突撃!パッパラ隊2
ミッション2 ウルトラロボット大戦
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シーン1 朝の風景
「さてと、今日も博士のため隊員皆様のため、腕によりをかけてご飯をらなくっちゃ」
そんなことを誰言うともなしに呟きながら、桜花は食堂に向かっていた。
早朝の基地の廊下に、がしゃっ、がしゃっ、と桜花の足音が響く。
がしゃっ、がしゃっ、がしゃっ、がしゃっ、がしゃっ、がしゃっ、がしゃっ、がしゃっ、がしゃっ、がしゃっ。
不意に、桜花は足を止めた。
(食堂、厨房に誰か居る・・・)
それも、その誰かは明らかに料理をしている。人間の五十倍の桜花の聴覚にそれははっきりと解った。
今まで桜花が来てから、桜花より先に食堂に入ったものはいない。ましてや、早起きして料理をしていたものなど。
慌てて桜花は食堂に入った。
「あ・・・桜花さん・・・」
桜花の眼が捉え、耳が空気の振動を聞いたのは、水島・アリスン・ブランディ・メルセデス・ローズマリー・フォン・純也の姿と声。
「ごっ、ごめんなさい勝手に厨房使った上にまだ料理できてなくて!あと少しでみんなの分出来ますから・・・すいません・・・。」
桜花の姿を認めた途端純也は謝るようにそう言った。それが桜花には不思議だった。どうしてこの博士の息子は、こうもおどおどしているのだろう。そのせいか、軍服が全く似合っていない。
軽く首を傾げ、問いかける。
「どうして謝るんですか?」
その問いを逆に純也は不思議と受け取ったらしい。
「え?だって・・・」
そこまで純也がいった時、食堂の扉が開いた。
「純也~、もうご飯出来たんでしょうね?格闘家の朝は早いんだから、もうお腹ぺこぺこなんだからね!」
そう言って入ってきたのは、純也の双子の姉、瑠希亜だ。
その後に続いて入ってくる他の姉妹、隊員達、そして「宮本五兄弟」と呼ばれる、宮本幸一、幸二、ふぐ太、ふぐ次郎、慎助の五人・・・宮本大佐と杉野工兵中佐の息子達だ。
「ほら早く、あたし達もお腹すいてんだから。」
「おーい水島、こっちにも早く。」
「お冷やまだ?」
「飯の盛りが少ないぞー!」
「おかわり!」
「はーい、今いきます!」
「遅いぞ~~!」
「おかわり!」
「おかわり!」
次々出される要求にまるでコマネズミのように働く純也。
それを見ている内に桜花は、何だか腹立たしいような保護欲をかき立てられるような気分になっていった。
「ああっ、いいですよ純也様!私がしますから!」
その気持ちが口をついて出る。「博士の息子」なので、言葉遣いが自然と丁寧になってしまう。
「いいよ、僕がやるよ。」
「ですが・・・・・・ええい、ご自分の置かれたこの状況を何とも思わないので!?」
思わずあつくなる桜花に、純也は斜め下を向くとぼそぼそと答えた。
「だって・・・僕にはこれしか出来ないから。」
沈黙する桜花。
「父の用に不死身なわけでも・・・姉さん達や妹達みたいに何か特技があるわけでも無いし・・・僕が居ることで周りの人に役立つことなんて・・・これくらいしかないから。」
そういってまた厨房に戻ろうとする純也を、
「一寸待って、梅こぶ茶入れてくれませんか?」
そう言って呼び止める忍者だるま。とびかげだ。
「あと轟天に柿を。」
「はい!すいません今すぐ!」
わたわたと梅こぶ茶を入れる純也を見るともなく見ているとびかげに、桜花は訊かざるを得なかった。
「とびかげさん、純也様のこと、どう思います?」
とびかげは答えた。
「うーん、私は実は饅頭が怖い」
「そればっかりかー!!」
「あっはっはっはっはっはっは!!」
十万馬力で殴られ、とびかげは吹っ飛んでいった。
その時だった。
緊急出動準備のブザーが、激しく鳴り響いたのは。
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シーン2 出動!
「全隊員につぐ。今回の任務は帝都イーストシティーに出現した謎の武装集団の撃退である。先行したSASの報告によると敵はロボット部隊であるらしい。我がパッパラ隊はこれより敵殲滅に向かう!何か質問は?」
ミーティングルームに集合した士官達に水島は状況を説明した。早速質問の手が上がる。
「ほーい、お父さん質問!」
「瑠希亜特務臨時少尉!ここでプライベートな呼び方はやめるように!」
「ちぇっ、お父さんたら堅いんだ。それはそれとして、パッパラ隊の警報は面白いって聞いたのに、何で普通のブザーなの?お囃子だったりチャルメラだったりするって聞いたのに、どうして?」
不満そうに頬を膨らます瑠貴亜。
「私が司令になったときに変えた。」
「え~?どうして~?前の方がいいよ、可愛くて!」
「軍隊が可愛くてどうする!他に質問が無いならもういくぞ!」
「待ってパパ、おやつはいくらまで?」
「鹿野美ーーーーーーー!!!!!」
「冗談だってば」
「親父、真面目な質問だ。」
「一体何だ、蘭魅香?」
いい加減胃が痛くなってきた水島は、半分ぼやくようにいった。
「町、どれぐらい壊していい?」
「・・・・・・・・・」
まじめな顔をして、とんでもないことを聞く蘭魅香だった。
「あ、お父さん、人はどれくらいまで巻き込んでいいの?」
「核ミサイル撃っていい?」
凛名と恋子も質問する。輪をかけてたちの悪い質問を。
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シーン3 町に吠える
地面が揺れた。
高層ビルが次々と倒れ、轟音を立てる。激しい炎と煙が立ち上る中、ゆっくりとビルを倒した犯人・・・巨大ロボットが煙の中から出てきた。それも一体二体ではない、少なく見ても十体以上はいる。
「がおー!」
ビルの町に、といきたいところだが既にビルはあらかた倒されている。
「が」
ロボットの内一体のカメラアイが何かの影を捉えた刹那。
「超球覇王電影弾!」
凄まじい勢いで瑠貴亜がつっこんできた。そのまま敵ロボットに回転しながら体当たりし、何と撃破した。
「!?!?!?」
慌ててロボット達は飛んできた瑠貴亜に照準を合わせ、ミサイルを連射する。
同時に瑠貴亜へ迫る、何十発ものミサイル、瑠貴亜が危ないと思われた、が。
ミサイルは瑠貴亜に当たる前に全弾爆発した。
「サンキュー蘭魅香姉ちゃん!」
その様子を、構えた狙撃用ライフルの望遠レンズで眺め、にやりと笑う蘭魅香。
銃口からはかすかに煙が漂っている。
マッハ4近い高速で飛ぶミサイルをライフルで撃ち落とす。普通の人間なら出来も信じもしない神業を、蘭魅香は実行し成功したのだった。
ミサイルが無効と見て取った巨大ロボット達はずしずしと地面を揺らしてある者は瑠貴亜に、またある者は蘭魅香に迫る。
ずしーーーーーん!!!
落ちた。
突如地面に大穴があき、数体のロボットが落っこちた。穴のそこには大量の地雷が埋めてあり、一気に爆発する。
「わーい、かかったかかった!!」
穴から吹き出す爆発の炎を見て、無邪気にはしゃぐ鹿野美。
さらに、穴、いや落とし穴に落ちなかったロボットの一体が突然動かなくなる。
「やっぱりこのロボット達遠隔操作されていたみたいね、一体手動操作にしたから後任せるよ凛名姉さん。」
愛用の(何に愛用しているかはご想像にお任せします)ノートパソコンをいじりながら投げやりに呟く恋子。どうやら核ミサイルの使用許可が出なかったのが原因らしい。
「よっしゃあああ!まかしとけ!」
対照的に実に生き生きと動かなくなったロボットに飛び乗る凛名。新しいメカを動かせるのが心底嬉しいらしい。
立ち上がり、他のロボットより遙かに機敏に立ち回り他のロボットをぶちのめす凛名のロボット。まさに「戦車から軍艦まで、ヘリから戦闘機まで」である。
巨大ロボット軍団が町もろとも壊滅するまで、たいして時間はかからなかった。
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シーン4 ぼこぼこ
全滅した巨大ロボットの前で蘭美香達は、がっくりとうなだれていた。
「どうしましたっ!?」
勝手に瑠貴亜がつっこんでいったので後ろに取り残された形の桜花等本隊が漸く駆けつけてきた。
「勢いに乗りすぎてせっかく考えた決めぜりふやポーズ使う暇無かった。」
そしてこけた。
「そんなのどうでもいいでしょ!」
思わず叫ぶ桜花を制し、恋子が壊れたロボットを指さした。
「でも、これはどうでもよくないんじゃない?」
桜花、兵士達、そして他の四人の姉妹もそれをみた。
「?」「?どこがまずいんだ?」
「トドメはしっかり刺さってるよね」
「別に問題はないんじゃない?」
首を傾げる蘭美香、凛名、瑠貴亜、鹿野美、呆れる恋子。
「もー、気付かないの!?」
「・・・こいつら、旧「恐怖の軍団」のロボットだ。」
流石に気付く桜花。
「それが?」
まだ分からない様子の瑠希亜。
「今この型のロボットを所有しているのはスットン共和国技術研究所副主任教授プロフェッサーワットしかいないのよ」
「ってことは・・・反乱!」
そう蘭美香が叫んだとき。
「お~い」
白衣、オレンジがかった髪、そして何より特徴的な頭の電球。噂の本人、プロフェッサーワットが現れた。
「徹斬工!」
「ぐは!」
ワットを殴り飛ばす瑠希亜。
ぱーん!
「げう」
眉間に風穴が空くワット。蘭美香の狙撃だ。
続いてばくん、と足を鹿野美の虎ばさみに挟まれるワット。
きゅらきゅらきゅらきゅら、ぐしゃ。
更に凛名の戦車にひかれ、つぶれる。
「よーし、一件落着!」
「じゃなーい!」
今度はワットと一緒に就職して技術研究所主任になったシルヴィーがやってきた。かなり慌てているらしい。
「今回の事件はワットのせいじゃないのよ」
「じゃ、あんたのせい?」
「違うわよこれは・・・」
その時、まだ残っていたビルのてっぺんからがらの悪い声が響いた。
「けっ!うっせーぜよ!」
しかも土佐弁だった。
「誰だ!」
身構えるパッパラ隊隊員達、張りつめる雰囲気、みなぎる殺気。そしてぼろくそのまま忘れられるプロフェッサーワット。よくあることである。
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シーン5 第二次ウルトラロボット大戦
傾いだビルの頂点に立つ、二つの影。
それは両方ともアンドロイドの類らしかったが、今まで見たこともない型だった。
片方は、髪を後頭部でまとめた、片方を髪の中に隠した煙るような妙な瞳と背中のスラスターか何かに見える大きな部品、細い肩と二の腕とは対照的な大きな腕パーツが特徴の機体、いや、機械かどうかも解らない。
もう片方は大きなリボンに黒いドレス、そしてロングヘアと、体にぴったりとした半ズボンにノースリ-ブの上着のもう一方と好対照をなしている。どうも土佐弁でしゃべったのは髪をまとめた方らしい。
「誰だお前等!」
鋭く問いつめる蘭美香、心配そうに見つめるシルヴィー。するとその二体は下等生物を眺める眼でパッパラ隊を見下ろした後、仕方ないといった風に語った。
「やーれやれ、下等なホモサピエンスに名乗るのもしゃくだけどしっかた無いぜよ」
「そうでごわすな、じゃっどん名無し扱いは倍の屈辱、ここは名乗りを上げるべきと。」
どういう訳か、ドレス姿は全く似合わぬ男の九州弁で話した。果てしないアンバランスである。
そして二体はそろって名乗りを上げた。
「おいは人類よりロボットより人造人間より優れた地球の新たなる支配者、新造人間の僅花!」
「同じく新造人間、百合花ぜよ!」
今度はドレス姿が先半ズボンが後で、つけあがった自己紹介を終える。そして声をハモらせると、更に続けた。
「これよりおい達は地球を支配する!お前等旧式は大人しく降伏するがよかと!」
・・・・・・
真っ先にそれに反応したのはDrシルヴィーだった。
「あなた達、もうこんな馬鹿なことはやめて、もどってらっしゃい!桃花も蓮花も、薔薇花も杏花も桂も勿論私もワットも、皆心配しているのよ!ああ、どうしてそんなにぐれてしまったの?」
その、シルヴィーにしては真面目と思われる発言にたいして帰ってきたのは、嘲笑だった。
「はっ、あんな言語に絶する非道な仕打ちをしておいて、何が心配している、か!馬鹿も休み休み言うがいいぜよ!」
「そんとうりでごわす!それに、強かもんが弱かもんを支配するんは、自然の摂理たい!」
「あ、あれは・・・」
それでも必死に説得を試みるシルヴィーだが。
「問答無用!」
拒否された。
今にも戦いが始まらんとしたその時、純也は一つの疑問を覚えた。
「ねえ、なんで百合花さん達あんなに怒っているんですか?」
「それについては私達が説明するわ」
シルヴィーの後ろから声が聞こえ、五体の人造人間、桃花・蓮花・薔薇花・杏花・桂花が現れた。人造人間なので、全く年をとったようには見えない。でも、シルヴィーも全然年をとったようには見えないんだがって、うお!何だ!や、やめろ、我が輩は体育館裏などに用は・・・ぐわあああああ!ずばっ!どしゅっ!ナンデモナイヨ。ハナシツヅケルヨ。
「実は・・・」
ごくりと息を呑む純也。
「うちらが間違ってあいつ等のおやつ食べちゃって、それで反抗期も絡んでぐれちゃってるのよ」
・・・・・・
「なんですか、そりゃ~!」
「なるほど、恐ろしい理由ね・・・」
「どこがだよ凛名ねえちゃん!」
「うるさいわね!口答えしないの!」
「だって・・・」
がやがやするパッパラ隊一同。思いっきり百合花と僅花を無視して。それが彼女たちの怒りの導火線に火をつけた。
「無!視!すんなあああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
そしてが戦いが起こった。
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シーン6 黒鉄の城と研究所
無視されて激高した百合花達新造人間たちは、いきなり攻撃を仕掛けてきた。
「食らうぜよ!ロケット・アーム!」
叫びと同時に百合花の腕、機械のように見える部分が切り離されまるでミサイルのように飛んだ。
「なんやて!?」
慌てて回避しようとする桂花。だが、遅い。前言撤回、明らかに並のミサイルより早いその空飛ぶ拳は、一つ目が素早く桂花の眼鏡をもぎ取り、もう一個が殴り飛ばす。宙を舞った桂花は瓦礫に突っ込み、眼鏡もなくなったので戦闘不能になった。
叫ぶ薔薇花。
「姉やん!おのれ~、よくも姉やんを、お仕置きしたるで!!いくで蓮花、夫婦合体ラブラブ攻撃や!」
「恥ずかしい言い方しないでよ!」
そう言いながらも蓮花は、素早く薔薇花の後ろに回り込むと、薔薇花の脇の下から自分のハイパーキャノンを前に出した。同時に薔薇花も、普通に撃とうとすると重くて後ろに倒れてしまう通天閣砲を展開した。これなら倒れることもなく、かつ長い通天閣砲がハイパーキャノンを邪魔しない。
「「一撃必殺!!通天閣ハイパーキャノーーーーーン!!!」」
まさに脅威の必殺兵器。が、二人の新造人間は余裕綽々、僅花が前に出ると同時に強力な力場の壁を作り出した。
「フォトンバリアー!?」
跳ね返された自分たちの熱線に飲み込まれる薔薇花・蓮花。爆煙。
「ふっふっふっふ・・・」
笑みを浮かべる僅花。が、瞬時に飛び退く。
「あーん、外した!」
空を切る、煙に紛れて接近した桃花の拳。次の瞬間には再びロケットアームが放たれ、吹っ飛ぶ桃花。
「きゃ~~~~~~!」
「甘いぜよ」
「甘いのはそっちや!」
嘲笑する百合花に飛びかかる杏花。
「ロケットアームを使っちまっちゃ、近づかれたら手も足もでえへんやろ!」
「そんなんおはんら旧式だけの弱点ぜよ」
ジャンプした杏花に、百合花の胸部からは熱光線、腹部からはミサイル、眼からはレーザー、スラスターからは手裏剣のような物、とどめに口からは強酸を含んだ烈風がぞれぞれ発射される。
「!!」
・・・こうして、五体の人造人間はたったの数分で壊滅した。
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シーン7 大惨事(誤字じゃないですよ)ウルトラロボット大戦
「なんてこった、あの杏花達があんなにあっけなくやられるとは・・・」
呆気にとられるワット。ようやっと立ち直ったらしい。
「ふっふっふ、次はあんた等の番でごわすな。とっととかたずけたるばい。」
「はん!あんた等みたいなぽんこつが、このあたし達と戦おうなんて身の程知らずもいいところだわ!」
高飛車な僅花に、さらに高飛車になって応じる瑠希亜。
「ほーっほっほっほっほ!水島以下中略家(この場合旧後光院家)家訓その一!眼には歯を、歯には剣を、剣には銃を、銃には砲を、砲には戦略爆撃を、戦略爆撃にはICBMを、ICBMには衛星兵器を、衛星兵器には宇宙戦艦を!やられたらそれ以上に徹底的にやり返すべし!というわけで高飛車には高飛車、ぽんこつロボットにはがらくたロボット!まずはそこの桜花に勝ってからわたし達に挑みなさいな!」
むっとする桜花。
「私はお前達の命令を受けるいわれなど無い。私が守るように博士から言われたのは純也様だ。」
(本当にこの娘達はあの金髪女に似て!しとやかさのかけらもない!)
「どうしたとか?こんならこっちからいくぜよ!」
ミサイルが発射される。一体細い体の何処に収納しているのか皆目見当が付かない大きさのそれは、見事に純也の近くに着弾する。
「わ~~~~~!!」
「おっと危ない」
着弾のぎりぎり前に凛名が改造バイクにまたがって純也を救出した。
「そらそら。その弱そうなの、大切じゃなかとか?」
にやにや笑う二人の新造人間。
「蘭美香おねえさん、私達が先に相手しようよ?」
そう言いかける鹿野美を、桜花は前に出て制止した。
「いや、私がやる」
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シーン8 機械に機会はあるか?
怒りもあらわに百合花達の前に立つ桜花。
「お前達、なんて事を・・・許さないぞ!」
そんな凄まじい気迫の桜花に対し、なんだが不良が先生をなめてかかっているようなにやにや笑いを返す百合花、僅花。
「なあに力んでるとか?なんね?人工ニューロンも使ってない電卓並の頭脳で怒っているつもりとか?。」
「だいたいおはんみたいな七十年くらい前の超旧式が、最新型に刃向かえるとでも思っとるんか?あ?ロボットにとって、性能の差は絶対。粗大ゴミ置き場にでもとっとといたほうが身のためぜよ」
げらげらと笑う百合花達新造人間。にしても、たかがおやつくらいでここまでぐれるか?あるいは、杏花達を簡単に倒せたので調子に乗っているのかも知れない。
「おのれ!純也様に危害を加えたに飽きたらず、博士のつくって下さったこの体まで愚弄するか!根性叩き直してやる不良共!」
桜花の鉄拳が唸った。
「!?」
十万馬力の拳は、あっけなく百合花に受け止められた。
「たっかが十万馬力しかないくせに、おいと格闘するつもりか?旧式は馬鹿じゃのう!そ~らよっ!」
2.8トンの重量を持つ桜花を、片手で軽々と宙に舞わせる。
「ぐっ!」
「はーっはっはっはっはっはっは!それそれ、ああ、おいは今猛烈に悪人しとる!!」
地面にめり込んだ桜花をぐりぐりと踏みつける百合花。完全に自分の悪役ぶりに酔っている。
「くのっ!」
百合花の足を手で止めようとする桜花。だが、相手の力の方が完全に勝っている。
「ならば!食らえ熱線砲!」
ぎらり、渡欧化の額のレンズが輝き、十億度の熱線を放射する。
「無駄なことはやめるばい。」
いつの間にか近くまで来ていた僅花が防ぐ。
「くっくっく・・・」
「ふっふっふ・・・」
「ああ、この絶対的な優越感!」
「やっぱ強い悪役っていいばい!誘いに乗って転向してよかったと!」
「ねえ、次は何やるとか?」
「う~ん、十字架沢山並べて皆をぶら下げるのはどうじゃ?」
「それは最後までとっておくぜよ。それより、『お前の無力さを思い知らせてやる』ってのはどう?この間の衛星アニメ劇場で見たセリフなんだけど・・・」
「いいね~」
はしゃぐ百合花と僅花。どうやら今までの悪人的行動も皆まねらしいと推察させるその様子を見ながら、桜花は必死に考えを巡らせていた。
(この二人は、互いに攻撃と防御を分担することによって、それぞれに特化した高い能力を持っている。なんで「子供ロボットが欲しい」という桃花達のお願いにこんな戦闘用ロボットを作ったのは解らないけど、流石にDrシルヴィーとプロフェッサーワットの合作だけはある・・・だけど、博士の名誉にかけて、負けるわけには行かない!)
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シーン9 葛と藤
「あああ、どうしようどうしようどうしよう・・・」
純也はおろおろとうろうろとを同時に行っていた。自分を守ろうとして桜花がピンチになっているのに、どうにかしたいのに、それをどうすることもできない。
考えれば考える程、何もできない自分が嫌になってくるのだった。
「ねーちゃん達、お願いだよ。桜花さんを助けてよ!」
振り向いた途端に純也はこけ、勢いのせいで顔をぶつけた。
「さ~はったはった!誰か桜花に張るもんいないかね!?」
「桜花に五千!」
「新造人間に七千!」
いつの間にかギャンブル場が出来ていた。バニーガールのコスプレをした蘭美香達と、ディーラーのカッコした恋子達が仕切っている。
「ねーちゃん達何やってるの!?」
「見て解んねえのか?ギャンブルだよギャンブル。こういうときお金持ちは賭をやるものなの!それとも軍縮会談にでも見えるか?」
「み、見えないけど・・・するもの、なの?」
首を傾げる純也。
「するものなんだよ。純也もやるか?」
色っぽい流し目をくれながら純也にしなだれかかる蘭美香。この長姉は姉妹の仲で一番純也にまとわりつくことが多い。ほとんど日課になっているほどだ。
「や、やめてよ蘭美香ねーちゃん!からかわないで!」
その言葉を聞いた途端、蘭美香は急にしゅんとなった。
「からかうなんて・・・そんな・・・俺は実は本当にお前のこと・・・」
「え!??」
切実な瞳ですがりつく蘭美香。赤くなる純也。
「姉弟だってのは解ってる・・・。でも、もうこの気持ちを抑えられないんだ!」
「え?え?え?!」
「なーんて、な。」
ころっと表情を変えて笑うと蘭美香は純也から離れた。
「じょーだんだ、冗談。本気にしやがって、まだまだガキだな純也。」
「そ、そう?」
それにしては何かえらく気合いが入っていたような??
「・・・・・ってそれより!!桜花さんが!」
「解ってるからお兄ちゃん、そんなに慌てないの。」
恋子が笑った。
「何しろあたし達桜花に賭けてるから、勝ってもらわないと困るのよ。」
そういうと、携帯電話を取り出す。
「もしもし?消防団のめ組ですか?」
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シーン10 ごっどういんど
百合花達の圧倒的優勢下で、戦いは進んでいた。
「もういいかげんに降参した方が身のためと!」
わめく僅花。
「いやだ」
桜花はそれを断固として拒否した。
その様子を見て、僅花は自分では気の利いたつもりのジョークを言った。
「いくら待っても、神風は吹かないでごわす。」
「ああ、吹かないさ」
桜花は笑った。
「なぜなら、奇跡とも置き換えられるが、それは吹く物ではない、吹かせる物だからだ!」
笑い返す百合花。
「あんたにはふかすのは無理と!死ぬぜよ!」
僅花も笑う。
「おいどんのバリアー、おはんの性能では突破は不可能と。よって、おはんは絶対勝てん。」
「それでも護るべき物がある限りあがくのが、戦士のつとめだ」
皆笑う。いやな時間が流れた。
「ほ~~~~~~~っほっほっほっほっほっほほほ」
さらに、その笑いに瑠希亜までが加わった。
「何がおかしい!」
「あんた達の阿呆加減がよ。高い攻撃力と防御力を持っていても、注意力は散漫なようね!後ろのビルに梅花と菊花が登っているわよ!」
「何!??」
慌てて振り向く百合花の眼に、ビルのてっぺんから落ちそうになっている菊花と、それを支えようとしている梅花が映った。
「瑠希亜さん、折角奇襲できたのにばらさないで下さい!」
「ああ、びっくりした拍子に・・・落ちるううううううううううううううううううううううううううううううううううううううう!!!」
ぐごっ。
梅花と菊花。あわせて重量約5.3トン。「それ」が、不意をつかれた僅花に直撃する。
「ぴぎっ!」
首、手、足その他が変な方向に曲がり、「新たなる世界の支配者たる、人類もロボットも人造人間も超えた存在」新造人間僅花はつぶれた。
「完璧に進化したロボット・・・それは完全な人。この世界のロボットは、徐々に生物に近づいてきた。・・・完璧な兵器・・・必要な要素は敵を倒す力、敵の攻撃を防ぐ力・・・。その両方をなすには、重武装とバリアーを積んだ、本体は人間と変わらない精度(つまり脆さ)の機体を作ればいい。って所かしらね、「最新型」さん。そもそも、最新型だからって、何がえらいというのかしら?ほーーーーーーーーーーーっほっほっほっほっほっほ!」
勝ち誇る瑠希亜。
「く、くっそーーーーーーー!」
笑い続ける瑠希亜に飛びかかろうとする百合花、が崩れ落ちた。
「・・・手加減は、したからな」
桜花だった。妙な物を手にしている。先端を斜めに切った竹・・・それを、切っ先でない方を先にして持っている。
「オプション装備竹槍・・・今まで使う機会がなかったやつだ。」
「姉様~~~~~!」
駆け寄ってくる梅花、菊花。
「大丈夫ですか!?遅くなってごめんなさい!!」
「大丈夫、大丈夫」
心配する菊花達を逆に気遣う桜花、それを瑠希亜達は黙って見つめていた。凛名がすこし照れくさげに答える。
「・・・なかなかがんばったじゃないか。」
「・・・まあな。」
桜花も、似たような顔で答える。
「ふっ。」
「ふふっ。」
「ははははははははははははははは・・・・・・」
「もう、がらくたなんて言わないぜ、悪かったな、桜花。」
「気にしてないさ」
昨日の敵は今日の友、頼もしい味方が増えたぜ!丁度夕日だ!やったぜ父ちゃん!明日はホームランだ!
「・・・出番無い・・・というより、入り込む隙さえない・・・」
パッパラ隊一般隊員諸君アンド宮本五兄弟アンド水島(中略)純也。
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次回予告(声・桜花)
桜花です。今回は大変でしたね、純也様。ってあれ?純也様、どこですか?あれ?書き置きが。何々・・・
「思うところ有って旅に出ます 心配しないで下さい 純也」
ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええっ!?
次回突撃!パッパラ隊2
「ゴッドファーザーの息子」
見て下さい!