ラジオドラマ「徒然なるヘルバーチャ日記」

 1ページ目 日常への怪奇な回帰


    前回の大規模な戦いから、十日ほどたっていた。
  その他他界の原因となった、新参のマッドサイエンティスト、悪の博士と、その部下の怪人達も
  HV団に大分なじんできていた。
  正直一週間経って、VR獣が再び動けるようになったら博士はまた大規模攻撃をかけるのではな
  いか、という噂も流れたが、そう言うことは全然無かった。
  戦闘につぐ戦闘、圧倒的な力による蹂躙は博士曰く「世界が拒んでいる」とのことで、彼らはも
  っぱらHV団との友好関係樹立に努力していた。
  それでいいじゃないか?ああいうことはよっぽどの特別事態(インパクトが必要な初登場など)
  でない限り、あり得ないことだ。博士は自分の戦力が過小評価されることも嫌うが、卑怯なまで
  に強すぎると思われることはもっと嫌であり、それによりかかり他人に強制していると思われる
  ことには全然耐えられることではなかった。
  そう思われる原因になりそうな過激さは、いわば悪的修辞というものである。
  あるいは「初登場の幹部は強めに演出される」のが原因と言える。
  それが故の待機、日常への参加だった。

  
2ページ目 すれちがい地上編   
  

  もっとも、二者の日常的合流に当たっては、後になったら大笑いできる類の悲喜劇がご多分に漏
  れずどっさりと起こった。
 
  「にゃ・・・だれもいないにゃ?」
  基地の廊下を抜き足差し足で歩く、しゃべり方からバレバレの謎でない影、猫又アーク・ダーマ
  は普段なら呑気に遊びに行くところをことさら注意してそっ出ようとした。
  絶対に、あいつ等に見つかるわけには行かない。
  だが、その可能性は彼女が気付いていないだけで、まったくなかった。
  「うっす!アーク姐、どこいくっすか!おともするっす!」
  「ぶぎゃああああ!」
  見つかった。背後から聞こえる声に、まだ現実を見たくないアークは硬直し、それからおそるお
  そる振り向いた。
  それはいた。ぴっちりタイツのネコミミ肉球つきマッチョマン三人集、キャッツ・ガイ。彼女は
  猫害と読んでいるそいつらが、何故か組体操していた。
  体型を組合だ、全然気付かせずに接近したことになる。
  (あああ、なんでこんなのにつきまとわれるにゃ〜)
  アークは心の中で涙を流した。あの作戦以来、かれらはずっと彼女の部下として付いてきてい
  る。想像したくはなかったが、慕われたらしい。
  「わかったっす!いつものきゆもとさんとこっすね!さっそくいくっす!
  がしっ。アークは担ぎ上げられた。
  「ふにゃああああああああああああああああ!」
  「わっしょい、わっしょい、わっしょい!」
  ムキムキ猫の御輿に担がれながら、アークは真剣にこの事態をどうするか考えていた。
 
  「ゲドー殿」
  「どうなさいました?カーネルさん」
  執務中の四天王・ゲドーの部屋に、怪人軍団の戦術指揮官・マシーネンカーネルがひょいと上が
  り込んできた。
  ゲドーは思った。前回の緊急時における指揮権の有無の問題だろうか。あのときは深夜まで仕事
  につきあわされて・・・
  底まで考えたときカーネルは話し始めたが、それは彼の予想とは違った案件だった。
  「単刀直入にお聞きしたい。我々は此処で嫌われているのか、否か。」
  まっすぐにカーネルの深い青の瞳がゲドーを射た。ゲドーは慌てて返す。
  「いえ、特にそう言ったことは・・・何かあったのですか。」
  カーネルは無言のまま、テーブルに手紙の山を置いた。いずれも封筒からして、ちまたで言うラ
  ブレターの類であることは解る。
  その中の一枚を、カーネルは読み上げた。
  「今日の朝礼終了後、屋上に来ていただけないでしょうか。大事な用があります」
  「・・・それがなにか?」
  そこで帰ってきた返事に、ゲドーは思わず机に突っ伏した。
  「このような果たし状が何通も舞い込むところを見ると、私はきらわれているのではないか、
  と・・・どうした、ゲドー殿。何故机に突っ伏す、何故肩をふるわせる。顔を合わせるのも嫌
  か?泣くほど嫌か?だがせめて、会話まではいやがらないでくれ。悪いところがあったら改める
  から・・・」
  「ぶははははははははははははははははは!!!」
  ゲドーは、クールな美形悪役顔がぶっこわれそうな勢いで笑った。
  「は、は、果たし状か。まあ見ようによっては・・・いや絶対そう考えないって。普通」
  笑うゲドーに、カーネルは怪訝そうな顔をした。ある種無邪気にすら見える。
  「・・・違うのか?」
  「世間一般に言うラブレターの類だと思いますがね、大佐殿。ファンレターに近いかも知れませ
  んが」
  一瞬きょとんとしたカーネルは、手の手紙を見、ゲドーの顔を見、感慨深げに呟いた。
  「そうか・・・これが・・・」
  ダレがどう見ても、初めてだった。
  「情報提供、感謝する」
  そういってきちっと敬礼して退出したカーネルを見送ったゲドーは、扉が閉まった瞬間また笑い
  出した。博士から
  「背艦知らずなもので、よろしく頼む」といわれていたが、まさかあそこまでとは。
  ゲドーの笑いは、彼女の指揮ぶりに惚れ込んだある一戦闘員に彼女が言った言葉を聞くまで続い
  た。
  「私は地獄から帰ってきて、死んだ目的「復讐」のために煉獄をのたうつ死人だ。近づかない方
  が身のためだ、 世間にはもっといい女性がいるだろう」
  彼女は、嘘いつわり無くそう言ったらしい。
  底冷えするような氷河色の空虚な瞳で。

  
3ページ目 スーパー家政婦大戦   
  


  普段なら和やかたるべき食堂の昼飯どき、そこに何故か緊迫した雰囲気が漂っていた。
  ピンクのタキシードに何故か眼帯をしたハッハノが、景気よく叫んだ。
  「家政婦ファイト、レディーッ、ゴオっ!」
  同時に、調理場にたっていた二人が動き始めた。
  こなた、HV団戦闘メイドのえびてん。
  かなた、悪の博士怪人軍団三貴子(単なる呼称で階級ではないが)、イカンゴフ。
  それまでHV内家政婦能力のチャンピオンを守り通してきたえびてんに、今強力な挑戦者が現れ
  たのだった。ハッハノの興味と博士の意向によって、ついに両者が雌雄を(どっちも女性だけ
  ど)決すべく、激突したのだった!
  「さあ、厨房という名の料理のコロセウムで、二人の戦女神がいま激突する!はたして勝者はH
  Vの食の独裁者、キッチンの総統たるチャンピオン海老天か、狂科学の成果可憐なる純白の天
  使、あの博士の部下とはとうてい思えない善人度二百、生栗より悪人らしくないイカンゴフか!
  さあ、勝負の行方は!?」
  広報参謀の名に恥じず、大げさな実況をするハッハノ。
  「なんで私のリングネームそんなに悪っぽいでふか?」
  「我が輩の部下とは思えない、とはどういう意味だ!」
  「どうせ俺は善人ですよ、元Aフォースですよ・・・」
  なんかあちこちから抗議が続出したが、無視して勝負は続く。
  「だがお前より善人が出来たのだから、よかったではないか生栗。ん?そういえば・・・」
  「な、なんですか?」
  「改造を忘れとった!大人しくジシャャクイガグリになれい!」
  「うわあああああ、嫌だあああああ!」
  どたんばたん、ばん!だだだだだ・・・
  「まてぇーいっ!」
  更に何か騒ぎが起こったらしいが、方って置いて勝負は進む。
  「とーっ!」
  凄まじい早さでネギを刻む海老天。彼女の得意技だ。
  他の食材も見る見る間に切り刻まれる。
  出来映えに満足した海老天は、余裕を持って、かつ手をゆるめずに挑戦者イカンゴフを見た。
  イカンゴフは既に食堂にいっぱいになったHV団団員に行き渡るだけの食事を着く手板。
  「そ、そんあ、うそでふ・・・」
  唖然とする生栗。
  「おみごとでした新チャンピオン、イカンゴフさん、十本の触手裁きは見事でしたね。ご感想
  は?」
  今度はインタビューまでするハッハノ。
  「いえ、私なんか改造されただけで、全然大したことないですよ。むしろ海老天さん、とっても
  頑張ったと思います。あら?えびてんさん?」
  海老天はいなかった。
  「だから!少しは胸を張れイカンゴフ!我が輩がわざわざお膳立てした意味がないだろう」
  そういいつつ、ばんとイカンゴフの背中を叩く博士。しゃべりながらも目は隠れた生栗を探して
  動いている。
  「ご、ごめんなさい博士。私、どうしてもできなくて・・・」
  「あーもー、泣くなー!」
  かみ合ってない二人は、一ヶ月後メイド養成機関「サライの穴」での猛特訓から帰ってきたえび
  てんとイカンゴフとの戦いで大破する食堂で、互いに気を揉むのだった。
  

  その後、反崎の潜水艦「じんべえ」のコック、鮟鱇男との戦いになったのは言うまでもあるま
  い。  

  
4ページ目 だって名前が同じ   

  でんででででんででででんででででんででで・・・
  「何?この変なBGM?」
  ソドムは音の聞こえる方に振り返った。
  「我が輩は悪の博士、科学の求道者・・・」
  何事もなかった火のように通り過ぎるソドム。
  「まてーっ!無視するな!」
  「まとわりつかないでーーーーーっ!」
  追う博士。逃げるソドム。
  「わかった!Vメインの話なのにゼノギアスのネタ使って悪かった!」
  「知らないわよそんなの!」
  「じゃあ、何故!」
  「色んな意味で怪しすぎるから!」
  ・・・・・・
  ビーッ!
  ボカーン!
  あまりにストレートな反応に、思わず杖の先から怪光線を放つ博士。
  「わきゃあああ!」
  吹っ飛ぶソドム。崩れる天井と壁。それに埋もれる博士。
  「・・・あんた馬鹿ぁ?」
  おもわず某新世紀アニメのア@カになるソドム。
  「ふっふ、こうして我が輩が埋もれていなければ、お主死んでいたぞ」
  「うそつけ。」
  「じゃあお主、Aフォースキラーに勝てる自信有るか?我が輩はあれを笛で呼び寄せられるぞ。
  一回ふくと怪人軍団が、二回ふくとキラーが、三回吹くとZんが・・・」
  「はいはい。あれはあと十四週間は動かないんでしょう?」
  「うごいたとして、だ。」
  「・・・・・」
  ソドムは黙った。確かに、無理かも。
  「今のお主はまだまだ未熟。それではシェサーには勝てまい?」
  「!!どうして知ってるのよ!」
  「強くしてやろうか?シェサーに勝てるほど。」
  「・・・できるの?」
  ソドムはおずおずと聞いた。シェサーに勝てるなら、大抵のことは我慢しよう。
  「外を見ろ。あれが証拠だ」
  「外?」
 
  ドバーン!ビバシィッ!ズガガガガ、ドドーン!」
  激しくぶつかり合う老人と怪人・・・石垣とフェンリル。
  「ふっふ、やるのう嬢ちゃん、ワシを此処まで熱くさせるのは久しぶりじゃ!」
  「久しぶりって頃は、前にもボクくらい強いのと戦ったの!?すごいや爺ちゃん、でも負けない
  ぞ!」
  「来い!」
  「たあああ!」
 
  「な?」
  「なって・・・まあすごいけど・・・で、どうするの?」
  博士はようやく瓦礫の中から出てきた。
  「簡単じゃ。お主をVR獣「ソドム」に改造する!」
  そう言って博士はフリップを取り出した。全身岩と溶岩で構成されたようなごつごつしたVR
  獣・・・まさに獣・・・に「そどむ」と汚い字で書いてある」
  「いや!!」
  「何故!?」
  心底不思議そうに博士は尋ねる。
  「そんな変なカッコ絶対いや!」
  「かっこいいではないか!」
  「どこがよ!頭いかれてるんじゃないの?」
  「マッドサイエンティストだからな、当然だ。」
  ・・・・・・・
  確かにそうだった。
  「ならば、仕方がない。」
  博士が肩をすくめたとみるや、すぐさま後ろから人影が飛び出した。紫の道着に弁髪。蠍師匠
  だ。
  「特訓じゃ!」
  「あたしは機械だよ?」
  「馬鹿者!機械だろ宇土なんだろうと、とにかく特訓じゃ、特訓有るのみ!」
  「・・・はあ。」
  確かにあのわけわからんワザを使えれば、シェサーだってこてんぱんのぐちゃぐちゃのぼこぼこ
  の(以下略)いいかもしれない。
  「じゃあ、やってみようかな」
  「そうか!それでは早速・・・」
  いいながら、ソドムをわきに抱える師匠。
  「へ?え?」
  「ギアナ高地で山籠もりじゃあああああ!」
  「いやあああああああああああああああ!」
  マッハを大分超えたスピードで、蠍師匠はソドムと共に去っていった。
  見送る博士。
  「・・・当分帰ってこないかも・・・」
  その間、乗騎のない生栗がこれ幸いと博士に実験台にされるのは目に見えていた。

  
5ページ目 暗躍的日常   
  


  VR獣による攻撃が無くなったとはいえ、悪の博士の攻撃がやんだ訳ではなかった。
  博士は配下の改造人間によるゲリラ作戦を開始したのである。
  こういう作戦を採らざるを得ない理由はあった。
  VR獣は一度動かすと暫く動かせない、つまりちょくちょく出していては数がそろわなくなるの
  である。
  博士の目的は、「全ての敵」の撃滅。これを装甲するのに避けて通れないのが最強クラスの力を
  持つ連中、AJ、セブン、マスターZ、稲元(まあ、こいつはおいといて)である。
  流石にこの連中が相手では量産型VR獣では駄目で、勝つには博士の専用機が必要となる。ザコ
  退治に時間を使っていては倒せないので、露払い用に全機の(さすがにこれくらいの戦力は必要
  になるだろう。仮にも正義の味方だ。)VR獣が動かないとまずいのだ。さらに、AJアンドセブ
  ンを倒した後返す刀でマスターZを討ち取る博士のプランでは、Aフォースキラーだけではやは
  り時間切れを起こす、アイオーンを破壊するためには三十九週間に一度しか動かせないZんを使
  うしかない。(一兆度の火球を使うためには、どうしてもこれくらいの準備がいる)しかもZん
  は撹座しているため修理など考えるにそれ以上時間がかかるのは確実。
  よって、その間の時間稼ぎとして、敵戦力をそぎ、迂闊に動けないようにする必要がでるわけで
  ある。
  そして、改造人間とは本来こういう任務のため作られたのだ。
 
  ガシャーン!
  「わ!窓ぶち破って大岩が!」
  「ムーが潰されたぞ!」
  これは当然怪力怪人フェンリルの仕業である。もっとも
  「ようし、嬢ちゃん勝負じゃ!」
  とすぐ石垣老人が出撃するためこういう直接的な攻撃はあまり効果がない。
  むしろ大量の鴉やその他の鳥が基地に乱入したり、(鞍馬鴉の忍法・鳥吹雪)、唐突に基地の上
  だけに大雨が降ったり(蛇姫の霊子コンバーターによる天候操作)、まだ持つはずの食料が腐っ
  たり(仮面怪人・食品仮面の仕業)畑が毒キノコで埋まったり(もっと激しい攻撃もできるの
  に・・・と不満のマッシュの攻撃)、机の中に隠して置いた秘密の日記の中身が公表されたり
  (仮面怪人机仮面の必殺技)ぼこぼこにされた拳法マスクが放り込まれたり(まあこれは誰でも
  出来る)、まあ「嫌がらせ」とでも言うべきレベルの攻撃が一番うっとうしく敵に損害を与え続
  けていた。この事実は、アラネスやマシーネン・カーネルには不満だったが。
  そして、ある意味一番手ひどかったのが・・・
 
  「わあああああ!!パソコンのデータ飛んだ!!」
  普段目立たない怪人軍団コンピューター係の裏方、パソコン仮面である。
  「ぐわああああ!おれの、おれの一週間の努力が・・・!?」
  ハッキング、ウィルス、なんでもござれ。
  「ああ!間違ったデータに書き換えられてる!ってことはこれを元に新型機の実験をした東方さ
  んは・・・」
  轟く爆音。
  「ああ・・・」
  そして、攻撃はこの男にも及んだ。
  「ぬを!と、特撮関連データベースが、全滅・・・?」
  呆然と立ちすくむ男・・・三笠屋 機械。
  これがほんの序章に過ぎないことを、彼はまだ知らなかった。
  「む?代わりに何か変なファイルが・・・なんじゃこりゃ?あけてみるか・・・」
  ぴ。
  「うわわっ!?こ、これは!?」
  「あーっ!!長官のパソコンエロゲーだらけだ!」
  背後で立ちすくむ、雑用のソニック。
  「そ、ソニックくん・・・こ、これは誤解
  すでに「変態鬼畜最低〜〜〜!」の叫びを残し、ソニックは走り去っていた。
  「あああ・・・」
  「長官!今日のメール新聞一面トップで長官の浮気疑惑が出てますよ!」
  「長官!」
  「長官!」
  ハッハノの宣伝も相まって、長官への疑惑は過去最高潮に達しようとしていた。
  「無罪だ!冤罪だ!弁護士を呼べ〜〜〜!」
  「長官!見苦しいですよ〜〜〜!」

  
6ページ目 夜警(前編)   
  


  正義の味方に隣接するHV団筑波支部に安息の日々はない。常に臨戦態勢をとり、夜間の警備も
  怠りないのだ。
  「それじゃ今日の夜の見回りは・・・生栗と悪の博士ね」
  「なーーーーーーーーーっ!??」
  生栗は失神した。
 
  「大丈夫ですかな?」
  ゴモラは失神した主を助け起こしながら、その原因の方を見やった。
  「健全なあこがれと熱血である「燃え」!ちょっと不健全だけどやや深い「萌え」!この二つの
  バランスでファン感情は成り立っておる!だが昨今をみよ!子供の頃特撮ドラマなどで健全な「
  燃え」を学習できなかった者共が溢れ、「萌え」の一点増加により世界のバランスは崩れてお
  る!このままでは創作世界全てが十八禁エロ同人誌と化してしまうと言うことが、今こそ「燃
  え」の復権が必要だと言うことが、わからんのかぁ!!」
  「萌をそう言う風に限定するな!熱血である「燃え」も「萌え」の中に分類することが出来る
  !言うなれば、「萌え」とはファン感情全ての代弁なんだ!」
  「甘いわ若造ならば貴様「本郷猛萌え〜(はぁと)」と言えるか!どうだ言ってみい!言えま
  い!この一点で貴様の誤りは明らかじゃあ!」
  「あれは特撮だろ!」
  「愚か者めが!特撮とアニメは兄弟じゃぁあああ!否!全ての「創作による物語」は、本質的に
  上下などない同一の物!アニメだ特撮だ小説だ漫画だと区別を付ける必要など無いわ!」
  ・・・・・
  ふぅ、とゴモラは思わずため息をついた。大丈夫そうではなかった。
  「長い夜になりそうですな、生栗殿にとって・・・」

  
7ページ目 夜警(後編)   
  

  「う・・・」
  ようやっと気が付いた生栗は、うっすらと目を開けた。
  「気が付いたか・・・くくくく・・・」
  目の前に、薄青い光でぼんやりと照らし出された博士の仮面。
  「ぎゃあああぐ・・・」
  叫びだそうとした生栗の口を博士が強引にふさぐ。
  「静かにしろ・・・周りの者が起きる・・・」
  博士は低く唸るような声を上げた。少し落ち着いた生栗は、口をふさがれたまま辺りを見回し
  た。
  暗い。電気が全部落とされているらしく、昼間パソコン仮面がいじっていた博士の研究所の唯一
  のパソコン・・・どうやらネット上のHV団小説BBSに接続されている・・・の前に、博士が
  座っている。
  壁の時計は、深夜三時。博士は普通五時半までおきて、七時半に目覚め、朝飯を食ってから昼飯
  まで机でうとうとする生活を送るため起きていて不思議はない。
  「丁度仕事(何?)も終わったところだ。見回りに行くぞ。」
  どうやら夕食直後に発表されたことを聞いてからずっと失神していたらしい。生栗はため息を付
  いて博士に従った。
 
 
  杖の先にぼんやりと灯をともした博士のすぐ横を生栗は歩いていた。
  すでにHV団の方の見回りは済ませた。これからもっともいきたくなかった、博士の神刺塔には
  いる。反崎の所みたいに訳の分からない生物の鳴き声が響いてくる程度では済まないかも知れな
  い。
  だが、研究区画はあっけないほっどなにもなくとおり抜けた。
  「あれ?」
  と思う暇もなく居住区画へ・・・、最初の部屋から明かりが漏れている。
  「カーネル・・・入るぞ・・・」
  低い声で静かに呟くと、はかっせはゆっくろとドアを開けた。
  かちゃり。
  扉を開けると、明かりがこうこうとついた殺風景な自室で、カーネルが一人で机に座っていた。
  ごろごろと転がるからの酒瓶と鼻を突くアルコールの匂いで、大量に酒を飲んでいることは解っ
  たが、その顔は不気味なほど青白く、服にも微塵の乱れもなく、酔っている様子が少しもなかっ
  た。
  「博士・・・」
  普段の凛とした様子とは何処か違う、でも何が違うのかよくわからない瞳でこちらを見据えなが
  ら、カーネルは呟いた。
  「眠れない、のか?」
  「はい・・・。いくら酔っても、どんなに眠くても、夜が来るたび・・・あの最後の夜を思い出
  されて・・・あいつのことを想うたびに・・・私は・・・私は・・・情けない、情けないの
  に・・・」
  「もういい。それ以上言うな」
  カーネルの独白を途中で遮った博士は、いきなり鎧状の手の爪をカーネルの首の血管に突き立て
  た。
  「わっ!博士何を!」
  「静かにしろ生栗。単に我が内にて精製した薬品、今回は眠り薬を爪の中者間から打ち込んだだ
  けだ。眠れ・・・カーネル。」
  「すいません・・・私は・・・」
  そう呟くと、カーネルはゆっくりと瞼を閉じ、眠り・・・まるで目をつぶって激痛に耐えている
  ような顔だったが、それでも眠りは眠りだった・・・に落ちていった。
  瞼を閉じたときに、目から溢れこぼれたもの、涙を見て、生栗は少しさっきのカーネルの表情の
  意味が解ったような気がした。
  「くそっ。」
  博士は不機嫌そうに唸ると、次の部屋へと足早に歩いていった。
  「わっ、ちょ、ちょっとまって。」
  ハッハノも追いかける、
  「次の部屋までのしばらくの間、墓瀬名ぶつぶつと唸り続けた。
  「結局、我が輩には居場所を与えることも、力を与えることもできる、だが、心は、どうしよう
  もないのか?いや、我が輩とて泣く代わりにメスをふるい、悲しむ代わりに設計図を引き、落ち
  込む代わりに新理論を構築してきた真の狂科学者。狂気を力に科学を動かし、いつかきっ
  と・・・」
  いらだちに任せてどすどすと早歩きし、二、三の部屋を素通りしてしまった博士。
  生栗は、博士を見失わないようにしながらそれらの部屋ものぞき込んだ。
  マッシュ・茸が、アラネスが、蛇姫が・・・少なくとも今は割と幸せそうに眠っている。
  (博士はそれでも、一人でも自分の科学をふるうべきものいるかぎり、ああして狂い叫んでいる
  のかな・・・・・・)
  そして、行き止まりの部屋に来た。
  無言で博士は戸を開ける。底には、フェンリルとイカンゴフが仲良く一緒に寝ていた。
  イカンゴフが時々表情を変えるものの、何とか静かな眠りを保っている。
  そんなイカンゴフの長い髪を、髪と一体化した触手を、博士は不器用に撫でた。その八つの目に
  普段のぎらつく狂気はなく、むしろ有るのは父親のような優しさ。
  生栗は、その余りの変化に、少し驚いた。
  驚いた拍子に、フェンリルに少しふれる。
  「ふにゃ、博士・・・?」
  何だか狼と言うよりは猫のような声で、フェンリルは寝ぼけた。そして、生栗に・・・抱きつい
  た。
  ぼきぼきぼき、べきっ、ぽきん。
  「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!」
 
  結局・・・全員起きてしまった。
  今回の損害・生栗磁力全身複雑骨折。イカンゴフの手術によって命を取り留めるも、博士がなん
  かした恐れアリ。
  「だって、面白そうではないか?ジシャクイガグリ」
  「こ・・・こいつは・・・」
  生栗はさっきの感想いっさいを撤回しようと心に決めた。

戻る