突撃!パッパラ隊S
ミッション9 「ここと永遠との間で」
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シーン1 立つ
ガール半島近郊の山中。
「・・・・・・」
そこに、一人滝にうたれる純也の姿があった。硬くつぶった瞼の裏に、一月前の戦いが思い出される。
「残念だが、この基地はもう持たない。司令達も出撃したようだが・・・」
努めて冷静に語ろうとするマスターこと発明おじさん。
「・・・・・・」
暗い空気が満ちる。
「此処は脱出するのだ、そして力を付け、再起を図るしかない」
「・・・はい。」
渋々頷いた純也は、、次に聞こえたリーナの言葉に驚愕した。
「その脱出路、私が開いてやろう」
「リーナ!」
「タコキューレの図体では、逃げ隠れすることは出来ない。でも私達は一心同体、おいていくこともできない。ならばこの場にとどまって、最後まで闘うしかないでしょう?」
「む・・・」
唸る発明おじさん。
「そ・・・そんな・・・。」
立ちつくす、純也。
「純也・・・」
そんな純也に、リーナは健気に優しく微笑んだ。
「私だって、怖いよ・・・。でも、純也のこと信じてるから、戦える。必ず・・・助けにきてね。」
一滴だけ、アリーナの褐色の頬を涙が伝う。今は泣きじゃくる暇もない。
「うん!うん!・・絶対、絶対いくから、絶対助けに行くから!」
必死に叫ぶ純也。
「まずい、もう追っ手が!早くいけ!」
リーナにかばうように突き飛ばされた純也を、発明おじさんが抱えて飛び上がる。
「リーーーーーーーーーーナーーーーーーーっ!」
かっ、と目を見開く、純也。
その瞳に、気弱さはもう、なかった。
「よく、今までの修行に耐えた。今日こそ、戦いの時だ」
そういうと、発明おじさんは一振りの軍刀を純也に渡した。
「これは、私がパステリオン達の魔法を研究して作り上げた、持ち主の意志を力に変える刀だ。刀を抜き、願いと共に「軍装」と叫べば、心あきらめない限り力が手に入る。
「あきらめない、かぎり・・・」
確認するように呟く純也。
「真に強き思いがあれば、その力は無限大だ。これなら、「ヤツ」とも互角に戦えるだろう。」
「はいっ!」
「だが侮るな、「ヤツ」もその力は、邪心とはいえ心から来る物。・・・がんばれよ。」
こくり、と純也は頷き、刀を抜いた。
「軍装!」
刀身から光がほとばしり、純也を包んでいく。その閃光がそのままに、純白のプロテクター付きの軍服を形作っていく。一旦腰に巻き付いた光がベルトとして実体化し、そこから上下の服が生成されていく。額に星が煌めき、そこから軍帽、更に星から光線がのびて手と足に巻き付き、手袋とブーツを形作り、最後に背中からマントが吹き出る。光の瞬きが消えたとき、「変身」を終えた純也が、そこにいた。
シーン2 助けてと呼ぶ声あり
パッパラ隊基地は、もう、ない。
そもそも、スットン共和国という国家すら、地図上から消えた。
否。
今や、世界中の国家が消滅し、世界は、しっと団に支配されていた。
しっと団員が絶対の存在とされ、いかなる無法も許される暗黒の世界。
その世界の象徴とされ、まさに今の世界そのものの様子を呈する巨大要塞、しっと城・・・それは、旧パッパラ隊基地跡地に立っていた。
「げはははははははは!」
繰り広げられる、異様な光景。
最上階の天守閣、そのど真んの玉座に腰掛ける、異形の怪物。
黒い剛毛に覆われた体、天をつく角、体中あちこちに無節操に開いた長い舌を垂れ流す牙の生えた口、はらわたのようにぬめぬめした皮膜翼、身長五メートルをこす三面六臂の巨体。
魔王、とでも呼ぶべき者。その正体は、誰でも頭部を見ればおぞましさと共に理解できる。
頭部の三面。それは、欲望に魂を売って力を得た者達、カズマ・デーレアム、アントナン・ギガイル、しっとマスク、いや宮本幸広。
人を捨てて得たその力は、彼らが羨望してやまなかった者達・・・勇者王ロッコ、パステリオン、水島一純達・・・を倒し、野望である世界征服を果たし、欲望のハーレムを満たすために使われた。
「そらそら、もっと色気を見せないと取って食うぞぉ?」
「・・・くっ、は、はい・・・」
「うう・・・」
のろのろと、かつて正義の味方だったり、女王だったり、軍人だったりした、打ちのめされ、痛々しいまでに憔悴した女達は、屈辱に無き暮れながらも従うしかなかった。男達は地下に監禁されているし、たとえ全員そろっていたと頃でこの怪物には勝てそうもなかった。
「ふははは、パステリオン、お前達は正義の味方ではなかったのか?悪人に従ってどうするのだ?ん?」
得意満面、今まで歯が立たなかったパステリオンをあしざまにののしるアントナン。
「フィー、結局、お前は俺の女になるしかなかったんだよ。げへへへへへ・・・」
未だに未練を引きずっていた相手に言うことを聞かせて喜ぶカズマ。
いずれも、力に任せて他者を隷属させる、最低の行為。
特に、しっとマスクは激しかった。
びしっ!
ばしっ!
がすっ!
「お前等は何だ?言って見ろぉ!」
パッパラ隊Sの女性達を鎖でつないでずらりと並べ、痛めつけながらわめく。
「え、瑠希亜、お前は何だ?言ってみろ?」
「あ、あたしは・・・あたしは・・・」
怯え、涙ぐむ瑠希亜。活発で元気、少し生意気だった面影はドコにもない。
「この状況で分かんねえようなら、よっぽど頭が悪いぞ、このぱーぷー娘。わしら歯なんだか解るな、お前等に命令する主人だ。じゃあ、したがうお前等は何だ?言って見ろ?」
「あたしは・・・ううっ、うええん。ど・・・どれ・・」
「言うな!こんな最低のヤツに屈服する必要はない!」
言葉鋭く、リーナが遮る。一番ひどく拷問を受けたあとがあるが、その目はまだ闘う光を見せている。
「このっ!!」
ばしぃっ!
体の口から生えた長い舌が鞭のようにリーナを打った。
「いい加減にしろ・・・いい加減あきらめろぉ!」
焦ったようにわめくしっとマスク。
(あきらめないさ・・・)
リーナは、痛みに耐えて不敵な笑いを浮かべた。
「っっっっっ!!!」
さらに打擲を加えられるリーナだが、それでも意志的な瞳は変わらない。
(きっとくる・・・純也は・・・)
「このおおっ!」
ずず・・・ん!
「うおっ!?」
「キャーッ!」
更にもう一発見舞おうとしたしっとマスクが、よろけるほどの衝撃。
「何事だ!?」
わめくしっとマスク。
「高速で接近する物体から、攻撃を受けました!」
レーダー員からの報告が放送される。
「すでに、目視距離まで接近!映像出ます!」
同時に、正面の壁が巨大なスクリーンとなる。
そこに映っていたのは・・・
「純也!!!」
彼は、来たのだ。
シーン3 宣戦・激闘
「純也・・・」
呆然とスクリーンを見つめる蘭美香。
(あたし達を・・・助けに来たのか!?)
そんな、無理だ!!
姉妹全員が、そう思った。自分たちでも歯が立たなかったのだ、純也に何が出来る?
「やめろ、逃げろ純也!」
モニターに凛名が叫ぶが、向こうに声が届くわけがない。
「何だ貴様はぁ!」
外を見回っていたしっと団員ががなる。見回りをやらされて、かなり気が立っている。
「怪しいやつめ、まあいい憂さ晴らしに殺されやがれ!」
無茶なことをほざきながら、しっと団員は念液兵をけしかけた。
「!!」
念液兵に、純也が殴り倒される、そう思った者達が目をつむった瞬間。
「ハッ!」
逆に、身をかわした純也が粘液兵に拳を突き立てる!
びしゃっ、と音を立てて、崩壊する粘液兵!
「な・・・・・!」
それを見ていた、一人を除く全員が驚愕した。そして、その「一人」である発明おじさんが嬉々として解説する。
「説明しよう!嫉妬という精神ネルギーで操られる液である念液兵に、純也君が変身によってエネルギー化した自分の心をぶつけることにより、液体に兵士の形を取らせていた嫉妬エネルギーを消滅させたのだ!それにより、しっと液は形を保てずに崩壊する・・・というわけだ。」
「みんな・・・」
純也が後をつなぐように言った。恐らく隠しカメラが見えているのだろう、まっすぐにこちらを見ている。
「必ず、助けに行く。だから、待ってて!」
言うなり飛びかかってきた次の粘液兵をはじき飛ばす。壁に激突した念液兵は、しぶきを散らして消える。
「殺せぇぇぇ!!」
アントナンの顔が通信装置に怒鳴る。
戦いの火蓋が切られた!
「たあっ、えいっ!」
わらわらと迫り来る念液兵を、機敏な動作で次々打ち倒す純也。だが、敵も数が多い。
「このっ・・・どいてっ!」
気合いと共に、開いた掌を突き出す。変身によって具現化された精神エネルギーが、奔流となって炸裂する。
「ぎゃああああああああああああああっ!!」
消し飛ぶ粘液兵と、しっと団員達。一瞬純也は顔を曇らせたが、既に決めた覚悟は揺るがない。
敵を「殺す」ということを、真正面から受け止める。
「ぐおおおおおおおおおおおおおおん!」
ジェラシアンが純也に巨大な脚を振り下ろした。ずしん、と地面が揺れる。
「ぐぶぶぶぶ・・・」
やった、と確信して笑うジェラシアン。だが、その笑顔はすぐに引きつり崩れた。
「んんん・・・・・たーーーーーーーーーっ!!」
ジェラシアンの脚を持ち上げ、純也が立ち上がった。そしてそのまま投げ飛ばす!
「ごああああああああああああああああ!?」
更にそれを追って純也もジャンプ、落ちてくるジェラシアンと交差した瞬間、刀がひらめき巨大なジェラシアンを一刀両断した。
「がああ!」
「ぎゃおおおん!」
残りのジェラシアンが目から炎状の光線を乱射する。さらに、しっと城からも念波砲の集中砲火。
「くっ!」
殺気に、翻したマントで防ぐ純也。心の強さが物質化したそれは、見事に敵の攻撃をはじき返したが、反動に押される純也。
マントの表面にぶつかり弾ける炎。それが純也に炎上するパッパラ隊基地を思い出させる。
(もう、誰も助けられないのは・・・・・・いやだ!!)
気力の高ぶりに、額の星が輝き、その光が全身を覆い、刀身に伝わる。
「負けられないんだぁぁああああああああああっっっ!!!」
そのまま、薙ぎ払う!
ギドンッ!!
超巨大なギロチンが落ちるような音と共に、ジェラシアン諸共城壁が切り落とされる。
「純也、いけ!」
さっきから発明おじさんや姉妹達(同じ制作者に作られたロボット、という意味)とともにコピー迅花・轟花・雪花と闘っていた藍花が叫ぶ。
「・・・こいつらなら、精神エネルギー体ではないので私達でも戦える。心配は無用だ。」
と、石楠花。
「私達だって、戦えますし、マスターや純也さんのために闘いたいんです!」
紫陽花が叫ぶ。
「もちろんあたしたち全員、気持ちは同じだよ。」
牡丹花が笑う。
「だから、純兄は自分の出来る、自分にしかできないことをしなきゃ!」
海棠花が、店に純也がいた頃と同じ呼び方ではげます。
「もはや教えることは何もない!大丈夫だ、自分を信じて突き進め!」
締めくくるように、発明おじさんが敗れた城門を指さす。
「・・・はい!いってきます!!」
軽くほほえみを返し、純也はしっと城に突入した。ほんのわずかのうれし涙を、後に煌めかせて。
「・・・何も言えなかったにゃ。純也〜・・・」
頭頂部から生えた猫のような耳をひこひこさせながら、それまで無言で純也を見つめていた蘭花が呟いた。
「蘭花達みんな、純也のこと・・・」
暫く逡巡し、結局蘭花はこう結んだ。
「待ってるからにゃ・・・」
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シーン4 理由
場内に突入した勢いのまま、次々と襲いかかる敵を蹴散らして純也は進んだ。
「死にたくない人はどいて下さい!!」
壁を砕き、扉を叩き割り、天井をぶちぬいて、ひたすらまっすぐに天守閣を・・・倒すべき敵が、救うべき者がいる場所を目指す。
「待てぇい!!」
「ここから先に、」
「行けると思うなよ!」
「俺達嫉妬戦隊が、」
「お前をぶち殺す!」
「!」
天守閣まで後わずか、の所まで来ていた純也の前に立ちふさがる、五人のしっとマスク。目からそれぞれに違う色の炎を吹き出させた、宮本幸広の子供達。
「食らえ、メンズチーム、スクラム!」
素早い動きで、肩を組んだ嫉妬戦隊は純也を取り囲んだ。
「必殺、漢妄想火炎地獄ぅ!!」
強烈な湿気と、熱と、臭気と、そして念が押し寄せる。
「くぅううううっっ!!」
歯を食いしばり、耐える純也。
「こ、のおおおおおっ!!」
強引に突破し、赤い炎の嫉妬レッドをはり倒す。
「ぬあ!」
そこからは、旋風が渦を巻いたがごとし。
「・・・いくか。」
嫉妬戦隊をも突破した純也は、天守閣へと上る階段の前に立っていた。
と、底に二人の嫉妬団員が現れる。
「?」
他の一般団員より、大分年を取った彼らの名は、杉野、海岸。
「戦い・・・ますか?」
「いや、俺達が勝てる相手じゃねえだろ、お前さんはよ。」
皮肉めいた口調で、杉野がぼやく。
「じゃあ、何故?」
「聞きたいことがある。」
こんどは、海岸。
「・・・どうぞ。」
「俺達のような少数派は・・・殺されて当然なのか?お前のような「社会的に正義の味方とされる存在」の行動は、絶対的に正しい法律か?」
ひどく、難しい問い。
だが、純也は迷わずに答えた。
「思わない。けど、あなた達があなた達の理由で戦いを選んだのなら、自分なりの理由のため、信念のままに、戦いで答える。それだけです。そして僕は、仲間を守るために、取り返すために闘います。」
決意に満ちたその表情を見て、二人は憑き物が落ちたように笑った。
「そんじゃ・・・俺達を倒して進みな!!」
飛びかかる二人。ひらめく刃。
そして純也は、階段を上った。
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シーン5 彼は、来ることが出来たのだ
バン!
ついに扉が開き、天守閣に純也が現れた。
その展開に、まだ蘭美香達は信じられないように呆然と見ている。
「純也・・・」
リーナがかすかな声を絞り出した。その痣のある顔を見て、純也は奥歯をかみしめた。
「ごめん。遅くなって。」
うつむく純也に、リーナは首を振った。
「いいの・・・。ありがとう。がんばってね」
「えええい、いつまで話しとるつもりだ!」
「うらやましい会話しやがって!」
「許さん!」
口々に、体と心を売った首達が騒ぐ。
きっ、と騒ぐ首達に向き直る純也。
その眼光は怒りにとぎすまされ、さらに鋭い。
「「「死ねい!」」」
三つの顔が同じ言葉を言うと同時に、全身に開いた口から長い舌がのびた。
後方宙返りでかわした純也がたった今までいたところに、床を貫通してどすどすと刺さる。
「「「しゃああああああ!」」」
そのまま更に薙ぎ払う。今度は純也の体が貫かれる、そう見えた刹那純也が軍刀で迫る舌を切り落とす。
「「「ぐぇああああっ!!」」」
痛手を受け、わめきながら後退する敵に、純也はたたみかけるように接近した。
「ええ〜〜〜いっ!!」
ぎぃん!
袈裟懸けに切り込んだ刃を巨大な手の爪で受け止めるカズマ。
三つの顔が付いた首が回転し、純也のほうにアントナンの顔がむく。
「妖神縛牙乱舞ぅ!!」
叫んだアントナンの口から大量の白くぶよぶよの幼虫のようなものが吐き出され、純也にからみつく。
「!、こんなものっ!」
ふりほどこうとする純也。その地からに反応して、妖神が牙を剥いて食らいつく。
「があっ!」
鮮血が白い軍服にしみこむ。それを見て、しっとマスクは笑った。
「思い知れ嫉妬の業火!目ん玉ファイヤー!!」
嫉妬マスクの目の周りの炎が、本物の炎と化して純也を襲う!
「・・・・・っ!!」
凄まじい炎は、純也を飲み込んだ後更に城壁を貫通した。
「す、純也〜〜〜!!」
叫ぶ瑠希亜達。
「くくっ、死んだか・・・」
だが、炎が消えた後にある光景は、しっとマスクの思い描いた者とは違っていた。
「!!」
炎が通り過ぎて、黒い焦げあとで出来た一本の道。
その道を、一直線に純也が走ってくる!!
「てやあああああああああああ!!!!!」
ずばぁぁぁぁっ!
渾身の一撃が、咄嗟に防御しようとした舌と腕をもろともに切り裂き、巨大な体を存分に薙ぐ。
「!?げえええっ!?」
一瞬状況を理解できないような声を出すしっとマスクの体を、純也は更に切り刻む。
返り血で真っ赤になりながら、純也は攻撃をやめない。
「っおおおおおっ!!」
残った触手と腕を総動員して、純也を攻撃する三つの首たち。
互いに避けもせず、防ぎもせず、ただただ互いの心を具現化させた力をぶつけあう。
そして・・・
「っっあああああああああああああああああああああっ!!!」
ついに、決着が付いた。
立っているのは・・・純也。
「があ・・・何故だ、何故勝てぬ、何故倒せぬ・・・」
納得がいかないという風に呻くアントナン。
純也は、静かに言った。
「僕自身は、弱かったし、まだそんなに強くないかも知れない。だけど」
一旦言葉をきり、彼が此処まで来た目的を見る。
「みんなのおかげで、此処までこれた。」
「純也・・・」
その様子を見たカズマの唇が、残酷な笑いの形に歪む。
「そうか。なら・・・これでどうじゃあ!!」
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シーン6 立ち上がるその明日に
「ああっ!?」
驚愕の声。
カズマの操った舌が、蘭美香達姉妹と、リーナをからめ取り、体の前にくくりつけた。
「げはははははは!」
笑うカズマ。
「なるほど・・・貴様の刃、この盾を貫くことは出来まい!」
アントナンも嗤う。
「大人しく、軍装を解け!そして屈服せい!」
「卑怯だぞきさまら!武人の恥を知れ!」
しっとマスクの要求に、リーナは怒りの声を上げた。
「やかましい!」
ぎりぎりとリーナを縛る舌が締まる。
「あぐ、ぐうぅっ!純也、かまうな、私諸共にこやつ等を撃て!」
酸欠状態になりかけながらも、必死に言葉を絞り出すリーナ。
「やめて下さい!」
たまらず純也は叫んだ。
「ほう・・・なら・・・」
純也は迷った。これは事実上、世界と六人を天秤に掛けろというに等しい行為である。
「く・・・」
純也には、どちらを見捨てることもできなかった。自分でも甘いと思うが、こればかりは譲れない。
純也は、賭けることにした。
「解った。」
軍装が光になって刀に戻る。そして、その刀を投げてやる。
「くっくっく・・・お返しの時間だ!」
頸たちが、嗤った。
「あ・・・ああ・・・」
蘭美香は目の前で繰り広げられる光景に震えた。
無力となった純也を、自分たちを捉えている怪物が何度も打ち据える。
既に大量に出血し、二、三カ所以上骨折しているようにも見える。
しかし。
それでも純也は、何度も、何度も立ち上がるのだ。そして、立ち続けようとする。
「何で・・・どうして、そこまで・・・」
「ええい、糞!いい加減にしねえかぁ!」
殴り疲れたカズマが怒鳴る。もはやその声にすら体が揺らぐのに、純也は立ち上がるのをやめない。
「この・・!?」
更に殴りつけようとしたカズマは、一瞬訳もなくひるんだ。一瞬、何か凄く恐ろしい者を見たような気がしたのだ。
「!!」
そして気付いた。それは、純也の目だ。ここまでされても、彼の目はまだ闘っている。わずかも敵を恐れず、正面から見据えている。
「ぐぐ・・・」
その視線に、彼らは押された。
そして、その瞳は、蘭美香も見た。
(純也は・・・あんなになっても・・・それに比べて・・・)
恐怖に怯え、屈服寸前だった我が身が悔恨と共に思い出される。
(私達は・・・)
そして、蘭美香ははっ、と気付いた。しぶとい純也にいらだったのか、しっとマスク達は純也に集中して、近づいて殴っている。そして・・・。
純也が投げた刀が、すぐ近くにある。
(純也、あんた・・・)
瑠希亜も気付いた。純也は、自分達を信じている。
(そうだな・・・私達も立ち上がらなきゃ、純也、貴方がそうしたように・・・)
凛名は、その名の通り再び凛とした瞳で、姉妹達を見た。
頷き会う。
「ぐううううう、いい加減に・・・ぐぎゃ!?!?」
いきなりの激痛に、アントナンは悲鳴を上げた。
「な!?」
何だ、と首をひねるまもなく、更に連続した痛み。
「ぐげぇぇぇぇぇぇ!?!?」
びしゃあ、と床に血が落ちる。
「今まで、良くも家の弟好き勝手にやってくれたわね!」
「あたし達はもう屈服しない!恐れない!」
「純也の勇気に、答えてみせる!」
「な・・・・」
たった今まで、打ちひしがれ、ただ唯々諾々と人質になっていた少女達が、別人になったようにしっかりと立っている。
皆の勇気、純也はそれに賭け、そして勝った。
「ふ・・・」
リーナが笑った。
「終わりよ、あなた達。」
いつもの冷静さを取り戻した、恋子の声。
「純也兄ちゃん!!」
鹿野美が、刀を純也に投げる。
「うん!」
すらっ、と刀が引き抜かれる。
「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
ヤケになって突進するしっとマスク。
「おおおおおおおおおおおおっ!!!」
そして純也は、自らがなすべき事を成した。
ただ一刀、振り下ろす。
斬!!!!!
「っわああああああああああああああああああああああああああああああああっっ!!!」
閃光。衝撃波。
純也の一撃は、合体したしっとマスクとアントナンとカズマを完全に消滅させたばかりか、波動となってまき散らされた「力」が、残る念液兵やジェラシアン、しっと団員などを消滅させていった。
そして、上空によどむ、暗雲すら。
城にいた、全ての人が、現れた眩しい青空を、見上げていた。
「やったな、純也・・・」
父、水島一純が。師匠、発明おじさんが。姉妹達が。江口少将と、その家族が。桜花達ロボットが。シルヴィー達科学者が。
そして・・・リーナが言った。
「本当に良くやった、純也、ありがとう・・・」
にこっ、と、純也は笑った。
「こんなに、なって・・・」
驚くほど華奢な純也の体に、リーナの褐色の腕がしなやかに巻き付く。
二人の視線が絡む。愛おしげに。
ゆっくり、ゆっくり、二人の顔が近づく。
「ほんと、凄いぜ純也!流石私の妹だ!」
いきなり蘭美香が純也にキスした。
「わあっ!!」
真っ赤になって驚く純也。
「惚れ直したぜ〜〜〜!!」
頬ずりする。
「こら待て!あきらめる、といっただろ!!」
突き飛ばされたリーナが慌てて怒鳴る。
「それは昔の話よ!大体なんだって知ってる!?」
「マスターが教えてくれたんだ!」
「取り消す!!」
「何だと、この〜〜〜〜!!」
「純也ぁ〜〜〜!」
噂をすれば、マスターこと発明おじさんが、蘭花達と走ってくる。
「あ、マスター!」
リーナが何事か言おうとした刹那。
「純也〜〜〜〜!無事だったかにゃ〜〜〜〜!?!?!?」
「うわわわわっ!」
今度は蘭花が純也にしがみついた。
「とってもとっても心配したにゃ〜〜〜〜!!」
「こら!何だおまえはぁ!」
「ええい、私を無視するなぁあーー!!」
純也を巻き込んで、激しいとっくみあいが始まる。
「うわ、いたた、ちょっと、やめてよぉ〜〜〜〜〜!!!」
その様子を見て、思わず笑みがこぼれる水島夫妻だった。
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エピローグ・・・じゃない!次回に続く!!!
「緊急事態発生!緊急事態発生!」
何とか再建なったパッパラ隊基地に、やかましくサイレンが流れる。
「イーストシティに、テロ集団力士軍団が出現!至急出撃せよ!繰り返す・・・」
きーん・・・
滑走路にエンジン音を響かせて立つ、五人乗り万能スーパーロボット・ランコちゃんアンドその娘達用ロボMkW。
「よーっし、行くぜぇ!」
凛名が、景気良く叫ぶ。
「任せたわよ、凛名ねえちゃん!」
「安心しろって。凛名姉貴の腕は確かだ。」
「全センサー、エネルギー、コンピューター、エンジン、オールグリーン。」
わいわいと会話。
「おっ、あいつも来たな。」
スクリーンに映った者・・・より戦闘的に進化した神獣タコキューレを見て、蘭美香は嬉しそうに言った。
「当然だ。なんなら、私だけでも大丈夫だぞ?」
と、軽口を叩く神獣の巫女・・・シロガネ・リーナ。
「駄目だよ、みんな一緒に頑張らなきゃ。」
「「「「「「「純也!」」」」」」
思わず、六人の声が一緒になる。
あの日、世界を救った少年は、おごるでもなく偉ぶるでもなく、純白の軍服をまとい巨大な二つの影の間に立っていた。
「ああ。」
「解ってるって。」
二つの方向から、笑顔がこぼれる。
「桜花さん達から蘭花さんたちまで、謹花さんや百合花さんももう出動してます。急ぎましょう!」
「ああ!」
「それじゃ、いっくぜぇ!」
今度こそぴたりとあった青空を、駆け上っていく純也達。
それを見送りながら、水島一純とランコは、会心の笑みを浮かべた。
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あとがき
あの日、「突撃!パッパラ隊」が「終わった」日、我が輩は一人の少年に出会った。
その少年の名前は、水島純也。
父に似たようで、似ていない、気弱そうな少年。
貴方は、なぜそんな、自分を否定するような顔をしているの?
どうして?
その問いかけから、この物語は始まりました。
結果、問いの答え以上の物が、見つかった気がします。
純也君、我が輩からも、言いましょう。
「良くやった」 と。