突撃!パッパラ隊2
ミッション4 パッパラ隊S対ロックマン
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シーン1 名作
「純也〜、飯だぞ〜!」
そういいながら瑠希亜は、双子の弟の部屋のドアをドンをンとノック・・・せずに、いきなり入った。
そして三秒後。
純也の部屋は瑠希亜の必殺技の一つである「関歯転居宇拳」によって吹っ飛ばされた。
彼女らがここに来てからは、よくある事・・・日常である。その日常を、闇から見張る者がいることを、今はまだ、誰も知らなかった。
が、事態はそんなこととは関係なく深刻・・・と言うよりは純也君にとって悲惨であった。
「うぉらあ!!家の純也泣かせたやつはどこじゃー!!」
瓦礫の中にすっくと立った、瑠希亜の叫びが四隣を圧する。そのままじっと辺りをうかがう瑠希亜。が、気配は感じられない。
「・・・逃げたか?まあ、このあたしが相手となれば、逃げたくなるのも当然だね」
「ち・・・違うよ瑠希亜ぁ・・・」
純也のくぐもった声。それは瑠希亜の足下の瓦礫の中から聞こえた。
「・・・小説?」
とりあえず純也を瓦礫の中から掘り出した瑠希亜は呆気にとられたようにそう言った。
「うん。この前買ったの。」
ややうつむき加減に答えた純也の手には確かに一冊の本が握られている。
「あんた、十五にもなって小説に感動して泣いてたなんて・・・非常識ねえ、おっとこの子でしょ!」
双子の弟が泣いていたからっていきなり部屋を吹っ飛ばした妹は、自分のことをチョモランマより高い棚に置いて言った。
「だって・・・本当に感動したんだもの・・・」
「ちょっと見せてみなさいよ。どれどれ・・・」
そういって瑠希亜は純也の手にあった本を取った。結構厚い本で、表紙には華麗なイラストで吠える黒い甲冑に身を固めた少年と蹲る青い服を着た少年、そして機械を継ぎ合わせて作られた十字架に磔になっている、黒甲冑の少年に何処か似ている、強そうで、同時にどこか弱そうな不思議な感じを受ける少女が描かれてる。
題名は「機械仕掛けのジャンヌ=ダルク」。
「へえ、おもしろそうじゃない」
そういって瑠希亜はページを繰り始めた。時がさらさらと流れた。
そして、瑠希亜の涙も。
「ううう、なんて切なくてはかなくて、それでいて美しい戦いの物語なの〜・・・」
読み終わったときは瑠希亜もすっかり純也みたいになっていた。突如、そこにとどろく轟音。
「こらぁーーー!家の妹たちを泣かせたのは、どこのどいつじゃーーーーー!!」
今度は蘭美香のやってきた。さっきと同じように。そして、同じように感動した。
姉妹全員がそうなるのに、大して時間はかからなかった。
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シーン2 お約束
ざぱ〜・・・・・・
「ふーーう、今日も元気だお風呂が・・・気ん持ちいい〜・・・」
食事が終わり、瑠希亜達は風呂に入っていた。改修されたパッパラ隊Sの基地の風呂は、基地の地下拡張工事の最中に掘り当てられた温泉の大浴場となっていて、もう温泉旅館に慰安旅行に出かける必要はない位立派なものであった。
ちなみに一部の男子隊員が強行に混浴露天風呂の建造を主張したが、軍警察の「実力」でもって排除されていた。
「本当、温泉のある基地って、最高だなー」
自分も気持ちよさそうにつかりながら妹に同意する凛名。
「最高、っていえばよ」
続いて蘭美香が話し始める。それは、今の全員の気持ちを代弁していた。
「よかったなああー、『機械仕掛けのジャンヌ=ダルク』・・・」
「よかったよねえ・・・」
「本当、久しぶりに感動で涙が出たよ・・・」
その証拠におのおの同意を表す。しかし、それだけではなかった。
「実際あの後みんなで純也が持っていた『ロックマンシリーズ』小説、全部読んじゃったもんね」
面白そうに恋子がいった。
「あれって、いくつかの作家が同じ世界のことを書いているんだよな。」
「そうだねー。その中でも「機械仕掛けのジャンヌ=ダルク」を書いたN.Sueokaのが面白かったよね。作品数少ないけど。」
「次回作の所に、「ZERO〜紅の戦闘神〜」ってあったけど、期待しちゃうな。」
「え〜、あたしは「私立ワイリー学園」の方先にやって欲しかったよ〜」
「そうか?」
「そうよ!」
意見を戦わせる瑠希亜と鹿野美だが、「次が待ち遠しい」と言う点では同じだった。
「ところでさ、キャラクター、どれが好き?俺はロックだな」
蘭美香がまた新しい話題を思いつく。
「フォルテ!」
と凛名。
「ピアンナ!」
と言ったのは恋子と瑠希亜。
「スター!」
と鹿野美。
「げ、趣味悪ー」
「でもさ、笑えるじゃない」
「ま、それはそうだけどな」
「ははははははは・・・」
話題も盛り上がり、笑い声があがった、その時。全く、完全に唐突に、湯船の中に、まるで電送でもされたかのように、少年と老人が出現した。
「・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・」
「っきゃああああああああああああああああああああああああ!!!」
その光景を、愉快そうに見る影が一つ、窓の外にあった。右手に妙な機械を握り、口に浮かぶのは、全てがうまくいったのを確認した策士の笑み。
と言えればまだ様になるだろうが、実際にはその口元はだらしなくゆるんでいた。
おまけに左手にはカメラ。
のぞきなのか謎の黒幕なのか、はっきりしない奴であった。
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シーン3 スクランブルダッシュ
「どわああああああああああああ!!!」
「ぬおおおおおおおおおおおおお!!!」
叫び声を上げながら廊下を走って逃げる老人と少年。その周囲に次々と大口径の銃弾が炸裂し、濡れてびたびたと音を立ててはためく老人の白衣の裾をこそげていく。
「い、い、一体全体どういうこったクソジジイ!!何であんな所に出る!」
そう傍らの老人に怒鳴ると、残像を振り払うように頭を振った。少々刺激が強かったらしく、金髪の下のワイルドながらなかなか綺麗な顔が赤くなっている。
「ワシにもさっぱりわからんわい!」
老人も負けじと怒鳴り返す。濃い眉毛、はげ上がった頭部と側頭部に残るやたらぼさぼさした白髪が気の強そうな印象を与え、怒鳴り声がそれを証明していた。
「何ぃぃぃ!!」
少年が眼をむく。
「じゃてめえ、あれだけ調子のいいこといっといてご自慢のタイムマシンは結局失敗かよ、おい!!」
「やかましい!クロノスマンの残骸から得た乏しいでデータで作った機体に、お前の不手際でロックめのバスターが当たったんだぞ!それでも動いた方に感心せんかい!!」
全速力で突っ走りながら器用に胸を張る老人。
「出来るか!!大体、此処が何処かもわからないのかよ!?」
「わからん!ただ、停止する直前妙な次元振動があった事を見ると、下手をしたら過去ではなく別世界へと来てしまったのかもしれん!」
「何だって!?」
再び少年が吠え、老人がわめき、際限のない口げんかが始まる。走りながら、良く続く物だ。
「まちやがれこの痴漢野郎ぉぉぉぉぉ!!」
更に後ろから蘭美香の怒鳴りが轟く。
「誰が痴漢じゃ!!このワシを誰だと思っておる!悪の天才科学者Drワ」
そう老人が言いかけた、その、直後。
「何い!」
「蘭美香ちゃん達のお風呂シーンが!?」
「覗かれたぁ〜〜っ!?」
あっ、と言う間もなく、かつ、どこからともなくパッパラ隊男子隊員が大挙して出現し、二人を取り囲んだ。
「てんめえぇぇ〜〜〜、うらやまし、いや不埒なまねしやがってえ〜〜」
「生きて帰れると思うなよ!」
「ま・・・もし写真に撮ってるって言うなら、全部よこすんなら命だけは助けてやるぜ?」
・・・こういうところは全く変わっていなかった。それを見て、少年は忌々しげに舌打ちをする。
「ちっ、・・・じじい、こいつら片づけるぞ。」
と、老人も余裕の笑みを浮かべる。
「解った。こいつらただの人間のようじゃからな、手加減しろよ。」
「へいへい」
そうぼやくと少年は一歩前に出て・・・・・・次の瞬間には、漆黒の鎧姿となっていた。
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シーン4 クロス・ロータス
ようやっとの事で追いついた蘭美香達は、目の前の光景に息を呑んだ。
それは、宮本五兄弟やその他兵士達が倒れ伏していたからではない。
兵士達をうち倒しつつなお悠々といかにも嬉しげな笑みを浮かべて立つ、黒鎧の少年の姿。それがまさしく小説の中の登場人物、スペシャルワイリーナンバーズのフォルテだったからだ。
瑠希亜が唸るように誰何した。
「あんた・・・誰!?まさか、世界征服をねらう悪の天才科学者Drワイリーのロボット、スペシャルワイリーナンバーズのフォルテだ、って言うつもりじゃないでしょうね。」
一瞬きょとんとした黒鎧の少年は、次の瞬間に吹き出した。
「っはははは、おいジジイ、さっきのお前の、あの「他の世界に出たかも知れない」ってえの、大はずれだな。というか、俺の事ちゃんとフォルテだって知ってるじゃねえか、ジジイ、ここ現代だぜ、まったく・・・」
そこまで言って、少年・・・フォルテは静止した。
空気がまるで固体と変化したようだった。目の前の少女五人は各々顔に「まさか」と言った表情を浮かべ、またどういう訳か後ろにいる「ジジイ」ワイリーも同じく顔面に驚愕を張り付けて凝固している。
「一体どうしたってんだ、ジジイ。こいつらがどうかしたのか」
「・・・」
「なあおい、どうしたんだよ」
「・・・」
「おいったら!」
「・・・いや、まさかそんなことは・・・」
なおも思案顔でぶつぶつと呟く、珍しくも「科学者的」なワイリーをフォルテは無視した。
「まあいい。とにかく、ここを通してもらうぜ!」
瞬時にバスターへと変化した右腕を構えるフォルテ。
「ちっ!!」
同時に、蘭美香達も各々得意の戦いの構えをとる。あとは、当然の結果。
大爆発!閃光轟音黒煙!!
あまりにいつものことなので、ひょっとしたらまた何処かで純也が瓦礫の下敷きになっているんじゃないか、と意識の炭で考えながら瑠希亜は毒づいた。
「逃げられた!!くっそー!!」
ビーーー!ビーーー!ビーーー!
そして同時、そんな瑠希亜の声を遮るように警報が鳴った。
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シーン5 パニックこそ日常
パッパラ隊S温泉にフォルテとワイリーが出現したのと完璧に同時、町の方にもパニックが起こっていた。
一大基地都市として発達を続けてきたガール半島。その全域に突如ロボットや人間が出現したのだ。
その混乱と発生した被害を一々述べていってははっきり言ってきりがない。
ここでは、その一部を述べるにとどめよう。
バリバリバリ、ドッスーーーン!!
「うわあああああ」
ようやっと結婚したジョーとリンダの新築の家にワイリー軍団の巨大ロボット、ガッツタンク(今回の「タイムマシン作戦のマシン護衛のため再生された)が落下、家は完璧に廃墟に。
その他の再生巨大メカも次々と出現落下、建物を潰した。
ブーーーーーッ!ぐわっしゃーー!!
道路を数百ものシールドアタッカーが暴走、同時多発連続玉突き事故が発生、交通網は完全に麻痺した。
そのほかにも町にはメットールがあふれ、バットンが舞い狂い、モンキングがよじ登り、ザコキャラで完全に制圧された、というよりは埋まった。
きゃたきゃたきゃた、きゃたきゃたきゃた!
さらにワイリーの基地には必ずあるボス部屋前のシャッターが何故かあちこちに出現してしまい、通行の混乱に拍車がかかった。
おまけに穴が出来るは棘は生えるは、町並みは激しく変化してしまった。
もっとも、これらははっきりいって混乱の原因のほんの端っこでしかない。一番の被害を出したのは、突然の転送で混乱したワイリー、コサック、ライトの三ナンバーズ達だったのである。
「うおおおおおおっ!!??」
「い、一体此処は何処なんだ!?何が起こったんだ!」
動転するライトナンバーズ。
「にゃはははは、これはきっと博士のタイムマシンが作動したのに違いないのにゃ〜〜〜〜〜!ばんじゃ〜〜〜い」
いつも通りの脳天気なグラビティーマン。
「いや、これはどうも違うような気がするでござるな。おのおのがた!落ち着いて軽挙妄動を控えよ!博士、博士はいずこ!?」
冷静に状況を分析しようとつとめるシャドーマン。さらに味方の混乱を収拾しようとしている。立派だ。
だが無駄だった。
「うわわわわわ!?!?!?ななな、なんだ〜〜〜〜〜!!!」
「とにかく敵だ!撃てーーーーー!!」
ワイリー軍団ライトナンバーズコサックナンバーズがごちゃ混ぜで出てきてしまったため、至近距離で打ち合いが始まってしまったのだ。火力のでかいナパームマンと単純馬鹿のダイブマンが一緒だったのも災いし、さらに時給戦隊の他の隊員がナパームを助けに行ったのも状況を悪化させ、とどめに付和雷同的に周囲のザコメカ、スナイパージョー軍団などが撃ちまくったことにより混乱は完全に終息の可能性を失った。
なおその間、コサックナンバーズを統括すべきコサック博士が
「カリンカがいない!そこの方、カリンカを知らんか!!」
と動転して手当たり次第に聞いて回っていたのも混乱を加速したと言う意見も後に出たが、これはまあ大したことじゃないだろう。
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シーン7 基地崩壊はパッパラの華
そんな無茶苦茶な状況になった町にパッパラ隊が駆けつけたのは、かなり遅れた。
何しろ町を救う以前に基地の方が大変だった。
結局ワイリーがフォルテをつれて逃げてしまうまで延々蘭美香達の無差別攻撃は続き、去ったら去ったで基地が崩れ車両や航空機は埋まり、正直これでも充分早いと言えるくらいの大損害であった。
「うっわ〜、またこりゃ派手にやっちゃってるわねえ、さっすがワイリー軍団。」
感心したように凛名が行った。
「感心している場合じゃないだろうが。それより・・・本当にワイリー軍団なのか?あれは小説じゃなかったのか?」
水島総司令がぼやく。正直どんな的より自分の娘の方がよっぽど厄介という現状にほとほと疲れ果てた様子である。
「間違いないわよ。」
そんな無茶苦茶な娘達の母、ランコは言い切った。
「あたしも小説読んでるんだから、見間違いようはないわ」
「しかしなあ、小説の登場人物が現実世界に出現するなんて・・・」
しばし沈黙。
ランコやとびかげをじっくりと眺め、この世界の歴史を思い起こす。
「・・・無いとはいえないかもしれん・・・」
結局ため息を付くように水島はそう呟いた。
頭を抱える水島の隣で、おなじような姿勢で純也がやはり苦悩していた。案の定、瓦礫まみれの格好である。
親子そろって苦悩。
ほほえましい光景では少なくとも絶対にないが、かなり滑稽だった。
しかし、さすがは総司令。なにより、18年もランコと連れ添ってきたのだ、こういう状況にも慣れ、立ち直りも早くなっていた。
「とにかく相手が何であれ、都市の破壊を黙って見過ごすわけには行かない。即刻取り押さえろ!抵抗するのならば反撃を許可する!」
「はーーいっ!!」
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シーン8 相互リンク
「あああ、やっぱりじゃ・・・」
派手に破壊された町並み、その所々に転がっている自分のロボットを見ながらワイリーはぼやいた。
「ほれ、しっかりせんかい!」
そういって傍らに転がっていたシャドウマンを起こす。起こされたシャドウマンは暫く何があったのか分からない様子でぼうっとしていたが、すぐに正気に返った。
「は、博士!ご無事でしたか!」
「ふっ、このワシがそうそうくたばるわけが無かろう。むしろお前達の方が心配じゃ。他の奴らはどうしておる?」
シャドウは困惑して呟いた。
「はっ・・・拙者が昏倒するまでは皆博士を捜索しつつ郊外へ離脱しようとしていましたが・・・今は・・・。それはともかく博士、此処は一体何処なのでござるか?此処の連中は、我々の常識を超越した、無茶苦茶な力をを持っています。アレは一体・・・」
質問するシャドウマンにワイリーは逆に問うた。
「ふむ。シャドウマンよ、お前のあった敵の特徴を言って見ろ」
「はっ。まずはロボットが数体、奇妙なことにどれも女性型で、武装は単純ながら信じられないほどの大出力でした。他に、射撃や格闘などそれぞれに卓越した特技を持った、五人のこれまた女性、他弱いことは弱いのですがやたら生命力の強い兵士が沢山、まあこれはそこまで問題ではありませんでしたが、不死身の司令官やらテレポート人間やらアヒルの張りぼてを来て空を飛ぶエステシャンやら、もう何が何やら!乱戦になっている家に額にモノアイの付いた女性型ロボットに殴り飛ばされ、不覚にも意識を失った次第で・・・」
そこまでシャドウマンが行った時、ワイリーは少しいたずらっぽく言った。
「ふむ。お主、最近それと同じものを何処かで見たことは、無かったか?」
「はて・・・」
首を傾げるシャドーマン。
それを見てワイリーは言った。
「ヒントじゃ。アニメにもなった漫画・超傑作ミリタリーギャグ・現在小説で続編が出ている。」
全てを理解したシャドウマンの顔が一瞬で強張った。
「ま、まさか、まさかそんな!そんな馬鹿なことが!!」
「馬鹿なことではない、これは現実だ。」
そこで一旦言葉を切ったワイリーは、重々しく告げた。
「どうやらワシらは、漫画「突撃!パッパラ隊」の、それも続編「突撃!パッパラ隊2」の世界にいるらしい」
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シーン9 違う世界
「やれやれ、やっとかたずいたわねー」
ずいぶん疲れた風情で蘭美香がそう言いながら髪を掻き上げたとき、当然周りの町は廃墟と化していた。
その中に大量のワイリーロボがぐったりと転がっている・・・のはいいのだが、ライトナンバーズやコサックナンバーズまで一緒に倒れている。
「数が多い分結構手こずったかな?」
うーん・・・とのびをしながら、瑠希亜。
「でもさあ、一体一体はこっちのロボットと比べて大して強くなかったわね。」
「そーねー・・・ちょっとがっかり。少しだけど幻滅しちゃったなあ・・・」
一寸暗い表情の鹿野美。
「別にがっかりしなくてもいいわよ、世界の強さの基準自体違うんだから。戦国時代の軍隊と今の軍隊が戦って勝てないのと同じ様なものね。」
「あ・・・そっか!」
凛名に諭され、鹿野美の表情は途端に明るくなった。
「解ったわね?鹿野美?」
「うん、凛名姉ちゃん。」
頷く鹿野美の肩に蘭美香は手を置いた。
「これで一件落着ね。」
「ははははははははは・・・」
青空に向かって笑顔で決める七人。母ランコととびかげも一緒に笑っていた。もっとも、とびかげはどうせいつもどうり「ただ単に笑っている」のだろうが。
七人の笑いは水島が怒鳴るまで続いた。
「落着じゃなーい!!」
「あーもー、何が不満なんだよ親父?」
「ライトナンバーズやコサックナンバーズまで巻き込んだり」
そこで水島はすこし気まずい汗を流しながら「犬神家の一族」みたいに地面に逆さまに突き刺さっている青いロボット・・・ロックマンを横目で見た。丁度それを桜花が大根を抜くみたいに引っ張って地面から抜いた。
「そんなん巻き込まれるほど弱いのが悪い」
胸を張って言った凛名の言葉が聞こえたのか、ロックマンははっきりと落ち込んだ。何やら小言で「機械仕掛けのジャンヌ=ダルク」事件の最後に言っていたようなことを蒸し返していじけている。
「そりゃどうせ・・・前回何もできなかったし・・・家庭用ロボット・・・だけどさ・・・」
ちなみにさっきまでよりによってメットールなんかにたかられて泣いていた純也も一緒にいじけていて、二人して体育座りの暗い空間を作っていた。
「途中で途中で部下を止めに来たワイリ−博士を無視して戦闘を続行したり」
「だーって、しかたないじゃん。フォルテがそんなことで一度始まった戦いをやめると思う?」
確かに瑠希亜のいうとおり、かなりのダメージを受けて味方に押さえ込まれながらも、フォルテはまだ激しくもがいていた。
「チックショー、お前等放しやがれ!」
「無理だってフォルテ!次元が違う、あきらめろ!」
「うるせえ!俺はたとえ何処ででも最強でなきゃいけねえんだよ!」
「うるさいわね・・・」
恋子が少し不機嫌の体でぼそっと言った。
まずいことに彼女はピアンナのファンで、彼女の死を惜しんでいた。
更にまずいことに、五人の中で一番辛辣な口調の持ち主だった。マフィアのドンに「飴しゃぶりながらでかい口きんじゃないの、おぼっちゃん!」と言った母の恐れ知らずな毒舌を、姉妹の中で一番強く受け継いでいた。
そしてこれは相手方の事情だが、向こうの世界は時間的に「機械仕掛けのジャンヌ=ダルク」事件からそうたっていなかった。
結果、恋子はこう言い放った。
「はっ、惚れられた女一人守れない癖して、何いきがってんのよ。」
そしてフォルテは、それに当然に反応を示した。
「!!・・うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」
すなわち逆上である。
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シーン10 カエサルの物はカエサルに、神の物は神に(あるいは、餅は餅屋、か?)
「わーーーっ!」
慌てて瓦礫の影に飛び込む瑠希亜達。一瞬前にいたところを超強力なエネルギー弾が通り過ぎていく。吹っ飛ぶ兵士達。
「うおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」
完全に逆上したフォルテがバスターを乱射している。
「ひゃああああああああ!」
伏せる純也。
「うーん、逆上しちゃったか・・・ぶち切れた拍子にどっかの制御系が飛んだのか、攻撃力が上がっているわね」
「他人事のように解説している場合か!」
怒鳴る瑠希亜。
「大体良くもあたしのひいきのフォルテをけなしてくれたな!?」
怒る凛名。
「何だよ!」
「何よ!」
「もめてる場合じゃないだろ!」
水島の一喝。
「あんな高出力で連射していたら、フォルテの体の方が持たない。早く止めなくては。」
「えっ!?」
事態は、実は深刻だった。
「どうしよう?」
「あたしに作戦があるわ。」
江口がそう言った途端、五つの巨大なランコ顔マシーンが江口を襲った。
「ダメーーー!ダメダメダメゼッタイダメ〜〜〜〜!!!!」
「っきゃあああ、何するのよ!?」
勿論動かしているのはランコと娘達だ。
「冗談じゃないわ!あんたの作戦なんてどうせ『純也にピアンナの女装させてフォルテの気を引くおとり作戦』に決まってるじゃないの!」
「ちっ、そこまで解っているなら戦うしかないわね!」
ランコは笑った。
「甘いわね江口、昔ならともかく、今や巨大スマイリーを倒すまでに成長した娘達とあたしが一緒なのよ、勝てると思う?」
確かにこれは凶悪だった。
「甘いのはそっちよ、ランコ。何故ランコ顔マシーンが「五つ」だったのかねえ?」
「何!?」
振り返るとそこには、もうピアンナの格好になっている純也と、蘭美香の姿が・・・
「蘭美香!どうして!?」
「ふっふっふ・・・この間の戦いの時、一寸興味があったんで会ってみたら、話が合っちゃって・・・」
事実、最初に水島を女装させたのは変装してアルマ将軍のパーティーに付いてきてもらったランコだし、ある時期まではランコも水島の女装を楽しんでいたのである。素質?派あったのだ。
「おのれ変態姉貴!もうかんべんならん、成敗してやる!」
「ふっ、かかってこい!」
「んーなことやっとる場合かい!」
「あ・・・」
再び一喝する水島。
「何やらもう決着が付いたみたいだぞ?」
「へ?」
見ると、確かにロックマン世界の人達だけで完結している。
「・・・一体あたし達って・・・」
「それじゃあ、さらばじゃ!!」
しばし後・・・次元の彼方からやってきた迷惑達は、修理・改造したタイムマシンで去っていった。
「ホントに一体何だったんだろ・・・」
ぼやく瑠希亜。
「ま、偶然の事故、ですますしかないな・・・」
半ばあきらめの表情の蘭美香。
(しかし・・・)
水島は思った。
(何故またこの世界に・・・複数の世界がつながったここの特殊性が、彼らの言った「妙な次元振動」の原因なのか?それとも・・・)
悩む水島の頭上を、一瞬奇妙な影が通り過ぎた。
「!?」
それは、ビルからビルへと飛び移ったように見えたが、一瞬で建物の影へ消えてしまい、詳しく確認できなかった。ただ、妙に太った影だった。
「・・・?今のは・・・」
怪訝そうに影の消えた方向を眺める水島に、伝令の兵士が走ってきた。
それを見て、水島はとりあえずさっきの影のことはおいておくことにした。やるべき仕事は、また山ほど出来ていたからだ。
同じ時、純也も考えていた。
(守れない・・・か・・・僕にも、護る物は出来るんだろうか・・・そして、それをまもれるんだろうか・・・)
第四話 終わり 第五話へ続く
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次回予告(声・ランコ)
アメリコ海兵隊の一部隊が、南の島で消えた。
事態を究明すべく出動したあたし達に、襲いかかる、見たこともない、だが何処かで見たような兵器達。
南海の守護神が吠えるとき、失われた記憶がよみがえり、純也には運命の転換点が訪れる。
次回、第五話「南海の大決闘」
・・・そこは、かつて楽園だった。