【断片3】

 地下闘技場。アジトの訓練施設で、ビシ、と、凪はまず構えて見せた。腕を曲げ、拳を前後に構えるような構えを。

「これが拳王流の基本の構えだな。つまり、ガイファードの構えであり、ガイアソルジャーを倒せる構えでもある。」

 含みを持たせる発言をして、にやりと笑った。

「ま、ガイアソルジャーを殺れるかについては、各人の腕前と素質と肉体次第だ。慈明はくたばったらしいしな。尤も、アタシの見立てじゃルドラの奴はガイアソルジャーの中でも二番目くらいには技巧のある使い手だ。あれは気の使いと武の融合に長けてた。あれを超えるとなると、物理的な格闘の強さに、後付けでついた能力の相性が殺人的にいいジャンゴくらいだな。あいつらなら、アタシも命がけになるだろうよ。後はヴォルカノンなんかは、巌みたいに堅実で、あれは倒すにゃ手古摺りそう、って所か。」

 流派の祖師に対し、むしろ獰猛な笑みでその死を笑いながら、前だけを見て凪は武を語った。それは、正に命よりも武を愛する彼女らしさなのだろう。ガイアソルジャー達についても、既に行われたルドラの戦いだけではなく、まだ出撃していないガイアソルジャー達についても分析をしているあたり・・・・

「調べてんのか、ガイアソルジャーについて。意外と用心深いっつーか・・・・」

「それも含めて武さ。手前だけ知って勝てる程、馬鹿が勝てる程武は甘くないサ」

 そう思って言ったオレの言葉に、凪はそう答えて、オレは困った。

 ・・・・オレは馬鹿だと思うからだ。頭が良けりゃ、この道に進んで、こんな事になってない、と、思う。

 オレの頬にそっと凪の手が触れた。いつ構えを説いたのかの起こりを把握させない滑らかな動きだった。

「あっ・・・・」

「何、教えてやるさ。」

 オレの表情を見て、察したのか。そして、俺のコンプレックスに触れないように言った。

 こいつは、案外・・・・いい女、なんだろうか。

「さて、まずぁうちの術理からだ。」

 そして、からっとした口調で凪は話題を戻した。構えに戻る。

「拳王流の術理は、『複数重なった鋭い弧』だ。」

 そういうと凪は、何発か拳を放った。ストレート、フック、そして、おっそろしく鋭いコンビネーション。

「馬鹿正直に真っ直ぐなパンチは、当たり前だが止めやすい。さりとて、防御を掻い潜ろうと軌道をひねくりすぎると、かえって大振りになって速度が遅くなって反応されちまうし、速度が下がれば当たった時の威力も落ちる。だから、フェイントとして弧を描きながらも、出来るだけ鋭く。そして、それだけじゃない。」

 二つの拳の軌道は、若干ずらして二個の拳を前後に重ねたか前から、絶妙な上下差を構えて放たれていた・・・・それに注意した瞬間、凄い勢いで蹴りが放たれていた。それも、連続して三発。上半身への拳を防ごうとして空いた脇腹と足に一発づつ、それでよろめいて下段に意識がいった所で頭を刈り取るハイキック。

「え、えげつねえ・・・・!」

 これやられたらオレもボコボコにされる、と呻いた俺に、それが分かるだけ上々さ、と、凪の奴は呵々大笑して。

「えげつないと、分からない奴から殺られる。えげつない技の使えない奴も、どういう技がえげつないと分かんねえ奴もさ。褒められたのは嬉しいがてめえの流派に驕った奴も殺られるから、程々にしてくれよな。中華武術自慢に凝り固まったスカラベスなんざ、ありゃ、どうにでも料理出来るだろ。」

 ま、アタシ自身、アイツが自分の神宗太極拳の方が拳王流より上だって吹いてんのにムカついてこんな事言ってるわけだから、流派自慢が無い訳じゃないが、流石に誇りの無い奴には、最後まで踏ん張る心の芯鉄が入らないしな、と、笑いながら凪は、ビシ!ビシ!と、幾つかの別の構えを披露してのけた。それは、資料映像によるガイファードの必殺技前の予備動作に似ていたが、こうしてみると分かる。これは同時に防御の構えだ。相手の攻撃の軌道に構えた手刀や掌を割り込ませて払い除けている。

「これも、拳王流の、鋭い弧?」

「そうさ。筋がいいじゃないの。」

 ひとしきり演武を終えて、凪はオレにそういうと。

「だがま、それはそれとしてだ。一朝一夕で付け焼刃が付くわけでもなし。お前にこの拳王流を教える訳じゃないさ。」

「ええっ!?」

 ここまでの全部をひっくり返すような事を言われちまったんだが。

「ここまで教えたのは、あくまで、技にはその技なりの理由があり、流派にはその流派なりの理論ってものがあるって事さ。だから、モニカ。お前はお前の持ち味を生かすんだ。」

「けど・・・・」

オレは目を白黒させていたのだろう。凪はすぐに続きを言ったが。オレは少しわからなかった。オレの流派といっても、やってたのはルチャ・リブレ寄りのプロレスで・・・・スパイラスになった師匠は、ガイファードに適わなかった。

「そこを教えてやるのさ。敵の事もお前の事も。敵を知り、己を知るのさ。」

 その不安を笑い飛ばす様に、凪は笑った。

 その笑顔は、大きく、晴れやかで。こんな場所には似つかわしくないと、オレは思った。

(でげででっでっでーでっ♪←七星闘神ガイファードのCM入る時のBGM)

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