三大軍団地球最「悪」の決戦 返信
許可が出たので(悪たわごと)。
状況、葬送日記四章「狂詩独唱」からスタート。
とする。
アナザーストーリー・1 返信 △ ▽
「何無茶してやがる!エア!」
クラヴィの叱責が飛ぶ。
唐突に無断出撃し、親衛隊の隊長クラス二人に突っかかっていくなんて、今の瑠璃の状態から考えれば無茶以外の何者でもない。
「どうして・・・どうして・・・?」
葬送曲に機体ごと抱えられたまま、手足を丸めてエアが呟く。
「畜生、一体なんだってんだ!」
今の行動といい、この状況といい、ただごとではないことは解っている。
解っては、いるのだが。
「んっきゃっきゃっきゃっきゃっきゃっきゃっ!!!」
唐突に、狂気の笑いが戦場に響き渡った。
「な!?」
クラヴィは驚愕した。それは、先程吹き飛ばしたはずの機体が全くの無木津だったことではない。それくらいならまだいい。
クラヴィはその声に聞き覚えがあったのだ。
親衛隊の中でも「最強」と「最悪」を兼ね備えると言われる外道。
「てめえは・・・カオス!!」
かつての、エアを救い出した戦いが脳裏に鮮烈によみがえる。
(そうか、エアはこのせいで!)
地上で、博士のまたその声を聞いた。
「これは・・・まずいな。」
こんな変な笑い声をあげる奴は、まず確実に一人しか居ない。あいつガア羽手だというのなら、今の手勢の状況では、クラヴィ団もろともに殲滅されてしまうおそれすらある。
周囲の状況を確認する。カオスはどうも上でクラヴィと闘っているらしく、他の団員もわっと現れた親衛隊通常部隊にかかりっきりになっている。
(チャンスだな)
そう判断すると博士は杖を取り出してコクピットを空け、地面に投げて突き刺した。
「新型のお披露目としては、今いちのタイミングだが。」
「ああ、そう言う君は・・・だれだったっけぇの?ああ、最近Z様にたてつく馬鹿が増えたって話だけど、その片割れのほうなぁの。」
ふざけたような調子で、カオスは言う。
「今日はかおすの玩具返してもらいに来たぁの。君みたいなザコ興味ないけど、今すぐ君の彼女たちかおすに全員くれるっていうなら、許して上げるかも知れないぃの。」
「今回の任務は敵対勢力の殲滅だぞ、貴様、命令はどうした?」
「そぉれは牙喰丸君の仕事なぁの。」
傲慢な会話を続ける二人の親衛隊に、クラヴィは反吐がこみ上げる思いだった。全身が燃えるような怒りに包まれる。
「てめぇ・・・・一度はまんまと獲物とりかえされた割には余裕じゃねえか!!」
一気に葬送曲を加速させ、斬りかかる。
「ふふぅん。」
それに対して、カオスは何の反応もとろうとしない。だが。
ばきゃぁぁん!
「っがっ!?」
いきなり目の前の空間から何の脈絡もなく出現した、腐敗した鴉のような化け物が、葬送曲を殴り飛ばした。その拍子に取り落とした狂詩曲を、化け物がひったくってカオスに運ぶ。
「ちょっと持っててぇの。ただでさえ弱いクラヴィ君がこれ邪魔で更に弱くなったらかおすつまんないぃの」
カオスの侮辱的な発言は、動転したクラヴィには聞こえていなかった。慌てて叫ぶ。
「な、何だ!?」
「式神なぁの」
よく見ると、加藤保徳の指が何枚かの呪符を挟むように持っている。
「式神だと!?VRをふっ飛ばすほどの、か!?」
カオスがにいっと笑うと同時に、次々とVR並の大きさを持つ化け物が現れて葬送曲をぶちのめす。
「がっ!」
「ごわっ!」
「げほぉっ!!」
はじき飛ばされるたびにコクピットの中を振り回されるクラヴィ。必至に機体を操るが、式神は全く唐突に現れる。
「糞っ!」
剣を振るい、目の前に現れた巨大なドクロのような式神を切り払う。
だが、すぐ倍以上の数の式神が現れて四方八方から攻撃を仕掛けてくる。
「きゃきゃ・・・いつまで楽しませてくれるかぁな?」
嬉しそうにカオスの目が細められる。
「かおすは無限に式神をだせるぅの。物理法則に縛られて生きる下等生物に、倒せるわけがないぃのに・・・きゃきゃ、お馬鹿で可愛いぃのね、ク・ラ・ヴ・ィ・ー・ア・・・」
自分の名前を呼ばれると言うことに、これほど嫌悪を感じたことはクラヴィはそれまで無かった。神経に液体窒素をかけられたような、痛いほどの悪寒が走る。
「てぇぇぇぇぇぇぇいっ!!」
全身の火器を総動員して式神を蹴散らし、気合いと共に「凱」モードに変身、Aフォースキラーにすらダメージを与えた精神エネルギー弾を発射する。
「これで・・・どうだぁ!アストラルバスターッ!!!!!」
大爆発。
Aフォースキラーに対してはなったときより、合体した分更に威力が上がっている。
これを喰らえば、Aフォースキラーとて確実に蒸発したであろう一撃。
「やったか!?」
核爆発のようなキノコ雲を見やると、狂詩曲を抱えた牙喰丸の機体、カイナに向き直る。
「次はてめぇだ・・・エアは絶対渡さねえ!てめえらみたいな変態にはな!」
凄まじい剣幕で「凱」モードの精神エネルギー消費を克服し戦闘態勢をとるクラヴィに、興味なしといった様子で牙喰丸は素っ気なくいいはなった。
「弱き者に価値はない。もちろん、我と闘うことなどかなわぬ。」
「何だと!?」
「愚か者よ・・・」
「ん~~~~~~っっっきゃっっきゃっきゃっきゃっっきゃ!!!」
「な・・・」
背後から再び響いた悪魔の笑い声に、驚愕と共にクラヴィは振り返る。
そこにあるのは、まるで無傷の加藤保徳と、披露した様子も魅せないカオスの姿。
「馬鹿な!?精神兵器は幻想空間では防御できないはず!!」
「確かにそうなぁの。」
笑いながら頷くカオス。クラヴィの驚愕が心底嬉しくて仕方がないらしい。
「でもね、かおすも精神エネルギー使って防御したぁの。精神エネルギー量の勝負で、かおすに勝てると思ったぁの?んきゃきゃきゃきゃきゃきゃきゃ!」
手足をバタバタさせて笑うカオス。
「驚いた?驚いたでしょ?じゃ、もう君はいらないぃの」
笑顔で言うと、カオスは加藤保徳の掌の上にサイズこそ小さいが葬送曲とそっくりの人形を手品のように出した。
「人形使った呪術って、ポピュラーだよぉね?」
一息に握りつぶされる人形。同時に・・・葬送曲もそっくり同じ形につぶれる。
一撃で全機能が停止し、地上に落下していく葬送曲。
「んきゃきゃきゃきゃ、知ってる?人間って、最初から絶望するより、希望が潰される方が綺麗な顔するぅの。・・・そのために、わざわざ倒せるかも、って希望を見せて上げたんだからね、解ってるぅの?」
もう言うことはない、といった様子で葬送曲から目を剃らすと、すすっ、とカオスは狂詩曲・・・エアに寄り添った。
「ようやく帰ってきてくれて嬉いぃの。どうだった?どうだった?目の前で希望が壊れる様子って。綺麗だよぉね?美しいよぉね?んきゃきゃきゃきゃきゃきゃきゃ!!!!」
カオスの笑い声を、エアは、ただ呆然と聞いていた。
聞くしか、出来なかった。
アナザーストーリー2 返信 △ ▽
声にならない悲鳴が、戦場に交錯する。
それぞれ違った声だったが、呼んだ男の名は同じだった。
「クラヴィーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!」
「あ・・・」
地面に叩き付けられたショックで気を失っていたクラヴィは、通信機から響く声で正気を取り戻した。
「くっ・・・」
機体の状況を確認するが、反応すらしない。完全に機能を停止している。
「な、何故・・・」
対呪術装備として、霊的なつながりを断っておいたはず。なのに何故。
「お馬鹿なぁの。」
カオスが楽しそうに笑う。
「理屈で、かおすの呪術は止められないぃの。呪術とは、本来そう言う者ではないぃの。錬金術じゃあるまいに、こっちの精神の問題なんだから、かおすが壊れると思った者は必ず壊れるし、カオスが防げると言えば必ず防げるぅの。」
無茶苦茶である。だが、非科学的とはそういうものなのだ。
「君一人が強いなんて、誰が決めたぁの?誰が強いか弱いか、誰が世界を動かす権利があるか・・・それを決めるのはかおす達親衛隊と、Z様以外に無いぃの。」
「言うなれば、神だな。我等は。」
牙喰丸が誇らしげに言う。
「絶対、ってこと。」
笑いながら異次元空間にエアを放り込むカオス。
「下らないお涙ちょうだいの説得って、聞きたくもないぃの。」
「マスターッ!!」
「やらせぬぞ!」
主の危機を悟ったミルヴァとアクロスが突っ込んでくる。
「マ・・・」
大破した葬送曲「翼」に円舞曲の手が届きかけた、その時。
すぱっ。
と綺麗な切り口を見せて、その手が落ちた。
「エ・・・」
コンマ一秒後、二機そろってバラバラに分解される。
かちん、と音をさせてカイナの巨大日本刀がさやに収まった。居合い抜きをしたのだとしたら、その速度は・・・もはや考えたくもない。
「弱い、弱すぎるな。」
不満ありありに、牙喰丸。彼らの任務として「裏切り者の処分」もあったので、実行しただけ、といった様子である。
「所詮は道具か。」
「う・・・」
折角人間になりかけている心を、土足で踏みにじられる。
「消えよ」
むき出しになったコクピットに、その中のアクロスとミルヴァに、ブグ達が次々と脇差しを突き刺す。
「じゃ牙喰丸、残りは任せるぅの。かおすは弱いのいたぶるの好きだから。」
「ふん、そういうわけにもいくまい。」
もはや興味なしといった様子で、通常部隊と闘う他のクラヴィ団を見る二人。
「この分だと大したことは無さそうだな。このまま一気に潰すぞ」
「こんなんに苦戦するなら、怪人軍団なんてもっと大したこと無いぃの。んきゃきゃきゃき「くははははははははははははははははははははははははははは!!!」
「!!」
カオスの耳障りな笑い声に、さらにやかましい笑い声が被さった。
アナザーストーリー3.5 返信 △ ▽
そのころ、神刺塔に潜入したトルヴェールは・・・迷っていた。
「一体、なんなんだこの建物は・・・」
どう考えても、外から見た体積より中が広い。
「建物の中の空間をゆがめているのか・・・」
だが、それにしてはその手の空間特有の揺らぎが存在しない。
(悪の博士が次元工学に長けているのは知識として知っていたが、ここまでとは正直思っても見なかったな。)
だが、「揺らぎがない」のと「わかりやすい」のは全くの別次元で、信じられないほど通路は滅茶苦茶な配置になっていた。あげくに、所狭しと実験道具や作りかけの兵器や培養槽が積み上げられている。
(悪の博士が整理整頓が苦手だというのは意識として知っていたが、ここまでとは正直思っても見なかったな。)
少しだけ白い甲殻で覆われた顔をゆがめて笑う。
そうこうしているうちに、全く唐突に普通の廊下から広い部屋に出た。
「か、格納庫ぉ?」
確かに、そこは格納庫だった。だが。
「確か、突入したときに別の所にあるのを確認したたはず・・・」
さらに、こんな奥の方に格納庫を造って、出口もないのにどうやって中の機体を発進させるつもりなのかも解らない。だが、トルヴェールにはそんなことを気にすることは出来なかった。
「これは・・・VR獣!?」
格納庫には、十機ほどのVR獣がハンガーデッキに固定されていた。それも、どれもこれも見たことのないタイプである。
「新型・・・か!!まだこんなに・・・」
「とーぜんのことまぼよ」
「うわあっ!!」
いきなり耳元でささやかれ、飛び上がるトルヴェール。慌てて振り向くと、そこにはぽてっとしたたらこ唇の、くりっとした黒い瞳の、まるまるとした白い顔。ひれをひこひこと動かしている。
「くっ・・・まんぼうか!」
慌てて身構えるトルヴェール。
「そうまぼよ。」
それに対して、まんぼうは全く余裕だ。まあ、構えようにも手に当たる胸鰭は短すぎるし、胴体に対して直角にのびたひれの下の方でちょんと立っているので、そちらも構えようがないだけなのかも知れないが。
「この新型VR獣は、はっきりいって強いまぼよ~~~。お前等なんか多分目じゃないと思うマボ!えっへん!」
別に自分で作ったわけでもないのに胸を張るまんぼう。
「そんなら・・・この場で壊させてもらうぜ!!」
「不可能マボね。それとも、このまぼに勝てるつもりマボ?」
殺気立つトルヴェールにも、なんら臆することのないまんぼう。この辺の態度のでかさは兄弟共通らしい。
「な・・・舐めるなぁ!!!」
一見弱そうな白身魚に好き勝手言われ、トルヴェールは逆上した。赤い光を集中させた拳を、ぷよぽよな腹に叩き込む。
むにゅ。
「あ・・・!?」
全然聞かなかった。それどころか、
「ぬ、ぬけない!!」
「白い甲殻皮膚、赤い光、鎖状の武器・・・まるで「ガ」のようにも見えるマボが、正体は一体何なのマボかねえ?遺伝子改造?憑依強化?ま、いいまぼ。」
そう一人ごちると、どう考えても鳴りそうにないひれを人間が指を鳴らすようにくにくにと動かした。
どがぁぁぁん!
「ぐぁ・・・」
一瞬後、トルヴェールの後頭部に凄まじい衝撃が走る。さらに続いて全身に同じ衝撃が叩き付けられるが、最初の一撃で既に脳しんとうを起こしたトルヴェールはひくひくとけいれんするだけだった。
にまにまにま、とたらこ唇笑いをする白身魚。
「『いくら皮が固くても、中身に与える衝撃は防ぎきれないもんなんだよ』まぼ。まぼのように中身まで・・・まあいいまぼ。アンボ13,外のほうに回っていいマボよ。」
ぶぶぶぶ、とうなりを上げてVR獣たちが転送されていく。
そして、アンボ13と蠍師匠も、表へ出た。
「・・・とはいえ・・・クラヴィ団に勝てても親衛隊に勝てるかどうかは別問題マボけどねぇ・・・」
というまんぼうのためいきを後に。
アナザーストーリー4
「くはははははははははははははははっ!!!」
「この笑い声は・・・悪の博士か。クラヴィーアなどに手こずるザコが、何のようだ?」
どこからともなく響き渡る悪笑いに、眉をひそめる牙喰丸。
「そんなにかおすに遊んでほしぃいいの?だとしたらかおす、とっても嬉しぃの。」
「ふっ、馬鹿者が!!」
やはりどこからともなく、博士の声が響く。
「科学は、壁を乗り越えて常に進歩する!進化せし我がVR獣の力、以前と同じと思うなよ?」
「へぇ・・・どう違うぅの?」
「こう違うのさ、この変態色餓鬼!!」
白色に近いイエローの閃光が、葬送曲の前に立ちふさがった!
「っっちぃ・・・」
完全に燃え尽きた鎌を投げ捨てるダークガイスト。クラヴィからもらった
「二本目」だが、事実上無尽蔵に湧いてくる親衛隊相手には長持ちしなかった。
「駄目ね、エネルギー切れ・・・」
瑠璃のつぶやきにも、絶望の色が濃い。
「それはこちらも同じ事だな。」
交響曲の槍も、もう冷気を放ってはいない。
怪人軍団を相手にしたうえに、親衛隊のVRと式神はほぼ無尽蔵にわき出してくる。
いくらエネルギー消費が少なくても、無限大のエネルギーでも持っていない限りさばききるのは無理だ。
数千機のVRが武器を構え、カオスの式神が牙をがしゃがしゃとうちならす。
「く・・・」
ぱかぱっ、ぱかぱっ、ぱかぱっ・・・
「?」
「い、今、ウマの蹄の音がしなかったか?」
親衛隊のVRも周囲を慌てて見回している。
ぱかぱっ、ぱかぱっ、ぱかぱっ・・・
「や、やっぱりしてる!」
「!・・・あれだ!」
「な・・・」
ヴィオルの発見した「あれ」に、その場にいた全員が目を丸くする。
「ウマ?麒麟?」
どちらとも言えないような、とにかく明らかに生物である「それ」に、VR獣がまたがっている。
「ふっ・・・行くぞ風雲ドドンゴ!」
「ひひひーん!」
いななく「風雲ドドンゴ」それに命令する、黒い機体に赤マントと双角が目立つVR獣は・・・ノースサタムジン。
「超級覇王電影だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんっ!!!」
回転するエネルギー体と化すノースサタムジン。それを蹴り飛ばす風雲ドドンゴ。
そのまま一気に、親衛隊の中を駆け抜ける!
一瞬、そのままの姿で空中に固定されたように制止する親衛隊。
「ぶぁくはつ!!」
蠍師匠のかけ声と共に、宙に咲く数千の光の花。
「ふははは、今日のわしは完調じゃ!昔以上に体が動くぞ!」
鷹笑う蠍師匠に、式神の群が飛びかかる。
「あぶな・・・」
「ぎしゃぁぁぁぁぁぁ!?」
寸前まで迫った式神に、横から別の怪物が食いついた。半透明のクラゲのような「それ」は、触手を伸ばして次々式神を飲み込んでいく。
「よし、よくやったブルーメ。そのまま行け!全円盤生物は敵式神を撃滅せよ!」
凛とした声でカーネルが命令を飛ばす。黒マントに山高帽、ビームステッキに水晶玉を持った新型VR獣「ブラック指令機」の対ビット兵器「円盤生物」が次々式神を駆逐していく。
「そーれいくぜ、ナノマシン・ストーム!」
地面から現れたキノコのような姿のライデン・マッシュ茸専用VR獣「マシュライデン」が、肩のタンクに詰め込まれたナノマシンをぶちまけた。あっと言う間に浸食されぼろぼろになって落下する敵。
「おーっほっほっほ!!」
背中の巨大な花から触手を伸ばし、敵を「捕食」するみみずおかまの「アストロモンボック」。
突然現れた新たな敵に、親衛隊が攻撃を集中する。
だが、飛来する数千数万のミサイル・ビームは全て立ちはだかった巨大な金色のVR獣の装甲に弾かれた。
「博士のご命令だ。今は貴様等の殲滅より親衛隊への攻撃を優先する。」
パイロットのアラネスがそう言うと、VR獣「キングジョランテ」を五機の円盤に分離させて突撃し、装甲の堅さだけを武器に体当たりで敵を叩きつぶしていく。
「とはいえ、別にあなた方を助けるってことじゃないですからな。」
そういうと、全身が刃の翼で作られた鳥型VR獣「ギエロムド」で鞍馬鴉が敵を切り刻む。
「博士が言うにはねえ、『この我が輩に助けられてしまうという屈辱を存分に味わうがいい』ってさ。」
さっきぶっとんでいったはずのフェンリルが笑う。学習したらしく足の爪をスパイクのように使い、空振りを防止している。VRを宇宙まで投げ上げ、その辺の小石を投げてすら式神を撃墜する。
「そーゆーこと。とっとと逃げたら?」
気楽に、ソドム。彼女本人は特にパワーアップはしていないようだ。口は軽いが、結構苦戦している。
「すまんな生栗、ソドム。お前達用の強化兵装が間に合わなくて。」
博士の替わりに、とカーネルが謝る。
「いや、いいんだ。・・・もっと悲惨な奴もいるしな。」
そう言って生栗が見た方向には・・・完成すれば身長四百メートル、史上最大級のVRになるはずが予定外の事態に、「頭だけ」で出撃した三面六臂といっていいものか迷うVR獣・・・キャッツ・ガイ三人が乗り込む「ガラオーン」があった。
「くっ・・・流石にやるな!」
「それまで直接戦闘に参加せずに様子を見ていたライシスの「レイヴン」が降りてくる。
「だが、所詮三十分しか動けない欠陥兵器!いつまで持つかな!ってうわぁぁぁぁぁ!!」
いきなり、テンエイティに棘だのひれだのけばけばしい飾りを施したVR獣が飛びかかり、レイヴンに火炎を噴射した。
「ちいっ!」
一刀両断に切り捨てるが、見る見るうちに再生する。
「何っ!」
「それは私の「マーザラン」の自動護衛機「マザリューズ」私の機体の「マザロン・ダンス」が全VR獣にエネルギーを補給し続ける限り、自己再生を続けます。」
涼やかな声と共にイカンゴフは告げる。VR獣の構造的欠陥は、克服されたと。
「なら、お前を先にやるのみ!!」
飛びかかるレイヴン。だが、マーザランの両目と肩のレンズから放たれる熱線が逆にレイヴンをはじき飛ばした。
「・・・私とて、何時までも無力ではありませんよ。」
に、とカーネルが笑い、号令する。
「そういうことだ、かかれぇ!」
「ちいっ・・・」
凄まじい形相で眼前に立った黄と黒に塗装されたしなやかなデザインのVR獣、クラヴィ団攻撃の要として特にクラヴィ団との戦闘経験の豊富な蛇姫に博士が下賜したエレキランをにらみつけるカオス。先程まで無傷だった機体の右腕がちぎれ飛んでいる。
「・・・まだ微調整が必要だな。本当なら一撃でコクピットが消し飛ぶはずだったのだが。」
その隣に立った、フルパワーなら半径二百光年を一撃で蒸発させる力を持つという最終VR獣「Zん」に乗り換えた博士がぼやく。
「空間を跳躍して直接相手の体内に大電力と高熱を炸裂させる、エジソンと同時代を生きた実在のマッドサイエンティスト、ニコラ・テスラ博士が考案しながら資金難で未完成、歴史の闇に消えたスカラー兵器システム・・・これならいかなる重装甲もバリアも精神障壁も無意味。ほんとはそこで倒れてる男のために使う予定だったんだがねぇ・・・」
そういうと、ちらりと横目で墜落した葬送曲を見る。動かした瞳に、カイナとブグ達の攻撃を、右手と一体化したスライプナーで同時に受け止めるゴールド侯爵の「マグマジン」。仮面の下の口が、にやりと笑っているように見える。
「この動き・・・貴様の腕というわけではないようだな・・・」
一目でマグマジンの構造を見抜く牙喰丸。
「お恥ずかしながら。世界中の剣豪の動きと必殺技のデータをインプットしてありますので・・・天龍閃!!Vの字切り!桂切りっ!」
次々と奥義を繰り出し、五機のVR獣と互角に渡り合う。
「むうっ!」
相手の勢いに押され、一旦後ろに下がった牙喰丸は、カオスの乗騎、加藤保徳がわなわなと震えているのに気が付いた。
「もぉぉぉぉぉう、許さねぇぇぇぇぇ・・・」
食いしばった歯から漏れる言葉に表されるのは、鮮烈な怒りだ。言葉使い
も普段の嫌味なねばねばした口調から、凶暴さをむき出しにしている。「ライシスぅ、とっととザコ共と一緒に引っ込みやがれ!!こいつ等皆殺しだ、全員力もVRも奪ってずたずたにしてやる!」
無線機から流れてきたライシスの声は明らかに引きつっている。
「あ、アレをやるつもりか?」
「言わなきゃ解んねえかこのぼけが!役にたたねえくせに俺様に質問する気かぁ!?早く失せねえとてめえも殺すぞ!」
「は、はっ!!」
慌てて通信を切るライシス。
「な、まずいっ!させるな、早く撃て!」
カオスのただならぬ様子に、博士が叫んだときは遅かった。
「地獄へご案内だぁぁぁぁぁぁ!!!」
わめきながら振り回した加藤保徳の腕が、「空間」をうち砕いた。
紫色の異次元空間が、三次元を浸食する。
「しまったぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
博士の叫びが消えるより早く、全員がその紫の闇に飲み込まれた。
アナザーストーリー5
「あっ、あれっ!?」
慌てて生栗はあたりを見回した。ふと気が付くと、気色悪い紫色とオレンジ色と黒がマーブル模様にいりまじった何とも言えない空間に立っていた。確かに、一瞬前まではソドムのコクピットに乗っていたはずだったのに。
「え、ち、ちょっと・・・」
(此処はドコだ?)
見回しても、自分一人しか居ない。
「ソドム~?、博士~?、カーネル~?、イカの姉ちゃん~?、蛇姫の姐ぇ~?、鞍馬鴉さん?みみずおかまさん?ゴールド侯爵閣下?アンボ13さん?まんぼう?師匠?マッシュ茸さん?キャッツガイさん達、どこですかぁーっ!?」
叫ぶも、返事は無し。
暫く考えた生栗は、ものの試しにと叫んでみた。
「アラネスって、似合ってない名前の人~~~~~っっ!!!」
むなしく声がこだまする。
「駄目か・・・」
殴りに来ると思ったのだが。
「・・・お馬鹿なぁの?」
「うぎゃあああああああっ!?!?」
何の脈絡もなく、唐突に目の前にカオスが「出た」咄嗟に飛びずさる生栗に、にやにやとカオスは笑いかける。機嫌が直ったらしく、いつもの粘つくように甘い声だ。
「くそっ、ここは・・・」
「皆まで言わずとも、説明はしてあげるぅの。ここは、カオスの異次元空間「幻夢空間」。ここには、ありとあらゆる「科学をわずかでも含んでいる兵器は持ち込み不能なぁの。だぁかぁらぁ、VR達はこの空間の外にはじき出されたのぉね?解る?」
「ああ。・・・で、他の連中はどうなったんだ?」
にやりと笑うと、カオスは沢山の呪符を投げた。空中に張り付いた呪符は、それぞれ違う映像を映しだす。
「ああっ!?」
それぞれの映像の中にカオスが居て、一人一人のあの場にいた人間と闘っていた。否、一方的にやられていた。確かにクラヴィとかは人間にしては強い。だが、不条理レベルの強さに達したカオスと闘っては手をふれる前に吹っ飛ばされるばかりだ。
改造人間なら、まだ話は違ったかも知れない。
だが、改造人間達は変身が解けて人間の姿になっている。
カオスのほうは分身くらいはするだろうが、何故変身していないのだ?
「みんなカオスと遊んでるぅの。きゃきゃきゃ、この世界では改造人間も変身できないのぉね。だからとっても楽しい玩具になるぅの。」
す・・・と、カオスの目が細まる。
「もちろぉん、君ぃも。」
ドカンッ!!
「ぐわっ!!」
ひらりと舞い降りて腕に触れた呪符が爆発する。たまらず倒れ込んだ生栗の顔をカオスは先の反り返ってぽんぽんのついた靴で踏みにじった。
「んきゃきゃきゃきゃきゃ、君をいたぶると他の玩具が悲しむぅの、だからとってもお得なぁの。」
「くっ・・・」
誰のことを言っているか、明々白々だった。だが、額に張り付いたもう一枚の呪符が生栗の動きを封じている。
がすっ!がすっ!
「あふぅぅぅぅぅん・・・・」
生栗を踏みつけながら目を閉じ、頬に手を当ててくねくねと気持ちよさそうに身をよじるカオス。踏まれる痛みよりその気色悪さが生栗には嫌だった。
「く、糞離せこの変態野郎!」
「そうだよ、カオスは変態なぁの。」
にこにこと笑うカオス。
「だから、仕方ないじゃない?かおすはこれが楽しくて、楽しくて仕方がないぃの」
何を言っても無駄、といった様子で、晴れ晴れとカオスは笑った。
「ぐぎゃあああああああっ!?」
唐突にカオスが叫んだ。
「え!?」
驚いた生栗が画面を慌てて確認する。
「あ・・・!」
その瞬間、生栗は苦境にも関わらず笑い出したいような思いに駆られていた。
蠍師匠、いや@ス@ー@ジ@が反撃したのだ。考えてみれば、彼の戦闘能力は変身を解いていても微塵もおとりはしない。
「はっはっはっはっはっはっは!思い知ったか!」
@破@驚@の構えのまま@ス@ー@ジ@は豪快に笑った。
「ぐぅああああああううっ!!」
バキーンっ!!
紫色の空間が、割れた。
アナザーストーリー6 返信 △ ▲
「っちっ、ちょっと油断したなぁの、でも、今回はカオスの勝ちぃだぁよぉぉぉっ!!!」
いきなり現実空間、ソドムのコクピット内に戻りまだ混乱している生栗の耳に、またけたたましくカオスのわめきが重なる。
普通なら続いて博士が怒鳴るだろうが、今日に限っては聞こえない。
「絶対返さないよ、この二人はもうかおすの玩具なぁの!!」
何だって!?
生身の人間には本来耐えられない次元移動を繰り返して、もうろうとしていた意識が一辺に醒めた。
慌ててカオスから贈られている通信の映像を確認すると、コクピットにはカオスの他にイカンゴフとフェンリルがいた。額に、動きを封じるらしい呪符。
それを見て、博士は奇妙なまでに冷静に、驚くべきせりふを言った。
「ふん、返してもらう必要はない。」
「なな、何!?」
「博士ぇ!?」
敵・味方から驚愕の声があがる。聞いていたクラヴィーアも気色ばみ、アラネスなど今にも博士につかみかからんばかりだ。フェンリルもイカンゴフも、金色の瞳をさけんばかりに見開いている。
そんな中、悠然と博士は言った。
「なぜなら、力ずくで取り返すからだ!」
一瞬ほっと仕掛けた味方と、何かののしりかけた敵は、次の博士の言葉に再び驚愕した。
「もっとも、その必要もないだろうがね」
「何っ!?」
「イカンゴフよ・・・フェンリルよ・・・」
周囲のいっさいを無視し、博士は呼びかけた。
「我が輩は信じておる。お前等は強い子だと。我が輩は信じている。お前達はそんな変態なぞ打ち倒して我が輩の元に返ってくると。分かるな、信じているのだ。よいな!!」
断言する。
「けっ、黙るぅの・・・」
渋柿でも口に含んだかのように顔をゆがめ、カオスはVRごと消えた。
「また会おう・・・」
牙喰丸も消える。
「は、博士・・・」
おそるおそる生栗は声をかけた。不気味なまでに、Zんは沈黙を保っている。
「・・・・・・」
「博士・・・」
「ぐぅるぅぅごぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
こらえきれなくなったかのように博士は吠えた。吠え続けた。
「おおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!」
焼けた大地が鳴動し、小石がぱらぱらとはねる。たっぷり三分間吠えに吠えると、急に博士は大破した葬送曲に振り返った。
「やい貴様クラヴィーア!!まさかこのままやられっぱなしで終わる気はないだろうなぁぁ!!」
「ふふふ・・・予定通りですね。」
その様子を遙か彼方から見つめ、いつもと変わらない無表情な笑顔で、灰は笑った。
そうして、後ろに立つ影に振り返る。
「貴方に、協力してもらいますよ。」
影・・・HV団四天王、ラディル。本来なら、親衛隊の企みに参加するはずなどない人物。
「いやなら、別に契約を破棄してもいいんですよ?ただし、こちらも仕事ですから、その場合ヴィランだんとテュリィさんは帰ってきませんけど、よろしいでしょうか?」
あくまで、慇懃に尋ねる灰。
ぎりり、と奥歯を噛みしめる音。手も握りしめられ、爪の食い込んだ掌に血がにじんでいる。
「よろしいですね?」
頷く以外出来ないラディル。それを見ても、鉄面皮な灰の微小は変化しない。
「では・・・『計画』の始まりです。」
「悪逆戦線ヘルバーチャOVA・第二期シリ-ズ
第一巻
三大軍団地球最「悪」の決戦 終。」
次回に続く!!!