TVスペシャル「南海結社ヘルバーチャ」
カット1 ある日、突然に
「ええい、暑い!」
全壊の遭遇戦で空調が壊れた基地内で、悪の博士が怒鳴り散らした。
「こう暑くてはたまらん!休暇にいくぞ!」
「来てしまった・・・」
砂浜に立った生栗は、呆然とそう呟いた。
ここは、とある敢行ににぎわう南の島。場所は・・・まあ、旧大日本帝国の委任統治領の漠然としたどこか。
あっという間、止めるまもなく、博士は「HV団団員旅行」を提案し、幹部たちを強引に承認させてしまったのである。何しろ凄い剣幕だったので、断ったら暴れそうだった。
そして、黄泉の作った留守番用ロボットに後を任せ、HV団はほぼ全員で旅に出たのだ。
この量で飛行機に乗ったらえらく金がかかるので、(それ以前にパスポート持っていないやつや戸籍すらないやつ、空港のレントゲン審査を絶対にパスできないやつもいて)反崎の生体潜水艦「じんべえ」でやってきたのだ。
「あの〜、博士・・・」
「なんじゃい、生栗。」
生栗は、おそるおそる今回の計画の発案者に尋ねた。
「今回って、本当に遊びなんですか?その・・・HV海外支部建設計画とかじゃなく?」
「当然じゃ。おぬしもせいぜい楽しめ。」
「・・・・・・」
生栗は、嘆息した。
カット2 悪の博士!恐怖の正体?(ではない)
「それじゃ皆、勝手に泳ぐなりなんりするがいい、我輩も泳ぐ」
「ええっ!?」
HV団員は博士の発言に一斉に驚きの声をあげた。泳ぐということは水着になるわけで、別に博士の裸を見たいわけではないが、正体が明らかになるわけだ。
「ふんっ!」
墓絵が一息力むと、ぼむっ、と煙が沸いて博士を隠した。
「さ〜っていこう!」
そういうと、煙の中から一目散に駆け出したのは・・・紺色のスクール水着を着た(ご丁寧にそのくらい年齢にしてはずいぶん膨らんだ胸の名前を書くところにへたくそな文字で、「悪の博士」と書いてある)14歳ほどの、玉虫のように光る緑色の髪をした、極めつけの美少女だった。なぜか露出した手足や頬に赤い色で呪術的な文様が走っているが、そんなこと気にならない美しさ。生きた芸術品。声も銀の鈴を振るよう。
「お、おおおおおおおおおおっ!?!?!?!?!?」
恐れおののくHV団員たち。
だが、その混乱は次の一言で完全に静まった。
「何勘違いしてるか知らねえが、ありゃ正体じゃなくて単に変身しただけだぜ。中身の性格もそのまんま。まあ、俺も最初はだまされたから、でかい口はきけねえけど」
盛り上がった熱気は一気に冷えた。発言したのは、ラフな格好の目つきの鋭い青年・・・どうやら、きのこ怪人マッシュの人間体らしい。
他の怪人たちも、人目が気になるので(墓絵は堂々と変身していたけど)騒ぎを起こさないため仕方なく人間体になっている。
男性怪人は特に普段と違う姿になっているのだが特に注目は浴びない。当たり前だ、ヤローの水着見て喜ぶのはこんな蚊ではミミズおかまくらいのものだ。
当然、野郎どもの煩悩あふれる視線は女史に注がれる。健全なことだ。
りゅうゆうなぞ、水着姿のアリエッタの写真まで撮っている。昔なら、らディルもそうしただろう。だが今は落ち着き払って、副官ヴィランと居候少女とともに、パラソルの影でアイスティーを楽しんでいる。
アリエッタとヴィランは除外されるので、例年なら瑠璃が注目を一心に集めただろう。だが、今年は相次ぐ怪人の参入によって、女性人数が大分増えていた。
カット3 サービス、サービスゥ!
タイトルに関する突っ込みは無用。自覚してます。
「わーいっ!海だ海だ〜〜〜!」
能天気に叫びながら、砂をけってフェンリルが走る。耳と尻尾、手足が変わったくらいで、あまり変化は感じられない。水着はカラフルなオレンジのセパレート腰に付いたパレオが元気にはためく。じゃぱじゃぱと水を書き分け、そして転んだ。
「ぶわっ、しょっぱ〜!うわ〜、海の水って本当にしょっぱい!」
どうやら、海は始めてらしい。しばらくもがいていたが、やがてこつをつかんだらしく泳ぎ始める・・・犬掻きだけど。
「にゃはーん!」
アークも騒ぎ、水中にたくさんいる魚を捕まえようと躍起になっている。
「にゃ?何にゃ?」
波間に浮かぶ妙な筒。アークは興味津々と言った顔で指を突っ込む。
「・・・ぶっは!?」
水遁の術を邪魔されて、息が詰まった鞍馬鴉が慌てて浮上する。
「にゃははははは!」
笑うアーク。だが、その笑いはいきなり止まった。
「うっす、アーク姐!手伝うっす!」
むきむき猫耳男3兄弟、キャッツガイが出た。しかも、なぜか赤白縞々のレトロ水着。泡を食ったアークがおぼれかける。
「大変す!」
「助けるっす!」
「人工呼吸っす!」
さりげなく絶体絶命のアーク。彼女が最終的にどうなったかは・・・怖くて誰も聞けなかった。
さて、水着がレトロといえば、イカンゴフのほうがはるかにレトロだった。
普段からどんな暑いときも踝まで来るロングスカートに長袖で肌を見せないが、水着も総。海水浴が始まったばかりのころの、ネグリジェのような全身を覆う骨董品を着て、こっちは普通の水着のクリオネ女とともにゆらゆらと水中を泳ぐように漂っている。類は友を呼んだらしい。
「何だ、あの水着?」
純粋に疑問に思ったハッハノが呟く。あくまで純粋に、である。
「ああ、教えてやるよ、坊や。」
と、ひょっこりと蛇姫が隣に来た。かなり露出度の高い水着を着ているが、それが不思議と似合い悪女的な雰囲気を助長している。
「坊やって呼ぶなって、前にも言ったでしょうに。」
けらけら笑ってごまかす蛇姫。
「親愛の情さね」
「で?理由は?」
「ん〜、露出恐怖症。」
「何じゃそりゃ!何でまた・・・」
「悪の博士怪人軍団第二級機密事項。閲覧には博士の許可が必要。」
そっけなくいうと、ごろっと砂に寝てしまう。自分から振った話題なのに。
「・・・」
「あの、カーネルさん?」
「何だ、生栗。」
「ここでその格好、暑くないですか?」
その格好・・・カーネルは、海辺に来たのにいつもの格好をしていた。HVマークではなく「新たなる衝撃を与えるもの」のマークをつけた、黒い詰襟の軍服。
「いや。中東が長かったから、暑さには強くて、な。」
そういう問題では、ないだろう。
そのとき、遠くから博士の声が(女の子の声、変身しているから)
「相変わらずじゃ脳、少しは遊べ。そして渚の恋でも見つけろ」
「何ですかそれは!」
言い返すカーネルだが、博士は無視して意外と達者に立ち泳ぎしながら、例の笛杖を取り出し、吹いた。
「うわっ!」
いきなりカーネルの軍服が熱で溶けたゴムのようになり、一部がベルトにくりこまれながら、水着へと変化する。
「くはははは!見たか!返信したときにベルトに服を収納する機能の発展型、着せ替え能力!」
カーネルの趣味を反映してか、黒い簡素な競泳用の水着である。でも、結構背中とかが開いている。
「な、なんだか妙に恥ずかしいな・・・」
前回は動転してそれどころではなかったが、今回改めてみたカーネルの体は素晴らしかった。背丈は小柄だが果実のように実った胸は大きく、危うげに細い腰と首筋、張った尻や太股。
「・・・な、何見ているんだ?生栗。」
赤くなたカーネルに指摘され、生栗は慌てた。日ごろから真面目に戦闘員している上に、正義時代も寄ってくる女史は片っ端からブラコンの妹が排除してきたため、女に免疫が無い。
「い、いや、全壊のけが大丈夫かな、と」
反部に情本心だった。何しろ、アレだけの大怪我だ。しかし、今のカーネルの磁器のように白い肌は、怪我の痕跡も無い。
「大事ない、私は改造人間だ。回復力も強い。」
「そ、そう・・・」
お互いなんとなくギクシャクと視線をそらす。
(気のせいか、妙に緊張してしまうな・・・)
困惑するカーネル。
「磁力〜〜〜」
「ん?誰?」
後ろからソドムが声をかけてきた。長い黒髪をアップにまとめているため、別人のようだ。
「もう!ソドムだよ!」
「あ、ごめん・・・」
「それより」
むうっと、ソドムは膨れた。
「妙にあの娘に気を使っているじゃない」
「いや、まあ仲間だし、博士も言ってたけどほっとけないから。」
じーっと、下からねめつけるソドム。
「ほんっとーに、それだけ?」
「何が言いたいんだよ!」
話がどんどんこじれてきた、その時。
「おーっ!ここか!」
どっかで聞いたような特撮的に濃い声が無遠慮に南国の空気を振動させた。
カット4 やっぱり、こうなるわけ
「なかなかいい浜ではないか!」
「いやあ、ここにつとめていてまさかこんな旅行が出来るなんてなあ!」
「青い空!青い海!青い高速ハリネズミ!ああセガ!」
「何を言ってるんだ、あんたは。」
「早速スイカ割りの特訓だ!」
とかなんとかいいながらぞろぞろやってくる、日本人観光客たち。
そいつらを先導する、妙に濃いおっさん顔の26歳は。。。
「がぁぁぁぁっ、三笠屋!?」
「ぬをっ。そういう貴様らはHV団!」
そう、三笠屋機会とその部下、Aフォースである。
「HV団、貴さまらこの島に何のようだ! 何を企んでいる!」
「ただのバカンスだ!貴さまらこそ何故ここにいる!」
「ふっふ、悪のいるところどこにでも現れる、それが正義だ!」
胸を張る三笠屋の隣で、ぼそぼそと掃除婦のソニックがぼやく。
「実際は、ただの社員旅行じゃない」
「減俸」
「あああ、お許しください神様仏様それより偉い三笠屋様!」
見かけ上はへつらうソニック。
「何にせよ、」
「ここであったが百年目!」
にらみあう両軍団。
「決着をつけてくれるわ!正義の名のもとに貴様らを倒す!行くぞ!」
「くくっ、それはこちらのせりふです!」
「三笠屋・・・あんたはもう正義じゃない!俺がその愚行を止めてやるぜ!」
「ロックン、ロール!」
「いくでごわす!」
「それでは早速VRに・・・げっ!」
盛り上がってきめ台詞を乱発していた双方は、ひきっと固まった。
「観光できたから・・・VR持ってきてない!」
普通に飛行機で来たAfフォースは、VRを持っていない。HVも、じんべえにはVR搭載能力はなかった。
「・・・」
「・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・」
「!やった!これは我々HV団が有利!」
「VRがなくても、我々には改造人間がいる!しかし、相手にはそんなものはない!勝った!ここでけりをつけられる!」
「反対だ!」
「ただの人間相手に改造人間が戦うのは卑怯だ!」
「ええい、悪に慈悲は受けん!」
「長官!強気も場合にはよりけりですよ〜」
「磁力!?チャンスじゃない!」
「これじゃ、何のために・・・」
紛糾する砂浜。だが、さらにうっとうしいものまで出現した。
キーーーーーーーーーーン!
「ああ!?」
「あれは!?」
航空VRスペクターと、それに輸送される突撃用VR,スラッシャーだ。狂的自然保護団体ツナヨシの機体である。
「ツナヨシ!何でやつらまで!?」
カット5 名物
「むうう・・・目の前で連中だけ活躍するのを許すとは!」
「にしても・・・」
「あいつら、一体何しにここに来たんだ?」
ほぼ全員がその疑問を抱いた。
そうこうしている間にもスラッシャーはばらばらと抱えていたスペクターを降下させている。
「ふん、そんなこともわからないのか。」
腕を組んだ博士(注・まだ変身している)があきれたようにいった。
「なんだ?この娘」
「博士。」
「うそ〜〜〜〜〜!?」
「悪の組織がこんなところに観光以外の目的で来るとなったら、「三大生き残り」の捜索、以外にないぞ」
驚愕する三笠屋を無視して、解説を続ける美少女博士(笑)
「三大生き残り?何ですか、それ?」
解説になっていない。首をかしげる生栗。
「ふん。三笠屋はわかっているだろうが・・・「古代文明の生き残り」「旧日本軍の秘密兵器の生き残り」「恐竜あるいは怪獣の生き残り」の三種のことだ。これくらい、常識だろう?」
「常識じゃねえ!」
「常識だ!」
またも紛糾。
「さて諸君。」
それまでスペクターが降下している沖を見ていた博士が、くるりと振り返った。
「この場合、何の生き残りだと思う?」
「何の、って・・・」
「ツナヨシがらみ、ってことは、生物?」
「そのとおり、つまり・・・」
ぐぅるぅおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!
なんか出た。咆えている。
「恐竜か!」
「ばか者!怪獣だ!」
うっかりしたことをいったハッハノを、博士は容赦なく杖でどついた。
「ああ、大地のごとく逞しい脚、山脈よりも優美なラインを描く尻尾から背筋、天の太陽よりらんらんと輝く瞳、世界を引き裂かんばかりの力強い腕、星すら呑む、ひとたび力を放てば何者をも焼き尽くす口!・・・ああ怪獣よ!お前は美しい!」
ほう、とため息をつき陶酔する博士。それを見た周りの「まともな人間」は思った。
(やっぱ、どんな格好でも、博士は博士だ・・・)
「何者にもこびず、世界の敵意に負けず生き抜くその姿。悪として、見習いたいな・・・」
いきなり感傷的になる。感情の起伏が激しいのだ。
「しかし、あれがツナヨシのものになったら、まずいですね・・・」
考え込むゲドー。
「バカメ、相手は怪獣だぞ。そんな風に行くものか。「自然を保護してやる」という考え方がいかに傲慢無謀か思い知るがよい!」
ぐるおおおおおおおおっ!
ゴォォォォ!と激しい炎が怪獣の口から噴射される。
「あ・・・全滅・・・」
あっけなく蹴散らされるツナヨシ。
「別の意味で、何しに来たんだ?」
と、打ち落とされた一機のスラッシャーが、へろへろと落ちていき・・・建物を一つ押しつぶした。
「あ〜〜〜〜〜っ!」
イカンゴフが珍しく叫ぶ。
「どした?」
「あれ、今日泊まる予定のホテル!」
「何〜〜〜〜〜っ!」
「というか・・・あの怪獣どうするの!?」
カット6 南海の別荘地に暗黒豪華の正体を見た!(前編)
「あうう・・・」
げっそりしながら、歩くHV団員たち。もう夜。
服のあちこちにこげ後を作っているものも多い。
「まったくだらしないのう!」
そんな団員を博士が叱咤する。さすがに、もう変身はといていた。
「そうはいってもねぇ・・・さすがにこれはへこみますよ。」
久々に燃え上がってAフォースと戦おうとしたのに、結局VRがないから慌てているうちに連中は怪獣に踏み潰されちゃうし。(それでも、「ふっ。今日のところは引き分けにしておいてやる!」といった三笠屋は、やっぱり三笠屋)騒ぎの元ツナヨシは逃げたから八つ当たり出来ないし。ホテルは燃えてしまったので野宿確定だし、とどめに・・・
怪獣、悪の博士が「乙女の祈り」で鎮めちゃうし。
変身していたとはいえ、もう二度と見たくない光景である。
「あれはちょっと・・・」
「ふん!怪獣は、我輩にとって「愛しいもの」なのじゃ!何ためらうこと有ろう!」
「いや、そうじゃなくて。臆面もなく乙女の祈りっていうほうが問題なんだって。」
「お約束じゃ!」
・・・・
「ところで今、どこに向かって歩いているんですか?」
「ふっふっふ・・・」
ゆっくりと博士は笑った。
「アレを見よ!我らが今夜の宿だ!」
指差した先には、凄い豪華な、白のごとき豪邸。
「あれ!?ど、どうして!・・・・博士の持ち物とか?」
「いや?マダムXの別荘。パーティにお呼ばれしておってな。」
そういうと博士は今度は、純白のタキシードに身を包んだナイスミドルに変身した。ヒゲと髪の毛が真っ青なのが何か気持ち悪いが。
「いざゆかん!前人未到のマダムの暗黒舞踏会の謎かついに明らかに!」
杖笛を吹き鳴らす。昼間カーネルの服を水着に替えたように、怪人たちの衣装がパーティ用のそれに変わっていく。
「さ、いくぞ。」
つかつかと門に歩み寄る博士。
「あの・・・」
静かにたずねるゲドー。
「私たちの服は?」
「・・・・・・」
またつかつかと歩き出す博士。
「博士ぇ!?」
「冗談だ!貴様らの服にも無断で細工はしてある!」
それはそれで問題だ。
カット6 南海の別荘地に暗黒豪華の正体を見た!(後編)
流れる優雅な音楽。着飾った人々。
まさに、宮廷。
「というか・・・」
呆れ顔でハッハノが呟く。
「あまりに広くて、広間の向こう側に地平線が・・・」
島なのに。敷地面積とかどうなってるんだろう。やはり、マダムXはむちゃくちゃ豪華だった。長年謎だったそのお屋敷(の一つ)が、ついにHV団の目の前に。
「くはははは!この手のお屋敷には客陣容の部屋がある。そしてこれだけの屋敷なら、我ら全員が泊まる分とてあるだろう」
笑う博士。
「さて、それではパーティを楽しむとするか。踊りませんか、マダム?」
そういうと、博士は優雅な手つきでマダムXの手をとった。
「あーら、よろしくてよ。オホホホホホホホホ!」
・・・意外なほどパーティなれしている悪の博士。単に面の皮が厚いだけかもしれないが。
逆に、怪人たちはぜんぜんだった。
「わーいっ!ごちそういっぱい!」
「こらーっ!フェンリル!オードブルの皿持って走るな!」
「あうあう〜〜〜〜っ、人がいっぱいぃぃ、怖い〜〜〜!」
「泣き叫ぶなカタツムリ女!」
「・・・・・」
「シャンデリアの陰に潜むな!鞍馬鴉!」
「ぐびっぐびっ、ぷっはー!」
いきなりたるから酒を飲むな蛇姫!」
もっとも、怪人の中にもこの手のことが大得意なやつがいた。
「ふっ。皆様所詮庶民ですな。」
生まれ付いての大貴族、ゴールド公爵である。博士異常に優雅にパーティ会場を闊歩している。」
もっとも、マナーは問題ないのに浮いている連中も多かったが。
この会場に合わないむさくるしさの持ち主、師匠やアラネス。
生来の気弱さから、客なのに厨房の手伝いに行ってしまうイカンゴフなど。
逆に、人気が有りすぎてピンチになるカーネル。
「貴方、博士のところの将校さん?」
「は、はぁ、まあ。」
「美形ね〜、一緒に踊りましょう!」
「や〜ん、私と踊るの!」
「え、あなたもこの子狙ってたの?」
女官に囲まれてしまう。障害戦いに生きてきた彼女にとっては、未経験の世界である。
「いや、私も、女なんだが・・・」
「きゃー、男装の麗人、ってやつ!・」
「かっこいい〜!」
「宝塚みたい〜!」
さらに火に油を注いでしまう。
「な、なんか大変そうだな。」
あきれる生栗。
「は、博士、何とかしてください!」
「ふむ。」
軽く頷いた博士、変身しても手放さない笛を笛を再びすらりと抜いた。
ひゅらっ、ひゅらららっ!ぽぱー、ぽぱぽぺーぴー、ぽぴれぴー、ぽぱーーー・・・
ぽん!と服が変化し、イメージカラーである黒はそのままに、軍服からドレスになる。
が。
「おお!美しい!」
今度は男にたかられる。
「ありゃ」
「や、や、やめてください!」
ぎらっ、と閃光!
「あ。」
勢いあまって変身してしまう。
「わーーーーーーっ!」
「きゃああああああ!」
「ば、化け物〜〜〜〜〜〜〜!」
パニックになる会場。
「マダム・・・」
それを見つめながら、簿そりと呟く博士。
「すまんけど、別の広間貸してくださらんか?」
カット7 酒の夜
「二次会突入〜〜〜〜〜〜!」
変身もとき、殺気までとは打って変わった豪快マナー無視暴走モードで酒を飲みまくる博士。騒ぎを起こしたせいで別室に隔離された一行は、それでも結構楽しんでいた。
「蛇姫!もうおおっぴらに呑んでも問題ナッシング!いけ〜〜〜!」
「あいさ!」
これで十個目のたるを開ける蛇姫、もう底なし。
「杯盤狼籍だ〜〜〜〜〜!」
「一番鞍馬鴉、酒を使って火遁の術!」
ぼっ。
「うわ〜〜〜燃えた〜〜〜〜〜!」
「暴走モード突入・・・」
怪人軍団のあまりにハイテンションに、呆れ顔のハッハノ。
「おうおう、あんたも呑みなよ。坊やったって男だろ?」
和服のすそから出した尻尾で文字通りからみながら、ハッハノに絡む蛇姫。前の戦いから、ずいぶんと蛇姫はハッハノにかまっている。
「はは・・・元気ですね・・・」
ずい、とたる酒を押し付けられて焦るハッハノ。
「ん、まあね。ほら、ここで湿っぽくなると「私のせいで・・・」とか落ち込む人がいるでしょ?」
「・・・なるほど」
納得するハッハノ。
「よーし棒や、納得したら呑み比べか野球拳かチンチロリンか選べ!」
・・・純粋に素なんじゃないの?・・・
前言撤回し、ハッハノは思った。
「いや、災難だったなあ・・・」
不意に隣に座ってきたカーネルに、菜まくりはとりあえずそう言った。
「ん」
「でも、何もあそこまでパニクる必要はなかっただろ?」
「面目ない」
心底すまなそうにカーネルは呟くと、帽子の庇を下げて、顔を隠した。
「その、どうも・・・華やかなところは苦手で、・・・あと・・・」
「あと?」
「いっいや!何でも!」
そう言うと立て続けに杯を干す。。
(生栗がいたから、他の男と一緒は嫌だった・・・なんて、言えるか!)
「お前、心配性だな・・・」
しばらくして、カーネルは正面を見ながら呟いた。
「そ、そうか?」
「・・いや、悪い意味で言っているんじゃない。」
「・・・」
「・・・」
時が、だらだらと流れた。
うまく会話できない自分にいらいらするカーネル。そのせいで、表情が加速度的に硬くなっていく。
無言のまま、酒だけが進む。
「も、もうちょっと楽しく飲んだら、どう・・だ?」
なんとか生栗が言葉を搾り出した。
「む、努力する。だが・・・どうすればいい?」
真面目な表情で聞き返すカーネルに、菜まくりは思い切り困惑した。
「い、いや・・・。そんなこと聞かれても。とりあえず何か話すとか」
「ふむ・・・たとえば、敵対指導者暗殺作戦における撤収手段の検討とかか?」
思案顔でとんでもないことを言う。ずっこけた生栗はイカンゴフがいためたつまみのパスタに顔面を突っ込んだ。
「ち、違う」
パスタに顔突っ込んだまま、もがもがと呟く。
「だが、個人的な戦闘術はとどのつまり体で覚えるもの、口でいくら言っても・・・」
真面目な口調だ。冗談のつもりは毛頭ないらしい。
「そういう仕事上の話じゃなくて!」
がっ、と顔を上げた生栗は、対照的にうつむいているカーネルを見た。
「すまん・・・・私の出来ることはこれしかないし、過去は語るのも辛い・・・。私はつまらない話し相手だな。」
からり・・・カーネルが呑んでいた水割りの氷が揺れる。
「っごっ、ごめん・・・」
自分もしゅんとなる生栗。視線が下がる。
「!」
ひょいと、横を見ていたカーネルと目が合った。その瞳の色は、案外穏かだ。
「お前は優しいな、生栗・・・」
「そ、そうかよ?俺は悪人を目指してるんだがなあ。たはは、まいったなあ。そういう風に見える?」
頭をかく生栗。
まずいことを言ったかな、という顔を一瞬したカーネルは、何とかしようと回らぬ口を必至に動かした。
「別に、お前に素質がないって、言ってるわけじゃない。悪人が優しくちゃ駄目だなんて、そもそも誰が言ったんだ?・・・自分で言っていてなんだか矛盾している気がするが・・・。なんというか・・・その・・・。そう、お前はがんばっているから、優しいんだと思う。不器用でも、一生懸命だから・・・」
底まで言って、不意にカーネルは口ごもった。目が潤んでいる。
「な?おい?」
心配する生栗に、無理に笑いかける。
「大丈夫だ。ただ、mお前、私が昔愛した男に、そういうところは似ているな、と・・・」
「昔・・・って、「新たなる衝撃を与えるもの」の?」
「ああ。」
不思議だ、とカーネルは思った。あのころを思い出しているのに、不思議と辛くない。それどころか、あいつと一緒にいるような・・・そんな気がする。
「革命で国を追われた下級将校だったんだが、なんとなく馬が合って、結局最初から最後まで、一緒だったでも、あまり言葉はかわさなかったな、無口だったから、あいつも私も。実際、互いに好きあったのは、最初で最後の夜だったからな。長年の部下を失って、泣きつかれて寝てしまっていた私を、あいつ、どうしたと思う?」
懐かしむ口調。珍しく、過去を怖がっていない。いい兆候だな、生栗はそう思った。
「あいつったら、ただ黙って私を抱きしめたんだよ。言う言葉が思いつかなかったらしい。不器用だよな・・・。でも、嬉加担だ。それが。だから好きになった。」
話の合間に、グラスを傾ける。
「私を幹部じゃなく、一人の少女として扱ってくれた。何も考えずに・・・そう、丁度この間のお前みたいに。」
ぶうっ、と生栗は酒を噴出した。花に入ってむせる。
(そ、それってつまり、俺のことも・・・まさか!!そんなはずは!!)
なぜか力んで否定する。
「この間・・・私実は、お前が帰った後になっていったんだ。ありがとうって。」
(あれ、空耳じゃなかったんだ・・・)
「もう一度言う、ありがとう・・・」
そういうと、また一口。
「ふふっ、何言ってるんだろうな、私は・・・ごめん、退屈だったろう?」
そういうとカーネルは、このヘルバーチャ団に来て初めて自嘲でない笑いを浮かべた。その拍子に潤んだ瞳から煌くものがこぼれる。
酔いが回って服が僅かに乱れ、桜色に染まった目元とかしげた目つきが恐ろしく色っぽい。
「い、いや・・・あう・・・」
生栗敵にはそれどころじゃなかった。さっきから、どきどきのしっぱなしである。
「そうか、よかった・・・。私は、お前と話すのがいい・・・。何だか、体が温かい・・・」
「よ、酔ってるん、だ、ろ」
よってないのにろれつが回らなくなる生栗。
「そうか、・・・これが、酔う、か。私は今まで、酒を飲んでも、心が鬱として晴れたことはなかった。でも、何故だかお前と一緒なら、酔える・・・お前と、一緒が、心地良い・・・」
ぶつぶつ言いながら、眠ってしまう。しかも、生栗にもたれて。
「あ・・・あ・・・」
がちがちになる生栗。そのどきどきは、近づいてきた博士の発言によりさらに硬直した。
「幸運だな、生栗。この娘は、心底から信頼した相手にしか、表情は見せない。こやつの笑みも、涙も、お前のものだぞ。」
「・・・はあ。」
「む・・・」
ぐーっぷ、もう駄目だ・・・」
そのころ、大食い競争で五人抜きしていたソドムは、どたっと倒れたマッシュ・茸を無視して、横目でそんな二人の様子をにらんだ。
カット8 翌朝
くあーっけけけけけけ・・・
南国独特の派手な鳥の鳴き声がする。
窓から差し込んできた光に、生栗は開けたばかりの目をしばたたいた。
「ん・・・」
見たこともない部屋にいる。多分マダムから自分に割り振られた部屋だろう、と生栗は推理した。事実だ。
「っあ〜・・・、どうやって部屋に着たのか全く覚えてねぇや」
寝ぼけた頭を振る。
「確かカーネルさんと呑んでて、それで・・・」
(それで酔いつぶれたカーネルが俺に寄っかってきて寝ちゃったんだよな。そう、丁度今みたいに隣に柔らかくて暖かい感触が・・・って、えええええっ!??)
慌ててばっ、と隣を見る。
「ぐうぐう」
隣でまんぼうが寝ていた。確かこいつは悪の博士の弟とかで、機能大食い大会で五人抜きしたソドムに勝って、その底知れぬ胃袋を誇示していた。VR獣バフィラス星人の元になったほどのテレポート能力があるから、大方適当にテレポートして俺の部屋に・・・
「失せろアホ怪人!」
「間簿~~〜〜〜〜〜〜〜・・・・・・・」
どげしっ、と部屋の間塚羅けりだす、ここは四階だが、そんなことでどうこうなるたまではない。
「ったく・・・下の地面にあたってぼよんぼよんとバウンドする弾力あふれるまんぼうという奇妙な光景を無視しようと窓を閉めて振り返り、そして凝固した。
「・・・すう・・・すう・・・」
自分が殺気まで眠っていた場所の布団の隣に、もうひとつの布団の盛り上がり。
滑らかな括れとふくらみのある、それは・・。
「か・・・」
カーネルだった。
「ん・・・」
寝返りを打った拍子に、シーツが滑り落ちかける。
「うが」
ほとんど何も来ていないに等しい。長く伸びやかな脚、滑らかな首筋から肩にかけてのラインと、ふっくら実った胸元が、見えそうで見えないで・・・
「あ・・・あ・・・」
「見〜たでごっざっる!聞〜いたでごっざっる!」
「わああああ!」
いきなり背後から愉快そうな声。見ると、天井から鞍馬鴉がさかさまにぶら下がっている。
「生栗殿、これは責任をとらなければならないでござるよ〜〜〜!」
「え、え、え!?お、俺何かしたのか!?」
「ふっふっふ、忍者は全てお見通しでござる。博士が知ったらどうするかな〜。娘を傷物にされたと知ったら・・・」
「ええええっ!?お、俺はそんなことを!?」
「生栗・・・」
また後ろから。カーネルの声。
ぎちぎちと振り帰る。顔に恥じらいの表情を浮かべたカーネルが、シーツ一枚の姿で座っている。
「覚えてないの?・・・」
今にも泣き出しそうな目をするカーネル。
「え!?え!?」
「なーんて、な!」
ぼか〜〜〜〜〜〜〜ん!
激しい白煙を噴き上げ、それまでカーネルだったものが、悪の博士に変身する!
「くははははははははははははは!引っかかったな生栗ぃ!」
「博士〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!?!?!?!?!?!?!?!あんたって人はぁぁぁぁぁぁぁ!」
思わず胸倉を掴む生栗。
「ふっふっふ・・・」
不適に笑う博士。
「言っておくが、な。おぬしがカーネルと一緒に寝ていたのは、紛れもない事実ぞ。別に何もなかったし、カーネルはもうおきて、先に言ってしまったが、な」
安心半分どきどき半分の生栗。見事に引っかかったでござるなあ。」
「良いか生栗。機能言ったではないか。「この娘の笑みも涙も、お前のものだ」とな。そのうち貴さまは我輩のことを「お父さん」と呼ぶのだ〜〜〜〜!」
というと、忍者と一緒にどたどたと去っていく。
「午前中はショッピング、屋敷前に四十分後集合だからな〜〜〜!!」
「・・・はあ」
結局、あの二人何しに来たんだ?
「・・・日程知らせに、か。」
ぼやくと、着替えを始める生栗だった。
カット8 襲来する妹
「むう、ショッピングタイムを折角とったのに、皆暇そうじゃのう・・・」
「それは、そうでしょう」
不満げに呻く博士に、ゲドーが説明した。
「我々は年中同じような福田からブランド物は買わないし、宝石にも興味はない。香水も要らない。強いて言うなら買うのは食料品ですが、それとて人数が多いから一括注文ですからね、時間が余って当然です。」
「むう。」
「博士、それでは次に予定していた旧日本軍戦跡めぐりを繰り上げて行っては?」
実のところそれが一番の目的でここに来たアラネスが提案した。
「でも、バスが来ないからなあ。無理だ。」
「・・・仕方がない、一旦屋敷に帰るぞ。」
空しくしょぼくれてぞろぞろと町を歩くHV団員は旗から見ると極めて目立った。
「おや、ここって最初に来た浜じゃないか。」
「案外近かったんだねぇ、ここ」
などと適当に雑談しながら歩くHV団。
「あのときは急に三笠屋が・・・」
「待てぇ〜い!」
「!!」
噂をすれば影とばかりに、響く濃い声。
「Aフォース!」
見ると、砂浜にAフォースの連中が集まっている。
「あ〜も〜何じゃお前ら?我輩らあこれから戦跡めぐりをせねばならんのだ。おのれらのようなアホにつきあっとる暇はない。それみい、貴さまらが景気の悪い顔を出したせいで天気まで悪くなってきたわ」
無茶苦茶こき下ろす博士。だが確かに空が急に曇り始めている。
「アホはお前だ悪の博士!単にスコールが近いだけだろうが!それも丁度いい、血統を前に浜にたたずむ我々!嵐とともに迫り来る敵!さあ、遅れてくるのは勝者の余裕とかいった後にしっかり負けて「ば、馬鹿な!」とか言うがいい!」
「ちょっと待て!」
いつもどおりッ妄想に突っ走る三笠屋を呼び止める博士。
「いつ決闘するって言った!」
「何?しっかり矢文で挑戦状を送ったろう!?」
「?・・・そんなの来てないぞ」
なんとなく周囲を見回す皆。
「あ〜〜〜!」
不意にハッハノが大声を上げた。
「フェンリル、その後頭部に刺さってるのは一体なんだよ!」
「?」
確かに、後頭部に手紙付きの矢がぶっすりと刺さっている。
「・・・何故気がつかなかったんだ?」
「ほら、ボク強いから」
「単位再生能力が強すぎて気づくまもなく傷口が塞がったんだろ。」
「なーんだ、そうだったのかー。教えてくれてありがとう、博士(棒読み)」
「はっはっは、質問があったらどんどん聞いておくれ(棒読み)」
「それじゃ、悪の博士の何故何質問箱、また来週をお楽しみにね(棒読み)」
「まったね〜(棒読み)」
そのままBGMにあわせて去ろうとする博士たち。
「待てい!」
流石にばれる。」
「逃げるな!おとなしくこの三笠屋考案のサバイバルスイカ割り勝負・・・」
そこまで聞いた途端蛇姫の顔が引きつり、そして叫んだ。
「博士!霊子力レーダーに敵対意志反応、高速接近中!」
それを聞いた博士も慌てて叫ぶ。
「まずい!全員退避!」
ばっ、と左右に飛ぶHV団。状況を理解できないAフォース。
「何だ、何のこと・・・」
逃げなかったAフォース達が、巨大な影に包まれる。
「あぎゅぶえげぼごっぐちゃめしゃああああ!」
瞬間、三笠屋たちの上にVRが着陸滑走し、その場にいた全員をひき潰した。
「うわ〜・・・ミンチよいひでぇや・・・」
三笠屋の地で真っ赤に染まった浜の上に立つ、巨大な影。翼を広げた、エンジェランに似ているようで立ち上る殺気がぜんぜん別物の、まがまがしいその機体は・・・
「これは、ベルフェゴールか!!セブンのVRが・・・何故ここに!?」
その答えは、コクピットをあけて飛び出してきたパイロット、生栗磁力の妹である彩がすぐ口にした。
「お兄ちゃん、彩が助けに来たよ〜〜〜!」
そういってから、きょろきょろと辺りを見回す。
「あれ、お兄ちゃん、どこ?悪い虫に付きまとわれているみたいだから、退治して上げにきたのに・・・」
そして見回した彩は、まさに彼女の脳内でイメージされた「つきまとう悪い虫」を見た。
「生栗、大丈夫だったか!?」
飛来するベルフェゴールから咄嗟に生栗をかばって押し倒したカーネル。
「・・・磁力気絶してるみたい。もお、勢いよく倒しすぎだよ!あたしならもっと上手だったね!」
負けまいと、張り合うソドム。
「いや、ソドム殿の位置からでは行動に移る前にベルフェゴールが来ていた。」
「何を〜〜〜〜〜!!」
当然の反応として、彩は逆上した。
カット9 えぐられたもの
コクピットから、彩はひらりと飛び降りた。挽肉交じりの血がぐじゅりと音を立てるが、彩は気にもとめない。
そのままつかつかと、否ぐしゃぐしゃと足音高くソドムとカーネルに歩み寄る。
「お兄ちゃん・・・そんな変な怪人女とVR人間と、何してるの・・・?」
涙ぐんで呟く。
「!・・・これはお前のVRの無茶な着陸からかばっただけで、押し倒したんじゃない!」
いちいち赤くなって反論するカーネル。この後起こる事態を予測して身構えるソドム。
「お兄ちゃん・・・」
ごろごろと、雷鳴。
「一緒に死んでぇぇぇぇぇぇぇ!!」
一点表情が壮絶に怖い笑みへと変化し、「心中上等」印の出刃包丁がぎらつく!
「ふんっ!」
危機一発、カーネルが手だけ変身させて繰り出した刃が出刃包丁を受け止める。
「うわわっ!」
流石に目を覚まして後ずさる生栗。
きりきりと、刃物同士が微妙な緊張でこすれあう嫌な音。
「生栗は、死なせない!」
押し殺すように呻くカーネル。
ぎゃりぃっ!
改造人間お力に任せて刃を振りぬき、彩を遠ざけるカーネル。身構える彩の前に、立ちはだかる、
「邪魔しないで・・・おにいちゃんは、私のもの・・・連れて帰るの。でなきゃ、一緒に死ぬの。私が、私だけが、お兄ちゃんを愛することが出来るんだから・・・未来永劫に、ふふ・・・」
恍惚として呟きながら、ゆっくろと包丁の刃を舐める。既にかなり暗くなった中、刃が不気味に輝く。
「お、お前は生栗の妹だろう?」
まだこの娘について詳しく知らないカーネルが困惑する。
「いや、このお嬢ちゃんはそういう奴なんだって。」耳打ちするソドム、生栗はそれまでのこの妹の所業が次々脳をよぎりをよぎり声も出ない。
納得しかけたカーネルだが、次の彩のせりふは承服できなかった。
「どいて。貴方みたいなお兄様を利用している奴が、近づかないで。」
途端にカーネルの表情が険しくなる。
「私が生栗を利用しているだと・・・どういう意味だ?」
静かに、押し殺した怒りが声音からもれる。それに対して、彩もまた怒りで答える。嫉妬に近い、どろどろした怒り。
「貴方は・・・お兄様を前の恋人の代用品にしている!そんなの許せない!」
包丁を突きつける彩の言葉に、カーネルは頭を鈍器で殴られたかのような衝撃を受けた。
(私が、生栗を、カブトの代わりだと・・・?確かに、生栗と一緒にいるとき、まるでカブトと一緒にいるのと同じような気分でいた・・・」
「お兄様に寄りかかって、うじうじ心の傷打ち明けて、いらない気をもませて。お兄様は貴方の傷薬じゃないわ!」
「わ・・・私は・・・そんな・・・」
必死に、それだけ口から搾り出す。痛いくらい苦しい胸をさまよう手がかきむしり掴み、軍服の胸元がぐしゃぐしゃになる。まるで、潰された心のように。
「無意識だったの?じゃあ無遠慮な分尚悪いよ」
よと、っとあとずさるカーネル。
「でも、仕方ないわね。貴方、前の男に対してもそうだ丹でしょ?最初から、そういう風に男を利用するしか出来ないのね、お兄様どころか、人間と付き合う資格がないのよ、貴方みたいな心も体も醜いバッタ女は!」
彩の心が、ぎざぎざの電気鋸のようにカーネルの心を切り裂く。先決の変わりに、カーネルは、他人の前で見せるまい、と思っていた弱さの象徴・・・涙を、とめどなく流した。
「・・・・・・・・・!!!」
必死に声を殺し、顔を覆って、手負いの獣のようにカーネルはその場から逃げ出した。
それを満足そうに見送った彩は、彼女の何より大切な「お兄様」の前に向き直り、隣に立つソドムに気づいた。
「何・・・?」
「あたしには、よくわかんない。あたしにとって磁力がなんなのか。でも、あたしは磁力のVR!磁力の乗機!だから、磁力の敵は倒す!」
叫ぶソドム。
「コンバージョン!」
人間としてのソドムが消滅し、赤紫色のテムジンタイプ・・・VRソドムが立ち上がる。
不適に、彩は笑った。
「木偶の分際で・・・下僕の、機械の、道具の癖に!ベルフェゴール!」
彩も、待機していたベルフェゴールを読んだ。素早く、シートに腰掛ける。
「待っててね・・・お兄ちゃん。」
呟いて、彩は舌なめずりをした。
カット10 血の豪雨、涙の豪雨(前編)
雷鳴がとどろき、雨が大地を叩く。暗き戦いの舞台に、向かい立つ二体のVR。
ソドム。
ベルフェゴール。
「うふふ・・・うふふ・・・お兄様・・・・・・ふふふふふふ・・・」
憎悪と愛と嫉妬が混濁して生まれた、奇妙な無表情を浮かべる、生栗彩。
「待っててね、今日こそ一つになるから・・・生きていようと、死んでいようと・・・」
徐々に、まっさらな表情が笑みに染められる。ゆがむ思いの証のように。
ベルフェゴールの広げた翼が赤く変化する。巨大化した水晶のモーニングスターが、ゆくりと振り回され始める。
「くっ・・・」
VRそのものと化しているが、明らかに必死の表情のソドム。
「磁力の分もあたしがしっかりしなきゃ。」
手にした剣を正眼に構える。刀身に光が宿る。
「だから、あたしが戦う!」
次の瞬間、思いによって力を与えられた二体の巨人が激突した。
「どう見る、この勝負?」
ハッハノが誰に言うともなしに呟いた。VRがないが故に参戦できないもどかしさを、ごまかすために。
「せぇぇいっ!」」
真正面から打ってかかるソドム。
「・・・」
沈黙のまま放たれた結晶分銅と、ソドムの剣が衝突した一瞬均衡するが、すぐにベルフェゴールの力が勝り、ソドムを弾き飛ばした。
空中に浮かび上がるベルフェゴール。
「機体性能は、完全にベルフェゴールが上だにゃ〜」
普段なら緊張を緩和する効果を持つ反崎のだらけた声も、現実を前には無力だった。
「このおっ!」飛び上がってスライプナーを振り回すソドム。だが、巨大な武器を抱えているくせにベルフェゴールのほうが圧倒的に早い。
「後ろも、横も、どこもかしこもがら空き・・・」
背後の至近距離に、亡霊のように現れる。
「ソドムが単体で動くことはあまりなかったが、実力的にはそこそこ、といった所だろう。仮にも敵最精鋭であるセブンメンバーであるあの娘には勝てまい」
冷徹にラディルが言い放つ。
「くっ!」
咄嗟に後ろに剣を突き出すソドムだが、完全に読まれていた。
「甘い」
結晶と杖をつなぐ光の鎖が剣を絡めとる。
「きゃあアーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!」
そのまま馬力に任せてソドムを地面に叩きつけるベルフェゴール。
「あたた・・・」
「どうにもなんないのかよ!大体、生栗とゴモラはどうした!」
クロスが耐えられなうなってわめく。
「わかんない!二人が戦い始めるまではあの向こうにいたんだけど・・・」
瑠璃も困惑している。
ゆっくりと、ベルフェゴールは地面すれすれまで降りてきた。
「くのっ!」慌てて身を起こそうとするソドムの眼前に、突きつけられたのはソドムのものだったスライプナー。これを奪われた今、僅かなボムを覗いてはソドムは無力だった。
「弱いのね、あなた・・・」
がきぃっ、と音と火花を立ててソドムの剣がソドム自身の体を刺し貫く。
「っ痛ああああああ!!」
「弱いくせに大口叩いて、お兄様に文句言って、しゃしゃり出て・・・やっぱり貴方も、お兄様にふさわしい存在なんかじゃ、ない」
一旦刺した剣を抜く。
「消えて」
そして、振り下ろす。
「そういえば、博士は!?」
は、と気づいたハッハノが叫ぶ。
「カーネルを追っていった。」
蛇姫が返事をした。
「・・・博士なら、そうするだろうな」
博士のライバルであり、一番博士を理解しているともいえる科学者、黄泉が感想を述べた。
「でもあいつのことだ。何らかの策は残してあるんだろ?」
「本当なら、対VR攻撃能力を持つ怪人を全部投入するはずだったんだけどねぇ・・・」
「ソドムちゃん!加勢するよ!」
駆け寄ろうとするフェンリル。その後ろでは、アンボ13が射撃体勢をとっている。
「駄目!」
だがそれを、ソドムは一言の元にはねつけた。
がきゃあっ!
ベルフェゴールの振り下ろしたスライプナーを、手で強引に掴むソドム。ビームの本流に、手の装甲がどんどん焼ききられていく。
「これは、あたしの戦いなんだから!あたしが磁力のVRなんだから!」
強引に券をもぎ取ろうとするソドムを、面倒になったのか彩はスライプナーごとモーニングスターで殴り飛ばした。
「わああああああああああっ!」
弾き飛ばされ、二、三度バウンドするソドム。
「あがが・・・」
主脚部どころかフレームにまで損壊が及び、立つことも苦しい。
スライプナーをp杖にそれでも立ち上がろうとするソドムに、悠然と武器を振り回しながらベルフェゴールは近づいていった。
カット11 血の豪雨、涙の豪雨(後編)
ざああ・・・・・・・
ソドムとベルフェゴールが戦う、同じ闇の中。
カーネルは、走っていた。
自分が憎くて。
許せなくて。
激しい雨で軍服がぬれ、体に張り付く。
冷たさが体力を奪う。
ばしゃり!
「あっ」
ぬかるみに脚を取られて、転倒する。
「・・・・・」
減少した体力が思考を停止させ、もう、起き上がる気力もない。
冷たい雨が体を叩くのを、空っぽの心が受け止める。
心に、冷たい水が満たされる。
彼女の心は殻のうちは純粋で、幼く、もろい。
生栗相手に、久々に心のうちを見せていたところを、思いきり斬りつけられたのだ。
(私には・・・人を愛する資格がない・・・生栗にもカブトにも、あわせる顔がない・・・誰かの敵なんて、討てるような人間じゃない・・・。それなら、もう、生きている意味も、ない・・・)
思考は、どんどん沈んでいく、
(このまま雨に打たれていよう。・・・このまま病気にでもなって、死んでしまえばいいのだ・・・地獄でも、株とは私を許さないだろうけど、それでも、いい・・・)
目まで閉じる。
「・・・・・・・・・・?」
急に、雨の体に当たる感触が途絶えた。だが、雨音は依然として響いている。
「風、引くぞ?改造人間とはいえ、体は大事にしろといつも言っているだろうに。」
悪の博士カーネルに当たる雨を、マントを広げて防いでいる。
「は・・・博士ぇ!!」
カーネルは泣いた。博士の闇色のマントに包まれ、黒衣にすがって、大切なものをなくした小さな子供のように泣きじゃくった。
「博士・・ううっ・・・私は利用してるって、・・・私は・・・ひっく、生栗も!カブトもぉ!・・・もう駄目で、合えません、死ぬ、死にます、殺して倉代、あああ、私なんかぁぁ!・・あああ・・・」
しゃくりあげ、うまく言葉をつづることも出来ず、それでもカーネルは必死に言おうとした。
「生栗の妹に言われたのだな?」
博士の問いに、言葉もなく頷くカーネル。
「それで心が痛んだのだろう?ならばお前は生栗のこともカブトのことも、思いやっていたということだ。」
「・・・?」
目に涙を浮かべたまま、顔を上げて博士の顔を見る。金属製に見える仮面が、確かに優しく微笑んでいた。
「人は人なしで生きることは出来ない。一人は寂しいからな、他者を必要とするのだ。己が心を癒すためにそして、相手の心を癒すために。」
「相手の心を・・・?」
「そうだ、癒しあって生きる人同士が、特に互いを必要としたとき。それが友情であり、愛なのだ」
「・・・」
「お前を癒した男達は、お前を想い、故に行動したのだ。お前から、何かを得た。そう考えられないか?世に、情けは人のためならずというように。」
「じゃあ、じゃあ・・・」
「お前は断じて他人を利用していたわけではない。ただ、慣れていなかったからそう思わされてしまっただけだ。あの哀れな妹・・・彩とかいったか。あれは一方的に思い続けていたが故に、体外に癒しあうことを忘れてしまったのだろう。だから、あんなことを言うしかなかったのだ。」
博士の言葉を聴きながら、徐々に、いつもの凛とした表情に戻っていくカーネル。
「それでも・・・自己満足かもしれないけど、私は目に見える形で何かをしたい、私には、それしか出来ないから。それが、私に出来ることだから!」
決然と言うカーネルに、莞爾と博士は笑った。
「よく言った!それなら早速やることがある」
ずず・・・んと、遠くからの地響き。
「今、ソドムが彩と戦っている。あの娘もまた、生栗に何かをなしたいがために。だが苦戦だ。あとは、言わずとて分かるな?」
「はい!たとえ相手がVRだろうと・・・」
「待て待て。いくらなんでも、それはまずい。」
すぐさま走り出そうとするカーネルに、博士は笑って手を振った。
「こんなこともあろうかろ、怪獣騒ぎの後に徹夜で作り上げた、我輩の新たなる力を見るがいい!はっ!」
軽く気合声を上げ、博士は杖を地面に投げた、ドリルが地面に突き刺さり、それまで水平を向いていたパラボラが天を指す。
「VR長距離伝送用受信装置だ。まだ送信装置がないので、自前でテレポート出来るバフィラスしかできないがな」
地面に紫の次元穴が口を開き、その中からマシーネン・カーネル専用指揮官方VR獣、バフィラス星人が立ち上がる。
「・・・ありがとうございます、博士!」
「当然のことだ。」
びっ、と敬礼するカーネル、そして、一気にコクピットに飛び上がる。
「いってまいります!」
きゅーん・・・と軽快な音を立て、立ち上がった少女の乗機は雨空を切り裂いて飛んでった。
博士は、一人笑う。
「くはははははははははははは!さあ行け世界の捨て子、我が拾い子よ、運命の神をその手で倒せ!くっはっはっはっはっははっはっはっはっはっは!!!!!」
カット12 それぞれの帰路
雲は晴れ、南国特有の、強い日差しが再び現れる。
その光に照らされ、帰るべきもの達は、斧が居場所へと帰っていった。
「私が負けたわけじゃッ、ないからね!!」
そういい残し、生栗彩は去っていった。
「そうだよ、私は負けていない。鬼ちゃんが、お兄ちゃんが邪魔するから、いけないんだぁ!お兄ちゃんの馬鹿〜〜〜〜〜!」
叫びながら、機体を飛ばす。
「すまない・・・大丈夫だったか、生栗?」
「磁力、生きてる?」
生栗をめぐる三人の戦い。ソドムとカーネルのタッグ合手に尚一歩も弾かず暴れ狂うベルフェゴール。
その中で、生栗はだれかを切り捨てることなんて出来なかった。
「ゴモラに乗って、三人の間に割り込むなんて無茶、磁力らしくないじゃない。おかげで集中砲火食らっちゃったでしょ!」
「いや、大丈夫だって。」
カーネルとソドムがすまなそうな割には、軽傷の生栗。伊達に打たれ強いわけではない。
「というか、心配されてしかるべきは、むしろわしのほうなんじゃないのか?」
滅多打ちにされて、人間形態のなってもぼろぼろのゴモラ。
「あ、まあ、そうだね」
などと気軽に言うソドムも、かなりぼろぼろである。
「今度は、もっとうまくするから・・・っくしゅん!」
雨の中を走り回り、さらにびしょぬれのままVR獣で格闘までやったため。博士の危惧どおり風邪を引いたカーネル。この三人が生栗を気遣っているのだから、ある意味面白い。
「さあさあみなさん、安静になさってくださいな」
「ひゅう、互いを気遣う愛、萌えるねぇ」
「ソドムちゃん、無事!?」
「カーネルさん!大丈夫ですか!?
どやどやと駆け込む、仲間達。
その光景を見て、博士はまた微笑んだ。
(これでよい・・・まあ、強いて懸念を上げるとすればソドムとカーネルの関係、か・・・)
だが、その二人は中よさそうに話している。
「ソドム、私達は同じ人を思い守る仲間だ。これからも、共に戦おうな。」
屈託なく言うカーネルの言葉に、ソドムは少し考えてから頷いた。
「うん、そうだよね、あたしは磁力を乗せて飛び、あんたは磁力とともに飛ぶ、それでいいんだ!」
(後はカーネルに「恋敵」という概念を教えるべきか否か、だな・・・まあ、これも面白いだろう)
とりあえず博士は、そう思うことにした。生栗は博士ほど割り切れないらしく、まだ変な顔をしているが。
(後は彩か・・・あれも、哀れな娘よ・・・)
遠くの海で、ベルフェゴールが墜落しそうな珍しいことを言う博士。
「っへぇ、イカンゴフちゃん、メカの修理も出来るんだ、すごい!」
「え・・・そうでしょうか・・・・・・」
「間違いなく凄いって!」
「・・・若い、てのはいいねぇ、坊やのことまでうらやましいや」
「はいはい」
「あれ、ところでえーちゃんはどこだにゃ〜?」
「?」
「にゃ〜ん、結局あまりバカンスにはなってないにゃン?」
「でも宴会ではずいぶんはしゃいでたっすよ、アーク姐」
「・・・ああもおどうにでもしてにゃん!(やけ)」
「JUNNKIっす、怪人はいかがですか〜」
「皆様、本潜水艦は、あと二時間で日本領海内へ入ります。」
「おーい、メシの出前とりにきたでぇ!」
「ちょっとまて、何でこの部屋に、こんなにいっぱい人が入る!」
「悪の秘密結社」HV団潜水艦、じんべえ。
とりあえずは、和やかだった。
そのころ、日本。
「うおおおおおおおっ、HV団!俺を改造した後、一体どこへ行ったぁぁぁぁ!」
まさか落ちに使われるとは、思いもしないカマドウマ男だった。
次回予告のようなもの
HV団の去った、島の岬。
たたずむ、奇妙なもの達。
その数、五人。
「とまあ、現在のHVは、こんなところですね」
静かに、報告するように話す、闇マントのライシス。
「うぬら、どう思う?」
陣笠を目深に被り、古びた死衣のような、幽霊船の穂のようなぼろぼろのマントを撒きつけた男が問う。
「我々がどう思うか、なぞは問題ではありません。我らは親衛隊、偉大なるマスターZ様の僕。全ては、Zさまの意志なのです」
無感情に呟く、グレーのスーツにめがねと、三秒後には忘却しそうなほど、どこにでもいそうな・・・逆にいるはずのない人間。
「Zさまは、なんと?」
暗い口調。呟いた少女は、魔法使いのような鎧武者。しかし、どこか科学のにおいがする。
「HV団は粛清、幹部は皆殺しなぁの。んきゃきゃきゃきゃきゃきゃ!」
奇妙なしゃべり方、耳障りな声で、トランプのジョーカーそのものの格好の少年が笑う。
手をばたばたと振り回し、白い手袋にかかれたドーセンマーセン、五亡星が揺れた。
ゆらり、と周囲の空気をゆがませるほどに雰囲気が変わる。
暗い歓喜。いたぶり、殺す快楽を期待する歓喜。
「いやあ、ライシス君が躊躇してくれたおかげで、楽しめるぅの!んきゃきゃきゃきゃ!」
「くく、まさにそのとおり・・・」
「ええ、ええ、そうですねえ」
唇をかむライシス。だがもう一人、地方表情を浮かべるものがいた。
鎧の魔法使い・・・マスターZ親衛隊・魔女っ娘将軍A・Tは、仲間を案じる表情をしていた。
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