悪逆戦線HV onTV HV団対スーパーヒーロー

そろそろ、新しくHV団にきた怪人たちも、反崎や魔女っ娘将軍えーちゃんの怪人たちも環境に慣れ始めたころ・・・

HV団団員達も、新たなる仲間と打ち解け始めた頃・・・

その平穏を引きちぎり、HV団の前に、新たなる脅威が立ちふさがる!

第一部接触編 その一「新しい、そして古い朝」

HV団は、前回の戦いも、怪人軍団の合流による大騒ぎも収まり、平穏を取り戻していた。
とはいえ、完全に以前の状態に戻ったわけではなく、いくつかのささやかな変化がおきていた。
そのうちの一つは・・・朝の絶叫が二重奏になったことである。

「うおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」
ばさっ、と布団を跳ね飛ばして、悪の博士怪人軍団所属戦術指揮官マシーネン・カーネル(怪人名機蝗兵)は絶叫とともに飛び起きた。
「ふーッ、ふーっ、ふーっ、・・・・・・」
息を整えながら、さっきまで見ていたのは過去の夢で、今が現実だということを確認しようとする。
だが、先ほどまでの光景は消えるどころか、さらに激しく彼女の心を締め付ける。

彼女は、怪人軍団でも移植の経歴を持つ。
もともと彼女は別の組織「新たなる衝撃を与えるもの」の幹部であり、博士によって再生された再生強化怪人なのだ。
今見ていたのは、そのころの夢・・・誇示だった彼女を拾ってくれた義父、大幹部ゼネラルモンスターを殺した仇、仮面ライダーと、戦ったときの夢。十三歳で幹部になってから、家族同然に育ってきた部下たちと、彼女の心を支えてくれた男を、自らの命をも失い、そして、それでも敵を倒せなかった、戦いの夢。
無念さと悔しさと申し訳なさが混じった暗い気持ちが、今の彼女を支配し、復讐へと借りたtれている。そのために涙も捨てた。幸せも恋も命もいらない。ただ、あいつを殺せれば。
「くっ。」
一声うめいて身を起こし、カーネルは汗でべとべとになった、寝巻き代わりの男物のシャツを脱衣かごに脱ぎ捨てた。


シャワーを浴びてから身支度を整えたカーネルは、食堂へと向かった。
「あ、カーネルさん、おはようございます」
朝のかなり早い時間、食堂にはコックであるえびてん、イカンゴフ、反崎の所の鮟鱇男を除けば、もう一人の絶叫早起き男、生栗磁力しかいなかった。ちなみによく見ると、朝食を食い終わった悪の博士がそのまま突っ伏して寝ているが、無視。
「・・・おはよう。」
儀礼的に挨拶を返し、受け取った食事を無表情に口に詰め込み始める。うまいと感じることは罪、といった食べ方だ。それを見たイカンゴフがまた自分のせいだろうと落ち込み、朝っぱらから暗い。
耐えられなくなった生栗は、打開を試みた。
「あーっと、聞いたよ、今朝の。いや、俺も悪い夢見て飛び起きること多くて、なんというかよく似ているなと・・・」
話しかけてきた生栗に、一瞬怪訝そうな表情を浮かべたカーネルはすぐもとの無表情に顔を戻した。
食事を済ませ、クローン体にコピーキングストーン「星の石」を、「ゴルゴムの子」以外のものに埋め込んだ拒絶反応を抑える錠剤を、ざらざらと山ほど喉に流し込み、立ち上がった。
「私のような死人に、気遣いなんてしなくていい。雰囲気を暗くしていることは、謝る。」
{そういう問題ではなかろう。」
いつの間にかおきた悪の博士が割って入った。
「少しは自分お幸せというものを考えろ。折角生き返らせて屋ってのに」
「失礼する」
呟くと、カーネルは足早に食堂から出て行った。
「すまんのう、あんな娘だが、どうかよろしくたのむ、生栗殿。」
一介の戦闘員に、博士は頭を下げた。その様子は、娘を気遣う父親に近い。
「はい、博士」
「ついては、おぬしもおそろいで改造人間に」
素直に頷いていた生栗も、脱兎のごとく逃げ出した。
「・・・・・・ち。」
また寝てしまう博士。
「っったく、可愛げがねぇ、不器用な連中だわな」
一部始終を見ていた鮟鱇男の肝臓、いや、感想がそれだった。


その二 縁の始まり

「生栗、ちょっとお願いがあります」
事務作業中だったゲドーが、急に生栗を呼びつけた。
「何でしょう、ゲドー様。」
「悪の博士からこの間発注した新兵器の開発状況を聞いてきてください」
ひきっ。生栗の顔が引きつった。
「な、何故自分が・・・」
「だって、お前は博士の白戦闘員でもあるのだろう?」
・・・・・・
以前怪人開発計画の際うっかりそんなことを言ってしまったために、博士をこっちに呼び込んだ責任を取るという意味も含めてHV段と博士の連絡役に、同じく博士の来るきっかけとなった参謀ハッハノとともにいつのまにかされていた生栗だった。

「博士?そういえばどこへおいでになったのでしょう・・??」
さっきまで寝てた食堂へ博士を呼びに言った生栗だったが、そこにはイカンゴフとあと二人してさぼっているフェンリルとアーク・ダーマしかいなかった。どうも脳天気同士気があったのか、さかんにおしゃべりしている。
「でにゃ、あの犬がまた・・・」
「あいかわらずだね〜、その辺は。そういえば相変わらずって言ったら、キャッツガイがアークのこと探してたけど?」
途端アークはぶんぶんと頭を振る。まるで聞いたことを耳から出そうとしているみたいだ。
「ふにゃ〜〜〜っ!猫害のことにはふれないでにゃ!忘れさせてにゃ!」
「わーったっての。でもさ、あいつら結構いいやつだよ?」
「そ、そんにゃこと言われても・・・」
戸惑うアーク。その時、まったく唐突にフェンリルが立ち上がった。
「あ、博士の笛通信。・・・えー、買い物?外結構暑いのに・・・しかたないなぁ。」
「買い物にゃ?」
「うん。ごめん、また今度ね。」
名残惜しそうに立ち上がるフェンリル。それを聞いた生栗は、勢い込んでフェンリルにたずねた。
「おおフェンリル、博士が今どっから通信を送ってるか、わからないか?あるいは、こっちから通信できないか?」
生栗の問いに、フェンリルは首を振った。
「じゃあね、アーク」
「またにゃ、フェンリル」
二人の会話を聞き流しながら、菜まくりはどうしてもあの博士の根拠地「神刺塔」を探さなければならない事実に落胆した。

その三 「旅は・・・」
「さて・・・博士は一体どこに?」
これは難問である。何しろ研究室とかひとところに落ち着いていない上に、たまにふらっと姿を消してしまうため、捕捉は極めて困難なのだ。
「事務室・・・にはいなそうだな」
その前を素通りしながら、生栗は呟いた。大体博士の所では午前中に事務仕事を終えてしまい、午後は訓練や作戦の研究、というのが常だ。そして時間はもう昼過ぎ・・・だが。
かた、かたかたかた・・・
「?」
中から、不審な物音が聞こえてくる。
(こんな時間外に・・・博士かな?)そう思った生栗は、ひょい、と中を覗き込んでみた。
黒い詰襟軍服の少女が、なにやら不器用にキーボードを叩いている。
(あれ?カーネルさん?何で今頃・・・)
その疑問の答えは、カーネル本人が提供してくれた。性格には、彼女のぼやきが。
{く、まさか私が死んでいる間にコンピューターがここまで進歩していたとは・・・。さっぱりわからん。が、パソコン仮面あたりに聞くわけにも行かない、今のうちにマスターせねば・・・」
ぴーっ。
と、パソコンが嫌な音を立てて停止した。
「あ!?な、何だ!?」
覗きながら、思わず笑いかける生栗。だが、それはあまりにも相手を侮った行為だった。
「!何奴!」
カーネルの咄嗟に放ったナイフが見事、一瞬前まで生栗の顔のあった辺りの壁に突き刺さった。ぎりぎりで身をかがめていなければ、確実に死んでいただろう。
「はずしたか!?」
すぐさまこっちに向かってくるカーネルの気配に、生栗はただ見つからないように匍匐で逃げ出すのだった。

戦艦の内部のような神刺塔の中に、まったく唐突に立っている木造平屋。
それが、蠍師匠の道場である。
「はあ、いつ見ても無茶苦茶だな、こりゃ。」
何しろ、木造である。しかも、普通の部屋にすればいいところをわざわざ広いスペースの中に建物を立てているのだ。作りもいかにも「道場!」といったこだわりの造詣、「東方不敗」とボク書されたでかい立派な看板がかかっているという、徹底したこだわりだ。
・・・・・・
からからと戸を開ける。
「はっ!はっ!」
集団で蹴りの訓練をする蝗軍兵たち。
「脚の振り上げが甘い!」
と、蠍師匠から檄が飛ぶ。
「381.382,383・・・」
黙々と倒立腕立て伏せを繰り返すアラネス。
長い鉢巻を地面につけないように走り込みをする鞍馬鴉・・・
怪人軍団のほぼ全員が、ここで訓練をしている、と思われた。
ここでは能力に頼らずに見合うからを磨くため、全員が人間体をとっているためにいまいち確信がもてないのだ。腕立伏せをしている自衛官のような男がアラネスだというのも見当がつくし、鞍馬鴉は忍者服そのままだし、蝗軍兵たちは戦闘員服を着ているからわかる、のだが、。貴族みたいな格好をしている男がいないところを見ると、おおかたゴールド公爵はさぼりらしい。
「うーん・・・」
なんだかみなあまりに一心不乱にやているので声をかけるのをためらってしまう生栗。
「蠍師匠、組み手をお願いする」
と、いきなりマシーネンカーネルが現れた。
(さっきまで事務室にいたのに、いつの間に道場に!?)
たしかに、夜中にトイレに起きたら一人でトレーニングしているのを見かけたり、総長から戦術演習場の課題を持ち込んでゲドーを辟易させたり、いつでもどこでも仕事をしている姿が目に付くという点では博士以上に神出鬼没な娘だけど・・・
「よし、かかってくるがよいわ!」
ぱっと身構える、変身しててもしてなくても大差ないような紫の中国服の蠍師匠。
「・・・いきます。」

生栗は、ただあっけに撮られていた。確かに二人は戦っているのだが、手足の咲がまるで掻き消えたように見ることが出来ない、それくらい早いのだ。
(本当に人間状態なのか、この二人・・・)
他の連中に比べて、差がありすぎる。蠍師匠は元からとはいえ・・・
(しかも・・・
なんだか、凄い気合だ・・・

そうこうしているうちに、決着がつきそうになっていた。
「はっ!」
素早いステップで蠍師匠の懐に飛び込んだカーネルが、のどを狙った鋭い突きを放つ。急所を的確に狙う完全実戦向きの格闘スタイルだ。
だが、蠍師匠はやはり師匠だけのことはある。
なんとカーネルの指先に飛び乗るようにジャンプ!腕の上で一歩を踏み出しながら着地し、一気に間合いを爪、首を大きく振る。
「秘技、銀蛇盲殺髪!」
ぱしっ、と音を立てて師匠の編んだ髪がカーネルの眼に当たり、視界をふさいだ。
「!?」
「隙あり!」
ドン!という大砲を発射したような音とともに蹴り飛ばされ、むこうの壁に激突するカーネル。勝負ありだ。
「・・・っ」
壁に寄りかかり、くらくらとカーネルは首を振った。
「くっ、また勝てなかった・・・」
「まあ正義の味方はこういう奇手は使わないからな。今のおぬしの強さは既に改造時のカタログデータをはるかに超えておる。そんな悔しがらないでよいぞ」
取り合わず、すぐに次の訓練メニューに入ろうとするカーネルを、呆れ顔で師匠は見つめた。
「まったく、オーバーワークというのを知らんのか?この間仮面ライダーにあってからというもの、あせってるようだ、な。」
やれやれ、とため息をついた師匠はその拍子にようやっと生栗に気づいた。
「何だ生栗、何の用じゃ?」
「いや、さっきからいましたけど。」
説明しよう。蠍師匠は三笠ややミスターTとためをはれるくらい鈍い。
「おぬしも訓練か?」
「いや・・・」
「訓練は、しておくに越したことは無いぞ、生栗。」
ふと手を止めたカーネルが、ぽつりと呟いた。
「お前にも敵がいて、そいつを殺すつもりなのだろう?強くなければ、仲間を失うだけだ。」
「・・・・・いや、俺はVR乗りだから、体鍛えてもしょうがないんだけど」
・・・・・・・・・
「あ〜・・・」
「じゃあ、何しにきたんだ?」
「いや、だからね・・・」
不意に、なんとも間抜けな雰囲気に道場は包まれた。

実は前ふり
さて、生栗が「博士探して三千里」しているころ(おまけクイズ。我輩の別の小説に、これと同じような言い回しのところがもう一箇所あります。さて、どこかな?)盲一人さまよっているやつがいた。ただしこちらは基地内ではなく、街中をさまよっているのだが。
そう、その人、いや人でないものの名は。
「あう〜、暑い・・・」
悪の博士怪人軍団の中でもトップクラスの力を持つ怪力改造人間、フェンリル!
とは、今の彼女を見ては誰も思わないだろう。
街中ということで変身をといているからだけではなく。
「あ〜つ〜い〜、お〜も〜い〜・・・」
滅茶苦茶だれているのだ。怪人なのに、いや怪人だから。
改造人間は、ベースになっている動物の能力を受け継いでいる。良いところも、悪いも。フェンリルの場合、元になった動物は狼。
北国の動物である狼は、基本的に夏は苦手なのだ。他に、ハエトリグモの因子を持つアラネスが感情表現が苦手だったり、蛇姫が酒を浴びるほど飲んでも大丈夫なのにタバコを吸うとすぐむせてしまう(どちらかというと物語上の大蛇みたいだが。以前はタバコ好きだったのだが、今ではキセルだけ弄り回している)などがある。
タンクトップにミニスカートというかなり涼しげな河口にもかかわらず、今にも倒れそうなくらい参っている、背中に博士の注文の品、かりんとうなど菓子類と、何に使うのかわからないあきれるほどクラシックな電子部品、真空管がたくさん入った風呂敷包みを背負っているせいもあるが、やはり暑がり怪人だ。
「はうう〜」
とうとう路傍に倒れふすフェンリル。
「も、もう駄目、博士、今までお世話になりました、先立つ不幸をお許しくださいぃ〜・・・・・・・」
大げさにも死に掛かる、一応怪人のフェンリル。
「ああ・・・結局ボク、人間社会では一人で、ひとりで死んでいくんだなぁ・・・」
「君、大丈夫かね!?」
・・・・・・?

「いや〜、倒れたところが喫茶店の前だったなんて、運がいいなぁ!」
元気よくアイスコーヒーを飲み干すフェンリルを、彼女を助けた人のいいマスターが見つめている。
「お値段も良心的だし・・・」
「いや、今回はただでいいよ。オ上ちゃん、お使いの最中だろ?」
眼をぱちくりさせるフェンリル。
「あれ?何でお使いだってわかったの?」
「普通、女の子は自分で真空管を山ほど買ったりしないだろ?}
「あ、そうか。」
「お父さんか誰かかなぁ?」
「うん、まあそんなとこ。発明に凝ってるんだ。かなり変だけど、いいひとだよ。」
などなど、マスターとの会話を弾ませるフェンリル。そのうちに、時間も過ぎ・・・
「あっ」
「どうしたんだい?」
「いっけない早く帰らないと!ああ、遅くなったら怒られる!」
ばたばたと荷物を抱えて飛び出していくフェンリル。
「今度は友達連れてくるから!お金も今日の分も払うね〜〜〜!」
ばたん!勢いよく扉が閉まる。
走って家路につきながら、フェンリルは思った。
(あんなイイヒトがいるなんてな〜、世界もまだまだ捨てたものじゃないや!でも妙に男の人が多い喫茶店だったなあ、バイクもたくさん止めて会ったし・・・もしかして走り屋のお店?峠でもないのになぁ・・・)

「面白い子だったな。」
「おやっさん。」
喫茶店にいた男の一人は、そうマスターのことを呼んだ。
「どうした、隼人。」
「あの女の子・・・」
「どうかしたのか?」
「O・シグナルに反応しました。・・・改造人間です。」
「なに!?すると隼人、おまえあの娘が・・・」
「この間の怪人の、仲間かもしれません。」

第二部 発動変 その一「仮面武闘会(マスコリーダ)」
け曲博士は見つからず、生栗が管理(?)不行き届きでゲドーにしかられた、次の日。
狂も博士が帰ってこなかったので、フェンリルは前日決めたとおりに喫茶店へと向かっていた。約束どおり、友達を連れて。
「へー、喫茶店にゃ?本当にいい店にゃ?」
悪猫ことHV段総帥代理の猫又、アーク。ダーマ。
「誘っていただいて、ありがとうございますわ」
「んも〜、同じ怪人軍団じゃないの、硬くならないの!」
礼儀正しい善人怪人、看護・調理担当のイカンゴフ。
「何で私まで・・・」
そして、マシーネン・カーネル。
「だ〜って、カーネルいつも訓練だ演習だって・・・少しは休まないと。」
「だからといって、何故縛る!」
たしかに、カーネルはフェンリルの握ったロープにがんじがらめに縛られている。博士謹製の特殊戦意ロープなので、ちょっとやそっとでは切れっこない。
「だって、こうでもしなきゃ休みとらないじゃない」
「ロープにつながれて引かれていくのは、休みとは言わないと思うが」
「・・・さくさくいこうね、さくさく。」
「無視するな!」
はしゃぐフェンリルとは対照的に、憮然とした表情を崩さないカーネル。
興味津々、といった風情のアーク、静かなイカンゴフ。なんともばらばらな四人は、それでも着実に喫茶店に向かいつつあった。
「おいっすマスター!ボク、またきたよ!」
そういうと、勢いよくフェンリルは扉を開けた。
「おう、いらっしゃい・・・といいたいところだけど、ちょっと待っててくれ。材料仕込がまだなんでな。」
「はーい」
おとなしく返事をするフェンリル。
「洋、ちょっと買い物にいってきてくれ」
そう言われた、それまで客だと思っていた男の一人が立ち上がり、出口へと歩き出した。
フェンリルの隣をすれ違い、カーネルの前に・・・
「なっ!?つ、筑波洋、スカイライダー!?」
一瞬後、その喫茶店・・・アミーゴは爆発した。

「何だ!何が起こった!」
神刺塔司令室に詰めていたハッハノは、突然の事態に仰天した。観測機器から送られてくる映像・・・VRが戦っているわけでもないのに、次々と町が破壊され、ビルが倒れていく。
「これは・・・改造人間!?」
それ以外に、この倍率でうちら無いほど小型で、これだけの破壊力を持つ兵器は他に無い。
「フェンリル達が、確かあのあたりに出かけていたね!急いで呼び出しな!」
「はい!」
蛇姫が叫び、オペレーターの戦闘員は慌てて怪人用の小型通信機を動かした。

混乱。

「フェンリル、状況を報告しな。」
極めて落ち着かせたつもりだがむしろぶっきらぼうになっている蛇姫の声が、フェンリルの通信機から流れる。だが、その通信機から返ってきた声は、ぜんぜん落ち着こうとはしていなかった。
「あ、あのねみんなで喫茶店いったら店の人にカーネルがいきなり沿いかかって・・・」
動転したフェンリルの声に、蛇姫は形のいい眉をゆがめた。基本的に悪の博士怪人軍団は堅気の衆への武力行使は博士の許可が無い限り禁止されているはずだ。それが、何故?
「ああっ!」
不意にフェンリルが叫び声をあげた。
「どうしたのさ!?」
次の瞬間、蛇姫は全てを理解し、そして戦慄した。
「み、店のお兄ちゃんがバッタに変身した!戦ってる!」
喫茶店、バッタ・・・悪にとって、最も恐ろしい組み合わせ。仮面ライダー。
「フェンリル、あんたイカンゴフとアークを避難させな。」
「でもカーネルは!?」
一瞬苦衷の表情を浮かべた蛇姫は、それでも行った。
「大丈夫、急ぎな!」
大丈夫なわけが無い。いくらあの娘が強いとはいえ、多勢に無勢で活動時間の限界を抱えているとあっては、窮地である。だが、実戦慣れしていないフェンリルをあいつら相手の戦いに投入するのも不安だ。
大体の事情を理解したハッハノも指示を出す。
「手じかに増援にいけるやつはいないのか?それと、HV基地本部に連絡を!」
「キャッツガイ、どうせそのへんにいるんだろう、返事しな!」
ハッハノの発言で気がつき、勘でキャッツガイを呼び出す。
「はい、確かにいるっす」
缶は当たった。だが・・・」
「い、今手が離せないっす!すんませんっす!」
「ワワワワワン!ネコミミアンドイヌミミ天国を阻む耳への侮辱集団め、そこどくわん!」
「とおさないっす!」
・・・・・・
無言で通信をきる蛇姫。
「ええいもう、こんなときに博士は一体何をしているんだい!」
そのとき。
「話は聞いた!」
唐突に無線機から博士の声が飛び込んできた。

地獄の炎、煉獄の炎、復讐の炎、怒りの炎

爆煙が晴れた中、変身したマシーネン・カーネル、機蝗兵はたっていた。
爆発を引き起こした右目のレーザーレンズがまとった陽炎が消えることには、彼女にその行動を起こさせた存在、敵・・・仮面ライダーたちは変身を終えていた。その数、十人。
「お前は・・・」
彼女を知っている男、筑波洋いやスカイライダーがうめく。
「覚えていたか、ライダー、私のことを・・・」
静かに、だが怒りのこもった声で言うカーネル。
「本郷先輩から話を聞いたとき、まさかとは思ったが・・・。死んだはずじゃなかったのか!」
「それはこっちのせりふだ!あの時、確かにしとめたと思ったのだが、生きているというのなら、地獄の炎も私をとめることは出来ない。今度こそ、貴様を殺す!理由は、聞くまでもないだろう?」
底で振り返ったケーネルは、なにやら通信機をいじっていたフェンリルに、奇しくも蛇姫と同じようなことを言っていた。
「お前は二人を連れて下がれ!」
その後は、彼女のみの呟き、胸に滾る憎悪を、絢爛たる毒華のごとき笑みに昇華しながら、ゆっくりと唇からつむぎだされる呪詛。
「こいつらは、私の獲物・・・誰にも渡しはしない、この手で血にまみれさせ、はいずらせ、うめかせ、恐怖させ・・・殺す。」
そして笑みを止め、戦士の形相となり跳躍する。
「いくぞっ!」
「くっ、仕方ない!勝負だ!HVの怪人!」


「ロープアーム!」
「ライドルスティック!」
カーネルの左腕に、ライダーマンの義手から放たれた特殊ロープが撒きつき、動きを封じられた彼女めがけてXライダーのスティックが振り下ろされる。
並みの怪人だったら、これでもう終わりだったろう。だが。
「ふんっ!」
バグシャッ!
鈍い音。腕に巻きついたロープを強引に引っ張り、ライダーマンを手元に引き寄せると同時に、無防備な顔の下半分に掌底を叩き込む!
「げは・・・」
砕けた顎から折れた歯を吐き出し、悶絶するライダーマン。
「うおおおお!」
「しゅっ!」
ずばっと、手の甲から生やした刃で、ライドルごとXの仮面を両断する!
瞬く間に二人を倒した彼女に、ライダーたちは戦慄した。
こいつは・・・今までの怪人とは違う。
「ちっ!V3チョップ!」
はやったV3が接近し、素早いチョップをなぎ払う。それを片手でとめるカーネルにV3はさらに連撃を叩き込むが、逆に彼のほうがダメージを受ける目にあった。
「ぐわっ!」
機蝗兵の腕に生えた、鋭い鋸歯。防がれるたびに、それが攻撃した側の手足に食い込むのだ。彼女自身がライダーの戦いを分析して、「新たなる衝撃を与えるもの」怪人の時からつけたそれはいささかも効果を失ってはいなかった。
「うおおおおおおおおっ!」
ひるんだV3に、カーネルは反撃した。膝、拳とつなぎ、のけぞって浮いた相手に思い切りけりを叩きこむ。ライダーと同じ素材から得られた強靭な脚力は、V3が叩きつけられたビルを衝撃でへし折った。
さらに力を見せ付けられ、一瞬隙が出来る。
「かかってこないのか?どうした、私が悪、お前たちがいつもいつも軽々打ち破る、悪の怪人だ。いつものようにかかってこないのか?なら・・・私から行くぞ!」
瞬間!
十メートル近い距離を一瞬で縮め、今まさに冷熱ハンドの火炎放射を仕掛けようとしていたスーパー1のどでっぱらに爪を突き刺した。
腰の高機動羽によって僅かに浮上し、強大な脚力で地を蹴り、一気に高速移動したことによる運動エネルギーと、博士の強化により鋭さを増した爪は、以前は貫けなかった仮面ライダーの胸から腹にかけての一番暑い装甲をも貫いた。
カーネルは血を噴出し部品をばらまいてのたうつスーパー1を眼下に眺め、気分の高揚を抑えることが出なかった。
(いける・・・カブト、これならいけるよ!)
「きしゃあああああ!」
「!」
鋭く頬を走る痛み。咄嗟に身をそらしたカーネルは、自分の頬を掠めたアマゾンの鋭い爪を見た。
(く、油断したか!)
「くわあああああああ!」
がしゃん!がしゃん!がしゃん!
1発でももらえば骨後と噛み砕かれること必至の。アマゾンの巨大な口による噛み付きが獅子舞のように激しく襲う!
だが、顎とは、開いたときがもっとも弱い。
口を開けたアマゾンの横っ面を殴りつけようとした瞬間、次に着た二号ライダーの拳をまともに背中に食らってしまう。だがたたらを踏んだかに見えたカーネルは、向き直りざまに回し蹴りを放つ、踵から生やした、缶切りのように曲がった鋭い刃が、二号のわき腹にめり込んだ脚にさらに破壊力を付加する。
「ぶぶっ!」
「!・・・ぐううっ!」
血を吐き二号も倒れるが、その間にカーネルは腕にか見つかれた。アマゾンの鋭い牙が食い込む・・・が。
「肉体の痛みなど、何だというんだ!」
いうなりカーネルは強引にアマゾンの顎から手を引き抜き、血のだらだら流れるその井出で今度こそアマゾンの顎を殴り砕いた。
「ZXシューティングスター!」
「電ショック!」
さらに忍者ライダーZXの手裏剣が、電気人間ストロンガーの放電攻撃が、カーネルの体を打ち据える。
「うわああああああああああっ!」
それでも雄たけびを上げ、レーザーをなぎ払う。
「甘い!」
だが、素早いライダーたちはレーザーの動きを読んでかわす。
しかしカーネルは逆に叫んだ。
「その言葉、お前らに返す!」
何、と彼ら二人が言ったときには既にその影が彼らを覆い、気づいたときにはそろって切り落とされたビルの角に潰されていた。
(ビーッ!兵装システムにエラー発生、武装八割が使用不能、くりかえします・・・)
彼女の従うつもりの無い渓谷が、脳裏に直接流れる。他にも激しい出血、打撲。筋肉をむしられた片腕はもうほとんど動きそうに無い。だが、それでも彼女は敵に向かっていき、前回はてこずった一号を技を出す暇も与えずに組みふせ、手動で強引に出した糸鋸鞭で締め落とす。
「なぁっ・・・」
最後に残されたスカイライダーは、敵のしぶとさに愕然とした。体も確かに優れているかもしれない、だが、それ以上の気力が、彼女に力を与えている。それに気がついたスカイライダーは、三分の焦りと七分のおびえから、強引に必殺のキックを放った。
「スカイ、キーック!!」
一号を倒してたちつくす敵に、以前のようにそれをかわす力は残っていないかに見えた。だが、それでも彼女は強引に体を動かした。
クロス・カウンター!
怪人が吹っ飛ぶのと何も変わらない景気のいい音を立てて、スカイライダーも地面に転がった。
「とどめだ・・・」
カーネルはゆっくりとライダーに覆いかぶさると、腕の鋸歯をスカイライダーののど元に当てた。機械音を立てて、電気鋸のように鋸歯が動き出す。
「今度こそ完全に殺す!その首、マフラーごと斬り落としてやる!
今度こそ、やった・・・
カーネルは思った。やっと、やっと・・・・・
だが、だが、だが!
脚に、鋭い衝撃。何、と思ったカーネルが脚を見る。巨大な赤い牙が、彼女の足を折り砕いていた。
そして、さらに強い衝撃!弾き飛ばされ、叩きつけられるカーネル。
「な・・・何?」
限界が来た体をのろい、弱弱しくうめく、瞳に写ったのは・・・超装騎ライドロン。RX、と呼ばれるライダーの「車」
そして、さらに数台の、バイクに乗った仮面の男たち。
「おお!」
だの、
「助けに来ました、先輩!」
だの、
「よくもやったな・・・覚悟しろ怪人!」
だのといった声が、カーネルの耳に空しく響いた。

救出
「怪VRは上空で待機しろ、この状況で特撮マニアの三笠屋が舞い上がらないはずが無い、必ず仕掛けてくる!・・・何、人のことは言えないだろう、だと!そんなことは先刻承知だ!戦隊ロボも動き出した、連中は装甲が厚い、気をつけろ!」
ふと生栗が気がつくと、彼は博士と一緒に空を飛んでいた。
「ななな、な!?」
慌てて周囲を見回し、自分が今博士の操縦する赤いオートジャイロ・・・いや、四枚の透明な羽で昆虫のように羽ばたいて飛ぶものを、そう呼んでいいならばだが・・・に乗っていることを忍敷く駿河、どうしてここにいるのかがさっぱりわからない。
眼下で、改造人間や人造人間が走り回り、巨大な、VRとは明らかに各が違うロボットが地響きたてて闊歩し、宇宙船が飛び回り、大騒ぎになっている。
博士は、一人大声でがなっている。どうも、無線を使っているようだ。
「えーちゃんと反崎に伝えろ、連中は一匹見たら三十匹、仲間のピンチにはぞろぞろ終結する!はやく怪人を引き上げさせろ、クリオネ女あたりなぞいい的だ、とな・・・なんと、えーちゃんはもう動いたか、さすがだ。ではこれよりがらだま一号および二号を作動させて、無線封鎖する。我輩が信号弾をあげたら、そこを砲撃するのだ。わかったな?では通信終了。」
「ああっ!」
博士の声を聞いているうちに、生栗はさっきまでのことを思い出した。

〜回想〜
「博士!一体今までどこに!?」
無線機から聞こえてきた博士の声に、蛇姫が尋ねる。
「何、ちょっとスットン共和国はガール半島まで、な。それより、状況は把握した。カーネルのほうは我輩に任せろ。生栗を第四カタパルトへ!手伝わせる。」
「へ、カタパルトって・・・?」
状況理解するまもなく、あれよあれよと言う間にカタパルトに括り付けられ、生栗は天高く打ち上げられたのだった。


「は、博士ぇ、なんてことするんですか!」
さらっと博士は生栗の抗議を聞き流した。
「えーちゃんはよくあれ使って飛ぶぞ?」
「俺は魔法使えません!」
「その変わり我輩が受け止めた。さ、話は聞いたであろう、暴走娘の救援にいく。」
「何で俺まで!?」
生栗の心の叫びは、博士をむっとさせただけだった。
「手が足りない。我輩は操縦をせねばならぬ、お前はカーネルを回収する役だ。」
「牽引ビームとか無いんですか!?黄泉の船には付いてましたよ?」
「馬鹿者!きちんとスーパーキャッチ光線付きの「きゃとるんです一号」が別にあるわい!だがこの「紅のハエ」には積んでないので、こんなこともあろうかとあらかじめお前を射出する手はずや逆さにぶら下げるハーネスを用意しておいたのだ!くはははははははっ!!」
なんだか変な理屈を同道といい、悪笑いする博士。
「分かてるんだったら積んであるほうに乗ってくださいよ〜〜〜!」
「やかましい!・・・おおっ、見えてきたぞ!」
「え、どこ!?」
博士が杖で指し示すほうを見た生栗の瞳に、倒れ臥す住人のバッタ男と、まだ無傷の新手数名に囲まれた少女が・・・
傷ついた体を必至に立ち上がらせようとしている少女が、うつった。
「よってたかって・・・」
嫌悪感あらわに唸る博士。
「いくぞ、生栗!」
「・・・・・・はい!絶対助けましょう!」
カーネルの姿に、自分が正義から受けたものと同質の匂いを嗅ぎ取り、いつに無く猛々しく生栗は叫んだ。地下正義更生所で受けた拷問が、脳裏によみがえる。
(俺が受けた拷問も、今あいつが受けている隣地めいた戦いも・・・同じだ!俺は、絶対に、絶対に・・・)

機蝗兵の体は限界まで酷使された上にタイムリミットを迎えていた。
傷からの出血と喀血、返り血で真っ赤になった少女は、折れた足を引きずりながら立ち上がった。身構えたバッタの改造人間たちが、周囲を回りながら方位を縮める。
「はぁ、はぁ、げほっ・・・ごほっ・・・」
それでも、カーネルは構えを解かない。じゃりり、と地面を踏みしめ、また一歩方位が縮まった。その時!
「敵を撃せよ科学の光!我が征く道を照らさんがために!」
博士の杖から、呪文のような文句とともに放たれた凄まじい光が、目前の敵を直撃した!
「チャンスは一度、すれ違いざまにひっさらえ!」
「カーネルーーーーッ!!!」
ハーネスで体を機体に結びつけ、逆さにぶら下がった生栗が叫ぶ。
「生栗!?博士!?」
「つか、まえたっ!」
カーネルが驚きの声を上げたときにはもう、生栗はカーネルを抱きとめていた。そのままの勢いで、紅のハエは信号団を打ち上げながら急上昇する。たった今までカーネルのいた場所一体が、神刺塔からの援護射撃で吹っ飛んだ。
「ふんっ!」
ハーネスをつかみ、博士は二人を強引に引っ張りあげた。
「だ、大丈夫か!?」
自分の服に付いた血の多さに驚く生栗。
「博士・・・!」
「話は、後で聞こう。」
そういうと博士は、以前生栗に見せたようにカーネルの細い首筋に注射器になっている爪をつきたてた。麻酔薬と拒絶反応を抑える薬が血管に流れ込み、カーネルは一息で意識を失った。
「・・・さて、帰るぞ!」
しばし沈黙した博士だったが、すぐ元に戻ると機首をめぐらせ・・・
「ふはははは、待てぃ!」
「!!」
いきなり濃い声に呼び止められた。はじかれるように振り返った生栗が見たものは、己の敵。
「MOEAR!!・・・三笠屋!」

逃避行
三笠屋!邪魔するな!」
振り向いた博士が、大声で怒鳴る。
「ふっ、歴代の「正義の味方」とともに戦えるとは、「正義」冥利に尽きる!今の私は炎、この燃える正義は誰にもとめられないぞぉぉぉぉぉ!はーっはっはっはっは!」
完全に興奮状態で、話聞いちゃいない三笠屋。
「長官・・・」
静かに、静かに生栗は言った。
「磁力か・・・」
これには、逆に三笠屋も反応する。
「見損ないましたよ!貴方の正義は、VRにも乗っていないけが人を襲うことを許すんですか!」
生栗は激しく問い詰めた。が、三笠屋の反応は、問い詰めた生栗にとっても凄く意外なものだった。
「む!そうであった!正義法則第六条「巨大化前の敵にロボ使うべからず!」・・・さらばだ!早くVR乗れ!」
きぃぃぃ・・・んん・・・・・
そういうと、あっけなく去っていたそのさまを見て、博士はぼやいた。
「ふん、どうせ一枚でも多くヒーロー写真を撮りたいからであろうぞ」
・・・いいえて妙、出会った。

そのころ、地下ではもう一つの逃走劇が繰り広げられていた。

時刻は、少しさかのぼる。
「上が何か騒がしいわ」
「上が何か騒がしいね」
コケムシ姉弟は、いつもどおり「遊び」に出ていた。
「でも、関係ないわ。遊びましょ」
「でも、関係ないね、遊ぼう」
だが、大いに関係があったのである。

「うふふ・・・」
「うふふ・・・」
今日も獲物が、ゆっくりと固まっていく・・・二人はそう思った。今日の獲物は結構あがいてくれたので、面白かったと。だがその認識は間違っていた。そもそも開いては獲物ですらなかったのである。
「ぬううううううんっ、蒸着!」
「!?」
「!?」
パリンッ、と音を立てて、不たちの石野からが破られた。その中に立つのは、それまであった人間とは違う、銀の戦士。
「宇宙刑事・・・ギャバン!行くぞ怪人!」
いきなり、コンバットスーツで増幅された怪力で蹴り飛ばされるコケムシ双子。
「きゃあああ!」
「うわあああ!」
混乱しながらも、慌てて逃げようとする二人。
「レーザー、Zビーム!」
だが、相手のほうが早かった。足を打ちぬかれ、倒れる・・・どちらがどちらだかわからない片方。
「あっ・・・」
「あっ・・・」
「レーザーブレード!」
ゆっくりと光の県を抜くギャバンに、二人は獲物となったことを理解したが、どうにも出来ない。恐怖に、支配される。
「ギャバン・ダイナミック!」
「AT炎熱マグマ斬り!」
ギィン!
・・・・・・?
振り下ろされない屋乳母に、閉じていた眼を開ける。そこには、頼もしく立ちはだかる、鎧姿のマッドサイエンティスト魔女、魔女っ娘将軍ATの姿があった。
「ふっ、助けに来たのじゃ。」
じわ、と涙をあふれさせる二人。
「泣いてる暇があったら逃げるのじゃ!これにこりたら、勝手な遊びは慎むのじゃぞ!」
「うん!」
「うん!」
片方が怪我をしたほうに肩を貸し、逃げていく二人。それを背にかばい、えーちゃんは笑った。
「正義には正義の味方がいるように、悪には悪の味方がいるのじゃ、いくぞギャバン!」
「そうだな・・・」
同意する声。
「!?誰じゃ!」
「宇宙刑事、シャリバン!」
「シャイダー!」
「ジバン!」
「ジャスピオン!」
「ビーステクター!」
「ジャンパーソン!」
うじゃうじゃと出てくる、メタルヒーローたち。
「・・・・・」
しばらく考え込むえーちゃん。
「後は任せたのじゃ、フウジン!ライジン!」
「そ、そんな、そりゃねえっすよ!」
「っていうか、我らの出番ここのこのせりふだけか〜!」


快傑
結局、異世界から来た押しかけヒーローたちは、機知に戻ったあくの博士の手により、元の次元に強制送還された。
もっとも博士曰く、次元の状態が不安定だから、今回みたいに大量に出現することはもう無いにしろまた現れる可能性は十分にある、とのことだった。
実際、今度の損害は大きい。実際に戦ったのはほとんど怪人軍団とはいえ、最高司令官である悪の博士と前線で指揮をとるべきマシーネンカーネルがそろって戦線を離れており、おまけに鞍馬鴉が情報収集をほっぽりだして変身忍者嵐と戦いに行ってしまったため混乱がさらに加速することになり。
神刺塔も結構派手に損壊し、ことに空調設備が全壊という夏場に最も食らいたくない被害を食らったため、博士は激怒し怒鳴り散らし、鞍馬カラスは減俸処分となった。
多分、今頃一人屋根裏で落ち込んでいるだろう。
などと考えながら、生栗は外の風に当たろうと神刺塔の廊下を歩いていた。あれやこれや後始末で、この時間までかかってしまった。
やれやれ。
なぞ、ぼやいたのがいけなかった。
「あれ?」
いきなり道を間違えてしまった。迷う。
「ここ、医務区画じゃないか・・・」
だが、医務区画にしては戦闘の跡が著しい。
「なんで?」
しばらく悩んでいた生栗だが、さっき通り過ぎた部屋でイカンゴフとアラネスが話していたのを思い出した。
「そういえば、火力戦隊ストライカーが紛れ込んだのって、このあたりだっけ」
よりによって非戦闘員のイカンゴフを襲ったらしい。
(あの、大丈夫ですよね?怪我・・・)
(もも、問題ねぇ、さ。大体お前のほうが危なかっただろう!一人で立ち向かうなんて無茶は、するんじゃねえ!俺がいるから、な)
駆けつけたアラネスは、患者を守ろうとするイカンゴフを容赦なく攻撃するストライカー、ことに冷酷非常なブルーに逆上、それはもうひどい目にあわせたらしい。
「そういやあの蜘蛛、イカンゴフのピンチには必ず現れるな・・・」
(惚れてるのか?)
かんぐっていると、唐突に鼓膜をぶったたかれるような大音声が聞こえた。
「ええかげんにせい!」
(博士!?)


ダブル・リベンジャー(前編)
「左大腿骨複雑骨折、あばら三本へし折られて、右腕なぞもぎ取れる寸前だったのによくもまあまだ戦えるなどといえたものだ!」
博士の無遠慮な大声は、すぐ目の前の病室から聞こえてくる。
(?)
思わず覗き込む生栗。
(あ)
一目見て納得した。
ベッドに横たわる、包帯で真っ白な少女、マシーネン。カーネル。
そのそばに座る、黒いマントに黒衣の鉄仮面、悪の博士。
「あれは私の戦い!いかな博士でも口出しは無用です!」
(親子喧嘩、か)
何か違うような。
「死んでも悔いなし、といいたいのか!?我輩はそれがいかんといってるのだ!父として!」
博士の剣幕にも負けず、カーネルは言い放つ。
「私の父は実父とゼネラルだけだ!貴方は違う!」
「がっ・・・」
さすがにこの言葉にはショックを受けたらしく、立ち上がってよろよろと後じさる博士。
「あ・・・」
さすがに言い過ぎたか?といった表情をカーネルは浮かべた。
「馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿バッタ娘!お前の父ちゃんヤモリジン〜〜〜〜!」
バァン!
意味不明なことをのたまいながら扉を蹴り明け、だっと走り去る博士。
「わっ!?」
いきなり目の前を横切られて、動転する生栗。
「あ〜、びっくりした・・・ん?」
足元に紙が落ちている。拾ってみると、文字が書いてあった。
「生栗へ。抜け出そうとするかもしれないから、カーネルを見張れ。」
・・・・・・
動転してるんだか、冷静なんだか。
(しかも俺のこと気づいていたのか・・・)
まあ、無視するのも問題だし、ここは従うことにしよう。
「カーネル、入るぞ?」
そういって、戸をあける生栗が見たものは。
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
開けた窓から身を乗り出している、包帯を巻いただけの姿のカーネル。体の線がもろに出て刺激的な姿だが、今の生栗にそれを鑑賞する余裕は無い。
「っわ!?生栗!」
「言ったそばから逃げようとしてるし〜〜〜!」
慌ててとめようとする生栗。
「待て!博士とけんかしたからって家出はよせ!」
カーネルも振り向く。
「違う!まだ遠くに入ってないだろうからライダーを追うんだ!次元の壁もまだ閉じきってない!」
「だから、そんな怪我じゃ無理だって博士も言ってただろう!」
「うるさい!」
無視して、窓から出ようとするカーネル。
生栗は焦った。ここでもし逃がしたら後で博士にどんな目に合わされるかわからない、いやそれ以前、もっと別の問題だ。
「ちょ、ちょっと待て!」
慌てて手を伸ばす。今にも窓枠を超えようとするカーネルの、体に巻かれた包帯に指がぎりぎりでかかり・・・
ぶちっ、はらり。
包帯が解けた。普段は軍服に隠れている、魅力的な大きさの胸があらわになる。
「〜〜〜〜〜〜〜〜?!!!!!」
慌ててベッドに飛び込み、布団を胸まで引き上げるカーネル。
「な、何をする!」
真っ赤になって、カーネルは怒鳴った。平謝りに謝る生栗。
「すす、すいませんすいませんすいません!」
「全く・・・まあ、変身すれば澄むことだ。」
そういうなり、カーネルは意識を集中させ始める。
「痛っ・・・」
傷ついた体が変身についていけないのか、痛みを感じるらしい。それでも、変身をやめようとしない。
「や、やめろよ!」

ダブル・リベンジャー(後編)
生栗は、必至でカーネルを説得しようとした。それは、とても純粋なところからわいてくる思いで。
「何故止める、生栗!」
「だ、だってなあ!」
お前ならわかるはずだ、私の気持ちを、復讐への思いを!」
カーネルの叫びの意味を、生栗はそれだけで理解した。
「お前も私と同じく、復讐を目的としてここへ来た。そうだろう?なら、私の言うことがわかるはずだ。」
「確かに・・・そうだ。
生栗は、否定しなかった。自分の胸にも、この少女と同じ憎悪の炎が燃えているのだ。
「だったら!」
「でも・・・」
口ごもる生栗を、カーネルは怒鳴りつけた。自分と同じだと思っていたのに、違うのかという失望感が、声を荒げさせる。
「「でも」なんだ、生栗!「でも、自分はもうそういう気持ちをなくしてしまった腰抜けです」というわけじゃないだろう、生栗!」
「違う!」
「じゃあ、何だ!」
売り言葉に買い言葉で、互いに声が激しくなる。すれ違いながら、互いに相手を傷つける。
「でも俺は、お前みたいに「今」を捨ててはいない!」
「!・・・・・」
生栗のその一言は、まるで空気が凍ったような沈黙をもたらした。
しばらくの間。やがて、冷え切った二人の間に降る雪のように、カーネルはぽつりぽつりと話し始めた。
「確かに私は、各個のためのみに生きている。だがな、お前にそんなことがいえるのは、お前には仲間がいて、まだそれを失ったことが無いからだ・・・」
反論できずに、生栗はうつむいた。
「お前には、ソドムとゴモラがいる、ゲドーもいる・・・私には・・・もう、何も無い・・・」
消え入るように、声が小さくなる。冥府へと、落ちていくように。
「父とも、部下とも、思い合った相手とも、悪夢の仲でしか、悪夢の中で敵に殺されるところしか、もう私は追うことが出来ない・・・そんな今に、何の意味がある!」
底まで落ちた冥府の、地獄の炎に熱されたかのように激昂し、カーネルは叫んだ。その声は、まるで引き裂かれる心の音。

「何も無いなんて、寂しいこというなよ・・・」
「寂しい、だと?」
生栗の呟きに、カーネルは少し驚いたようにたずねた。
「一体、誰が寂しいんだ?」
まるで、期待するように。
そして、生栗はそれに応えた。
「俺と・・・こいつら、かな。」
そういうと生栗は病室の扉を開けた。
「わーっ!」
「あいて!」
「ぶぎゅっ!」
扉に寄りかかっていたらしく、飛び出してきたのは・・・怪人たち。
「・・・お前ら、そこで何してるんだ?」
見事にすっころんだ怪人たちを見てカーネルはあきれたような声を出した。
「何って当然。」
「お前のことが心配で、見舞いにきたに決まっている。何かとりこみ中みたいなんで、入るのをためらったんだけど・・・」
口々に答える、怪人たち。
「ほら、こんなにお前のことを心配している仲間がいるじゃないか。それに・・・」
そこまで異って、生栗は照れくさそうに頭をかいた。
「それに、おれたちHV団も、お前の仲間だ。・・・当然、俺も。」
「・・・仲間・・・」
静かに、呟き。
「そうだ、お前は一人じゃない、だから、勝手に死んじゃ、駄目だ」
生栗は言った。あまり熱が入っていたので、いつの間にか相手の手を握っていた。はっと気づき、互いに慌てて手を離す。
「あ、あーと、その・・・」
もごもごと呟く生栗の視線を避けるように顔を伏せ、カーネルは強がっていると本人以外には誰にでもわかる声で、精一杯言った。
「・・・まったく、お前と無駄話している間に、時間が過ぎてしまった。今から追っても追いつけそうに無い。だからもう追わない。・・・だから、下がっていいぞ。」
「・・・そ。」
一人去り二人去り、最後まで心配そうにしていた生栗が去ろうとし、今にも扉を閉めようとした刹那。聞き取れるぎりぎりのかすかな声が、生栗に届いた。
「ありがとう」
と。

それぞれに闇の中で


(何故?)
人気の無くなった暗い病室、そのベッドの上で、膝を抱えカーネルは自分に問うた。
(何故、私は追いかけるのをやめた?)
もう追いつけなくなった、自分で口にした言葉を、カーネルは自分でも信じてはいなかった。
(生栗に説得されたから・それで決心が鈍った?邪魔だった?じゃあ、何故私は・・・)
「ありがとう」
(何故言ったんだ、あんなことを)
その時からまだ、顔が赤い。
「嬉しかった」
(!!)
不意に口をついで出た言葉に、自分の言葉に、カーネルは驚いた。
(馬鹿な・・・仲間だ、と、言ってもらえたから?)
いたわってもらった。癒してもらった。かつて、カブトにそうしてもらったように。
(だから・・・)
だから、嬉しいのか。だから・・・
だから、追うのをやめた。いや、自分でもわかっていた。あの状態で追っても、死ぬだけだったということくらい。
だから・・・生きることにした、ということ。
生栗と、一緒にいる嬉しさのために?
私は、生栗と共にありたいのか?


同時、博士は暗い自室で、巨大なパイプオルガンを弾いていた。
荘厳な調べが響き渡る。悪の雰囲気にかなうと、わざわざ調達しただけのことはある。
「予定通りですか、博士?あの二人のことは。」
傍らに、博士に寄りかかるようにしてたつ蛇姫がいたずらっぽく言った。闇の中にも僅かに差し込む月の光に、蛇と同じ作りの瞳が幻想的に輝く。
「いや。我輩は望んだだけだ。あの娘の安寧を・・・この結果は、正直予想外だ。」
「わかっています、博士がそういう人だということは。」
「運命、あるいは神とやらは、あの娘に貧困の果てに罪を犯して死ねといった。だが、そんなまねはさせない。あの娘は幸せにする。傲慢な神の横っ面をひっぱたき、己が見捨てた娘が、本当なら幸せになれることと、選択がおろかだったことを思い知らせてやる」
神をたたえる曲ではなく、神への敵意を伝える曲。それを弾き終え、博士は鍵盤に思い切り指をたたきつけた。
「我が目的・・・それは、運命を超えることだ。」
バーン!
「グぎゃああああああああああああ!!!」
かっこよくきめた途端、手を叩きつけた拍子に落ちた鍵盤の蓋に指を挟まれる博士。
蛇姫は「やれやれ」といった笑いを浮かべると、彼女が仕えることを選んだ相手を助けるため、とりあえず出来ること・・・ふたを持ち上げることを、した。

次回予告?
「・・・・・・」
流れ弾のせいで半壊した自分の研究室を、呆然と見つめる反埼。その瓦礫の真ん中の、壊れた手術台。
「細かいことおいといて、大雑把な事実が一つ!」
叫ぶ。
「カマドウマ男、逃!亡!」

「さぁて、写真も撮りためたし、HVどももダメージを受けたみたいだし。ここらでいっちょ、社員旅行でもいくか!」
「あの・・・」
「何だねソニックくん?」
「後者はともかく、ヒーロー生写真と旅行に何の関係が?」
「・・・ノリだ!」
などと三笠屋たちが日常という漫才を疲労する、その地下。
セブンの根拠地、地下正義更生所。
人間の七つの罪のうちの一つ「怠惰」のコードネームを持つ少女、生栗 彩は、兄の写真を見つめながらはらはらと落涙した。
「ああ、お兄様・・・いまだ道を誤っている上に・・・」
ここまでなら、このブラコン少女の独り言としてはいつもどおりのことなのだが、今回は違った。
「悪い虫に付きまとわれて、おかわいそう・・・」
「でも・・・」
ゆっくりと、唇が笑みの形につりあがる。
「大丈夫。私がすぐにいって・・・残さず退治して差し上げますからね・・・磁力お兄様・・・」
ほう、とため息。

既に世界は、あっちこっち火種だらけだったりする。

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