斬魔大聖デモンベインの名台詞

(注意・ややネタバレ気味。ただある程度ばれても問題ないくらい面白いし、何より「きっかけ」としてよかろう・・・ちなみに、下に行くほどネタバレ率が基本的に高いため、ある程度予防は可能)

その前に、ある程度のストーリー・キャラクター解説をば。

復活した魔法と錬金術が科学と融合し、発展しつつある世界。ことにアメリカ(明言は無いが。年代は恐らく1930年代〜現代までの間。雰囲気は1930年代だが、ジェット戦闘機や核ミサイルが存在する)において大財閥・覇道財閥の企業城下都市アーカム・シティは繁栄の絶頂にあった。

しかし、その裏側にある黒い影。大魔導師マスターテリオンをその頂点に頂き、「汝が欲することをなせ」の言葉の元、魔導師・改造人間・巨大ロボットでもって無軌道かつ残虐な破壊活動を重ねる悪の秘密結社・ブラックロッジ。ひょんなことから依頼を受け、魔導書「アル・アジフ」のマスターとなった探偵・大十字九郎は、巨大ロボット「デモンベイン」を駆り、ブラックロッジと激しい戦いを繰り広げることになる。ブラックロッジの企む「C計画」そして更にその裏の裏で蠢く、謎の影の正体とは・・・?

キャラクター

「大十字九郎」

三流の貧乏市立探偵。昔は大学で魔術を学んでいたが、わけあって中退。少々・・・否、かなりお人よし。ちなみにCVはどう聞いても伊藤健太郎っぽい(アニメ「突撃!パッパラ隊」の水島一純、「UFO皇女ワるきゅーレ」の和人)

「アル=アジフ」

魔導書「アル・アジフ」の精霊。見た目は銀とも桃色とも紫ともつかない微妙な色合いの髪をした、翡翠色の目の少女。悠久の時を生き、魔と外道を狩るもの。彼女の魔力なくしてデモンベインは動かない。

「ライカ=クルゼイド」

九郎の探偵事務所の近所の教会のシスターで、孤児のアリスン、ジョージ、コリンを養っている・・・それと、貧乏で腹をすかせる九郎も(笑)。しかし、その正体は・・・

「メタトロン」

白い装甲を纏った武装天使。ブラックロッジが作り上げた「ムーンチャイルド計画」と呼ばれる改造人間シリーズの一体。ブラックロッジと戦うが、苦しい思いをするのは自分だけでいいという考えから最初、九郎と敵対していた。同計画の改造人間である黒い装甲天使「サンダルフォン」とは深い因縁が。

「覇道瑠璃」

覇道財閥の現総帥。彼女の祖父、覇道瑠璃がブラックロッジと戦うため「デモンベイン」を作り上げた。

「ウィンフィールド」・・・と、早手回しに名台詞を一つ。

「今のは美しくなかったですな。見苦しいところを見せてしまいました。申し訳御座いません。」
発言者 ウィンフィールド
斬魔大聖デモンベイン ニトロプラス

ウィンフィールド・・・。覇道財閥の執事頭なのだが・・・滅茶苦茶強い人でもある。生身の人間なのに、外法の技を持ち一個軍すら壊滅させるブラックロッジの魔道師と、対等に渡り合うのだから。
ちなみにこの台詞は、剣客にして魔道師であるライバル・ティトゥスの刀が顔に迫ったのを、歯でくわえて止めた時の台詞。
見苦しいって・・・いや・・・あんた格好いいって!
と、思わず突っ込んでしまう。しかしマッハパンチといい真剣白「歯」止めといい男塾出身者ですか貴方は、ウィンフィールド・・・

「マスターテリオン」

ブラックロッジの首領、大導師。外見は金色の髪に金色の目の美少年だが、その精神には深い闇がある。素手でデモンベインを殴り飛ばし、核ミサイルを消滅させるなど桁違いに強い。ちなみにCVはどう聞いても緑川光っぽい(アニメ「スクライド」の劉鳳、「新機動戦記ガンダムW」のヒイロ=ユイ)

「ナコト写本・エセルドレーダ」

マスターテリオンの魔導書の精霊。マスターに絶対服従する。アル=アジフと似たような姿だが、その髪も瞳も服も漆黒。

「ドクターウェスト」

ブラックロッジに所属する科学者・・・マッドな、とてもマッドな。だがまあ阿呆でマッドではあるが邪悪ではなく、ただ単に好き放題発明するためにブラックロッジにいるようなものである。ブラックロッジの主戦力である「破壊ロボ」の製造を司る。

用語など

「デモンベイン」

高位の魔導書によって召喚される機械仕掛けの神と喩えられる、破壊ロボとは比べ物にならぬ力を持つ強力無比の巨大ロボット・・・「鬼械神(デウスマキナ)」(ちなみに、語源は古代ギリシアの演劇用語)、それを模して作られた巨大ロボット。魔導書の魔力を動力源にして動く。

ブラックロッジの首領マスターテリオンと七人の幹部・・・「アンチクロス」たちはそれぞれ一体つづ「鬼械神(デウスマキナ)」を持っている。

では・・・本来の掲載事項である「名台詞」と参ろう。

「憎悪の空より来たりて!」
「正しき怒りを胸に・・・」
「「我等は魔を断つ剣を取る!汝、無垢なる刃!デモンベイン!!」」

発言者 大十字九郎 アル=アジフ
斬魔大聖デモンベイン ニトロプラス

まずは、デモンベインを召喚するときの台詞・・・既にかなり格好いい。かなり質の良い3DCGとセルアニメまで入るし。「正しき怒り」「無垢なる刃」というフレーズは、後々重要な意味を持つようになる。

「光差す世界に、汝ら暗黒、住まう場所無し!渇かず!飢えず!無に帰れェェェッ!レムリア・インパクトォォォォッ!」
発言者 大十字九郎
斬魔大聖デモンベイン ニトロプラス

そして、魔術の黒き絶対「昇滅」の焔を敵の体内に掌底でぶち込む必殺技「レムリア・インパウト」の掛け声。
これもまた、やはり勇ましさの裏に最後に通じる深い意味を隠している。「渇かず飢えず無に帰れ」この言葉が。


「答えて。九郎ちゃんは何で戦えるの?怖くないの?」
「・・・怖いよ。」
「だったら・・・」
「だけど、何もしなかったらヤバイって分かっていて、それでも何もしないで・・・やっぱりその通りになってしまうほうが怖い。」
発言者 ライカ=クルゼイド 大十字九郎
斬魔大聖デモンベイン ニトロプラス

何故戦うのか。それは戦うものにとっては最も重要な問い。それに九郎はこう答えた。
随分正直であり、当たり前のことである。だが。その当たり前を実行できるものがどれほどいるだろう。それを実行しうる・・・有言実行のその心が、台詞に徹っている。

「ちょっと悪戯が過ぎるのもいいさ!喧嘩だって別に構わねえ!だけどな、弱い奴苛めて喜ぶなんてぇのは最低だ!だせぇ真似してるんじゃねえよ!てめえら、ただアリスンにビビってるだけなんだよ!なに考えてるか分からないから、おっかないから、だから苛めて、自分の方が強いって・・・そう安心したいだけなんだよ!それがダセぇってんだ!何でアリスンも同じだって、わかってやれない?なあ・・・お前らと一緒で、アリスンだって独りぼっちだったんだぜ?もう此処にしか帰る場所がないんだよ・・・それなのに、お前たちが疎んじてしまっちゃあ、あいつはどうすれば良いんだ?」」
発言者 大十字九郎
斬魔大聖デモンベイン ニトロプラス
この台詞の出てくるエピソードは、とてもその課題が重大だ。ライカさんの修道院で暮らしている孤児の一人、アリスンは元々魔力の素質を持ち無意識のうちにその力をしばしば発現させてしまい、それゆえに周囲からは疎まれた。
そして同じ孤児のジョージ、コリンから虐めを受け、感情が爆発。魔を秘めた鏡「ニトクリスの鏡」の力とアリスンの魔力が融合し、怪物が出現してしまう。「不思議の国のアリス」を元にマッドハッター、トランプの兵隊、ハンプティダンプティ、時計ウサギ、グリフォン、ニセウミガメ・・・そしてしまいには巨竜ジャバウォックまで。
それでジョージとコリンを九郎が叱ったのが、この言葉。

続いて
「怖いか・・・アリスン?デモンベインが怖いか?俺が怖いか?ガキんちょどもが怖いか?ライカさんが怖いか?メタトロンが怖いか?世界の何もかもが怖いか!?全部全部死んでしまえば良いか?壊れてしまえば良いか!?お前を愛した、愛そうとする、助けようとする、そんな皆も怖くて、大嫌いで、ぶっ殺したいか!?当ったり前だ!心を閉ざして、何も信じねえんなら、怖くて当たり前だっ!なのにアレか!?自分のことだけは信じてもらいたいってか!?ちょっとでも自分を怖がらせるものはぶっ壊そうとする、そんな奴を信じろってか!?我が侭も大概にしやがれ!皆だってお前が怖いんだよ!皆怖いんだ、みんなみんな、世の中怖いものだらけなんだよっ!怖くて怖くて、でも歯ァ食いしばって、必死に我慢して、一生懸命生きてるんだよっ!そんなことも分からないで、キレてんじゃねえッッッッ!良いんだよ・・・苛められたら、泣いて叫んで跡が残るほど、噛みついてやればいいんだ。怖いんだ、何で苛めるんだって、叫んでやれば、そいつに直接怒鳴ってやればいいんだ。でも、やりすぎちゃいけない。やりすぎたら、今度はお前が相手を苛めてることになるから・・・正々堂々と、真正面から、泣いて、怒鳴って、殴って、引っかいて、噛み付いて・・・お互い散々やり合って、すっきり仲直りして、それで・・・友達になれば良いんだ。」
「でも・・・でも、やっぱり怖い。私のこと、物凄い力で殴ってきた、大人の人がいた。泣いているのに、痛いって言ってるのに、何度も何度も。」
「そんなクソ野郎・・・俺がデモンベインでぶん殴ってやる。」

発言者 大十字九郎 アリスン
斬魔大聖デモンベイン ニトロプラス

巨大な竜の頭の上に乗ったアリスンを助けようと飛ぶメタトロンは、しかしてアリスン本人の力によって叩き落され、拒絶される。
心を閉ざしたアリスンは、ジャバウォックの力で、自分を拒絶する世界を破壊することを選択したのだ。ひたすらにひたむきに、その身を何度打ち据えられてもアリスンを助けようとするメタトロン。だが、アリスンは心を開かない。

対して、九郎は。

全力でもってジャバウォックをぶちのめした。アリスンの依存心の具現を。それこそアリスンまで殺しかねないほどの勢いで。

恐怖するアリスン。そしてデモンベインの拳がアリスンに振り下ろされ・・・る直前で止まり、九郎の声。

「怖いか・・・アリスン?」

人と人の間には相手の心を完全につかめないが故に、未知への恐怖の壁が存在する。しかし、人はそれを超えて生きるものなのだ。分かり合おうとする努力を捨ててはならない。メタトロンのようにただただ一方的に手を差し伸べるのではなく、時にぶつかり合いながらも、だ。

そして、それでも及ばぬ理不尽の出たときは・・・きちんとした大人が、強き者が、その責務として何とかしなければならない。


「瑠璃・・・私は自分の人生を辛く惨いものだと考えたことはない。なぜなら私の人生にはお前や、お前の父さん、母さん、私が知る皆がいてくれたからだ。そして私の人生の先に、お前たちの未来が、まだ知らぬ善き人々の未来があるからだ。私はお前たちの未来に導かれて前へ歩き出す。だから私は戦える。私の追った痛みを愛しく、かけがえのないものだと思うことが出来る。私は、幸福だ。」

発言者 覇道鋼造
斬魔大聖デモンベイン ニトロプラス
デモンベインを作った男、現頭首・瑠璃の祖父覇道鋼造。その王者としての顔の裏に潜む苦渋を知った幼いころの瑠璃は、その悲しさに泣き出してしまう。そして、それに鋼造が答えたのが、この言葉。

人は、人によって支えられ、人によって生きる。

あとこれは、名台詞ではなく地の文なのだが。

ヒトの造りし神。
理不尽を憎み、正義の刃を手に執る偽神が、理不尽の権化であり、正しく狂った宇宙の真理そのものである、神の前に立ちはだかる。
不遜にも。威風堂々と。


何だか、気にいってしまう一文。


「もし・・・全部無駄だとしたら?」
「ん?」
「もしもね。未来を知ることが出来て、それでどんなに必死に戦ったって、誰も救えない、救われない。全部無駄なことだって分かったらどうする?・・・それでもまだ戦える?」
「じゃあさ・・・・・全部無駄だったとしてだ。それで何もしないでいられるかな?何もしないで我慢できるのかな?ん〜・・・俺には無理っぽいな。」


発言者 エンネア 大十字九郎
斬魔大聖デモンベイン ニトロプラス
ひょんなことから大十字探偵事務所に転がり込んだ、記憶喪失の少女エンネア。正体はさっぱり不明だがむやみやたらに明るく騒がしい・・・そんな彼女が、不意にある夜、空ろな悲しさを隠した表情で問うてきた、その問答がこれである。

この前向きさこそが、力である。そしてそれは、エンネア自身をも変えていく。



「今の己自身を鏡に映して客観視してみよ!情けなくないのか!?情けなくて情けなくて、怒りがわいてこないか!?そんな自分は殴ってしまえ!殴って殴って、動けなくなるまで殴りきってやれ!否、いっそ殺せ!そして、生まれ変われ!そう、新たなる成長を遂げた、新たなる戦士へと!新生・大十字九郎へと!」

「汝(なれ)はあの娘に告げたよな。『全部が無駄だったとして、それで何もせずに諦められるか。我慢していられるか』と。その言葉は偽りだったのか?汝の強さを取り戻せ!汝の誇りを取り戻せ!汝はまだ戦えるはずだ。汝の魂は絶望に染まりきっていないはずだ。今一度、剣を手に取り、立ち上がろう!あの邪悪を討ち滅ぼそう!それでも汝がまだ闘えぬというのなら・・・」
「・・・妾(わらわ)が汝を強くする。」
「独りで抱え込むな。苦痛も悲しみも後悔も我等二人で分かち合おう。我等は戦友。我等は盟友。われらは比翼の鳥。我等は連理の枝。共に魔を断つ剣を執ろう。共に暗黒を踏破する路を征こう。大十字九郎。我が主。妾は汝を敬愛し、信仰する!」


発言者 アル=アジフ
斬魔大聖デモンベイン ニトロプラス

・・・だが、皮肉なことに。問答の夜の次の日、エンネアはデモンベインと鬼械神クラーケン、鬼械神ロードビヤーキーとの戦闘に巻き込まれ、ロードビヤーキーが破壊したビルの瓦礫に飲まれ消え・・・九郎は、哀しみ苦しみ、そして逆にエンネアの告げた「絶望」に蝕まれてしまう。そんな九郎を叱咤激励するのが、このアルの宣言である。

雄雄しく、切々と、強く、優しく。

男として、此処まで言われて奮い立てなかったら廃業であるといえる。


「マスタァァァァァァテリオォォォォォォンッ!!見たか!これがデモンベインだ!これが俺たちだ!地獄の戦鬼も畏れる戦機だ!地獄の劫火よりも熱い魂だ!この鋼鉄、この魂!お前を討ち滅ぼす破邪の力だ!降りて来い!マスターテリオン!」
発言者 大十字九郎
斬魔大聖デモンベイン ニトロプラス

そして自失から立ち上がった九郎が、鬼神の如き勢いで町を覆い尽くす破壊ロボット軍団を殲滅した後あげた、敵大首領・マスターテリオンへの雄叫び。
これに関しては本当、理屈無用に熱い。特にそれまでの停滞した沈鬱ムードが「タメ」となり、闇の中に尚焔は輝く。


「大十字九郎。汝は妾の今までのどの主とも違っていた。
汝は妾の主となるべく運命の人間としては・・・酷く、凡人であった。どうしようもないほどに、只のヒトであった。
魔人でも超人でもなく、あくまで人間の規格内でしかない、ありふれた人間であった。そして、それこそが最強の魔術師たる資格だったのだ。
正しくは、汝は只の人間でありながら、ほんの少しだけ他人と外れていた。
他人より、ほんの僅かに魔術に通じていた。
それもある。
魔術に通じていながら『書』を持たず、邪悪にも染まっていなかった。
それも大きい。
だが何よりも・・・汝は、他人よりも少しばかりお人よし過ぎた。
僅かな、ほんの些細な他人との違いに思える。
そのほんの僅かを、汝は重ね過ぎていた。
汝は只の人間でありながら、人間を肥えていた。
それが汝なのだ、大十字九郎。
そして、汝は妾をも変えてしまった。
今まで妾と我が主共との関係は、あくまで魔導書と魔術師であった。
妾にとって、我が主共が消耗品に過ぎなかったように、我が主共にとって、妾は武器に過ぎなかった。
無論、そのことに不満はない。
それが契約だったのだ。
そうやって割り切ることで、妾共は邪悪と戦うことが出来た。
だが、大十字九郎。汝は違った。
汝は妾を人間とみなしていた。
妾を同胞と、否、これは口に出すことも憚られるほどに陳腐な言葉だが・・・そうだ。大十字九郎。
汝は妾を・・・・・・・家族として、迎えてくれたのだろう。
・・・うつけが。
大うつけが。
何処の世界に魔導書を、そのように扱う魔術師がおるか。
それは妾にとってはまるで無限の幸福であり、同時に無限の責め苦でもあった。
悠久を生きる妾にこの温もりは惨酷だった。
嗚呼・・・そうか。
そうだったのか。
うつけは妾か。
何故、何故、今まで気づかなかったのだ。
妾は今頃になって、失われた我が主共の死を悲しんでいるのか。こんなにも、こんなにも悲しいものを、妾は抱えて生きていたのか。
今頃になって・・・何を今更・・・
こんなにも悲しいのなら、それならば独りで死んで逝った。主共に、涙の一つも流してやれば良かったではないか!
何故にあのとき!
あの時代(トキ)!
あの瞬間(トキ)!
この涙を流してやれなんだ!
「では、さようならだ。」
破滅の光が押し寄せる。
デモンベインを蹂躙し、陵辱し、粉砕し、絶滅させていく。
妾の使命が訴える。
逃げろと。
術者とデウス・マキナを見捨てて逃げろと。
今は逃げ延び、次なる力を得るその時を待てと。
妾を、責め立てる。
・・・巫山戯るな(ふざけるな)!
巫山戯るな!
巫山戯るな!
巫山戯るな!
妾に再び繰り返せと云うのか!
この悲しみを更に重ねろと云うのか!
この男を・・・九朗を見捨てろと云うのか!
巫山戯るな!
巫山戯るな!
巫山戯るな!
そ の よ う な 理 不 尽、赦 し て な る も の か !
九郎。
大十字九郎。
我が主よ。我が友よ。
妾は。
妾は汝のことを・・・。


発言者 アル=アジフ
斬魔大聖デモンベイン ニトロプラス

地の文の独白なので、相当長い。だが、まさにターニングポイントの台詞である。再起した九郎とアルだったが、敵の力は余りにも強く大きく多く。絶体絶命の窮地にアルが九郎への想いを自覚し、そして同時に、自分の悲劇をも認識してしまう、二色の心の彩。

そして、


「なあ・・・もう良いんじゃねえのか?素直に泣いちまっても。泣いたからって弱いってことじゃねえと思うし・・・お前だって自分で言ってたじゃないか。苦痛も悲しみも後悔も我等二人で分かち合おうって。」
「・・・俺はお前の側に居るぜ?」


発言者 大十字九郎
斬魔大聖デモンベイン ニトロプラス

そして、九郎はアル=アジフに答えて。だが。
アルは・・・九郎を守って力尽きる。九郎への愛を果たし、圧し掛かる非業に耐えかねて。

だが。だが、だが!

九郎は屈しなかった。アルが死んだということは、すなわちデモンベインは動かず、九郎も魔術を使えない、ただの人間となる。

圧倒的、絶対的なまでの無力。だが、それでも尚彼は戦った。エンネア、アル、二度の喪失を、無駄としないために。今度こそ、三度目の正直のために。

その戦いの中に、ブラックロッジを裏切り九郎に協力する、ドクターウェストの姿もあった。あくまで正義に改心とかではなく、己の美学と信念から導き出された結果として共闘するウェストの姿は、ギャグキャラのはずなのに格好良い。基地に進入したブラックロッジ幹部の魔道師をデモンベインのコクピットに隠れて愛用のギターケース内蔵のロケット砲で迎撃し

「我輩のスウィートルームへようこそ・・・レッツプレイ!」

発言者 ドクター・ウェスト
斬魔大聖デモンベイン ニトロプラス

とのたまったり。


「貴様の好きにはさせんのである、サンダルフォン!この天才ドクター・ウェスト・・・戦友(とも)のためならば、この命を喜んで賭けよう!いざ!」
発言者 ドクター・ウェスト
斬魔大聖デモンベイン ニトロプラス

と大見得を切ったり、大活躍である。まあ
「つーか逮捕するであります!そんな、登場時は悪逆非道だった敵役が友情パワーに目覚めて改心して再登場したときのような台詞で情状酌量がつくと思うなよ、犯罪者!」
とか警察官(この二人組の警官も脇で良い味出してる)に突っ込みを入れられているが(笑)

華。
華。
華。
紅の華。
血に染まる華。
焔に包まれる華。
命の華が咲いて、散る。
散りて、舞う花弁。
命の破片。
光の破片。
命を散らす輝きで、闇路を照らす。
其れは血塗られた道程。
在るのはただ血と肉と骨と火と鉄と。
空虚な、悠久。
骸が
戦士達の骸が立ち上がる。
逝く手に立ちはだかる。
命なき眸で彼らは訴える。
怨嗟?
怨讐?
呪詛?
否。
骸が手を差し出す。
その血塗れの手に握られているのは、穢れ無き刃。
凄惨の只中
慟哭の只中
それでも刃はただ一点の曇りも無く、迷いも無い。
命無き眸が訴える。
其れは声無き無き声。
されど消えない声。
消せない声。
力の限り
存在の限り
其れは『妾』に訴える。
剣を執れ。
涙を止める為に。
血を止める為に。
何より今尚戦う彼のために。
「・・・九郎。」

無言で剣を我に託そうとする骸達。
我が主達。
・・・まだ、闘えと汝等は云うか。
妾は首を横に振る。
妾にその力は無い。
専念を超える悠久は、思いの他、妾の魂を疲弊させ、消耗させていたらしい。
妾の魂は、がらんどうだ。
二度と剣を執ることは叶わない。
だが、なおも骸達は動かない。
命無き眸で訴える。
声なき声で訴える。
・・・無駄だ。
無駄なのだ。
妾は汝等のように強くは無かった。
汝等の強さに縋り、それを浪費し、磨耗させ、その一片までも奪いつくして、この路を進んだのだから。
蟲が臓腑をむさぼり腐らせるが如く。
ただ、汝等には正しく復讐の権利を有する。
ならば、その剣で妾を刺し貫け。
それは正義だ。
汝等を未だ彷徨わせる、この根源を。
妾を滅ぼし、解き放たれろ。
汝等を縛る『死霊秘宝』という呪いから。
汝等の還るべき場所に還る為に。
甲高い音を立てて、剣が地面を転がった。
骸達はもう居ない。
そうか。
ついぞ汝等にも見放されたか。
滅ぼす価値も、縛られる意味も元より無かったというわけか。
当然だ。とんだ道化だな、妾は。
何故か視界が歪んで曇る。
泣いていると気づいたのは、嗚咽が咽喉から溢れてからだ。
泣き崩れる傍らで、あの穢れなき刃は輝いている。
ただ一点の曇りもなく、迷いも無い。
・・・妾とは、違う。


発言者 アル=アジフ
斬魔大聖デモンベイン ニトロプラス

そして、死へと向かう意識の昏睡の中、肉体も消えたアル・アジフは、夢を見る。疲れ果てたアルの独白は、切なく悲しい。

そして、ついに意識が消滅する・・・

と、思われたが。
瞳を閉じて、全てを鎖そう。
果てない闇の彼方。
何も無い場所へ。
完全な無へ。
それで終わる。
追われるのだ・・・


「・・・何故」
鎖せなかった。
「・・・何故だ。」
終わることすら許されないのか。
「・・・・・・何故、汝等は」
痛む。胸がやけに痛む。穴が開いているからなのか。痛む胸を押さえ、妾は振り返る。
骸が
戦士たちが
我が主達が、妾を呼び止める。
それは声なき声。
されど消えない声。
消せない声。
「何故、終わらせてはくれんのだ!?」
この場にとどまり続けて尚、妾に呪縛され続けて尚、何故。何故。何故。
目の前に血塗られた路が伸びる。
妾が歩んだ闘争の路。
命の華の輝きで、征く先を照らす修羅の路。
遠くまで続いている。
まだまだ続いている。
「・・・止めろ。」
「まだ!まだ闘えと云うのか!?まだこんな路を進めというのか!?こんな苦しみが、汝等のような贄を生み続け、汝等の呪詛を未来永劫に背負い続けるのが妾に課せられた罰なのか!?そんな・・・そんなものに、堪えきれる訳がないではないかぁ・・・っ!」
「・・・すまない」
声を持たないはずの骸が喋った。第一声がそれ。
「何故、謝る!?」
「私たちの心は、お前と共には無かった。戦いの最中ですら。」
・・・それは妾も同じこと。
そもそも、そういう契約ではなかったか。
妾がそのように利用したのだから。
故に、何ら汝等が謝ることがあろうか。
妾は・・・
「彼は違う。」
涙が止まる。
彼?
誰だ。誰のことだ。
「彼はお前の心を満たした。お前の穴を満たした。お前は・・・彼と出会うため、戦い続けたのだから。」
それは・・・
「・・・・・・・っ!」
九郎!
あふれ出す。先ほどの慟哭よりも尚強く激しい、想いの洪水。
温もりを以て、悦びを以て、妾の内を埋め尽くす。
こんなにも胸が熱い。
こんなにも、こんなにも、彼奴は妾にとって大きな存在だったのか。
そして、心がつながった。
戦ってる。
九郎が闘っている。
力を失っても尚。
絶望のふちに追いやられても尚。
九郎は戦っている。
分かる。
感じる。
九郎の怒りを、悲しみを、苦しみを、痛みを。
圧倒的な激しさを以て襲う其れに、九朗は全力で抗っている。
もどかしい。
腹立たしい。
そんなもの、その程度の輩、本来の力を持っていれば・・・
妾 と 汝 が 二 人 居 れ ば、何 ら 恐 れ る に 足 ら な い と 云 う の に!
「・・・・・!」
・・・そうだ。
そうだった。何故、忘れていたのか。あの時、誓ったではないか。苦痛も悲しみも公開も、我等二人で分かち合おうと。
何て様だ。
こんなところで手をこまねいている場合ではなかろう!
そうだ、・・・戦わなければ!
「あっ・・・」
気づけば。
骸達の姿はもう何処にも無かった。
そして血塗れの路もまた。
其処にあるのは、ただ・・・
「分かっておる。わかっておるとも。もう、大丈夫だ。・・・ありがとう。不甲斐無い妾を、見守っていてくれて。」
地面に落ちた刃を拾う。
無垢なる刃。
魔を断つ剣。
輝いている。誇りに、愛に、そして正義に。


発言者 アル=アジフ
斬魔大聖デモンベイン ニトロプラス

アルは、立ち上がった。


「・・・諦められるワケ・・・ねえだろうが・・・っ!動け・・・動けよ・・・デモンベイン・・・お前、悔しくないのかよ・・・そんなんで良いのかよ・・・?そんなん許して良いのかよ・・・?あんな邪悪をのさばらせて大切なものとか全部奪い尽くされて・・・そんな理不尽、お前は許せるのかよっ!?デモンベイン!お前が動けないってんなら、お前の体に血が流れてないってんなら、俺の血を何ぼだってくれてやる!だからお前は俺に剣をくれ!何者にも砕けない鋼鉄をくれ!頼む!動いてくれ!デモンベインッッッッ!」

発言者 大十字九郎
斬魔大聖デモンベイン ニトロプラス

苦闘する九郎が叫ぶ。敵の、鬼械神ベルゼビュートを操る魔術師ティベリウスは無辜の人々を殺戮することに何よりの愉悦を覚え、その死んだ魂を喰らって力とする死霊術師。その非道、許すわけにはいかない。

心底からの願い、まさにその時。


「勝手に死ぬな。それと勝手に死なすな。無責任過ぎるぞ。」

懐かしい、態度のでかい声と共に。

「・・・奇跡だ。」
「否。それは違う。・・・汝は闘った。マギウス(魔術師)の力を失い、デモンベインを失い、それでも汝は戦った。絶望的な戦力差だった。瞬滅されてもおかしくはなかった。総てを諦め投げ捨てても、誰にも責めることなど出来はしなかったろう。だが汝は戦った。戦い抜いた。戦って戦って戦って・・・今の今まで耐え続けたのだ。彼奴等を前に一歩も引かず。だから・・・妾が間に合った。」
「アルーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!」
「そういうことだ!これは奇蹟などではない!確実に汝がもたらした、当然の結果としての勝利だ!我が主、大十字九郎!」

発言者 大十字九郎 アル=アジフ
斬魔大聖デモンベイン ニトロプラス

彼女は。永劫の重みよりも尊い今一瞬のため、死すらも死せしめて来たのだ。

そして。

「忘れたか罪人、こやつの名の意味を。それを成すためならば、我等は何度でも蘇るのだ!忘れたのなら今、思い出させてやろう!やるぞ、九郎!」
「応よっ!」

此処からの戦いはもう、格好よくて雄雄しくて美しくて・・・
僅かに、台詞のみ抜粋して、その雰囲気だけでも伝えよう。

「憎悪の空より来たりて!」
「正しき怒りを胸に・・・」
「「我等は魔を断つ剣を取る!汝、無垢なる刃!デモンベイン!!」」


「思い出したろう?そうだ、これがこの機体の意味・・・魔を断つ剣(デモンベイン)だ。さぁゾンビ野郎!死体は大人しく墓に帰りな!」

そして、トドメの台詞。
「他人を散々踏みにじって手に入れた不死身の体だろ?だったら何処までも面倒を見るのが道理ってもんだろうが!」


(・・・何故だ?)
(・・・何故なのだ?)
(こんなに痛いのに・・苦しいのに)
(魔力はもうとっくに底をついているというのに)
(どうして・・・)
(どうして・・・)
(九郎!アル!)
「こんなにも戦う力が湧いてくる・・・!」

発言者 大十字九郎 アル=アジフ
斬魔大聖デモンベイン ニトロプラス

一気に話は飛んで、最終決戦。圧倒的な力を振るうマスターテリオンと、その鬼械神リベルレギスに、デモンベインは圧倒される。

しかし、それでもデモンベインは負けない。何度でも立ち上がるのだ。

それは、願いゆえ。
合間に入っている(九郎!アル!)の台詞、エンネアの・・・二人の心の中の思い出に心の中に確かに存在し住まうエンネアの言葉。託された思い。無論エンネアのそれだけではない。今まで知り合ってきた総ての仲間、世界に生きる総てのもの、その願いがこそ、戦う力。

「憎い!憎い憎い憎い憎い憎いっ!余はお前が憎いぞ、大十字九郎!この無限の連鎖の中で、永遠の絶望の中で、余がこんなにも穢れ果てて、お前がこんなにも美しい・・・そのような事、許せるものかぁぁっ!!」
「マスター!・・・また、マスターを奪われた・・・!」


発言者 マスターテリオン ナコト写本「エセルドレーダ」
斬魔大聖デモンベイン ニトロプラス
だがしかし、その大敵、マスターテリオンとエセルドレーダも、また負けられない。彼等は運命の輪に捕われ、人を憎みながら永遠を無限転生し生きることを定められたるもの。その無限の中で磨り減って磨り減って、悪と狂気に歪みをかけてきたもの。そしてその運命の絶望を知りながら、そこから逃れられないもの。

故に。己の前に立つヒーローの、その輝きを憎悪するマスターテリオン。

故に。ただ一人の主が、その仇敵との戦いに総てを注ぐ故に、その相手に主の心を奪われてしまうエセルドレーダ。

それゆえに、二人は、一組の主従は、叫ぶ。
「堕ちろ・・・」
「堕ちろ・・・」
「堕ちろぉぉぉ!デモンベインッ!!」


しかし、その憎しみと怒りは・・・確実に悲しみから発している。
「そうだ・・・確実に此処で終わる。ようやくだ・・・ようやく、余はこの無限の絶望と恐怖から解き放たれる・・・だが・・・だが・・・ただ終わるだけでは足りぬ!大十字九郎!アル=アジフ!永劫のときを経て積み上げた我が怨念!おぞましきこの無限!貴様らに余さず纏めて極(キ)めてやろう!
そしてそれはマスターテリオンとナコト写本にその悲しみを与えた邪悪な外なる神・ナイアルラトホテップにもいえるかも知れない。邪神の封じられた宇宙をこの世界と繋げる為、幾億の宇宙の始まりから終わりまでを過ごした彼等・・・その、孤独の悲しみは。
「永かった。本当に永かったよ。」

しかして。

「・・・侵されていたんだ。犯されていたんだ。冒されていたんだ。なす術も無く邪悪に貪られていた。理不尽に、無意味に、ただ陵辱されていた。未来に繋がることなく、殺され続けていた。それは子供の明日を奪われた母親の嘆き。それは子供の明日を守れなかった父親の怒り。それは穢され続けてきた世界の、無力な憎しみ。だけど・・・それでも、それは怨嗟じゃないんだ!それは正しき怒りと憎悪。涙を流し血を流し、それでも歩くことを辞めない、いつしか希望へたどり着こうという、命の熾烈な叫び!総ての怒りと憎悪を清め、我が子に未来を遺したいと願う親達の優しき祈り!お前たちとは・・・違う!」

(「トラペゾヘドロンのエネルギーを・・・取り込んでいるのか・・・!」「在り得る筈が無い・・・!」「人間ごときにそんな真似が・・・」「そんな真似が出来るはずがないだろう!?」)注・括弧部分、マスターテリオン、ナコト写本、ナイアルラトホテップの台詞。

『その祈りと叫びは・・・』
「人間だから出来るのさ」
『天上の神にではなく・・・』
「・・・アル」
「・・・九郎」
「側に居てくれ。お前と一緒なら・・・なんだって出来る!」
「ああ!」
『心を結んだ、男と女の元に届いた』

「祈りの空より来たりて・・・」
「切なる叫びを胸に・・・」
「「我等は明日への道を拓く」」
「「汝、無垢なる翼・・・デモンベイン」」


発言者 大十字九郎 アル=アジフ
斬魔大聖デモンベイン ニトロプラス

九郎とアルは、その悲しみを断つ。

「正しき怒り」「無垢なる刃」・・・一見矛盾するキーワード。怒りは負の感情と捉えられること多く、そして敵を切り裂く刃は、その役割を果たすのならば血で汚れる。

その答えがこれだ。

明日を作る力。優しき祈りもて救う力。

それをなすための、怒りと刃。

悪と言う名の渇きと飢え、もうそれを感じなくて良いように。


「させるか・・・させるか・・・!マスターを・・・マスターを滅ぼさせてなるものか・・・・・・!」
「・・・人間」
リベル・レギスの全出力が落ちた。
眸は光を失い、静かに眠りにつく。
「マスター!」
「もう良い。大儀であった。エセルドレーダ。」
「そんな・・・マスター!マスター!」
「考えても見よ、エセルドレーダ。喩えデモンベインに絶望を刻み、我等が解き放たれたところで・・・宇宙は何処までも絶望の海。ならば・・・この優しき光に散ったとすれば、まだしも救いが・・・」
「マスタァァァァァァァァァァァァァ!」

発言者 ナコト写本「エセルドレーダ」 マスターテリオン
斬魔大聖デモンベイン ニトロプラス

故にマスターテリオンは、納得してその光の中に消え・・・エセルドレーダと共に、宇宙の星のひとつとなった。地の命を見守り静かに優しく気高く輝く星に。初めて救われ、ようやく人としての想いを得て。

それで・・・九郎とアルはどうなったか、と?

それは・・・プレイしなきゃ(笑)

でも、後半殆んどストーリー紹介になってしまったな・・・だって、名台詞だらけなんだもん(苦笑)

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