第八章 戦い (前編) 

爆発、轟音、炎上。
トラックから放たれた火薬弾頭ボウガンは、予定通りの威力を発揮し、ブランカは大火事になった。
何やらカメラを構えた男が爆発の勢いで吹っ飛ばされたようだが、それは特に作戦に関係ない。
慌てた様子でマスターらしき男性と女の子数人が転げ出てくる。
冷ややかな顔でそれを見たカーネルクリーチャーは、次の矢をつがえたボウガンをそいつ等に向けた。
「待てっ!」
唐突に、非常に唐突に後方から発せられた声がカーネルの鼓膜を震わせた。
「ネオショッカーめ、これ以上はこの仮面ライダーが許さん!」
素早く振り向いたカーネルは見た。
ネオショッカーの敵、父の仇、青を基調とした角張ったデザインのバイクにまたがった、バッタの改造人間を。
瞬間怒りの表情をあらわにするが、すぐさま部下に命令を下す。
「発進!予定作戦遂行位置まで急げ」
「ヒャイーッ!」
トラックが発進する。予定通り、仮面ライダーは追ってきた。
カーネルはそれを見つめていた。表情は普段の顔だが、眼には激しい怒りが浮かんでいる。
「!」
仮面ライダーのバイクがスピードを上げた。たちまち差が詰まり、追いつかれそうになる。
運転していた強化アリコマンドが叫ぶ。
「ヒャイーッ、カーネル様、追いつかれます!」
「解っている」
いうなりカーネルは火薬弾頭ボウガンをぶっ放した。バイクの目の前に着弾し、たまらずライダーも速度をゆるめる。

そんなことを二、三回繰り返す内にトラックは作戦遂行地点、臨海コンビナートに到着した。
「カーネル様、着きました!」
「射撃部隊、粘着弾頭放て!目標スカイターボ!」
すかさずインカムに怒鳴るカーネル。

コンビナートから少し離れた高台に、射撃部隊が待機していた。
射撃部隊の指揮を担当するカブトジンは触角でカーネルからの通信を受け取った。
「粘着弾頭発射!」
「ヒャイーッ!」
放たれた矢は見事スカイターボの車輪に全段命中、特訓の成果が発揮された。
「うおおっ?!」
命中の直後、仮面ライダーはバイクごと派手に転倒した。
「こ、これは!」
スカイターボの車輪は、白い固形物によって完全に固定されていた。剥がそうとするが、改造人間の怪力でもびくともしない。
「まさか・・・NO液!?」
そう。新兵器粘着弾頭とは、かつて健闘むなしく散っていった怪人ナメクジンの武器「NO液」の改良版だったのだ。
「罠か・・・おびき寄せられたって訳か。」
「その通り。ようこそ仮面ライダー、お前の墓場に。」
そこで仮面ライダーは意外な物を見た。真っ黒な軍服に身を包んだ少女を。
「き、君は一体・・・?」
仮面ライダーは間の抜けたことを聞いた。彼女の腰には、彼女の身分を証明する物、幹部用ネオショッカーベルトが煌めいていたというのに。
そんな仮面ライダーに、カーネルクリーチャーは叩き付けるように言った。
「私の名はネオショッカー中東支部長カーネル・クリーチャー、我が父ゼネラル・モンスターの仇仮面ライダー、お前を殺しに来た!」



第九章 戦い (後編)

急に現れたカーネルに対し、仮面ライダーは更に何か問おうとした。が、その機先を制してカーネルが言う。
「言っておくが、『何故君のような少女がネオショッカーに云々』等という質問は受けつけん。貴様に戦う理由があるのと同じく、私にも理由がある。貴様にとってこの世界が護るべき物、ネオショッカーが悪、私にとってネオショッカーが護るべき物、この世界が悪なのと同じように。そして貴様にとってネオショッカーが友人を殺した仇、私にとって貴様が父ゼネラルモンスターの仇なのと同じように。もっとも貴様はどうせ、そんなことを考えたことすらあるまい。そして考えぬままここで死ぬのだ。いくぞ!!」
「ヒャイーーーッ!!」
カーネルが話し終えるのと同時に強化アリコマンド部隊がライダーに飛びかかる。
「とうっ!」
すかさず攻撃するライダー。だが。
「!!」
普段ならパンチ一発で吹っ飛ぶはずのアリコマンド達が、こちらの攻撃を巧みにさばき反撃してきたのだ。
ボグッ!バシッ!
次々とヒットする攻撃。
「くっ、お前等ただのアリコマンドじゃないな!」
「いかにも、我々はさらなる改造強化を施された強化アリコマンド部隊だ!」
外見も、触角が少しのび、口のあるあたりに顎を思わせるプロテクターマスクがつき、胸部も装甲化されていた。
そしてカーネルも攻撃に参加する。
「はっ!!」
裂帛の気合いと共に突き出されたカーネルの手刀が仮面ライダーのプロテクターが無い喉に突き刺さる。
「ぐうっ!?」
凄まじい格闘の腕だ。
が、ライダーもさるもの、それでも勢いは衰えずに反撃する。
「ヒャイーッ!」
「ヒャイーッ!」
「ヒャイーッ!」
はじき飛ばされる強化アリコマンド達。が、それでも立ち上がる。
激しい戦いが、しばらく続いた。
(頃合いか)
カーネルはそう考えた。すでに仮面ライダーにある程度ダメージは与えた。これならとっさに逃げられる心配は少ない。
叫ぶ。
「今だ!退け!」
が、強化アリコマンド達は命令を聞かなかった。むしろ逆に十人全員で仮面ライダーにしがみつく。
「な!?」
「カーネル様、今です!命令違反御免!」
刹那の躊躇。
が、カーネルはインカムをおろし、再び叫ぶ。
「砲撃!」
『砲撃』の言葉に反応した仮面ライダーがアリコマンドを突き飛ばして逃げようとする。
突き飛ばそうとするライダーの手を逆に突き飛ばされる強化アリコマンドが掴む。
瞬間。
砲撃が炸裂し、ガスタンクに引火!爆発が爆発を呼びコンビナート全体が吹っ飛んだ

目もくらむ閃光と、音と言うよりは既に衝撃波と化した空気の振動が当たりを打ち据えた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ざばっ。
爆発を見て急行したネオショッカーのボートに引き揚げられたカーネルは、水に濡れた無表情をうつむかせ、ぼそりと呟いた。
「馬鹿者共め・・・命令違反は重罪だぞ・・・あいつら・・・死んだら処罰もできないじゃないか・・・」


第十章 結果報告

「よくやった、カーネルクリーチャー。」
ネオショッカー基地に、大首領の上機嫌な声が響いた。赤く輝く瞳の前に魔神提督とカーネルクリーチャーが直立不動の姿勢で起立している。
「見事仮面ライダーをコンビナートごと吹き飛ばしたそうではないか。にっくき仮面ライダー抹殺と大規模な人間減らしの遂行を同時に行うとは、流石だな。」
大首領の賛辞に対し、カーネルは変に強張った無表情で答えた。
「いえ、大首領、まだです。」
「何?」
「残念ながら仮面ライダーはまだ生きております。先程、偵察部隊が志度博士が焼け跡から仮面ライダーを連れ去るところを目撃しました。追跡を行いましたが、逃げられた模様です。」
「何だと!?」
カーネルの隣に立っていた魔神提督が叫んだ。カーネルに詰め寄る。
「あの爆発で生きていたとは・・・いや!それより、あれ程の大口を叩いておいてどうするつもりだ一体!」
詰め寄られたカーネルは強張った無表情を崩さないまま、変に抑揚を欠いた口調で答えた。
「仮面ライダーは死にはしなかったが大ダメージを受けた。スカイターボは大破、恐らく精密機器の重力低減装置も修理なしでは使用できまい。そしてあいつ等が今行けるのはブランカが焼け落ちた今志度ハンググライダークラブの建物しかない。仮面ライダーが回復する前にトドメを刺す。それだけだ。」
それだけ言うと大首領に敬礼し、退出した。
同時に壁の眼の輝きも消え、大首領もいなくなったことを示していた。
続いて、思案顔の魔神提督も退出した。

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