つなげる力・・・
「お帰りぃ!」
「お帰りなさい、クラヴィ。」
基地に帰る。仲間が出迎えてくれる。
「お帰りなさいませ、マスター。」
「も、もうちょっと早く帰ってきて欲しかったのう。」
仲間。彼を想う、自ら彼と共に闘うことを選んだ仲間。
勝ち気なエア。
マイペースな瑠璃。
忠実なミルヴァ。
寄り添おうとするアクロス。
「ふっ・・・」
クラヴィは笑った。
(なんてこった、まるで、)
まるであの男の「家族」
基地に帰るまでの道筋で、クラヴィは「あの男」と出会っていた。
「ああ!?」
最初見たときは、目を疑った。
巡航速度の葬送曲とほぼ同じ早さで、博士が奇妙な生き物にまたがって飛んでいた。空中を走るように飛ぶ、まるでバッタと馬の合成生物。
背中に、遺体収納袋。蝗軍兵の手だの足だのがはみ出している。
そして、博士の金属質の仮面が、赤い。八つの目から溢れる、血涙が染めている。
呆気にとられていると、その仮面がこちらを向いた。
VRの装甲を貫き、コクピットまで直に声が響く。
「降りろ!!クラヴィーアぁ!!」
その剣幕に、思わずクラヴィは操縦桿を引いていた。
「・・・何の用だよ?まっさか、この状態で闘うつもりじゃないよな。」
「舐めるなよ。我が輩がVRなどという脆弱な兵器に頼らねば戦えないとでも思っているのか?。」
唸る博士の背後に、一瞬巨大な、VRより更に巨大な生物の影が浮かんだような気がした。長大な尻尾、蝙蝠のはね、というよりは中国のジャンク舟の様な羽、鉛筆を何本も突き立てたような棘。長めの首に生えたひれ、鋭い爪の生えた強い手足、恐竜のような、それでいて博士の仮面と同じ三本の角と八つの目をもつ・・・
人知の及ばぬ何者か。
「んな!?」
クラヴィは目をこすった。幻覚ではない。一瞬だが確かに、それは存在していた。そして、それが現れたとき、博士自信の姿はかすんでいた。
「・・・真の正体を持つ、というのは悪のたしなみだよクラヴィーア。だが、確かに今は闘うつもりで来たのではない。」
そういうと、博士は遺体収納袋を撫でた。
「子等の・・・死体の回収だ。我が輩の戦いとはいえ、解っているとはいえ、覚悟しているとはいえ・・・悲しい・・・ことだ・・・」
ばかん、と音を立てて、博士の仮面が外れた。普段の変身と違い、煙が出ず、直接。
現れたのは、頬に涙を流した、すこし眠そうでぼんやりした感じの、優しそうな高校生ほどの少年。
「クラヴィーア、もし、お前の「仲間」、瑠璃とかエアとかミルヴァとかが死んだら、やはりこういう思いを抱くか?」
「ああ。当然だ。てめえが考えているような関係じゃねえ。仲間、だからな。」
いきなりの変化に度肝を抜かれかけたクラヴィは、そのことへの不満から少しぶっきらぼうに答えた。
「それは、我が輩も同じ事。」
博士が呟く。
「そして、その思いを忘れはしないだろう?」
無言でクラヴィは頷く。それを見て、満足げに博士は続けた。
「それが当然だ。人はみな、過去の積み重ねという歴史の上に立って生きている。そして、それを忘れることも捨てることもできない。だが、過去に戻り、都合の悪いことを変えることもまた出来ない。そんなことを、過去を無視することをするのは、獣の所行。逃げることは出来ないのだ。その上に、せめて未来を積み上げるために。未来は、そうしてしか積み上げ得ることは出来ない。」
「・・・わざわざ説教しに来たのか?」
「いや。我が輩の考えは我が輩の考え、貴様の考えは貴様の考えだ。押しつけはしない。ただ、言いたかっただけだ。」
ふ・・・と笑う。
クラヴィも笑い返す。
「だから、闘うんだろ。」
「そうだ・・・そうだな。次こそは我が新型VR獣で、貴様等を恐怖せしめたあげくコクピットごと押しつぶし人間ジャムにして検死官に「ミンチよりひでぇや」と呟かせてくれるわ!!!くははははははははは!!!」
笑いながら仮面を装着し、バッタウマにひらりとまたがると、超高速で博士はぶっ飛んでいった。
「・・・へっ!」