悪逆戦線HVドキュメント・幸せ家族計画(笑) 返信  ▲ ▽
そういうことで・・・時間的にはカマドウマ騒ぎのすぐ後。
先がどうなるか、オチがどうなるかも未定。

p02-dn03hasimotob.aomori.ocn.ne.jp 悪の博士 2001/08/17金01:00 [251]
._ 零・博士の苦悩 返信  △ ▽
年頃の少女にしてはあまりに少ない荷物を持って、生栗家?に移る愛娘カーネルの様子を、悪の博士は蛇姫と共に監視カメラで眺めていた。
手には、その娘からの手紙が握られている。
「命を与えられたご恩にまだまだ報いられぬ内のこのたびのご高配、千の軍功と万の勝利もて報いましょう。ジーク・ハイル!」という文で結ばれる、いつも通りの堅苦しい感謝状だが、これを博士の渡して走り去ったときのカーネルの表情も、今生栗家に向かう様子も、いつになく優しく、幸せそうな物であった。
「幸せ・・・か・・・」
玉座のような豪奢な椅子に座りながら、博士の表情は暗い。
「所詮は、闇の中から抜け出たわけではない。依然修羅の道の中、血を浴び、血を吐きながらの人生の、何時失われるとも知れない、はかない幸せ・・・我が輩が与えられるのは、これが精一杯なのだな・・・」
普段の世界全てを敵に回しても微塵も揺るがぬ自信に鎧われた姿は、どこにもなく、静かに博士は呟いた。ぎりぎりと嫌な音を立てて、うなだれた首の関節がこすれあう。
「博士・・・・・・・」
蛇姫は優しい笑みを浮かべると、博士の首に両腕を絡めた。蛇の頭が舌で博士の金属質な頬をぺろりとなめ、鱗がこすれて感覚のある鎧にくすぐったさを起こさせる。
「あたし達、これでも十分幸せなんだから、さ・・・これ以上なんて、もったいないよ・・・だから、あたし達は博士のために闘うんだ・・・博士と同じ夢を見るんだ・・・子供の言うことを、親は信じな?」

「・・・そうか・・・ふっ、く、くっははははははははははははははははははははははははは!!!」
「ひゃっ!!」
いきなり普段のハイテンションに戻る博士に、毎度のこととはいえ驚く蛇姫。
「くははははははははははははははははははははは!!!」
ねじが飛んだように笑い続ける博士。
三分間笑いに笑い、ようやっと停止した。
「何だかわからんが、よし!無いよりは、まし!そうだ!我が輩がそう決めた!!」
ふっきれたらしい。変だけど。
「さて、となると今後の課題は、この二人だな。」
そういうと博士の眼から光が照射され、空中に二人の改造人間の立体映像を結ぶ。
イカンゴフと・・・フェンリル。蛇姫と同じ金色の瞳を持つ、「三貴子」である。
「イカンゴフはともかく、フェンリルも、かい?」
蛇姫は首を傾げた。
暗い過去を持つ者揃いの、そしてその境遇から博士に救われたが故に改造人間となった悪の博士怪人の中でも、イカンゴフの過去はつらさではカーネルにつぐ。
看護婦だった頃病院内での臓器密売を目撃してしまった彼女は、それを行っていたベズルの下っ端の外道医者共に目を付けられ、口封じのためと称して拉致監禁性的虐待薬物漬け拷問暴行奴隷調教な日々を送らされていたのを、
「我が輩の気にくわない外道に生きる価値はない!」
ということでにベズルのアジトつぶしをやっていた博士とアラネスに救助されたのだ。
それまで自分の上に絶対的に君臨していた悪党を手もなく蹴散らした(上に全身の生皮ひんむいて耳鼻瞼そぎの上生爪むしってどぶネズミに喰わせた)博士を見たイカンゴフは、社会復帰のチャンスを棒に振ってまで博士に付いてきたのだが・・・

彼女は、自ら博士の奴隷を名乗った。誇りも自尊心も失い、ただ博士にすがりついた。

懸命にそれだけはやめさせたが、彼女は今でも博士に度の過ぎた隷属をしている。日夜、怯えている。

無論、博士の本意ではない。

「フェンリルは、真の修羅場を知らない。もし今、意気なりにそれと向き合ったら・・・震えるだろう。恐れるだろう。壊れて、しまうかも知れない。しらない方が身のためなのだが、これからはそうも言っていられないだろう。・・・我が輩のせいだが、な。」
「確かに、それは問題です。予防措置を執るに、越したことはないでしょう。」
「だが、こればかりは体で覚えるしかないのだ・・・」
頭を抱える博士。近日中にもっと下らない、だがそれだけ愛おしい自体に頭を抱えることになると知らずに。

p13-dn01hasimotob.aomori.ocn.ne.jp 悪の博士 2001/08/17金02:54 [253]
._ 壱・花嫁修業血風録「料理をしてみよう」その一 返信  △ ▽
数日後。

びぃーっ!びぃーっ!
けたたましく警報が鳴り響く。
「何事か!?」
博士は怒鳴った。
オペレーター蝗軍兵が慌てて報告する。
「キチキチ!毒ガス警報です!」
「毒ガスぅ!?」
博士は驚愕した。今自分が此処にいるということは、んな危険な実験をしている輩はいないはず。テロ、の可能性も低い。
「発生源は!?」
「厨房です!」
・・・・・・・・・
変な沈黙。
「もういい、警報解除、我が輩が行く・・・」
なんかだるげに、博士は言った。

妖しげな煙が渦巻く中、何の装備もなしに突き進む博士。
「やっぱり・・・」
決してガスのせいではない頭痛を感じながら、博士は想像通りの者を見つけていた。

ガスのあまりの悪臭に目を回して床にひっくり返っているカーネル。

「で・・・何をしとったんだ?」
毎度の事ながら医務室にかつぎ込まれたカーネルは、すぐに目を覚ました。
「はっ、その・・・糧秣の研究を・・・」
「素直に料理の特訓をしていたと言え!」
真っ赤になってうつむくカーネル。
生栗の家に住むようになってから、カーネルは自分がいかに不器用か実感していた。何しろ、今までずっと闘うことしかしてこなかったのだ。急にそれ以外の・・・・・・普通の女の子のようなことをしようとしても、出来るわけがなかった。
「すいません・・・」
呆れ顔で博士はぼやいた。
「一体、何作ろうとしていたんだ?」
「・・・肉じゃが。」
「で、これかい!!」
博士が真空パックされた鍋を突きつける。中に、茶色い、所々に変色した奇怪な色の固まりの浮かぶ、でんぷん質のどろっとした「何か」が満たされている。
・・・肉じゃが・・・らしかった。
試しに食ってみたら、博士すら一時的に気を失ったほどの代物だった。
生身の人間に耐えられるはずがない味。
「・・・日本では、これを作れないと結婚は認められない、って聞いたから・・・」
しかも何か激しく誤解しているし。
「・・・・・・」
「・・・・・・」


p04-dn02hasimotob.aomori.ocn.ne.jp 悪の博士 2001/08/17金04:21 [255]
._ その二 返信  △ ▽
結局、カーネルの料理修行はイカンゴフの監督の元行われ、その間の作戦行動はフェンリルがアラネス及び博士のサポートを受けて穴を埋めることとなった。
他者に者を教えるという行為で愛看護婦の自信を回復させ、かつフェンリルの実戦修練を一緒に行おう、という一石三鳥の作戦である。

ざくっ。
「~~~~~っ!!」
包丁で思い切り手を切り、歯を食いしばるカーネル。既に両手は(何故か包丁を握っている方の手も)傷だらけだ。
「あらあら、まあまあ・・・。ナイフや刀のの扱いはあんなに上手なのに、どうしてなんでしょう・・・?」
流石にイカンゴフも首を傾げる。
「うわっ!!」
ぐぁらんぐぁらん、ごすっ!
棚から落下した大鍋がカーネルの頭を直撃する。
ぼかん!
ガス爆発。
ばしゃーん!
熱湯を被る。
じゅっ!
熱い鍋の縁を掴んでしまう。
博士に「神刺塔内での調理禁止」令を出され、勤務時間だというのに生栗家にわざわざやってきたわけだが、博士の命令は生栗の家に対しては破壊命令と同じ事だった。

「・・・・・・」
ヤナ雰囲気の中で後かたづけをする怪人二人。
「すいません、私がうまく教えられなくて・・・本当、ごめんなさい、役立たずで・・・」
博士が聞いたら頭抱える事必至のセリフをいうイカンゴフ。
「いや、これはどう考えても私のせいだろう?」
味見の段階で三回失神したカーネルがなだめるように言う。
ちなみに、その成果は一応テーブルの上に乗っているのだが・・・
まずそう、というより恐怖を感じさせる匂いと外見だった。

「ふっふっふっふっふ・・・」
「誰だ!」
唐突に聞こえてきた含み笑いに、「戦闘モード」の表情で辺りを見回すカーネル。
「あたしだってば、そんな怖い顔しないの!」
そこにいたのは、前からの生栗の同居人、ソドム。一瞬問題の妹かと思って張りつめたカーネルの気がゆるむ。
「なんだ・・・・貴方か・・・」
そんなカーネルにびしっ!と指を突きつけるソドム。
「ずばり!そんな様子じゃ磁力に食事の準備するなんて夢のまた夢よ!」
「むっ!」
いきなり痛いところをついてくるソドム。
ずいっ、と弁当箱を差し出す。
「その点、あたしはもう完璧!磁力に弁当作ったんだから!」
何故に?今までそんなことしたこと無かったのに。
(答え:なんとなく対抗心)
それはそうと、もう午後二時過ぎなんだが・・・何時食わせる気なんだい?ソドムちゃん・・・

「くっ!」
慌てて弁当のふたを取るカーネル。
・・・・・・・・・
硬直することしばし。
「何よ?何か文句あんの?」
「レトルト食品を袋事入れる奴があるか!?」
人のことは言えないが、突っ込まざるを得ないカーネル。
「だって、こうすれば暖めれるじゃない!」
「料理じゃないだろ、それは・・・」
「なら!」
呆れ顔のカーネルに、びしっと指を突きつけるソドム。
「あんたのアレは料理と言えるわけぇ!?」
「む・・・・・・・・・」
言えなかった。

果たして、生栗家の食生活はどうなるのか?恐怖すら憶えるイカンゴフだった。
だが!

さらなる恐怖は、既に指呼の間に迫っていた!

がっしゃぁぁぁぁぁん!!
「!!」
「な、何!」
折角整理した部屋に、割れた窓硝子がぶちまけられる。
すたっ、と部屋に降り立った影は、小さく。
「な・・・生栗、彩・・・」
だった。



p08-dn02hasimotob.aomori.ocn.ne.jp 悪の博士 2001/08/17金13:54 [256]
._ 参・花嫁修業血風録「女らしくなってみよう!」 返信  △ ▽
(ちょっと注釈。花嫁修業血風録は基本的に大体同時期の出来事で、前後とかは・・・考えてません!気にするな!)

「いいかにゃ?瞳に光を入れて、やや斜め四十五度に近い姿勢、首を微妙に傾げつつそろえた掌をそえて・・・」
「こ、こうか?」
何やらポーズを取るアークと、それを必至にまねしようとするカーネル。
博士から
「カーネルに女性らしい仕草を教えてくれ、成功報酬は新巻鮭一本と本鰹高級鰹節三本、さらに遺伝子改造で一年中実が生るマタタビの木を一本上げようではないか、総帥代理!」
と頼まれたため、現在猛烈なファイトで望んでいるアークだったりする。
「そこで・・・にこっ、にゃ!」
きらりん!と星が散るような、アークの笑み。
「わ、わかった・・・」
まねしてみるカーネル。
「ふっ・・・」
場末の酒場、水商売の女、自らの運命をあざけりながらの愛想笑い、といったイメージ。
「違うにゃ!!」
呆れるアーク。
「こう、もっと元気良く!にゃ。」
「はぁ~っはっはっはっはっはぁ!!」
敵を前にしての、豪快なあざけり笑い、といった感じ。
「もっと陽気に!」
「うふ、うふふ、うふふふふふふふふふ・・・」
ヤクでイっちゃったような笑い。
「もっと気品を持つにゃ!」
「く、く、くくく・・・」
うつむき加減の顔を広げた掌で覆った、悔恨の笑み、といった表情。
「違うにゃ違うにゃ!んも~~~~っ・・・」
このままでは報酬がぁ、と頭を抱えるアーク。
「・・・すまない・・・」
心底申し訳なさそうなカーネル。
「「はぁ・・・」」
重なるため息。
片や
(私は・・・とことんこういうことが苦手だな・・・。これでは、生栗の良い妻にはなれない・・・)
片や
(このままでは、マタタビが~~~・・・にゃううん・・・)
だけど。

「お~い、何やってるんだ、二人とも?」
ひょっこりと、原因の人、生栗が顔を出した。
「生栗か・・・女らしく、お前の妻らしく、というのは難しいな・・・だが、頑張るから・・・もう少し待ってくれ。」
といいつつ、必至に顔の筋肉をいじるカーネル。
「何やってるんだよ?」
「女の子らしさの特訓明日のためにその一、笑顔の特訓にゃ。」
はぁ・・・とため息を付く生栗。
それを失望と取ったカーネルが、びくりと震える。
「んなことしなくても、お前は十分・・・」
(綺麗だってば)
最後のフレーズは、とても小さく。だが、カーネルにはそれで充分で。
「・・・ありがとう・・・」
ようやっと、本当の笑みを浮かべる鍵となる。



「アークの努力は一体何だったんにゃ~~~~~・・・」
その宝石のような輝きに、うめきを上げる猫一匹。
「報酬は無しだな。」
いつの間にかしっかりいる、黒マント黒衣の鉄仮面。
「そ、そんにゃ~~~~!!!」
がっくりするアークのさらさらの髪を博士はなで、ちょっと耳をいじくると柔らかい頬をつつく。
「じょ・う・だ・ん・だ。マタタビ五個に鰹節一個、でどうかな?総帥代行?」
恭しく礼をする博士。
「満足にゃ!」
アークも、笑った。

p08-dn02hasimotob.aomori.ocn.ne.jp 悪の博士 2001/08/17金15:07 [257]
._ 四・花嫁修業血風録「馬子にも衣装」その一 返信  △ ▽
朝。
博士のごりおしで、もう健康体なのにもうけられた「療養休暇」の、一日の始まり。
「生栗・・・」
そんな朝に、真剣な様子でカーネルが詰め寄ってきた。
「な、なんだよ・・・」
「その、なんだ・・・」
やや逡巡したカーネルだが、一大決心をもって一気呵成に口にする。
「服を買いに行きたい。一緒に、来てくれないか?」

間。

カーネルが、服を買う?
生栗は暫く考え込んだ。
そして、答え。
「それはいいが・・・軍服ってどこで売ってるんだ?」
手荒いぼけにも、カーネルは屈しない。
「いや、違うんだ。実は・・・その・・・」
不意に照れた表情になる。
「その?」
まだ察しない、超鈍感人間生栗。
消え入りそうな小さな声で、カーネルは言った。恥ずかしさの余り、真っ赤になった顔をうつむかせている。
「・・・女物の服、という奴を買いたいんだが・・・」
「ええっ!!」
驚愕の余りのけぞる生栗。少し失礼だ。
「じょ、女装趣味・・・?」
「私は女だぞ・・・一応・・・」
大失礼なぼけをかます生栗に、ショックを受けたようにカーネルは呟いた。

「し、しかしまた、何で急に・・・」
何とか失地回復をはかる生栗。とにかく会話をつなげようとする。
「昨日、式の衣装の仮縫いをしていたんだが・・・」
カーネルの答えにいきなりずっこける生栗。
「もうそこまで!?」
「すまない・・・どうにも気がせいて。」
「いや、別にいいけど・・・それで?」
カーネルを制して、生栗は話を続けさせた。

話を要約すると、こうなる。カーネルは自分で服を手作りしたのだが、それは豪奢な作りとはいえ(ちなみに、血染め。両手は針で穴だらけ)軍の礼服以外の何者でもなく、目撃した博士に
「何考えとるんじゃお前は!生栗にウエディングドレス着せる気か!お前は新郎じゃないだろうがっ!」
と大目玉を食らい、
「式までに、女性としての服を着ること!」
と厳命を受けたのだ、という。

(とはいえ・・・)
心中のみで、そっと、カーネルは呟く。
(私も、本当は・・・こういう・・・)
こういう「普通」に、憧れたこともあった。恋した男と、買い物に行く・・・デート。
「解った。」
生栗が頷く。うれしさに、カーネルの顔がほころぶ。
「じゃ、俺だけじゃまずいな。」
「え?」
思わず聞き返すカーネル。
「いや、俺だけじゃ服、よくわからないから。他に詳しい人、やっぱ女の子かな?つれていって教えてもらわなきゃ・・・」



「んがーーーーーーーーーーっ!!!!!!」
昆虫型スパイカメラでその様子を見ていた博士は、怒りの余り超合金製の机を叩き割った。
「あの馬鹿!折角我が輩がデェトのお膳立てを整えたというのにぃ~~~~~!!!」
「やれやれ、まぼ」
傍らで弟のまんぼうも呆れ顔だ。
「ええい、まったくもう・・・」
頭をかきむしる博士だった。
「あれ?」
まんぼうが不意に呟き、カレンダーを確認する。
「どうした、まんぼう?」
その様子に不審そうに博士は尋ねる。
「いや、考えてみたら今日、例の作戦の実行日なんだけど・・・まぼ」
「何ぃ!!」

例の作戦とは何か?そして、買い物は成功するのか?

次回に続く!


p12-dn03hasimotob.aomori.ocn.ne.jp 悪の博士 2001/08/18土03:40 [259]
._ その二 返信  △ ▽
そんなこんなでつくば市に繰り出したのは二人の他に、
衣服アドバイスと言うことで海老天、ソドム、イカンゴフ、アリエッタ、鴉女、アークと、暇つぶしに付いてきたハッハノ、黄泉、反崎。
というかなりの(というか、すごい)大所帯になっていた。

ヘルバーチャ団壁新聞の鷲岡黄泉主催コーナー「今月の萌え道」にすっぱぬかれてから、二人の関係がいかにHV内部で噂になっていたかの証明というものであるが・・・

(なんだかなぁ・・・)

と、思わず嘆息がでるカーネル。

「にゃ?どうかしたにゃ?」
「お体の具合が良くないのでは?まだ、消耗が残っているはずですし・・・」
「健康に関する油断は禁物、でふよ?」

だが、口々に出される心配の言葉を聞くと、
「まあ、いいか。」
と思えてくる。

「あ、ああ、大丈夫だ。」
だから、こう答える。
(こいつらも、私達のことを気遣ってきているわけだし・・・。第一、最初から二人きりというのも、かえって問題があるかも知れないな。)

多少、野次馬根性もあるけど。


目的地であるデパートには、すぐついた。問題なく、女性用の服のフロアへ向かう。
途中食料品売場の煮干しの量り売りをアークがつまみ食いしたのがばれそうになって、慌てたけど。

「・・・・・・・・・」
女性服売り場に着いたカーネルは、興味深そうに周囲を見回した。
「ん、どうした?」
傍らに立つ生栗がそれに気付く。
「いや、私は、こういうところに来るのが初めてなもので・・・。そうか。普通の女性という者は、こういう・・・」
極幼い頃を除けば、常に組織の一員として生きてきたカーネルは、世慣れしていない、というよりはむしろ世間知らずであるとさえ言えた。その可愛いとさえ言える仕草を、生栗はとても可愛いと感じている。

「さっ、それでは早速カーネルちゃんに似合う服装を探しましょ~かぁ!」
ソドムの号令と共に、わっと女性達(反崎除く)が散り、服を探し始めた。
そんな様子を、嬉しげに生栗は見守っていた。


「さてはて、どうなるかな?」
暇つぶしのハッハノが様子を見ながら呟く。
「ふん・・・興味深いな。正直「萌え」の観点からすれば、詰め襟の軍服というのはかなりなのだが、さてそれを超えられるか・・・」
などと真面目なようで変なことを言う黄泉。
「改造手術してるから解るけど、カーネルは小柄な割にスタイルいいからにゃ~、そも合う服自体見つけるのは難しそうだにゃあ。」
懸念する反崎。

本当に、どうなるのだろう・・・



p25-dn02hasimotob.aomori.ocn.ne.jp 悪の博士 2001/08/19日05:09 [262]
._ その三 返信  △ ▽
「それではいってみましょう、第一回カーネルさんファッション・ショー着せ替え対決!」
試着室の前で、騒ぐHV団団員達。完全に便乗して遊んでいるように見える。
実況を行う甘党参謀ハッハノものりのりだ。
「ルールは簡単!それぞれカーネルさんに似合うと思った服を持ってきて来てもらい、磁力君に見てもらいます。そして、お二人の感想を元に一番似合う服を選んだ人が勝ち!あ、でも別に賞品はありませんから。」
この一言で、少しもりさがるが、
「まあ、ひょっとしたら博士あたりから金一封がでるかもしれませんけど」
すぐに熱気を取り戻した。

「さて、ではエントリーナンバー一番・・・」
「ちょ、ちょっとお客様!」
「誰ですか貴方?」
「こ、このブティックの主でございます。」
急に現れた何だかトニー谷似の店主に、皆が怪訝な顔をする。
「何か?」
「店の中でこんな騒ぎをされては・・・ううっ!?」
お祭り騒ぎに文句を言おうとした哀れな店主は、いきなり口に当てられたクロロホルムをしみこませたガーゼで意識を失った。
「まったく、手間かけるにゃ~」
犯人は、反崎秋名。その様子は妙に手慣れていたが、深くつっこむとまずいと判断して先に進む。
「き、気を取り直して言ってみましょう。エントリーナンバー一番、アーク・ダーマさんです、どぉぞ~~~!!」

「ふっふ、優勝はもらったにゃ。」
不敵な笑みを浮かべ、勝ち誇るアーク。
「アークとお揃いっぽくいい感じなこーでぃねーとのすばらしさを思い知るにゃ、そして鼻血でも何でもだすにゃ生栗ぃ!」
「鼻血って・・・」
「さあ、カーネルでるにゃ。」
そういうと、アークは試着室のカーテンを引いた。着替えを終えたカーネルが、緊張した声で尋ねる。
「ど、どうだ、磁力・・・」
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
放射能の雨に覆われた核戦争後の死の町のような沈黙が当たりを包んだ。
「ど、どうしたんだ?」
カーネルが不安そうに周囲を見回す。
彼女は、自分が着ている服がどういう意味を持つものか幸か不幸か知らないからこんな事が言えるのである。
世間知らずにも程がある。
カーネルが来ていたもの、それは・・・













猫耳、肉球グローブアンドブーツ、猫尻尾のついた、フリフリたっぷりのエプロンドレス・・・だった。













ずるでーん!
ようやく時が動き出し、生栗が座っていたベンチからずり落ちた。
「ぶはははははははははは!!!」
ハッハノが爆笑した。
がしっ!
何故かガッツポーズを取る黄泉。顔がゆるんでいる。
リアクションに困っているその他面々。

正直、きりっとした顔立ちのカーネルにフリフリと猫セットは絶望的に似合っておらず、自体を理解していないらしいカーネルのたたずまいがさらにミスマッチを倍増、それが面白いような逆に可愛いような・・・

「生栗?」
きょとんとしてカーネルはこけた生栗に手を伸ばした。ぽふ、と肉球が柔らかい音を立てる。

色んな意味で、来てる本人が無自覚なためかなり凶悪だった。







何とか騒ぎが収まって。

「アーク、お前一体どっからあんな服もって来たんだ?」
カーネルが元の軍服に着替え、ようやくまともに呼吸が出来るようになった生栗が尋ねる。
「う~ん、もらったにゃ。」
「もらったぁ!?」
思いも寄らない返事に唖然とする生栗。
「そうにゃ。なんか陰気で科学者っぽい人で、博士の知り合いの、影磁とか言ってたにゃ。」
「影磁だって!」
「にゃ!?」
急に大きな声を出したカーネルにびっくりして毛が逆立つアーク。
「知ってるのか?」
「ああ。バリスタスで博士と一緒に研究をしている、O.O.B(アウト・オブ・ベース)という組織の大幹部の狂技術者で、私の体の内の機械部品の製作をてつだってくれた人でな。」
生栗とカーネルの会話を聞いて、アークのお気楽な脳味噌が一つの言葉を思い出した。
「そういえば、これのことプレゼントの「追加装備」だっていってたにゃあ。」
「ドコが装備だよ・・・」
呆れる生栗。博士やまんぼうといいJUNNKIといい、その影磁といい、バリスタスとやらはよっぽどの変人の巣窟らしいな。

と、生栗が思ったその時!
「だめっすよアーク姐ぇぇぇぇ!!!」
「ぶにゃ!?」
唐突に、どこからか、あの声が・・・
ぼばーん!
近くに積んであったバーゲン品の服の山が爆発するように吹っ飛び、例のテーマと共に、キャッツガイがでた!!!
「知らない人に付いていったら、危険っすよぉぉぉぉぉ!!!!」
「ぶぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!」
絶叫と共に逃げ出すアーク。
追うキャッツガイ。
あっと言う間に四人は見えなくなった。
・・・・・・
後に取り残された面々は、ただ立ちつくすのみだった。

そして、買い物袋に包まれたもう一つの追加装備、大遠距離射撃ユニットはまともなのに忘却されていた。


続くと思う。

p21-dn03hasimotob.aomori.ocn.ne.jp 悪の博士 2001/08/19日15:36 [263]
._ その四 返信  △ ▽
・・・・・・
「ええい、もういい、俺が選ぶ!」
とうとう堪忍袋の尾が切れたらしい磁力が、ややヘルモード入り気味で叫んだ。

あれから急に現れたJUNNKIが「霊子制御攻撃及び小型生物兵器搭載用の追加装備」と称して「魔女っ娘」服持ってくるわ(極東怪人参照)、アリエッタはメイド服しか着たことないからそれ持ってくるし(何故そんな物があったのだろう、この服屋・・・)、イカンゴフは優柔不断で選べないし・・・

(しかも・・・また、それ全部着るし、こいつは・・・)
疑うことなく。
(そして、俺に聞くし)
「どう思う、生栗?」と。
以前より格段に「人間らしく」なった。昔はまるで自動任務遂行機械といった様子で、たまに表す感情も仇に対する憎悪のみ。
(それが今は・・・)
恥じらう。きょとんとする。照れる。がっくりする。喜ぶ。

「やっぱあたしも、その方がいいと思うわ。」
ソドムも同意した。だがそれは、周りが駄目だからと言うより、磁力自身が選ぶことに意味がある、と言った感じだ。
「私も、そう思いますね。」
鴉女も頷く。
「わ、私も・・・」
おずおず、と言った様子でカーネルは言った。
「生栗が選んでくれた方が、う、嬉しいぞ・・・」

「そうか、ならそうしないわけには行かないな・・・」
頭をかきかき、わざとらしく視線を逸らし、照れ隠しの仕草を全身で行いながらの生栗の言葉に、ぱっ、とカーネルの表情が明るくなる。
「あ、ありがとう!」

そして笑う。普通の少女のように。
そんな変化が、変化によって生まれた仕草が、たまらなく可愛く、いとおしい。
見ているだけで、わき上がる幸福。ただ守る喜びだけではない。
(こういうのを、恋って言うのかな・・・)
それが何時から始まったかは、解らない。何故こうなったのかも、解らない。
だが、これだけは言える。
好きだ、と。

ただ好きなのさ、理由は要らない、どんなえらい学者にも、作家の先生にも解らない、それでもただただ好きなのさ・・・

昔の歌の一節を、何となく思い出す。

「さて、と。じゃあ・・・」
早速選び始めようとする生栗に、鴉女がよけいなことを言った。

「あ、磁力さん、下着は選ばなくていいから。」
「下着?下着なら持ってるが?」
生栗が何か言う前に、きょとんとした様子でカーネルが尋ねる。それが、事態を破局へ導くと知らずに。
「鈍いねえあんたは。もうすぐ結婚するんだろ?今のあんたが持ってる下着、言いたかないが色気がなさすぎだよ?実用一辺倒。ここは未来の夫のためにももうすこし何とかしないとねぇ。」

少々おばさん臭い鴉女(笑)

下着?色気?
しばし考え込む生栗。
(そ、それってつまり!?)

古い言い方をするなら、臥所を共にする時のことって訳で・・・

「・・・はふぅっ・・・」

頭に血が上りすぎ、ふらっと倒れそうになる生栗。
「お、おい生栗大丈夫か!?」
慌てて支えようとするカーネルだが、その前に通行人に生栗がぶつかる。

「うわっ、とっ!」
生栗を受け止めた拍子に、思わずよろける通行人。見ると、結構な数の団体の一人らしい。
「あ、これはすいませ・・・」
謝ろうとする生栗だが、出来なかった。自分を抱き留めているのが誰だっか知った驚きで、それどころではなかった。
「く、クロスぅ!?」
「お前は・・・生栗!?」

その相手は、元HV四天王にして、現在は謎の部隊を率いてHV団と闘う男、クラヴィーア、そしてその仲間達だった。

p13-dn02hasimotob.aomori.ocn.ne.jp 悪の博士 2001/08/21火04:22 [267]
._ そのころ彼らが何やってたのかっつーと 返信  △ ▽
「・・・ここか・・・」
つくば市の、某デパート。今回の作戦地域であるその場所の前に立ち、アラネスは改めて気を引き締めた。

「良いかアラネスよ!これは我等が悲願の成就には避けて通ることが出来ぬ大事な一歩であり、我がHV団の威信と命運を書けた超極秘作戦である、何があっても達成せよ!!」

常に大袈裟かつ激烈で、意味もなく誤解を受けてHV団内での地位が最近危ういらしい博士の指示とはいえど、この作戦が相当入内であることが伺える。

(まあ、焦るだけのことはあるがな)

ふ、と鍔の広い帽子の影でアラネスは唇を引きつらせる。
マスターZの勅命によるクラヴィ団(勝手に博士が命名)との連日連夜の戦闘による、怪人軍団の消耗は想像を絶する事態になっている。

そもそも、怪人軍団は数が少ない。周囲からはその質が驚異の目で眺められているし、事実でもあるが、数自体はHV団全体の十分の一に満たない。上に、VR獣は兵器としてはあまりに欠陥が多すぎる。整備に手間暇がかかりすぎ、おまけに補充が効きにくい。どんなに大量に撃破されてもまた湧いてくる怪VRと違い、VR獣の数は無限大ではない。
事実、VR獣の数は急速に落ち込みつつあり、あげくカマドウマ騒ぎで神刺塔の損害も大きい。

「娘の幸せに比較すれば、割に合うコストだ」

と博士は言い張っていたが、計画は既に大幅な遅れを見せている。あげく、ここにきて親衛隊の暗躍が活発化してきている。

万に一つも、気が抜ける状況ではない。

だが・・・

「ふっふっふ~、どう、あら、いや蜘蛛!今回の作戦に当たって衣装を悪幹部っぽく替えてみたぞ!」

傍らの、一応今回の作戦を任されているフェンリルの様子と来たら・・・

「悪っぽい肩幅広く見えるアーマーに薄布マント、紫色の悪メイク!凄いだろ~、似合う?」

緊張感零。しかも、似合っていないし。

「え~と、今回の作戦は、近く実施される予定のAフォース撃滅計画の前段階、奇襲による主力の撃滅です。はりきっていこ~~~!!」
「キチキチ~~~!」
気勢を上げる、今は人間形態の蝗軍兵達。
(博士の苦悩もうなずける・・・)
その様子を見て、アラネスは思った、否思おうとした。
(だからこそ・・・対マスターZの要である「三貴子覚醒計画」のために、実戦が必要なのは解ります。ですが・・・)

とうとう耐えきれず、アラネスは叫んでいた。

「何故に、ヒーローショー襲撃!!」

力が入り、手に握られていた「Aフォースショー」のパンフレットが握りつぶされる。
そのパンフには、「本物のAフォース隊員、火力戦隊ストライカーと握手!」とも書いてあった。

p01-dn01hasimotob.aomori.ocn.ne.jp 悪の博士 2001/08/21火02:43 [266]
._ 五・頭痛 返信  △ ▲
「く、クラヴィーア、って・・・おい、何変身しているんだイカンゴフ!」
「あの男は博士に逆らいました。生かしてはおけません。」
「ば、馬鹿!おい、イカンゴフ止めろ!」
「博士の下僕か?」
「下僕ではない、家族であり同志だ。」
「そう、貴方のようにてなずけた女を手駒として使っているわけでは・・・」
「少しは黙れイカンゴフ!ええい、博士がイカンゴフを戦闘用に調整しなかった理由が解るな・・・なんにしろそちらも、この状態での激突は望んでいないだろう?どうせ武器も持ってきていないだろうし。」

「我が望み、遂に成就せり!やはりデパートのショーに出てこそ正義!」
「けっ、かったるいの。なんであたしがガキの相手しなきゃならない訳?」
「まあ、そういわないでゴワス」
「カレーうめえ!カレーうめえ!」
「まあ、仕事だし。」
「はぁ・・・」
「ふん、こんな俗物共が正義の戦隊を名乗るなんて、質が落ちたな。」
「!、何奴!」
「んなこといちいちいわなくてもいーでしょ。どーせ悪党なんだから、とっととぶっ殺しちまえば・・・」
「久しぶりだな、ストライカー。」
「げげっ!アラネス!」
「やかましい!名前で呼ぶな!」
「ね~。ちょっと・・・」
「く・・・まさか貴様が来るとは!」
「この間は手足の骨をへし折るだけで勘弁してやったが、今度はそうはいかん。子供達の面前で正義の味方などという者の虚飾が剥がれるまでずたずたにしてやる!」
「ちょっと・・・」
「ふ、ふん!なめるなでゴワス!」
「ね~、アラネス・・・」
「何だ!」
「子供達、もう帰っちゃったよ・・・」
「何ーっ!!」
「最近の子供は、根性がないなぁ・・・燃えるということを知らんのか!」
「こればかりは同感だ、三笠屋・・・」





「・・・・・・」
スパイカメラからの映像を見ながら、博士は色々な意味を込めて嘆息した。結局彩との戦いも料理対決で小規模に(試食、否死食させられた生栗は災難だったが。)集結したし、どうにも最近はうまくいかない。

(次は・・・大規模行動か・・・?だが、それは未だ時満ちぬ・・・)


とりあえず、終わり?