突撃!パッパラ隊2

ミッション6 特別ふろくパッパラ隊S秘密大百科


--------------------------------------------------------------------------------


シーン1 これがパッパラの朝だ!

 パッパラ隊Sの朝は、ごく一部の人間に限ってやたらに早い。pm5:00には、もう純也と、純也をほっておけない桜花が起き出して食事の準備を始めている。
それと同時に、瑠希亜が朝のトレーニング。これのせいで純也はやたら早起きして朝食の用意をしなければならない・・・のだが、最近瑠希亜はこれをさぼり気味だ。何故かと訊かれて本人曰く、
「だって、敵みんな弱っちいんだもん、あくせくやる必要ないわよ。」
 だそうで。それでもさぼらず真面目にやるときもまだ半分くらいあるので、結局純也は瑠希亜がさぼるさぼらないに関係なくこの時間に起きなければならない。
はっきりいって普通の人間ならやってられないところだが、純也は黙々と従っているし、瑠希亜はこれが迷惑であるということに気が付いていないらしく、(まあ瑠希亜が悪いと言うよりは純也がはまりきっていて違和感を感じさせないからなのだが)、この関係は続いている。
 それから残りの姉妹達が起きてきて、瑠希亜に遅れて朝食をとる
 そして・・・
「それじゃ、いってきまーーーす!」
「いってくるぜ。」
「あ、姉ちゃんお弁当!」
「おっと、忘れてた。悪いな、一生懸命作ったのに」
「純也はやくー、遅刻しちゃうよ〜」
 まるで、学校に行くような雰囲気。
 否。
 雰囲気だけではない。
 事実、出動がない日は学校に通っているのである。もっとも、面白く無さそうな作戦の時は作戦があっても出動しないことがあるが。
 きわめて趣味的な話であるが、これには水島総司令の意向も絡んでいる。
 水島は子供を軍人にするつもりなど更々ないというよりは絶対反対で、「子供は学校にきちんと行く事が本分」と考えているのである。(当然)自分は父親の特訓につきあわされてまともな学園生活を送れなかったのに、(普通のボールでは野球が出来なかったり)娘達が自ら軍隊を楽しんでいるのだから、心中複雑であった。
 それはともかく、純也達が学校に行ったあと起きてきた隊員達は、毎朝ながら五姉妹の意外な食欲に驚愕するのであった。


--------------------------------------------------------------------------------

シーン2 学校大百科

 さて、そんな純也達が通う学校だが、この姉妹は年齢が離れているので小、中、高と合計三つの学校に分かれて通っている。
 それぞれの様子のわかりやすく代表的なところをを見てみると、こうなる。

1.恋子・鹿野美の場合

「おっはよーございまーす」
 元気な声を上げ、鹿野美が校門を走り抜ける。
「おはよ・・・ふあ・・・」
 そのあと少し遅れて恋子が、眠そうな目をしながらゆっくり歩いて同じ校門をくぐる。
「恋子お姉ちゃんまた夜更かし?」
 くるっと元気良く振り返り、鹿野美は二歳上で小学六年生の姉に尋ねた。
「ん。ちょっと調べ物してて、結局徹夜」
「今度は何処にハッキングしたの?」
「ヴァジュラム和國殿メイン魔術コンピューターと、あとうち、つまりスットン共和国軍のメインコンピューターの機密データ。」
 全然小学生の姉妹のと思えない会話。
「ヴァジュラムのはこないだのアントナン関係だって解るけど、・・・うちの機密って何?」
 妹の再度の問いに、恋子は首を二、三回回すとだるげな顔と声で返事をした。
「なーんかさ・・・パパ達何か秘密で調べてるみたいなのよ・・・でも駄目。あれだけあさって出てこないところを見ると、多分アレはコンピューターに入れてないみたい。だとすると本当に一部の人しか知らない、知られちゃいけない事だと思うんだけど・・・」
 水島五姉妹の内で最も物をよく考えている四女、恋子。その推理は妹の歌声で遮られた。
「だーれも知らない知られちゃいけ〜ない〜、デ○ルマンはだーれーなの〜か〜・・・なんちゃって」
 いきなり恋子の言葉の端をとって、デ○ビルマンの歌を歌い出す鹿野美。
「こら!!版権めんどくさくなるじゃない」
「あはははは・・・。そんな深刻に考えなくても大丈夫大丈夫」
「・・・かもね」

2.凛名・蘭美香の場合

「おいーーっすう陽司ぃ!!」
 そう叫び、凛名は廊下で追いつきざまに後輩の男子の背中大思いっきり平手でぶったたいた。
 叩かれた少年・・・凛名より一学年下の一年生、天堂陽司はしかし大したダメージを受けた様子もなく振り返る。
「あ、凛名先輩!おはようございます。」
 元気に返事をする陽司に目を細める凛名。
「ん。こないだお前にバイクにつけてもらった部品だけど、結構良かったわ。」
「そりゃ、天晴兄ちゃんの作った物だからなあ。」
 ぽりぽりと後頭部をかく陽司。
「つーわけで、今日もお前の家遊びに行くからな。」
 変に胸を張る凛名に、陽司は突っ込みを入れた。
「なにがどうして『つーわけで』なんだ?」
 にかっと笑い、凛名は今度は陽司の肩をパンと叩いた。
「気にすんなってーの。」
 そして一瞬だけまじめな顔になり、いくらかのお金を差し出した。
「それと・・・これ、少ないが受けとっといてくれ。」
「すまないっす〜・・・」
 涙ぐんで喜ぶ陽司だった。貧乏はつらい。
 陽司が去ったあと、凛名はむすっとした。
「んもう、すこしは気づくなりどきどきするなりしろよ・・・。まったく、妹、たしかつばさとか言ったが・・・しか頭にないんだから・・・」
 ほんの少し、純也に向けるのとはまた違った想いを漏示に向けている凛名だった。
「悩んでるみたいだな」
 いつの間にか後ろに立っていた蘭美香が隠し持っていたライフルを取り出す。
「なんだったら、俺がつばさを狙撃してやろうか?」
「いい」
 即座に、そしてきっぱりと凛名は答えた。
 さて、そのころ純也達は・・・


--------------------------------------------------------------------------------

シーン3 大図解進路指導

 純也は・・・いわゆる進路指導の三者面談を受けていた。
 相変わらず体を縮めるように椅子に腰掛けた純也の横に水島、反対側に瑠希亜。その二人の前に教師が座っている。純也はかちかちにあがっていた。陸軍元帥である水島を前にした教師も非常に緊張していたが、純也はそれ以上である。
 はっきり言って、今にも失神しそうであった。
「え・・・と。それじゃ、始めましょうか。純也君はそもそもどういう進路を希望で?」
 教師の質問に純也はうつむいた。
「・・・まだ決まっていません、すいません。」
 その純也の返事に教師はあわてた。何だか自分が悪い鬼教師で純也を虐めているような感覚にとらわれたからだ。純也は、何となくそう言う印象を持っていた。
「い、いや、何も謝ることはないんだ。」
 確かに、謝る必要はないのだ。全く。ただ、江口少将に励まされたとはいえ純也の態度はまだまだ弱々しく自信なさげだった。
「ああ、じゃあ瑠希亜さんは?」
 教師の問いかけに瑠希亜は答えた。
「えっと、スポーツ界から引く手あまたなもんで、どれか面白そうなのをやろうと思っていましたけど。」
 そこで瑠希亜は一旦言葉を切った。
「けど?」
「最近始めた軍人稼業が面白くて、気が変わったの。あたし、軍人やって見ようかと思う。」
 その瑠希亜の言葉に水島は眼をむき、そして叫んだ。
「駄目だ!!!」
「ひえっ!」
 驚く教師。
「何でよ!!」
 瑠希亜は叫び返した。
「何故でもだ!お前も純也も、蘭美香も恋子も凛名も鹿野美も、兵士にするつもりは更々ない!!いや、絶対にさせない!!私の味わったようなつらい想いはお前等には味あわせない!!」
 半生の記憶を込めた水島の叫び、それも瑠希亜は気にしなかった。
「やーだ!軍人面白いじゃない!絶対なってやるから!」
 にらみ合う二人、気迫にひるむ教師、忘れられる純也。

ずどーーーーーーんん!!!!

 その時、突如教室の壁がふっとんだ。逆光をまとい、仁王立ちするその影は。
「ね、姉さん!?いや、親父か!!」
 水島の姉、いやそれに憑依した父つまり純也達の祖父の霊が高笑いを響かせ現れた。
「ふはははははははははははははははは!!!馬鹿め、純也は戦士となるのだ!一純以上の、地球最強の戦士にな!」
 その言葉に水島が怒りを向ける。
「純也は戦士なんかになるような子じゃない!純也は優しい子だ!」
 瑠希亜も良く事態を解っていないらしいが一緒になって言う。
「そうよ!大体純也はそういうことやるタイプじゃないんだから!」
 息子と孫娘の批判に、祖父は嘲笑で答えた。
「ふん、大馬鹿が。純也の素質に気付かないのか?」
「どこにそんなものがあるのよ!純也に才能なんて無いわ!」
 瑠希亜よ・・・言い合いが白熱しているとはいえこの言葉はちょっと誤解を招くんじゃないか?失神寸前の頭で、哀れな教師はそんなことを考えた。
「貴様等の目は節穴か?純也は一純のような訓練を受けずに、あれだけの惨事に耐えているのだぞ!それがどれほどのことだと思う!?」
 あっ、と水島は声を上げたが、それでも一歩も退かない。
「絶対純也は戦士にさせない!」
「いや、戦士にするのだ!」
「もう・・・もうやめてよ!!!!」
 二人の言い争いを、突如血を吐くような絶叫が遮った。
 純也だ。目に涙をため、拳を握りしめて必死に立っている。
「僕は・・・僕は・・・僕はどれだけとるに足らなくても僕だ!おじいちゃんやお父さんや姉ちゃん達の人形じゃないよ!!!!」
「純也・・・」
 呆然と、水島が呟く 純也は、必死に立っていた。


--------------------------------------------------------------------------------

シーン4 科学喫茶タチバナの秘密・その一

 放課後。
 瑠希亜たちは「五人で」街をぶらついていた。
「・・・そうか、そんなことが・・・」
 うつむき加減に呟く蘭美香。
「『人形じゃない』かあ・・・考えてみればあたし達、純也のこと確かにそう扱っていたかもね・・・」
 頭の後ろで手を組み、少しのけぞり気味に、凛名。
「あたしたちが良かれと思ってしていたけど・・・純也に重荷になっていたのかな・・・」
 珍しく悩んでいる瑠希亜だが、既に頭部からは知恵熱で煙が立っている。
 鹿野美も同じく。こちらは話すこともできないほど重傷だ。
「純也・・・」
 切なげに蘭美香は呟いた。だが次の瞬間。
「まあそれはそれとして、純也は今どこだ?」
「蘭美香姉様・・・あなたという人は・・・?」
 恋子は指でこめかみを押さえた。
「まあいいですけど。じゃ、純也につけた発信機の電波を受信しますね。」
「さっきの言葉そっくり返すぞ、恋子」
 あきれる蘭美香を無視し、恋子はノートパソコンをいじった。
「えーっと・・・ついてきて。」
 歩くこと、しばし。
「ついた。此処にいるよ。」
 そう言って、恋子が指し示したのは、「大正浪漫」といった言葉が見るものの脳裏をよぎる、古めかしく立派な作りの喫茶店だった。渋く磨き上げられた金属の看板、そこに書かれた華麗な飾り文字を、瑠希亜は読み上げた。
「科学・・・喫茶・・・・・・タチバナ?」
「科学喫茶って一体なんだ?」
「本当に此処に純也いるのか?」
「・・・古い店」
 各々勝手な感想を述べる姉妹達。
「じゃあ、覗いてみよう」


--------------------------------------------------------------------------------

シーン5 科学喫茶タチバナの秘密・その二

「どれどれ?」
 中をのぞき込んだ蘭美香は唖然とした。
 その喫茶店は、結構込んでいた。お客の注文に会わせて、ウェイトレスが歩き回っている。だが、蘭美香が驚いたのはそんなことではない。
 ウェイトレスがみんな綺麗な女性・・・いや、女性型アンドロイドだったからだ。しかも、店の規模に比べて多い。それぞれ、名札を自分の胸につけている。蘭花・藍花・海棠花・牡丹花・石楠花・紫陽花。
「・・・」
 暫く黙っていた蘭美香だったが、三秒でキレた。
「うぉのれ純也!こんな不健全な店に入り浸るとは!!許せん、あのアンドロイド共店主もろとも皆殺しだああ!!!」
「っわ〜〜〜〜〜〜!!!やめて姉様」
 慌てて蘭美香を止める他の姉妹達。実際、女の子の数こそ多いけど別段不健全な感じはしない。むしろ健康的と言えた。
「は〜〜〜な〜〜〜せ〜〜〜!!!」
「姉ちゃん!?なにやってるの!?」
「!?」
 降って湧いた声に団子状態の五人が振り返ると、そこにはエプロン姿の純也の姿があった。
 そして、ウェイトレスの格好をしたシロガネ・リーナ。
「相変わらずだな・・・お前等。」
 呆れた口調でぼやくシロガネを見ながら、蘭美香達は状況がつかめず呆然としていた。
「つまり、日本留学で住み込みのバイトをしているシロガネさんの手伝いをしていたわけ?」
「そうだ。こういうことに国費を使うべきではないと考えたからなのだが、純也は優しいな、無償で手伝ってくれると言ってな。まあ、店主の方から結局バイト代を払っているけど。」
 シロガネが答えた。変なイントネーションが直っている。
「あれ、ちゃんと全部平仮名で話せるようになったんだ?」
「凛名姉ちゃん、活字でしか使えないギャグはやめようよ。」
「いいじゃん、どうせアニメになるわけでもないんだし。」
 純也の突っ込みに実もふたもないことを言う凛名。
「大分練習したんだぞ。・・・純也はそれにもつきあってくれてな。本当に感謝している。」
 そこまでは平静を保って聞いていた蘭美香だが、次の言葉に「反応」した。
「『リーナさん』の事、何かほっとけなくて・・・」
「純也!!!何時からそいつと下の名前で呼び会う仲になったぁ!!」
 怖い目つきで純也の胸ぐらをひっつかむ。
「何をするか!!タコキューレ!」
 リーナが叫び、同時に何処に隠れていたのか壁ぶち破って巨大な触手が蘭美香を打ち据えた。
「っっっってめえ、何しやがる!」
「それはこっちのセリフだ!!貴様のようなヤツは姉失格だ!」
「なんだと〜〜〜!!!」
 状況がいきなり最悪になってきた。
 ばちばちと音が聞こえそうなにらみ合い、そのぎすぎすした空気を緩和する手段はないかに見えた。
「おお、お客さんかね?」
 と言いながらその男が現れるまでは。


--------------------------------------------------------------------------------

シーン6 マスターの正体は?

 男の正体はすぐ判明した。ウェイトレスのアンドロイド達が
「あ、マスター。」
 と言ったから。ちなみにこれは、彼女らを作った人という意味と、喫茶店の主人という二つの意味があると思われる。
「ふむ、少年少女姉妹兄弟よ。その手の喧嘩は若い内の特権だ。まあ好きにやりたまえ、ただし、やりすぎはいかんぞ?」
 と、無茶苦茶なせりふをマスターは言ったが、彼の身にまとう独特な雰囲気が、かえって蘭美香とリーナの調子を狂わせ、喧嘩を止めてしまった。
 それを見たマスターは、
「ま、それもよかろう。」
 とだけ言った。
「ども・・・すいません」
 これは純也が謝ったのではない、純也の姉妹とリ−ナ達だ。珍しいこともあったが、マスターから一種の人徳のような者を感じたのである。
 実際の所、変わっているのは雰囲気だけではなく、見かけも相当変わっていた。
 白衣のよう無そうでないような服、長くのばしてくくった黒い髪、特徴ある峻厳な、それでいて何処か包容力のある目鼻立ち、口ひげ。だが、彼を特徴づけているのはそう言った要素ではない。
 彼の体は、半分は機械だった。片目と、服から出ている両手足は金属製で、肩も金属で鎧われている。
 サイボーグ・・・本来のパッパラ隊世界の住人ではなかった。そこで急にマスターは「こちら」に振り返り、カメラ目線と説明口調で話した。
「やあ読者諸君、おじさんの正体はたぶんもう解っているだろう?でも、予告編をやったのが私だって、気付いていたかな?」
 結局、みんなで喫茶店のお手伝いをしてしまい、(どういう訳か、その日は客の入りがやたら多かった)帰るころにはとっぷりと日が暮れていた。
 夕食までいただいてしまったあと家路、いや基地路につく。
「一寸遅くなったかな?」
 鹿野美が呑気に言った。
「それどころじゃないと思うけど」
「毎度のことだし、気にしない気にしない!」
 騒ぐ姉妹に囲まれて、純也がほっとしたように呟く。
「でもよかった・・・リーナさんと仲良くなってくれて。」
「その言葉、むしろ純也にふさわしいわ。」
「え?」
 瑠希亜が予想もしていなかったことを言った。
「だって純也、あのこと一緒にいるとき凄く生き生きしてるんだもん。」
 リーナと会話しているとき、一緒にはたらいているとき、そのほかの何気ない仕草まで・・・別人のように純也は生き生きしていた。
 そしてなにより、純也は自分から「リーナを心配して手伝う」という選択をしたのだ。
「そ、そう?」
 その時にはもう、全員が気付いていた。
 純也はリーナが好きだと。 そのせいでさっきから血の涙を流しているのが一人いたりするが。
「そ。あんた・・・あの娘のこと好きなんだろ?」
 凛名がいきなり単刀直入に告げる。
 真っ赤になってて照れるかと思いきや、意外にも純也は考え込んでしまった。
「「「「「?」」」」」
 予想外の反応にきょとんとする五人を無視し、純也は深く悩んでいた。

第六話 終わり 第七話に続く


--------------------------------------------------------------------------------

次回予告(声 シロガネ・リーナ)

純也、蘭美香、そしてリーナ・・・ 子供達の、純粋な青い悩み。
そんな日々が続くかに思われたが、時は刻々と過ぎていく。
少年は未だ立たず、想いは語られず・・・ 時は刻々と過ぎていく。緩やかに過酷な日常、それすらも過去となる。
滅びたはずの闇達が、地獄から現世へ、こぼれ落ちようとしていた・・・
次回、第三章「戦争編」。
突入。

退くのか?