う色の炎を目の回りにあふれさせた、五人のしっと戦隊。
確かにそれらも脅威だったが、もっとも恐ろしい存在は別にあった。
「ひいっ!」
今しも一人の兵士が、それに襲われようとしていた。
ぶよっとした白い、しっとマスクに似た、でも絶対に人間ではない、それどころか生物かどうかも見た感じでは解らないゲル状の物体。
「ひいいっ!!」
襲われた兵士は必死で引き金を引く。
だがそれは死なない。穴が空き、ちぎれても、すぐ元に戻る。そして近づいてくる。
弾がきれる。
絶叫、そして「それ」は別の獲物を求めて動き出す。
巨大タンクローリーからぶちまけられた、高濃縮しっとエキス。
十八年分の怨念の詰まったそれに、しっとマスクの念が与えられて動く、死なない羨望の固まり。
念液兵という名の怨霊達が、ゆっくりと戦場を覆い尽くそうとしていた。
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シーン3 蹂躙
「な、なんなんだよこいつら!」
飛び散る血飛沫に怯えながら、瑠希亜は必死に拳をふるった。
ぐしゃ、と念液兵はつぶれるが、すぐもとの姿を取り戻す。
「知るか!畜生何なんだ、何なんだよ!」
恐怖・・・初めて知る感情に頬を引きつらせながら必死に引き金を引く。
やはりとびちるが、平気で再生する。
「わああ、離れろ、離れてよ!」
凛名のロボットに多数の念液兵がとりつく。振り払っても振り払っても、ねとねととはい上がってくる。
半ばパニック状態になりながらも、姉妹は死にものぐるいで戦った。
確かに彼女たちの方が攻撃に威力があり、敵の攻撃は届かなかったが、気合いで呑まれていた。さらに、相手は何度倒されれも平気でよみがえる。
鹿野美の罠も、何の役にも立たない。
恋子の電子技術も、なにをか言わんや。
その状況は暫く続いたが、ついに姉妹達が消耗に耐えきれなくなるときが来た。
かしん。
蘭美香の拳銃が、非常な金属質の音を立てる。弾切れだ。
既に全部の武器を撃ち尽くし、これが最後の武器だったのにだ。
「・・・・・・」
蘭美香は暫く呆然として、遊底の下がったオートマティックの拳銃を見つめた。
念液兵達がにやりと笑い、蘭美香はようやっと、自分が完全に無力となったこと、もう目の前の敵をくい止められないこと、そいつらにやられること・・・を理解した。
「・・・っ・・・!」
全身を冷たい恐怖が呪縛する。
「い、嫌ァアアアアアアアアアアアアッ!」
恥も外聞もなく、蘭美香は生まれて初めての恐怖の絶叫に喉を絞った。必死に手足を振り回すが、無駄な抵抗だった。
「ら、蘭美香姉ちゃん!」
その光景を見た瑠希亜は、一瞬脳の中が真空になったような気がした。
蘭美香姉ちゃんが悲鳴を上げている・・・それは即隙となった。
「ぶひぇひぇひぇひぇ!」
粘液で構成された体のどこから出しているのか解らない、解らないだけ気持ち悪い笑いと共に、念液兵の腕のように見えるものが叩き付けられる。
「!」
それでも瑠希亜は反応した。咄嗟にその攻撃を腕で弾こうとする。
いつもの瑠希亜なら、出来たかも知れなかった。だが、それまでに身を守ろうと必死でふるった拳の数が、彼女の動きを鈍くした。
ばしいっ!
頬に厚い感覚、強い殴打音。
「きゃあっ!」
それが口をついてから初めて、瑠希亜は自分が悲鳴を上げたことを知った。
どすり!
今度は鈍い打撃音。地面に仰向けに倒れ、無防備になった腹部を思い切る踏みつけられた。
「くふっ!」
息が詰まる。
既に身動き取れなくなってくの字に体を折り曲げる瑠希亜に、さらに執拗に、いたぶるのを楽しむように打撃が叩き込まれる。
頬を、涙が伝う。
ただ与えられる痛みに反応して叫びながら、瑠希亜は思った。ああ、負けたんだ・・・と。
凛名は震えていた。既に彼女のロボットは機能を停止しており、モニターもブラック会うとした闇の中、一人震えていた。
怖い、怖い、怖い怖い怖い!
歯が、かちかちと鳴る。
無力に、コクピットの装甲が破られるのを、ただ震えながら待つしかなかった。
鹿野美は、地面にへた。としりもちを付いて、目の前の光景を見ていた。
姉たちが倒されていくのを、自分を守るとラップが突破されていくのを。
逃げよう。恥も外聞もなく切実に、そう思った。
でも、足が言うことを聞かない。
膝がかくかくと笑う。怯える彼女を?それともこの後訪れる運命を?それは解らなかった。
解らないまま、鹿野美は気を失った。
恋子は、とうとうハッキングで弾道ミサイルまで使ったが、それでも敵は止まらなかった。
その事実を晴れた煙が目の前に突きつけたとき、恋子は失禁した。
屈辱。それを感じる間もないまま、敵に蹂躙される。
そう、まさに蹂躙。体だけでなく、心まで、敗北に踏みにじられていく、蹂躙だった。
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シーン4 砕け散るもの、輝くもの
スットン共和国最大にして最強の「地獄の最強部隊」パッハラ隊。それがまさに本物の地獄に叩き揉まれている頃、各国もまた業火に焼かれていた。
シュバルツランド帝国、宮殿、女王の間。
ずずん!ずずん!ずずん!
振動が、華麗な装飾を施された部屋に響く。
一見ただの豪華な扉に見えてその実完全防弾防爆の扉は、既にかなりの間敵の攻撃を不正でいたが、流石にそろそろ限界に達しつつあった。
「くっ・・・」
落城寸前である。
それまで全軍の防衛の指揮を執っていたマーテルにも、もう部下は一桁しかいない。
(もはや、これまでか)
さりとて、宮殿のてっぺんにあるこの女王の間から逃げ出すことは不可能である。
「すいません陛下、私がふがいないばかりに。」
マーテルの謝罪を、ミラルカは軽く受け流した。
「駄目ですわよマーテル、マーテルならマーテルらしく、ギャグをいれなさい。」
口では結構なことを言っているが、その顔には部下を気遣う優しい笑みが浮かべられている。
(美しくなられた・・・)
心の中で呟くと、マーテルは主君の心遣いに感謝した。腰の拳銃を抜き、扉へ構え直す。
そして、轟音と共に扉は破られた。
同時刻、ロンズ・ワイリナー王国首都、ベリーグラードでも、神聖魔法国ヴァジュラム、和国殿でも、似たような光景が見られた。
そして、スットン共和国でも。
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シーン5 18年
「ここだ!」
「見つけたか!」
パッパラ隊司令室、と書かれた扉の前に、しっと団があつまり始めた。
コピー雪花・迅花・轟花と、それを指揮するしっと戦隊である。
「がはははは、いくら死神ったって、実戦離れて十八年だ、楽に手柄に・・・ぎゃあああああああ!!」
ぐきゃ。
司令室の壁をぶち破って水島の手が伸び、しっとレッドの顔面を握り砕いた。
「わああ、や、やれ!」
コピー達が一斉に攻撃を掛け、壁が吹っ飛び、もうもうと煙が立ちこめた。
「ひ、ひ、ひひひ・・・やった!」
「そうだ。やったな・・・」
「な!??」
煙が晴れる。そこに見えたのは、
「死神・・・」
コピー迅花を全身からはえた刃物が刺さるのも気にせず踏みつぶし、コピー雪花を叩き砕いた水島の姿。
否。
それはもう、完全に死神の姿だった。
「そうだ・・・お前達がやったんだ・・・お前達が壊したんだ・・・許さん、絶対に許さないぞ!!うおおおおおおおお!」
なぎ倒し、はじき飛ばし、叩きつぶし、水島は進む。
「わわわわわわ!」
パニックに陥ったしっと戦隊の前に、早くもコピー達を潰した水島が迫った。
「・・・殺す・・・」
「どわひいいいい!」
慌てて逃げをうとうとする戦隊の前に、立ちふさがるもう一人の影。
「おーっと!逃げようなんて思わないでよ!落とし前はたっぷりつけてもらうから!」
そう。もう一人、この場に残ったのは
「ら、ランコぉ!?」
水島一純の妻、水島・アリスン・ブランディー・メルセデス・ローズマリーフォン・ランコ。
「こんな大騒ぎの時に、あたしだけおいて出撃しようなんて、駄目よ!」
「ええい、お前は・・・」
一斉射でしっと戦隊共を黙らせたランコが、水島に文句を付ける。
「覚悟は出来てるわ。」
「・・・」
「もう一人にはさせない、あなたの孤独は、私が埋めて上げる。あのとき、そういったじゃない。」
「相変わらず新婚気分だな、お前は。」
結婚式に乱入したしっと団と、複数の世界が融合した「新世界」を横断しながら大激闘を繰り広げた二人の「新婚旅行」、そのとき口にした言葉を、ランコは繰り返した。ふっと、水島は笑った。
「わかった。好きにしろ。」
「無茶、しちゃうよ?」
「その時は、私が止めるさ。」
水島もまた、あのときと同じ言葉を、より深い思いで切り返した。
「いこう!」
「ああ、娘達も危ない」
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シーン6 ゲツセマネの夜
「ぎゅおおおおおおおおおおーーーーんん!」
「ええいもう、きりがない!」
タコキューレと、その巫女が吠えている。
八本の触手と二対の羽をフル回転させて、群がる敵をなぎ倒すが、不死身の念液兵の他にも敵の数は多く、とてもさばききれない。
タコキューレの頭の上のリーナの所にまで敵がはい上がってくるのを、自ら羽根飾りの付いた槍をふるってたたきおとす。
「ええいっ、このっ!このっ!」
「わーーーーーっ!」
滑りやすいタコキューレの頭上から敵は次々転落していく。
「「ふう、なんとか・・・!」
瞬間、リーナは背後に殺気を感じた。慌てて槍を握りなおし、振り返る・・・が、間に合わない!
「ごわっ!」
次の瞬間、まだ振り向ききっていないリーナの後ろで、忍び寄っていたしっと団員は崩れ落ちた。
「・・・?」
もはやこれまで、と覚悟を決めかけていたリーナは、きょとんとして辺りを見回した。敵の攻撃もとぎれている。
「り、リーナさん・・・」
「・・・純也か?」
意外なほど近くに、純也がたっていた。手に、硝煙を引く突撃銃を握りしめて。
「どうしてここに!?この基地はもう持たないぞ!」
「だって!」
純也は必死の面もちで叫んだ。
「うむ。どうしても来たい、といったのでな。」
「マスター!?」
純也のすぐ後ろに、科学喫茶タチバナのマスターが機械の脚からジェット噴射をして宙に浮かんでいる。
「私達もいるヨ」
そして、アンドロイドのウェイトレス達も。いずれも、激しい戦闘をくぐり抜けてきたらしい。
「どうして、喫茶店のマスターとウェイトレスが、こんな・・・」
「いや・・・」
そういうと、マスターはゆっくりと首を振った。
「科学喫茶タチバナのマスターとは仮の姿。私の名は・・・」
「名、は?」
「町の発明おじさんだ。」
第8話 終わり 第9話に続く
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次回予告 (声・悪の博士「作者」)
試練を経て、長い因果の和を断ち切るため、少年はただ一人、戦士として立つ。
一人?否。
その目には救うべき者があり、その傍らに共に戦う者があり、その背に、全世界の人を背負って。
次回、突撃!パッパラ隊2 第9話 「ここと永遠の間で」
・・・時は来た。