突撃!パッパラ隊2

ミッション5 南海の大決闘


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シーン1 チキロたち

「南のしっま!みっなみのしっま〜〜〜〜!うわーい!」
 はしゃぐ瑠希亜。
「うるさいよーお姉ちゃん、静かにして。海外なんて何度も行ったことあるじゃない」
 クールな恋子。
「いいじゃないの別に騒いだって。軍の任務で行く、ってのが新鮮じゃない。」
「良くない!少しは静かにしろよお前等・・・」
 呆れ顔の水島。
 全くもっていつもの光景であるが、繰り広げられている場所は全然「いつも」ではない。太平洋上を進む軍用輸送機の中である。瑠希亜たちの他にも、多数の兵士達が待機していた。
「いいか。今回の任務は、ポイント2−1−3の無人島で不審な灯火が確認されたため調査に向かったシュバルツランド帝国アメリカ州(この世界では、アメリカは未だシュバルツランドの支配下にある)の調査隊が次々と消息を断った原因を調査し、出来れば調査隊を救出することだ。人命がかかっているんだからしっかり」
「あーーーーーーーーーーーーーーっ!!!何やってるんだよ姉貴!」
 そんな水島の説教というか作戦説明というかは、凛名の叫びで腰を複雑骨折した。多分下半身不随だ。もう立ちなおれまい。
「純也を南国風にコーディネートしただけだ。文句有るか」
「あるよう姉ちゃん、うう・・・」
 何だか民族衣装のような、強いて言うなら「酋長の娘」な服を着せられている純也。何を着ても、やはり女装した純也は非常に美しかった。下手をしたら、五人の姉妹の誰よりも。
「あーまたやったな!もう許さないわよ変態姉ちゃん!成敗してやる!食らえ覇王将校拳!」
「なんの!!」
 狭い機内で暴れる五人姉妹。
「だーっ、やめんかい!」
「心中お察しします、博士。」
 必死に叫ぶ水島を桜花が気遣う。
「そうよねー。折角アホ江口いなくなったのに、結局蘭美香が女装させにこっちゃって・・・」
 渋い顔でぼやくランコ。
「ち・が・う・だ・ろ・が」
 更に渋い顔の水島。
「ところで、江口は?」
 ランコは聞いた。確かに、いない。
「一寸事情があって、別事件の捜査に当たってもらっている。」
「ああ、そう」
(本当は、「一寸」では済まないかも知れないんだが・・・)
 そう心の内で呟くと、水島は「ロックマン事件」の最後に起こった出来事を思い出していた。


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シーン2 最後の亡霊(ファントム)

「なんだって!」
 あの「ロックマン事件」の集結直後、被害調査班からの伝令が持ってきた情報は、水島を驚愕させるには充分だった。
「そんな馬鹿な」
 大急ぎで調査班の所へ向かう水島、その目に飛び込んだ物は。道路に空いた、巨大な穴だった。幅も、奥行きも、そして深さも呆れるほど大きい。しかも、それは爆発やさっきまで続いた戦闘による物ではない。上こそ戦闘で後から空いた穴だが、中の大部分は明らかに人工の空間だ。
「先程の戦闘で天井が崩落して出てきたものと思われます。非常に巨大な空間で・・・現在調査中ですが、何やら宗教施設のようだとの報告も・・・」
「宗教施設・・・!?」
 次の瞬間、水島は穴の中に飛び降りていた。十メートルは有ろうと言うところを、調査班の駆けたザイルも使わずに。流石にこの辺りはまだまだ衰えてはいない。・・・少なくとも、着地の際に少しふらついた以外は。
 その些細なことに軽く舌打ちすると、水島は辺りを見回した。
 既存の宗教のどれとも違う、強いて言うなら多少密教的なイメージの、だが密教が聞いたら文句を言いに押し掛けてきそうな、これに帰依している物以外には不気味で醜怪としか見えない作りである。
 暫く周囲を見回していた水島は、あるモノを見つけ、自分の予想が最悪に正しかったことを確認した。
 周囲を圧して立つ巨大な神像。神像、とはいったがその姿は神々しいと言うよりはむしろまがまがしかった。
 頭部両端から生えた巨大な角。
 不気味な白覆面。
 目の回りに燃える炎。
 筋骨りゅりゅうたる怪異な肉体。
 猥雑な赤いパンツ。
 巨大なマント。
 ごついブーツ。
 そんな姿の身の丈7メートルは有ろうかという巨像が剣と金剛杵を持ち、背中から炎を立ち上らせ、座っている。
 こんな神像を拝んでいる団体など、この世で一つしかないはずである。
 十八年前、水島とランコの結婚式妨害に失敗し、その後全世界を横断しながら後の歴史書に「ハネムーン戦争」と呼ばれる戦いを起こし最後まで二人の結婚を妨害しようとした、自称「もてない男の味方」秘密結社しっと団の他には。
 だがそれも、その時の戦いで壊滅した・・・はずだった。
 水島はゆっくりと神像に歩み寄った。 表面を確かめる。
 ・・・それは、まだ新しかった。少なくとも、十八年前から放置されていた物ではない。
「やはり・・・」
「新造の神像ですな」
 いきなりしょうもないダジャレを言ったとびかげが宙をかっとんでいったのは言うまでもあるまい。


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シーン3 装甲車は来ない

「う・・・ここは?」
 ふと気が付いた水島は、あたりを見回した。
 白い砂浜。
 椰子の木。 輝く太陽。
 ・・・思いっきり南の島だ。
「どうしてこんなところに・・・たしか・・。飛行機が・・・」
 そこで水島は思いだした。着陸寸前に攻撃を受け、飛行機が落ちたのだ。
 そこまで思いだした水島の耳に、
「ねー!純也もパパも泳ごうよー!」
 このセリフが、六重になって響いた。
「お前等!」
 見ると、親子そろって六人、もう水着になって泳いでいる。
「お前、何やってるんだ!」
「え?」
「状況を考えないのか?」 六人は少し相談した。
「TPOを大事にする女の子として、南の島に来たら水着にならなきゃいけないのよ。」
「あのなあ!・・・って、これって・・・」
 何処かで見たような気がする。 いや、気がする等という生やさしい物ではない。デジャヴでもない。明らかに、此処を知っている・・・

ばしゃばしゃばしゃ!!

「わっ!」
 いきなり後ろから音と閃光がわき起こり、水島は慌てて振り向いた。そこには・・・皆で水着写真を撮りまくるパッパラ隊員達の姿があった。いつもの事ながら、やはり呆れる。
「おまえら いい加減にしろ!」
「そうはいっても隊長、水着の美女を見たらカメラのシャッターをきるのは男の義務ってやつですよ」
「んなわけあるかーっ!」
 怒る水島は気付かなかった。
 水島純也と、桜花が消えていることに。


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シーン4 太鼓

 純也と桜花が居ないことはカメラを持っていた隊員を水島が全員殴り倒したあとで漸く判明した。
 水島はすぐさま各部隊を分けて、米軍調査隊の他に純也達を探すように命令をしたが、それは必要ないかも知れなかった。
 なぜなら、いつもどおり蘭美香達が既に動いていたからである。
「っっっっったく、あいつは!本当に手間がかかるんだから!」
 ぶっ、とふくれっつらをした瑠希亜が、茂みをかき分ける。
「文句言わない、あたし達だって好きで純也助けているんだから」
 不機嫌な瑠希亜をなだめる凛名。今日は密林走行用に自慢のバイクをチューンしている。先端に電気鋸を付け、邪魔な木をずばずば切り倒す実に凶悪なセッティングである。流石にあまりスピードを出すわけには行かないが。
「にしても、桜花までいなくなるなんて珍しいね。」
 凛名のバイクにサイドカーをくっつけそこに乗っかっている恋子と鹿野美。体力的に密林歩きは無理なのだ。
「まあな。でもあの桜花の実力は俺達も認めるところ(ミッション2参照)だから安全だが、アメリカ調査隊を遭難させ、輸送機を撃墜した何かがいる・・・明らかに純也には危険だ。早く先に・・・」
 そこまで言いかけて、蘭美香は急に押し黙った。
「・・・どうやら急ぐわけに行かないようだな。」
「そだね。でも考えようによってはこれはチャンスかも。」
 瑠希亜、凛名も身構える。
「何々、どうしたのお姉ちゃん達?」
 姉たちほどには戦士の勘が働かない恋子がきょろきょろと辺りを見回しながら尋ねた。
「敵だ!」
 蘭美香が怒鳴り、・・・瞬時にそこは戦場となった。

 それとほぼ同時、杉野工兵隊長は、隊用の物ではない無線で何処かへと放していた。
 その顔には、企みを練るもの独特の薄笑いが浮かんでいる。
「あ、総統。アントナン閣下には無事指示を伝達いたしやした。おそらくは今頃もう始まってるんじゃないかと・・・へい、へい。」
 そこに水島が声をかけ、杉野は慌てて無線を切った。
「どうだ?輸送機墜落の原因は判明したか?」
 その問いに対し、杉野はさっきまで無線機に向かっていたのとは違う、真面目な表情で答えた。
「は、やはりこいつあ何か粘度の高い液体・・・烏賊やタコの墨みたいなモンだが・・・それが超高速高圧で吹っかけられたみたいだな。詳しくは解んねえが。」
「タコ・・・」
 再び何処かで聞いたような、ひどく引っかかる言葉に、水島は悩んだ。見ると、ランコも何か複雑な顔をしている。そう、何かが思い出せそうで思い出せないような。
 水島がランコにそれを問いただそうとした刹那。
 激しい爆発が島の中央部・・・蘭美香達の侵入ポイントで起こった。


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シーン5 投げられる石

「ぬわ〜〜〜〜〜〜っ!」
 急カーブする凛名のバイク。一瞬前までいた場所に、巨大な拳が振り下ろされる。
「ごおおおおおおおお」
 巨大だった。何しろ持ち主の身長が20メートルもあるのだから。そんな巨人が落ちくぼんだ目を光らせ拳を振り回している。

 ばばばばばばばばばばばっ!!

 茂みの中から機関銃が発射された。すかさず蘭美香は自慢の大型ライフルで反撃する。
 手応えはあった。だが帰ってきたのは未知の敵のうめきではなく、走行が弾丸を弾く金属音と、再びの射撃。
「何だあ!?装甲車?」
 一瞬等美香はその可能性を考えたが、めきめきと灌木をきしませて現れた物は、予想とは異なる物だった。
 全身を金属鎧で覆った人間に見える。だが、全体的体型や顔、地面をきします重量を考えるに明らかに人ではない。さりとてその動きはロボットとも取れなかった。
「んっ!」
 全身の力を込めて、瑠希亜は振り下ろされた敵の足を受け止めた。ずいぶんと古いデザインの、鼻の高いドラム缶のような腹をした巨大ロボット。
「何なの一体ー!?」
 驚く他の姉妹を後目に、冷静にコンピュータで既存の兵器図鑑の検索を行う恋子。
 出た結果は・・・該当データ無し。驚く恋子。
 その間にも、敵は次々と攻撃を仕掛けてくる。最初の混乱から立ち直った蘭美香達は次々と敵を撃退して行くが、恋子以外の人間が敵全体に当てはまる奇妙な特徴・・・全員かなり昔に作られたらしく、かつ一度壊れた物を修理した様なあとがある・・・に気が付いたのは、戦いに熱中しすぎていない恋子だけだった。
 攻撃は何時終わると無く続いたが、一発の攻撃によって唐突に終わった。
 蘭美香達の背後の森から、急に光線がのび、凛名を襲っていた巨人の足を貫いたのだ。
 のたうつ巨人を前に現れたのは・・・桜花だった。どうやら自慢の聴覚で騒ぎを聞きつけ、自力で帰還したらしい。
「桜花!」
 簡単な再会に喜ぶ瑠気亜(読者はがっかり?)とは対照的に、敵はこの思わぬ助っ人に動転した。ロボットがのたうつ巨人を引っ張り、取り乱した様子で逃げていく。
「無事だったか!」
「問題ない、そっちこそ無事だったのか?博士は?純也君は?」
「親父は無事だ、浜の方にいるが・・・この文だったら連中の襲撃を受けているだろう。純也は・・・まだ見つからない。」
「大変だ!じゃ急がないと!」
「ああ!急いで・・・」
 急いでどうする?水島の所に戻る?純也を捜す?
 ・・・しばし悩む六人だが、もう一つの疑問も彼らを悩ませていた。
 それは、敵が去り際に残したセリフだった。
「桜花!?何故米英共に!?」
 彼らは、そう言ったのだ。


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シーン6 その時純也は

 一体その時純也は、何をしていたのか。
 それを説明するには、時間を少しさかのぼらなければならない。
「?どうしたんだ?僕・・・う、うわあああ!!」
 目を開けた途端、純也は驚いてバランスを崩し落ちそうになった。どこから?木の上から。純也は他の隊員が落下したところとはかなり離れて、割と高い木の上に引っかかっていた。どうして此処まで皆とはぐれられるのかと言う点では極めつけに運が悪かったが、良く助かったという点では運が良かった。
「ととっ、とにかく早く降りなきゃ・・・わっとお!?」

 ずざざざざりっ。

 幹にすがって降りようとしていた純也は手を滑らせ、荒い木の肌に派手にこすりつけられながら激しく落下した。
「いたたたたたたたた。えっと・・・・・・確か何か攻撃を受けて・・・飛行機が落ちて・・・。僕が大丈夫なら多分みんな大丈夫だから、早く合流しなきゃ。」
 そう呟いた純也の脳裏にあったのは周囲の危険と言うよりは「いい!?あんた弱っちいんだからあたしの側離れるんじゃないわよ!!」といつも言っている生まれたときから頭の上がらない双子の姉、瑠希亜の怒り顔だった。
「そんなに言い切らなくてもいいじゃないか・・・僕のこと思っていってるんだけど・・・」
 何となく頭の中の瑠希亜に反論してしまう。何となく歩き方もとぼとぼとなってしまう。
 とぼとぼと純也は海岸線があると思われる方向へ歩き出そうとした、が。ぼこっ、と足下がいきなり陥没した。
「うわ!」
 あっと言う間に落下し、着地。大して深い穴ではなく、純也は怪我もなく立ち上がった。一度ならず二度までもついているのかついていないのかよく解らない純也だった。
「あった〜、もう、今日は良く落ちるなあ。」
 一人ぼやき、自分が落ちたところを見上げる。
 確かにそう高いところではなかったが、完全に天井で手を伸ばしても穴の縁にはかからずなので一寸上れそうにない。
 何か踏み台になる物はないか、と思い純也は辺りを見回した。
 残念ながらそこはまるで通路のように細い洞窟で、当たりには何もなかった。壁にはぼんやりと発光するこけのような植物が繁茂しており、充分明るい
「これって・・・自然の植物じゃないよね。一体ここって・・・。」
 そう呟いて壁を撫でた純也は、ふとある物に気付いた。調査用の道具の詰まった、探検用リュックである。
「!調査隊のだ・・・此処に何かあったんだ!」
 一瞬、「さっきの所で大人しく救助を待った方が良かったかな」と言う考えが頭をかすめたが、純也はそれを首をぶんぶん振って否定した。
(これ以上、何もしないのは嫌だ!)
 そうつぶやくと、純也は洞窟内を調べ始めた。
「わあ・・・」
 純也は上を見上げ、そして呆然とした。
 洞窟の先には、信じられないほどの巨大な地下空洞が広がっていたのである。
 壁には何やら壁画のような物が描かれ、奥の方には何かの建造物の廃墟が見える。だがそれは、壁の壁画と同じ人々が作った物とは思えない。かなり崩れているが、近代的な何かの研究施設、あるいは軍事基地のようであった。
 呆然として辺りを見回す純也。そして純也の目はもう一つ妙な物を捉えた。
 武器の林。
 そうたとえられそうな物。凄く古いデザインの歩兵銃、日本刀、銃剣、機関銃、ヘルメット、拳銃が地面に突き立てられている。
「ウゴくな!」
 純也がその光景に何か感想を持つ前に、突如として背後から奇妙なアクセントの日本語がかけられた。反射的に振り向いた純也が見た、彼に声をかけた者は、
「此処はシンセイな墓所ダ。お前タチの来るベキ所デはナイ!」
 褐色の肌、黒い髪、顔に変わった模様を描いた、純也と同じくらいの歳の少女だった。


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シーン7 再会?否。されど

「き、君は?」
 突然目の前に現れた少女に、驚いた純也はただそう尋ねた。
 そんな純也に、少女は怒りの目を向けて立っている。変わった南国の鳥の羽で飾り立てられた服を身にまとい、手には何も持っていない。
「フ・・・問われテナノルモおこがましいガ、聞きたいならばオシえてやろう!我が名はシロガネ・リーナ、このヒミツキチ島の大酋長だ!」
「え!ここって、無人島じゃなかったの?」
 再び驚いた純也に、今度は少女、いや大酋長シロガネは今度は呆れの視線を送った。
「オロカな・・・オマエタチが七十四年前に我々からこのシマを奪ったノデあろうに、自分たチノシタことをもワスレたか。だから貴様等はヒジョウになれるのか?マアイイ・・・ワレワレもいつまデも非力なままではナイゾ、ついに、この島を、ワレワレの国をトリ返す為に起ったノだ!」
 熱弁を振るうシロガネだったが、純也にはほとんど理解できなかった。そこで純也は、質問を変えてみようと考えた。
「じゃあ、墓所・・・っていうのは・・・」
「アノヒ、貴様等がヤッテきたあの日に、我々を逃がシテくれた戦士達の墓だ・・・。キサマ等とちがい、我々のトモとなってくれた、異国のセンシ達だ。・・・もっとも、私が見たわけではないガ、ナ。」
 そこまで聞いて、純也は妙なことに気付いた。
「ご、ごめんなさい!知らなかったんです。でも貴様等、って言われても・・・僕達ここに来たのは今日が初めてだよ?七十四年前って何?確か第二次世界大戦、太平洋戦争中だったと思うけど・・・」
「ソノ通りだ。だが今日が初メテ等という嘘はヤメロ。正直にしていたらこの間捕獲した先発隊よりは待遇を考えてヤル。」
 そこで改めてみてみると、墓標代わりに使われている武器は確かに第二次世界大戦当時のモノに見える。それも・・・
「これ、ひょっとしてスットン帝國陸軍の装備?」
「ソウダ。」
「つまり、ここに葬られているのは、スットン帝國の兵士なの?」
「当然だガ」
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「僕もスットン人なんだけど。」
 間。 しばらく押し黙るシロガネ。
「・・・ナニ?」


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シーン8 南海軟体なんてこったい

 ザッ、ザザッ。

「お前、イマ言ったことイツワリではないダロウな!?」
 草の葉がすれる音が響く。
「だから!何度も言ってるじゃないか!僕達はスットン共和国軍だって!!」
「ソウイウ事は早くイワナイカ!ワレワレ敵じゃナイジャナイカ!!」
「そっちが一方的にしゃべってたから〜〜〜・・・」
 引きずられて一緒に走る純也の言葉に、シロガネは一瞬顔を引きつらせた。
「と・・・トニカク!急がないと!」
 そう言って、純也を引きずっているにも関わらず非常に速いスピードでシロガネは突っ走った。
「確かに急がないと・・・」
 純也は呟いた。
「姉ちゃん達に島の人皆殺しにされるかも・・・」
 純也のそんな声を聞き、アーネは二つのことに呆れて言った。
「イッタイどういう奴らなのだ?オマエの姉は。ダガな、そんなことは絶対にない。」
「え?」
「むしろ危険ナノは、オマエの姉たちダ。」

チューーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーウウウウウウウウウ!!!!

 突如、二人が走っている方向・・・パッパラ隊S宿営地の方から、奇妙な大声・・・いや、何かの吠える音が聞こえてきた。
「あれは!?」
 ドーーーーン!という爆音と共に水柱が起ち、その中から現れたのは・・・
「タコ?」
 非常に巨大なタコ、のように見えた。だがよく見ると、体から蝙蝠のモノと鳥のモノ、二対の大きな羽が生え、さらに色々と機械のような外骨格か角のような物体のあちこちから生えている。
「タコキューレ。コノ島の守護者でアリ、神デあり、私の半身だ。」
 海から現れたタコキューレは陸上から攻撃を掛ける島の住民達と呼応してパッパラ隊を挟み撃ちにしようと上陸を開始した。
「奇襲のため私とベツで行動サセタノダガ、まずかった。」
 慌てた兵士達が射撃を開始するが、びくともせず、巨大な触手を振り回し、激しい勢いではいた墨が地面をえぐった。
「七十四年マエから自己進化を繰り返してキタノダ、強いゾ。」
「自慢してる場合じゃ・・・」
「む。ソウであった。急がねば!」
「いえ、急いではなりません。」
「!?」
 そう叫び、再び駆け出そうとする二人の前に、突如人影が道をふさいだ。


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シーン9 蛸・坊主

「むしろ、ここにこのままいていただきたいですな、陛下。」
 そう続けて言った影を見て、シロガネは怪訝そうな表情になった。
「アントナン?何故オマエがここにいるのジャ?」
「陛下の身を案じてはせ参じた次第にございます。」
 そう言うと、アントナンと呼ばれた男は黒い僧服に包んだ身を折り曲げ、剃った頭を見せた。
 純也はきいた。
「誰、この人?」
「客卿(外国人の家臣)のアントナンだ。暫くマエにここに来て、スットンの兵達が残した兵器の修理費を出してくれたのだ」
「陛下、ここから先は危のうございます。その捕虜めは私めがお預かりいたします故、ここは我らに任せてお下がりを。」
 シロガネは、「馬鹿なことを」と言った表情を浮かべた。
「そう言うときに皆に先立ッテ行くのが大酋長のつとメゾ。ソレに事態がカワッタ。あいつ等は敵ではない、この戦ハやめじゃ。」
「あやつらが敵ではない?何故です?」
「彼らは我が父祖の恩人、スットン兵だ。戦う理由など何処にもない。」
 アントナンは、純也をわざとらしいくらい胡散臭そうに眺めると言った。
「この捕虜の申したことでございましょう?信用できますか?このアントナン・ギガイル、とてもそうは・・・」
「アントナン・ギガイル!?」
 純也は驚いた。その名は歴史の教科の、現代史の所で見た覚えがあったからだ。それも、あまり良い人物として載ってはいなかった。
「あのヴァジュラム大僧正で、宇宙征服を企んでパステリオンに退治された!?まさか、生きていたの!?」
「何ダと!?アントナン、ソレはまことか?!私を謀ッタか!?」
 問いつめるシロガネに、アントナンは余裕の笑みを浮かべた。
「そのとおりですよ、へ・い・か。くくくくく・・・はははははは!確かにワシは元神聖魔法国ヴァジュラム枢機魔法院大僧正、アントナン・ギガイルよ!!あなたの国民と軍備と守護神は、パッパラ隊攻撃お呼びデータ収集のために確かに利用させてもらった!礼を言いますぞ!」
「オノレぇ!」
 激高するシロガネ。
「な、何で・・・パッパラ隊を狙う?復讐が目的なら、ヴァジュラムかパステリオンを狙うのが本当じゃ・・・」
 必死に問う純也を見て、アントナンは嗤った。
「ふははははは、教えてやろう。いわゆる冥土のみやげというやつだがな。ワシの・・・いや、ワレワレの復讐はそんな小さなレベルにはとどまらないのだよ。いずれ全世界が、我らの復讐の劫火で灼かれるのだ!はははははははははは!!」
「そレで・・・」
「?」
 アントナンの高笑いを、シロガネの押し殺した声が遮った。
「ソレでワレワレを利用しタノか・・」
「そのとおりだ。もうその必要もないがな。奴らのデータは充分取れた。あなたにも、そこの弱そうなのにも・・・死んでもらうぞ!」


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シーン10 第二のリンク

「ダマレ逆賊!!!!」
「!」
 凄まじい気迫でシロガネが一喝した。
 あまりの迫力に、アントナンが一瞬ひるむ。
「ふん、怯懦なヤツメ!我等を騙しリヨウして、忘恩ノ行為をハタラカセセルトハ!許さんぞ、幾多の英霊に変えてこの私が成敗してくれる!」
 そう怒鳴り、懐から短剣、いや本来は小銃の先端に取り付ける銃剣を取り出し、身構えるシロガネ。それを見て、アントナンの顔に再び人を馬鹿にしたような笑みが戻る。
「ほ?ワシを成敗する?その銃剣で?はーーーっはっはっは!これは面白い!」
「そ、そうだよ無茶だよシロガネさん!」
 慌ててシロガネを止めようとする純也に、シロガネは押し殺した声で告げた。
「解ってイル。だから逃げろ。」
「え・・・!?」
「イワユル償いというヤツだ。真実を教えてくれたオマエには感謝している。」
「そそ、そんな・・・」
「それとすまないが・・・私ノ国民に戦いをヤメルように伝えてくれ。それと、コノジケンはアクマデ私の責任だ、トモ。」
 そう言って立つシロガネの後ろ姿を身ながら、純也は不思議な思いに捕らわれていた。
 その誰かのために立つ姿に、激しく惹かれ、憧れた。
「で、でも!シロガネさんが・・・」
「案ずるナ。」
 シロガネは笑った。その純粋な笑顔にまたどきりとした純也は、次の言葉でこけた。
「タコの扱いニハ慣れてる。」
「なにそれ!?!?」
「だ、だ、だ、誰がタコじゃあ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!」
 真っ赤になって怒るアントナンに、思わず声をそろえるシロガネと純也。
「あ、タコ!」
「まあだいうかああ!!」
 激怒し、凄まじい既往で呪文を唱え始めるアントナン。
「二人仲良く分解してくれる!くらえ!妖・神・召」

 どかーーーーーーーーーーーん!

「ぎえーーーーーーーーーーーー!!」
「・・・へ?」
 あと一言で呪文が完成するという刹那、アントナンは巨大なタコに潰されていた。
「タコキューレ!?」
「お!純也だ!」
 巨大なタコキューレのあとから、パッパラ隊の面々も現れる。どうやら交戦する内に内陸に来てしまったらしい。
「お姉ちゃん!」
「食らえ〜〜〜〜!」
 凄まじい剣幕で蘭美香がシロガネに銃を撃ちまくる。
「え」
「良くも内の純也誘拐しくさったな!体重変わるほど鉛玉ぶち込んでやらあ!!」
「うわあああああ!違うよ〜!やめてよ〜!」
「きゅー!きゅきゅーーーーー!!」
 タコキューレがシロガネを弾から守る。巨大な体で動き回るタコキューレに、宮本や杉野など、隊員が次々潰されていく。
「ち!」
「あたしにまかせてー、えい!」

 どどどどどどど!

 鹿野美ががいこつボンバーを大量に投げる。ソレが更に事態の混乱に拍車をかけた。
「痛ったー!・・・やったわねえ!」
 近くの茂みから突如として赤、黄、青の三色の服を身にまとった少女達・・パステリオンが出現したのだ!
「アントナンをお手来たあたし達に、いきなり爆弾攻撃とは・・・さてはあんた達も仲間か!やっつけてやる!!!」
「貴様等、いい加減ワシの上からどけ!糞、せっかくの復活シーンが!」
「ああ、わしらの計画が・・・世界征服計画が・・・ギャグに呑まれていく・・・」
「今世界征服って言ったのだれ!?」
「お姉ちゃん、やめてってば〜!!」
「純也は引っ込んでて!あのカラフル小娘ぶっとばすのよ!」
「何だと〜!」
「ああ、もういい加減にせんかー!」
 ・・・水島の叫びもむなしく、どたばたは終わる気配を見せなかった。


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シーン11 海に帰ればさわやかさん

「はあ、はあ、はあ、はあ、・・・・」
「あー、疲れた・・・」
「疲れるほど破壊活動するな〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!」
 座り込んだ瑠希亜の後頭部を思い切り度付く水島。
「痛っ!」
 見回すと、確かに周囲は焦土と化している。
「でも親父、今回はまだましだった方だぜ?普段ならこの島海に沈んでるぜ」
 反論する蘭美香。
「あのな・・・・・・」
 怒りに拳をわななかせる水島。
「で、その代わりにあたしのバイクに姉ちゃんの鉛玉が食い込んでいるわけ?」
 同じく怒る凛名。
「なこといったって、純也がやめろって言っているのにお前やめないんだもの」
 再び、今度は相手を変えて反論する蘭美香。その横で、少し涙ぐんだ遠い目でシロガネは空を見上げている。
「純也・・・ソノ身をギセイにして愚かな姉たちを止メタお前の捨て身のココロ、生涯忘れまいぞ・・・」
「まだ死んでないよう・・・」
 倒れた椰子の木の下で、今日も元気なく下敷きの純也。
「誰が愚かな姉よ!?」
 むくれる蘭美香。
「ごめんなさいね暴れてしまって。島は私の力で元通りにしますから。」
 平謝りに謝るパステルイエロー。 そしてあっと言う間に破壊の爪痕を消してしまう。
「それじゃ、私達は消えたアントナンを追いますので、これで。」
 飛び立っていく、三人のパステリオン。
 その途中で、レッドは振り返り、瑠希亜にぐっと親指を立ててウィンクした。
 同じ動作を返す瑠希亜。度つきあいの中で何かあったらしい。既に夕日が落ちつつある空模様から、それは用意に推察できた。
「水島君、あたしのこと惚れ直した?あのセリフ。」
「やかまし。とにかく例の件の証拠は集めたからな、これでこの島の独立に有利になるでしょう。」
 戦いの中で、かつてこの神の楽園と呼ばれた島・・・ヒミツキチ島の記憶を取り戻したランコと水島。それでかつて米軍がこの島でやったことの証拠がぼろぼろ出てしまい、何とか世論を味方に付けて独立を承認できそうな形になっていた。
「感謝シマス、水島元帥。」
 そう言ってシロガネは旧スットン帝國陸軍式の敬礼を決めた。
「さーって、それじゃ帰りましょうか!」
 迎えの輸送機部隊を夕日の中に身ながら、ランコは言った。
 イメージ的に、それに「終」の字が重なって見える。
「よし!」
 それを見て、決心したようにシロガネは言った。
 何事かと皆が振り返る。
「私、スットンへイク!」
「何〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!!!」

第五話 終わり 第六話に続く


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次回予告(声・?)

 ふっふっふ、私は誰でしょう?
 それはともかくとして、次回は今まで語られたことのないパッパラ隊Sの日常を大公開するよ!
 みんなが知りたかった秘密がついに白日の下に!
 次回第六話「特別ふろく(平仮名なのがポイント)パッパラ隊S秘密大百科」
 お楽しみに!

それとも、ストーリーを一旦科学的に見直してみるかね?