DC軍オデッサ基地、司令室。
司令補佐とはいえ司令ミネバ=ラオ=ザビが幼い為、実質的には指揮を執っているのはハマーン=カーンだ。
こんな変わった人事が行われた理由はドズル亡き後の人材不足と、キシリア・ギレン間のジオン公国における勢力争いなどと、そのほかのコロニー国家の戦力・将官クラスの不足など・・・
ろくでもない理由である。
「・・・というわけで、だ。こちらとしても画策せねばならんことが多くてな、兵は出せんのだよ。」
「しかし総帥閣下、」
「以上だ。通信を終わる。」
ざあざあとうるさく音を立てる通信機相手に、ハマーンは一人毒づいた。
「・・・愚かな。今が権力争いをしている場合か。つまらん面子で地上を失ってどうする!」
細い拳が机をたたく。
「なんとか、せねばな・・・」
第二話「破局点への激闘」
空を埋め、地を押しつぶすがごとく進軍する鉄の群。
連邦軍のオデッサ攻略作戦が始まった。
ビッグトレークラス陸上戦艦8、ガルダ級大型空中母艦4、ミデア級補給機2、ペガサス級宇宙戦艦の中で最も新しい連邦最新鋭艦「アルビオン」を旗艦としMS総数数百を従える堂々たる艦隊である。
「こちら司令部、オデッサ攻略部隊応答せよ。」
「こちら第三地上艦隊旗艦アルビオン、パオロ=カシアスです。感度良好。」
「現在位置を送れ。」
「は、先ほど敵基地に偵察機を飛ばしたところ、なにやら不穏な動きが見られましたため、一時撤退を・・・」
通信機に唐突に法外な怒鳴り声が割り込んだ。
「してどーする馬鹿もん!とっとと攻撃に移れ!」
三輪防人。連邦軍きっての鷹派と恐れられ、今回のオデッサ攻略作戦の立案者でもある。
「しかし・・・」
「やかましい!それだけの大戦力を与えられて何をためらっておるか!命令だ、攻撃しろ!これ以上ぐだぐだぬかすと命令無視で銃殺だ!」
「は・・・はっ!」
「あの非国民めが・・・!」
いらつきを隠せない三輪を、岡がたしなめた。
「仕方がないでしょう。ホワイトベース回航時に「赤い彗星」シャアの攻撃を受けて、奇跡的に助かりはしたものの脳に損傷を受けてああなってしまったんですから。」
それを傍らで聞いていたイゴールがふと呟いた。
「・・・考えてみたらなんでそんな奴まだ現役で、しかも重要作戦を指揮してるんだ・・・?」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
沈黙が司令部を支配する。
「駄目じゃん、おい!」
「ぬおーーーーっ!やはりわしが陣頭指揮すべきだった!」
のけぞるようにして頭をかきむしりながら三輪が絶叫する。それに連鎖するように岡が動転した声を上げた。
「それだけはやめてくれ!お前がいくと敵より多く町を破壊する!」
まったくの事実だったのだが心外だったらしく、今度は三輪がくってかかる。
「何だと貴様!」
以下、修羅場。
「あの〜・・・」
気弱な声が、喧騒の狭間を流れる。さすがにこの騒ぎでは伝令将校もなかなかいいだせない。
「何だ?ちなみに、あっちの二人は気にするな。」
司令部の中で騒ぎに巻き込まれずにいたイゴールが受ける。
「パオロ艦隊より入電です。「我、奇襲ヲ受ク」」
「何っ!!??」
とんでもない報告を。
ガルダが。ミデアが。ビッグトレーの群が。
谷のふちを掠めるようにつっこんできたグールから降下した敵部隊によって。
次々と炎と爆発に飲まれていく。
「お・お・お・・・」
「ふっ、これがゲリラ屋の戦いよ!」
猛々しい笑みを浮かべる、ジオン軍きってのゲリラ・白兵戦プロ「青い巨星」ランバ=ラル。補給なしで各地で連戦を重ねた、愛機のグフが炎に照らし出される。
「おぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」
叫ぶパオロ。たった今の今までの無敵の大軍団が、あっというまに敗残兵である。艦船を片っ端から沈められたため、大半のモビルスーツが出撃の暇もなく燃え尽きた。
「なんとたわいのない、鎧袖一触とはこのことか。」
敵のあっけなさに、半分以上あきれた声で呟くガトー。ソロモン要塞陥落ののち、各軍からえりすぐられた「DC親衛隊」に入隊してまで追い求めた敵がこれでは、確かにつまらなかろう。
「ば、馬鹿な・・・に、逃げろ〜!!MS部隊で敵を足止めしつつ逃げろ〜!」
ぞろぞろと、残った艦船からモビルスーツが出撃してくる。大半が船と運命を共にしたとはいえ、もとの数が数だからまだ結構な量である。
「ふっ、敵は狭道で袋のねずみ、おまけに取り乱している。一気に押しつぶせ!」
全軍に檄を飛ばすハマーン。自らも先陣を切って飛び込む。
(何とか、うまくいったか。あとは、後続部隊が退路を遮断すれば・・・)
ここで、少しだけ時間をさかのぼってみよう。
DC軍オデッサ基地・司令部には、重苦しい雰囲気がただよっていた。
「増援は、望めぬか・・・。」
苦渋の表情を隠せないデラーズ。彼の指揮下にあるDC親衛隊も含め、転戦を繰り返しぼろぼろの地上軍に比べ、敵は補給も行き届き数も数倍である。
「ここは一か八か、先手を取って攻撃するのはどうでしょう。」
「戦力で劣る状態で真っ向からぶつかっては、敗北は火を見るより明らか。得策ではありませんね。」
冷ややかにマ=クベ。
「だがこの状況下では、基地に立てこもっても孤立するだけだ。」
長年戦場を駆け抜けた男、ランバ=ラルの意見は、階級こそ低けれど重視される。それがビアンの定めたDC軍規の最大の成果であり、DCのマンパワーが連邦を上回った理由でもあったが、この圧倒的な兵力の差ではそれを最大限駆使しても逆転は難しい。
「だが、座してこのオデッサを敵に渡すわけには行かない。ここを失えば、我々は地球を手放さざるをえなくなる。」
同じ「だが」をもって、DC親衛隊副隊長、ガトーは現状の別側面を捉えた。
「そうです、逃げるなど論外!」
元気付いたように、木星から参戦している白鳥九十九が叫ぶ。
「そりゃそうだけどよ、問題はそれで逃げずにどうするか、ってことだろ?」
「黒い三連星」の長、ガイアがすこしあきれたようにいう。事実この白鳥という男はまじめで優しいいいやつなのだが、どうも一本気にすぎ、単純な男でもある。
喧々諤々、というよりはまとまりのない小田原評定、山賊にない金を出せといわれて困り果てる村人のような軍議。
「・・・・・・・・・」
そんな中、ハマーンは黙したまま必死に考えをめぐらせていた。何しろ自分たちには助けに来てくれる正義のお侍はいないのだ。
「ハマーンよ、何か策はないのか?」
ハマーンが控える玉座から、名目上の地上攻撃軍司令官で先代司令官ドズル=ザビの娘、ミネバが心配そうに聞いた。
(何か、何か方法があるはずだ!私は負けない、負けるわけにはいかない。ミネバ様のためにも、)
脳裏というよりは胸のうちを、回想が駆け抜ける。
(ハマーンよ、もし俺が戻らなかったら・・・妻と娘を頼むぞ。特にミネバは、出来ればその、戦争とは関係なく普通の娘として育ててやってくれ)
そういってビグザムに乗り込んだ、ドズル=ザビ中将。娘のことを口にするとき、鬼瓦のような顔は確かに微笑んでいた。
(私はその約束を守れなかった。ならばせめて、ミネバ様の身の安全だけは確保せねば。それに・・・)
「地球圏に今未曾有の危機が訪れようとしている、私はそれを見極めなければならない。ハマーンなら出来ると信じている。人の革新、新たな人類の幕開けを。」
そういってシャア=アズナブルは、ソロモンから消えた。
「それに・・・」
「ん?どうしたハマーン?」
ミネバがきょとんとした顔で、首をかしげた。オレンジっぽい金色の短い髪がゆれる。愛くるしい容貌は母親ゼナゆずりで、父親にはまるで似ていない。似ていたら怖い。
「え?いえ、何でもございません、陛下。」
ハマーンはあわてた。まさか声に出てしまったとは、自分でも思っていなかった。
(その分だけ、思いが強いということか・・・シャア・・・)
ふ、と自嘲の笑み。すでに別の女を好いていた男への、くだらない初恋。それに殉じようとしている自分に。
「まずは情報だ。敵の動きはどうなっておる?」
「はっ。敵主力はいったん接近した後離脱、南側の谷に入りました。」
「何?どういうことだ?」
デラーズが眉をひそめた。真正面から殴るだけでほぼ確実に勝てる戦力で、なぜそんな行動を取るのか。
将校も困惑した様子で、
「わかりません。ひょっとしたら我々を基地からおびき出すための罠では?」
と、根拠もなくありきたりな推測しか披露できなかった。
「いや、それはない。あの谷は狭く、大軍を展開するには不適当・・・となるとこれは好機だな。ブロッケン伯爵!」
ざっと規律する、首のない軍服の男、ブロッケン伯爵。DC創設時からのメンバーたる副総帥、Drヘル直系の部下。サイボーグ化された首は、脱いだ帽子のように小脇に抱えられている。
「ここに。」
「貴公のグールにはステルス機能があったな。それを使い少数精鋭部隊を空輸し敵を奇襲、しかる後本隊が後方を遮断、敵が大軍の利を生かせない谷の中で殲滅する。各自準備にかかれ!」
「ははっ!」
かつん、と軍靴の踵がなる。
「了解しました!」
「よっしゃあ!燃えてきたぜ!」
「連邦め、目にもの見せてやるぞ!」
いったん火がつくと、もとから戦意の高いDC軍は一気に動いた。
「お、お待ちください!」
そこに、急に不安の声が混じる。
「何だ?」
振り向いたハマーンの視線の先にいたのは、赤紫青紫左右で色を変えた頭巾つきのローブを着た、顔の左右が男女ちぐはぐな人。
これもDrヘル直属、あしゅら男爵である。
「敵部隊攻撃の任務、ぜひこのあしゅらもお加えください!」
それに否を唱えたのは、同僚でライバルのブロッケンだった。
「何を言うか!前回の作戦、貴様をかばってDrヘル様のナバローンが墜落、ヘル様が重傷を追われたのだぞ!よくもおめおめと・・・」
スーパーロボットを主力とするロンド=ベルをかく乱しオデッサから遠ざけるための陽動作戦で、全長2000メートル、DC最強の戦艦ナバローンを失ったのはあまりにも痛かった。
あげくにDrヘルも爆発で負傷し、入院している。
「だ、だからこそ!前の戦いでの恥辱を晴らそうと・・・!」
あしゅらは必死だった。ただでさえ自分を作ったDrヘルに敗北続きで恩を返せずにいるところに、この大失態である。それも、かばわれるという形で。
「ええいやかましい、これはヘル様じきじきの命令だ!貴様は今回は謹慎だ!」
見るからにおろおろするあしゅらに、言い放つブロッケン。
「そ、そんな・・・」
背景に稲妻が見えた後床が崩壊して落ちていきそうな勢いで、あしゅら男爵はショックを受けた。
「ではゆきますぞ、ハマーン様。」
ブロッケンはきびすを返した。ハマーンも、やむをえずといった表情になる。
「う、うむ。副総帥Drヘルの命令とあれば、しかたがないな・・。今回は休むといい、あしゅら。」
「そ、そんな・・・私は・・・」
そのときのあしゅらの憔悴した様子を思い出し、ハマーンはわずかに胸が痛んだ。
(やはりあしゅらはつれてくるべきだったか?・・・いや、今はそれよりも目前の敵に集中せねば!)
「やったか・・・」
と、そんな回想が終わったとき、敵はあらかた壊滅していた。完全に奇襲がきまり、大量の兵力が展開する前に壊滅してしまったのだ。
強烈なまでの無駄、無能、無様である。
「うむ・・・本隊が来るまえにかたがついてしまったか。」
はっきり言って、別の意味で予想外だった。
そう言い終えた瞬間、ハマーンの額が「光った」。ニュータイプ独特の、高い直感が警報を発する。
「むっ!」
「いや、まだなんか来るぜぇ!」
「何!?」
ハマーンは驚いた。ニュータイプでもない一兵士が、自分と同じタイミングで気がつくとは。妙にぼこぼこのザクに乗っているが、詳しいことを聞く暇はない。
現れたのは、味方機・・・ドムだった。
「何だ。味方では・・・」
ブロッケンが安堵の声を上げ、
「マッシュ・・・オルテガ・・・じぇ、ジェットストリームアタックが、破られる、とは・・・」
ドムパイロットのガイアは、断末魔のうめきと共に機体ごと爆発した。
「ガイアが・・・「黒い三連星」が、やられた!?」
「それじゃ、本隊は・・・」
白鳥が震える声で呟いたとき、通信が入った。本隊からだ。
「こ、こちら主力部隊だ・・・」
本隊を率いているはずの、デラーズだ。負傷し、背後に移る陸上戦艦・リシテアの艦橋もぼろぼろになっている。
「閣下ぁ!?」
直属の部下であるガトーが叫ぶ。
「デラーズ!?どうしたのだ一体!」
「迂回行動中に、敵に襲撃を受けた。なんとか脱出は出来たが、黒い三連星など、既にこちらは壊滅状態だ。」
「なんですと!このあたりの部隊の動きは把握していたはず・・・一体どこの!?」
とても、ザンスカールから供与された最新型の陸上戦艦をぼろぼろに出来るほどの戦力が隠れうる隙はないはずだった。
「やつら、だ。」
うめくように、デラーズが言う。
「やつら・・・まさか!?」
それだけで大半の将兵は思い当たった。今まで何度も自分たちに敗北の呻きを上げさせた、その部隊の名前を。
「ロンド・ベル、ただいま参上!もうお前らの好きにはさせねぇぜ!」
「やはり、貴様らかっ!」
連邦軍初のMS搭載可能型戦艦ホワイトベースを旗艦とする「地球連邦連邦軍最強部隊」、ロンド=ベル。
連邦MS量産のプロトタイプでありながら、圧倒的な性能を持つガンダムに、その次世代型として高機道飛行形態への変形を可能としたZガンダムと中心に、
光子力研究所所属の、確認された世界初のスーパーロボット、「鉄の城」マジンガーZ。
未知の宇宙エネルギー・ゲッター線を使用し、爬虫人類と戦っていた陸・海・空三つのパターンに変形する宇宙探査ロボット・ゲッターロボ。
五機の戦闘機が合体し、超電磁エネルギーによる無数の武器を搭載したスーパーロボット兵器、コンバトラーVとボルテスX。
そのコンバトラー、ボルテスを元に単体機・格闘戦用に再設計され、コロニー周辺の「正体不明の侵略者(連邦発表)」との戦いに投入された、ダイモス。
そしてひときわ巨大な、「シン・ザ・シティのうわさの万丈」という以外には何がなにやらよくわかんない財閥の主・破乱万丈の乗る、ダイターン3
などのスーパーロボット軍団を擁する。これだけそろえば、強いのも当然である。
「き、貴様ら、東アジアで戦っていたのではなかったのか!?」
動転するブロッケン。オデッサでの戦いが確実になった時点でロンド=ベルを陽動する作戦を実行したのは、ほかならぬ彼らDrヘルの機械獣部隊だったのだ。
「へへん!正義の味方は悪あるところ、どこにだって何の脈略もなく現れるっ!それが当然だっ!」
甲児の強弁に、万丈が付け加える。
「実際には実験中のマスドライバーを使って加速・大気圏離脱して、スペースプレーンの要領で大気圏すれすれの宇宙を高速移動すれば、あっという間さ。マスドライバーがスーパーロボットの重量に耐えるかどうかの賭けが大きかったが、結局勝ったらしいね。」
「畜生!宇宙軍の連中はなにやってたんだ!」
悔しがるDCの面々を前に、思い切り決めポーズをとる万丈。
「世のため人のため、DCの野望を打ち砕くダイターン3!この日輪の輝きを恐れぬのなら、かかって来い!」
だがDCも、負けたわけではない。
「かかっていてやるわ!大義を持たぬ連邦の走狗め!その偽りの日輪たたき砕いてくれる!」
いきまくガトー。
「そうだ!正義のスーパーロボットがどういうものか、見せてやる!」
「へっ!とにかく強いほうが勝つ、そーいうこったろ!!」
がやがやと続く話に耐えかねたのか、甲児のマジンガーが一歩前へ出た。ロケットパンチをこれ見よがしに構える。
「ふ、そうだな。」
呟きと共にキュベレイの優雅な蝶を思わせる機体からファンネルがはじき出され、空中に止まる。
(とはいえ・・・勝てるか、今の状態で・・・)
「待て、兜甲児!」
不意に、両軍の無線に割り込みが入った。その男女が同時に語っているような声は、映像を見るまでもなくあしゅら男爵だとすぐわかる。
そして、発信源・・・MSに倣って母艦を使用しない作戦時のために」開発された、有人型タイプの機械獣がマジンガーZの前に降り立った。
あまりに変わった姿をした、機械獣が。
「なっ、何だその変な機械獣は!おめえそっくりじゃないか!」
甲児の叫びどおり、その機械獣はあしゅら男爵をそのまま巨大化させたような姿をしていた。言いたくないが、気持ち悪い。
「ああ、一種の記念のようなものだ。何しろ、私が操作する最後の機械獣なのだからな。」
だが、それに乗るあしゅらの声は、並々ならぬ決意に引き締まっていた。
「何だって!?」
今度は、基地からだ。病室で寝ているはずのDrヘルが通信に出ている。
「待て、あしゅら!やめろ!やめるんじゃ!貴様自分がそのジェットファイヤーP1に何を積んだかわかっているのか!?その超強力爆薬を使用したら、マジンガーZを倒せても、間違いなく自分まで吹っ飛んでしまうぞ!」
必死に呼びかけるDrヘル。だが、あしゅらの答えは。
「Dr.ヘル、このあしゅら、初めからそのつもりでございます!」
「なんじゃと!?」
「何!?」
同時に息を呑む、敵と味方。
「これまでの失態、もはや何をしても償えるものではありません。謹慎を命じられるのももっともでございます。ですがこのあしゅら、最後はせめてヘル様のお役に立ってみせます!」
あしゅらは死ぬつもりだ。
それに気がついたとき、最初に止めに入ったのは・・・以外にもブロッケンだった。
「ま、待てあしゅら!それは違う!ヘル様はそんな意味でお前に待機命令を出したわけではない!」
この機を逃すまいと、ヘルも叫ぶ。
「そ、そうじゃ!このままお前が前線で追い詰められていくのに、わしは耐えられなかった!じゃから・・・」
自分を創った、親とも言うべきDrヘル。ライバルではあるが、同じDrヘルに改造された義兄弟とでも言うべきブロッケン伯爵。
二人の説得に目をつぶり、あしゅらは僅かに首を振った。
「わかっております。ですが・・・私にもプライドがあります!
「う、うわ・・・」
あとずさるマジンガーZ。
「待ったぁぁぁぁぁ!」
今まさに体当たりを敢行せんとしたあしゅら男爵の乗る機械獣ジェットファイヤーP1、その直前に大爆発がおこった。思わずに急停止するあしゅら。
爆発の煙まく中、崖の上から減速なしで降下、つまりは落下してきた巨大なロボットが大地を揺らした。
赤い巨体、ヴァルシオンだ。
「ちょっとあんた!話はある程度聞かせてもらったけど、そう簡単に死んでどーする!」
話に急に割り込み、リューネが叫ぶ。これにはあしゅら男爵が驚いた。それと同時に邪魔への碇にも似た感情が生まれる。
「なっ・・・何だお前は!お前に、お前に何がわかる!」
「馬鹿ぁ!」
ジェットファイヤーP1が、ヴァルシオンのマニピュレーターにより運動エネルギーを与えられ、放物線を描いた後硬着陸した。
つまり。
(ば、爆弾積んだロボット殴ってる〜〜〜!)
一番近くで見ていた白鳥九十九、心の中で叫ぶ。
「馬鹿者ぉ!」
続いて親父の声。先ほどと同じコースの動きをするジェットファイヤーP1。
しかしヴァルシオンは動いていない。どういうことかというと・・・
(さらに殴ってる〜〜〜!しかも、生身!?)
ビアンは、ヴァルシオンの肩に立っていた。そして、そこからジェットファイヤーP1殴ったのである。
はたして、人間なのだろうか、このオヤジ。最もリューネは「修行」と称してさらなる非常識を山ほど見せ付けられていたため動じなかったが、まわりの人間ははっきり驚愕した。
「そ、総帥!?この女は一体・・・」
あしゅらの問いに、きっぱりビアンは回答した。
「わしの娘だ。」
「!!!ひっ、ひええええ!ご無礼いたしましたぁ!」
高速でにじり下がり、平身低頭するあしゅら男爵。
その様子を見てリューネは苦笑いしながら、
「あたしはDCとは関係ないから、無礼とかそういうのは違うってば・・・」
と答えたが、すぐさまもとの話題を思い返し、続ける。
「ってそれはともかく!いい、あたしがDC総帥だったら死ぬなって命令するところだけども、関係ないから理由を説明するわ!それは三つ!ひとつ!そこの爺が悲しむ!二つ!そこの生首がライバルいなくなって燃え尽きる!三つ!まだ戦える奴が死ぬのはあたしが我慢ならない!以上!」
言い終えると同時にヴァルシオンの腕をジェットファイヤーP1に叩き込み、爆薬をつかみ出して後方にほうり投げる。
「わ、わかりました・・・」
ヴァルシオンの爆薬つかみ出しで、至近距離を腕が通過してむき出しになったコクピットで、あしゅらはかなりびくつきながら頷いた。
「一件落着、ね!」
笑って収めるリューネ。それを見て白鳥は、今まで
(な、なんて無茶苦茶な・・・、そして、凄い人だ・・・)
「うむ!よくやった!これなら今すぐにDCをついでも大丈夫だな!」
にんまりとするビアン。
「か、感謝する、リューネ殿。わしの「家族」を救ってくれて・・・」
「わしからも・・・。」
Drヘルどころかライバルのブロッケンにまで感謝されて照れるリューネ。だがヘルの悲しみはともかくブロッケンのライバルを必要とする心まで一瞬で判断したのだから、父の見立ては案外正しかったのかもしれない。
「あ、いや、あはは・・・私はつぐ気ないってのに・・・」
「ともかく!行くのだリューネ!我が理想に歯向かう愚か者を叩き潰せ!」
そういってびっ!とロンド=ベルを指差すビアン。同時に戦闘に備え、ヴァルシオンの肩からコクピットの中に移動する。
「理想だって!?世界征服の建前の癖に!!」
ビアンの態度のでかさに、コンバトラーVメインパイロット、葵豹馬がなじった。
「なにを言うか!現に貴様らも宇宙人の脅威と戦っているだろうが!」
「・・・あ。」
そういわれたとたん、豹馬は何か忘れていたことをひょいと思い出したような、そんな顔になった。
「「あ」?」
思わずに問い返すビアン。それを半分無視して、コンバトラーチームは仲間内でごにょごにょと話し出した。
「そういえばあいつら宇宙人だったんだよなぁ・・・」
「あんまり気にしとらんかったでごわすな。」
「っちゅうことは、ビアン博士の主張にも一理あったってことかい?」
・・・
「今頃気づいたかあああああ!」
怒号を発するビアン博士。生身の人間の発した声が、巨大ロボットをひっくり返す。
「うわわわわわっ!?な、なんだあのオヤジ!?」
「この大馬鹿ドモがぁぁぁぁぁぁっ!なんも考えとらんかったのかあ!!」
「いや・・・一緒にしないでほしいんだが」
アムロなど、もっと真面目なパイロットたちからクレームがつくが、無視される。
「ええいリューネ!こんな大馬鹿どもとっととぶちのめしてしまえい!」
コクピット内であきれてつっぷしていたリューネも、さすがにこれには
「と・・・とりあえずつっこみは入れてやるわ!」
と、前回よりはやる気で行動を開始した。
「もう!あんた達と親父が馬鹿なせいで、あたしが戦わなきゃいけないんだから!」
怒りはいろんな方向に向いているが、ともかく戦いは始まった。
ビシイィィィン!
ランバ=ラルの駆るグフのヒートロッドによる鋭い一撃。「連邦の白い悪魔」ガンダムは、それをあっさりと回避して見せた。
ラルは、驚嘆のため息をついた。昔地球に降り立てのホワイトベースを襲撃したときに比べ、はるかに腕が上がっている。
「あの坊やが連邦のエースとは・・・時代が変わったな。」
懐かしさか、後悔か、昔と同じような言葉をランバ=ラルは口にした。
「あなたほどの人が、なぜDCに加担するんです!」
確かに、アムロは成長していた。それがララァを死なせたことから生まれた、戦いへの一種の諦念に近いものでも。
「それはこっちのせりふだ!なぜ地球連邦などの味方をする!」
「減らず口を!」
ランバ=ラルの切り返しに、かつてと意味は違えど形は同じ言葉で、アムロは会話をちぎった。
「偽ゲキガンガーめ!正義の鉄槌を受けてみろ!」
「だれが!偽ゲキガンガーだぁ!」
木星圏で大ヒットしたロボットアニメ、「熱血ロボゲキガンガー3」。その放映開始とほぼ同時に製作されたゲッターロボは、どういうわけか姿形がゲキガンガーに似ていた。
倒錯疑惑が浮かぶが、ゲッターを作った早乙女研究所は逆に「ゲッターをゲキガンガーがぱくったのだ」と主張、「ゲキガンガー」を愛する木星住民および製作会社ともめていた。
一方木星優人部隊の白鳥がのるロボット「テツジン」は、木星にあった謎の異種文明の遺跡から発掘されたブラックホール動力の重力操作エンジンを元にビアンとDrヘルが「戦意高揚のためゲキガンガーに似せて」作った機体。ある意味因縁の対決である。
「う、うわあああああっ!!」
また一機、DC軍のガサCが落ちた。ハマーンが「奇襲にも使える」とつれてきた一般からえりすぐった部隊とはいえ、ロンド=ベル隊の圧倒的な高性能メカ軍の前には、まるで歯が立たなかった。
「このぉっ!」
ナックルバスターを連射するガサC。その戦闘能力は、ドムやゲルググなどの第一期生産のジオン軍モビルスーツに比べてそうとう上昇しているはずである。
だがそれでも、敵の動きにまるでついていけない。
「抵抗するとムダ死にをするだけだって、なんでわからないんだ!」
連邦最新型のモビルスーツZガンダムと、「第二のアムロ」といわれたニュータイプ・カミーユ=ビダン。その組み合わせはそれほどに強かった。
「貴様・・・つけあがるなっ!」
「!!」
Zガンダムにむかって、複数方向からビームが集中する。かわすカミーユだが、ビームの発射源は統一された行動で動き、つぎつぎとビームを発射する。
「よくもこれだけやってくれたものだ・・・容赦せんぞっ!」
ハマーンのキュベレイによる、ファンネル攻撃だ。指揮官であると同時に強力なNTパイロットであるハマーンは、自分で前線に出ることも多い。
再び多数のファンネル・・・NTの脳波を感知してブースターで移動する小型のビーム砲による攻撃を仕掛ける。だがカミーユも高い能力を持つニュータイプ、紙一重で攻撃をかわし、一部のファンネルを撃墜する。
「ちいっ!」
ファンネルを突破したZガンダムがキュベレイに反撃のライフルを放つ。ファンネルの操作に集中していたハマーンは回避しきれずに、ビームはキュベレイの肩アーマーをかすった。
「貴様のようなのがいるから戦いは終わらないんだ!」
さらに連射。ハマーンも、キュベレイの腕についているビーム砲で応戦する。
「プライドと暴力を振り回して!そうやって命を粗末にするのかよ!」
その言葉は、ハマーンをして逆上させるものだった。押し寄せる、アクシズ摂政として、NTとして、軍司令官として、ミネバの母代わりとしての重圧と責任を、己の才能に倍する努力と、ザビ家を代々補佐するカーン家の血に対する誇りで乗り切ってきた彼女にとっては。
「俗物が私に何を!!」
我を忘れて怒鳴り返すハマーンに、一瞬の隙が出来た。
(今だ!)
Zのライフルのキュベレイのコクピットが、一直線上に並ぶ。
ハマーンも気づいたが、もう遅い。
「しまっ・・・!」
「待ちやがれ!」
ドン!
発射されたビームは、緑色のシールドに防がれた。肩に装着する方式の、モビルスーツ同士の戦いが始まる以前の形式といえる小型のそれは。
「・・・ザク?」
ジオン軍初、つまり世界初の正式採用戦闘用MS、ザクUのものだった(作業用・試験用除く)。
全身えらく年季の入った傷だらけの、歴戦の貫禄を感じさせる機体である。
「ちっと脇から聞かせてもらったがよ・・・そりゃあちょっと言いすぎじゃあねぇのか?ニュータイプってのはよ、他人の生き方死に方を無駄だ無駄でないと言えるほどたいしたもんなのかよ!!」
腰のヒートホークを抜くと、ずいと前に出る。その貫禄に、カミーユは思わず一歩下がった。
その声を聞いて、ハマーンは気がついた。さきほど、自分と同時に敵に気づいた兵士だ。
一体何者だろう。
「俺はあんたやキュベレイのと違って、ニュータイプでも何でもねぇ薄汚ぇただの人間だ。だがよ、そんな俺でも俺なりの考えやら理想やら、そんなもんを持ってるんだ!いいや俺だけじゃねぇ!てめえが無駄死によばわりした、俺の戦友(ダチ公)どももだ!それをてめぇは・・・」
ぶん!とヒートホークを素振りする。
「許さねえぜ!どぉりゃああああああああああああああああ!!!!」
どんどんどん、と足音を響かせ突進するザクU。
一瞬わけもわからずびびっていたカミーユは、それを見て余裕を取り戻した。相手の武器はヒートホーク一本のみ。マシンガンもバズーカもなく、真正面から突っ込んでくるだけだ。
「前に出て来るなんて…そんなに死にたいのかよ!!」
ビームライフル一発。それで終わ・・・らない!?
「何だそりゃ…? そんなんじゃ男は倒せねぇぜ!!」
カミーユは目を疑った。ライフルが直撃しても、かまわず突進してくる!
「う、うわああああああっ!!!」
連射・連射・連射!
「まだまだやられねぇぜ!!俺の根性は通常の3倍なんだからよ!!」
ビームはザクに食い込み次々と小爆発を起こすが、ザクの突進を止められない。
「くっな、なら、ハイメガランチャーだっ!!」
いきなり背中に背負った、本来対艦攻撃用の大型メガ粒子砲を持ち出すカミーユ。
「死ぬええええええええええええええ!!!」
悲鳴じみた叫びと共にZが撃った粒子砲。
「来やがれっ!!!本当のロボットの戦いってやつを教えてやるぜ!!!」
ザクはなんと、ヒートホークで叩き落した。
「んなあああああっ!?」
「何箇所ダメになっちまっても、根性ひとつ残ってりゃ大丈夫だぜ!!でゃあぁぁぁぁぁっ!!!」
爆発と同時に跳躍し、大きくヒートホークを振り下ろす!
「このくらいのもんがなきゃあ男は倒れねぇぜ!!くらいやがれ、ヒートホークハイパーど根性斬りッッ!!」
「ひぃやああああああああああああああああっ!!!」
袈裟懸けにぶった斬られ、悲鳴と共にZガンダムは爆発した。脱出カプセルが飛んでいく。
・・・さすがに唖然とするハマーン。空白状態の脳に、小さかったころ聞いた、ビアンが存命中のジオン=ズム=ダイクンに語った言葉が思い出される。
「・・・確かに、人は進化し行くかもしれん。だが卿のごとくそれが宇宙の民によってなされると考えるのは早計に過ぎる。それはいずれ、宇宙の民と地球の民の抜き差しならぬ対立を生むだけに終わるだろう。」
「人は、人の心の力でたとえどこでもいつでも伸び行く。わしはそう信じたい。」
先ほどザクのパイロットが見せた、機体スペックを上回る力・・・それがハマーンにはまさにビアンが言った「人の心の力」に見えた。
「・・・助かった、感謝する・・・所属・姓名・階級は?」
ハマーンの通信に、ザクのパイロットが答える。ぼさぼさの髪に無精ひげ、片目を黒い眼帯で覆った、屈強な男だ。
「ジオン軍のレツ=ヤジマ。階級は軍曹だ。あんたは?」
なんとこの男、ハマーンのことを知らなかったらしい。ハマーンは名乗ろうとして・・・やめにした。
「私は・・・少しばかり直感が鋭くてファンネルが扱えるだけの、ただの人間さ。」
その返事がいたく気に入ったらしく、レツは大声で笑った。
「っはっはっは、違いねぇ!!違いねぇな!」
つりこまれて、珍しくハマーンも笑う。
がっしゃん!!
味方のズサとガルスJが、まとめて吹っ飛ばされてくるまでは。
「なな、何だぁ!?」
「どうした!」
「は、歯がたちませんって・・・」
ひっくり返ったズサがもがく。背中の巨大なミサイルポッドが邪魔で身動きが取れないらしい。
「ええいゴットン!弱音を吐くな!たとえ撃とうが斬ろうが傷すらつかない、物理的にダメージを与えるのが不可能な相手でも!!このバラの騎士マシュマー=セロ、ハマーン様からいただいたこのバラにかけて諦めはせん!」
ガルスJのパイロットが叫ぶ。何か巨大なものにふんずけられたように、機体の身長が半分になっている。
「それ絶望ってことじゃないですか〜〜〜!!」
「う・・・!」
己の部下の状況に、うなるハマーン。
確かにどうしようもなかった。DC軍の保有するMS・機械獣のビーム・ミサイルなど、そのほとんどの武器がスーパーロボットの装甲の前には無力なのである。
「さて、ファンネルの燃料も少ないが・・・休めないか!」
「おっしゃ!いくぜ!うおおおおおおおおお!ど根性〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」
そして戦場に向かう間、全身から煙を吐き片手と頭部が吹っ飛んだ状態で、視界確保のためコクピットのハッチをあけて片足けんけんで突進していくレツのザクに、目が点になるハマーンであった。
「うおおおおおおおっ!」
ガトーの専用ゲルググの大型ビームライフルが火を噴く。連射されたビームはボルテスXの装甲の一点に連続で命中するが、貫通はしない。
「むうっ!これでも駄目かっ!」
「こんのこんのこんのぉぉぉぉ!!」
続いてキャラ=スーンのRジャジャがダイモスの頭の上に飛び乗り、銃剣で滅多刺しにする・・・が、折れたのは銃剣のほうだった。
「ありゃああああ〜〜〜〜〜!?」
上体をひねったダイモスに、振り落とされるRジャジャ。
「とぉぉっ!」
落ちかけるRジャジャをダイモスの正拳突きが砕く。
「りゃああああああああああっ!せいぃ!」
三節棍がうなり、地面をえぐる。
「ちぃぃ!」
木星軍のパイロット、バーンズ=ガーンズバックは間一髪で回避した。浅黒い肌に汗が流れる。
「やりやがるぜ、マシンスペックもたいしたもんだが、こいつは少し他のとパイロットが違いやがる・・・だがよ、こっちも退けねぇんだ!」
とはいえ。
本来宇宙戦闘用で、しかも低コスト低スペックを目指した小型量産機のバタラと来ては、歴戦のパイロットでもどうしようもない。
しかも持っているビームガンの出力も低い。足をおりたたんで飛行する機能も、地上ではあんまり役に立たない、「テツジン」などの大型機開発以前の産物である。悲しいほどに無力だった。
「だぁめだ、弾丸切れだよ!」
マシュマーやキャラと同じくアクシズからきた女性NT、イリアもお手上げ状態。
ずん!
コンバトラーVが一歩踏み出す。
ずずん!
ボルテスXも一歩。
ずしん!
ダイモスも一歩。そろって50メートルクラスの巨体なので、MSの視点からはすさまじい威圧感だ。
「さぁて、年貢の納め時だっ!」
その後ろ、身長100メートルのダイターン3が胸を張る。
がっしゃぁぁぁん!
そして、マジンガーZとゲッターロボが地面にたたきつけられた。
「これで勢ぞろいって・・・ええ!?」
ふっとんできたマジンガーZは、地面に長々と横たわっている。機体にそこまでの損傷はないが、パイロットが衝撃で気絶していた。
一方ゲッターロボのほうは、まるで地雷でも踏んだかのようなひどい有様、ゲッター2形態で足の部分がぐしゃぐしゃに千切れている。
「おおっ!」
ロンド=ベルとは逆に、DC軍は歓声を上げる。リューネのヴァルシオンと、白鳥のテツジンだ。
「さぁて、ワンサイドゲームはそれまでにしてもらおうじゃないの。そういうの、好きじゃないんだ。」
見得を切るリューネに、ビアンが注意する。
「今度は手加減が出来る相手と思うな。全力でいけ。」
「わあかってるって。」
軽口と対照的に、リューネの表情は緊迫感にあふれている。
「あの二体のように、偶然に頼るわけにはいきませんからね。」
白鳥もうなづく。
なんとマジンガーとゲッター、リューネが放り投げたジェットファイヤーP1用の高性能爆薬を踏んでしまい、直撃したゲッターは大破、巻き込まれたマジンガーは衝撃でパイロット失神してしまった。まだ戦ってもいないのに。
数では4対2。だが性能差は今までほどではない。
「・・・いけるかっ!!」
まずリューネが飛び出した。ヴァルシオンの巨体を出来うる限り俊敏に動かし、急接近。一気にボルテスVの懐に飛び込んだ。
「なにっ!この大きさで・・・早い!」
「せぇいっ!!」
巨大剣、ディバインアームを振るり、ボルテスの胴体を思い切りなぎ払う。
「なんのぉおお!!」
ボルテスもたまらず天空剣を抜き放つ。その手を左手で強引に押さえ込み、天空剣をはずした胸部の、まさに天空剣がついていた部分にディバインアームを思い切りつき立てる。
「うわああああああっ!」
「健一!大丈夫か!?ビッグブラ〜〜ストッ!」
コンバトラーVがボルテスXを助けようと、巨大ミサイル・ビッグブラストを放つ。
爆発。
もうもうたる煙にヴァルシオンが包まれる。
「やったか!?」
確認しようと身を乗り出したとたん、直撃を受けたコンバトラーは吹っ飛んだ。煙が収まると、そこには刺したボルテスを盾に、クロスマッシャーの発射体制を取ったヴァルシオンの姿が。
「はぁ・・・。」
こういう冷静な方法を平気で取れる自分が、リューネには僅かに疎ましかった。
少なくとも、年頃の少女のやることではないだろう。
僅かにそんなことを考えたのが、隙となった。
「双龍剣ッ!!」
ダイモスの双龍剣が、ヴァルシオンの背部装甲をざっくりとえぐる。
「きゃっ!?」
転倒するヴァルシオンだが、ビアンは何も言わない。言ったところで岡目八目の口出しは集中しているパイロットには邪魔なだけ、と心得ているようだ。
あるいは、自分の作ったヴァルシオンと、自分の訓練したリューネの腕を信頼しているのか。
「ゲキガンビーーーーームッ!」
ズガァァァァァン!
「陽炎をともなう黒い光条の束」のようなものが、ダイモスの顔面を直撃した。テツジンの主力兵器、重力を制御して高重力を相手にたたきつける「グラビティブラスト」だ。ゲキガンガーをモデルに製作されたテツジンなどに搭載されているため、「ゲキガンビーム」と呼ばれることのほうが多いが。
「うおおおおおおっ!!」
後退するダイモス。転倒したヴァルシオンをかばうように、同じく木星超技術で得られた時間コントロール式瞬間移動「ボゾンジャンプ」でテツジンが現れる。
「リューネさん!ここは私に任せてくださいっ!ゲキガンパァンチ!」
ロケット噴射で両腕を発射・加速したたき付ける、いわゆるロケットパンチだ。ただしその手の爪には重力利牙がかけられており、命中時の威力は集約され・すさまじい破壊力となる。
がごおおおおん!
ダイモスの両肩に、相次いでパンチが炸裂する。もんどりうって転倒するダイモス。
「大丈夫ですかっ!」
白鳥は心配そうな声を上げると、ヴァルシオンを助け起こそうとした。それは「木星を守る正義の味方」として、他国の軍とは異なる訓練を受けた優人部隊としては、当然の行動だった。
「リューネさ・・・」
ズドン!ブン!
どうどう、と倒れ臥す音。
ゆっくりと立ち上がるヴァルシオン。それと同時に、起き上がったダイモスと・・・ヴァルシオンの後ろにいたダイターン3が倒れる。
ダイモスには、クロスマッシャーのこげ後が。ダイターンには、ボルテスXの落とした天空剣がつきさっていた。
「・・・ん。」
白鳥が言い終わらないうちの早業であった。
「・・・戦い、だからな。」
言い訳するようにつぶやき、テツジンの攻撃をくらいいながらも立ち上がったダイモスに瞑目する。そしてダイターンに一瞥をくれ、はき捨てた。
「ここは、お前の戦場じゃない。」
その呟きはきつくて、きつい自分に対していらだっているようで。
白鳥の胸に、ひどく残った。
「ふははは!楽勝楽勝ぅぅぅぅぅ!」
谷いっぱいにビアンの咆哮がこだまする。
「なんと・・・ロンド・ベルまでもが・・・!?」
青ざめる岡長官。対照的に、三輪は味方のふがいなさに顔を真っ赤にして怒っている。
「おのれ・・・!!こうなったら!!」
だっとコンソールにとりつくと、コンピューターに暗号コードを打ち込み始めた。
「な、何をする気だ!?」
ただならぬ三輪の様子に、岡はいやな予感がした。
「賊徒DCどもも役立たずのロンド=ベルも、まとめて吹っ飛ばしてくれるわ!水爆ミサイル、発射!」
予感は的中した。
「わーーーっ!やめーーーーーっ!」
あわてて中止コードを入れようとするが、遅かった。南極条約後も司令部に秘蔵されていた大陸間弾道弾が、すでに書類上閉鎖されたことになっているサイロから飛び出した。
「わーっはっはっはあ!」
三輪の笑いに押されるように、空を駆け上っていく。旧世紀世界を滅ぼすと言われ続けた、人類の負の一面が。
「う、撃っちゃった・・・」
呆然とする、司令部の面々。
「あ〜あ、結局かかわちゃった・・・」
コクピットの中、苦い表情で額に手をやるリューネ。
「いえ、そのおかげで我々は助かりました。」
しかも本人がやりたくなかった事にみなが賞賛を与えるのだから、ますます居心地が悪い。
そのとき、唐突に長距離通信がかかってきた。それも平文で。戦闘中の至近距離通信ならともかく、遠距離で暗号化なしということはよっぽどの間抜けが通信しているか・・・暗号化する暇がないほどの緊急事態。
「大変だ!オデッサの近くにいる部隊、誰か応答してくれ!大変なんだ!
「地上攻撃軍司令補佐のハマーンだ。どうした?」
即刻ハマーンが応答する。通信してきたのはアクシズ駐留木連艦隊のようだ。
「たったいま、連邦軍がそっちにむけて核ミサイルを発射した模様です!宇宙軍に連絡して迎撃しようとしたんですが、連絡がつかなくて・・・」
「なっ・・・」
報告のあまりのとんでもなさに、さすがのハマーンも絶句する。
いくら自軍が壊滅状態とはいえ、まだ現地に味方の生き残りがいるのに核兵器とは、正気の沙汰ではない。
もっとも、実はこの戦いで負けたら基地を核兵器で自爆させるようにとマ=クベがキシリアから密命を受けていたのを、ハマーンは知らないが。
「なんだって!?」
「ひえええええ!」
ゴットンが失神した。
「は、ハマーンさま!どうしましょう!」
あわててすがるマシュマーだが、ハマーンとて突然核攻撃とあってはどうしようもない。
「お、おのれ悪の連邦軍!そこまでやるか!?」
白鳥が憤る。これでは連邦軍、悪といわれてもしようがない。
騒乱に陥りかけるDC軍を、一喝が鎮めた。
「落ち着け!まだ手はある!」
総帥、ビアン=ゾルダーク。
「本当かい親父!」
「ヴァルシオンだ!」
「またそれ!?」
「いいから黙って聞け!このままでは我が同志の身が危ない!」
「!」
普段と違い完全に真面目な父の声に、リューネは口をつぐんだ。ビアンは語る。
「ヴァルシオンのメイン動力炉を臨界ぎりぎりまでもって行き、クロスマッシャー攻撃用のエネルギー放出装置を反転させる!こうすれば理論上核攻撃と放射能にも耐えるバリアーが使用可能だ!みな、早くヴァルシオンの後ろに隠れろ!」
「ええと・・・動力炉リミッターカット・・・出力装置反転・・・エラー!?どうしよう、動かないよ!」
リューネの声が悲鳴に変わる。ビアンは苦虫を噛み潰すような顔。
「何!?・・・くっ、所詮はプロトタイプか!ええい!扉を開けろ!」
「なっ親父!?外に出てそどうするんだ!」
「手動で回線を反転させる!」
「無茶だ!もう時間が!」
ミサイルの落下まで、もう時間はほとんどない。ヴァルシオンの中にいれば助かるかもしれないが、外では・・・言うまでもない。
「だからといって座して看過するか!?目の前で仲間が核の業火に焼かれるのを!」
そういわれては反論しようもない。リューネは扉をあげた。ひらりと飛び出したビアンは、手早く整備用のハッチを開け、回路を操作する。
「・・・成功だ!バリア展開!」
キン!ガラスのコップをはじくような音とともに、光の壁がDC軍を囲む。
「親父!早くコクピットに!」
叫ぶ。もう時間がない。
だが父の返事は、完全に予想外のものだった。
「馬鹿者が!バリア展開したあとでそんなことが出来るか!」
「なっ・・・」
胸を張って、朗らかな表情で、ビアンは言った。本来絶望を意味しているはずの言葉を。思わずコクピット内で立ち上がりかけるリューネは、そのとき初めて気がついた。父がいつも身につけていた、何の写真が入っているのかも秘密にしたロケット。それが自分のひざに置かれている。
「リューネよ、我が娘よ、よく聞け。これからDCは、いや人類はさらなる苦境に立たされるだろう。地球人同士で争っている場合ではないというのに、結局我がDCも争いの場と化してしまった。」
僅かに悔いの表情を見せるビアン。リューネは16年生きてきて、初めて父のそんな顔を見た。
「私が宇宙からの侵略の前兆を見つけたのは16年前、丁度お前が生まれたときだった。木星で発見された地球外文明の遺跡に、「やつら」が帰ってきたのは。連邦はコロニー独立派の陰謀だと断定したがな。悩んだよ、母さんと一緒にな。お前がこれから生きる時代が戦乱の時代となるのだと思うと、とても悲しかった。だがな、母さんは言ったんだ。」
「母さん、が・・・?」
母親のことは、それまでの訓練の日々の中で父は一度も語らなかった。親子とも、暗黙のうちに避けていたといえる。
「生きている限り、人は幸せになることが出来る」あいつは、そういった。だから私はお前に生き残るための力を与えながらも、人の心を残した。」
不意にビアンの声が叫びに変わる。
「「人の心は、戦いに日々に時に悲しみを生むだろう。だが!それ以上の幸せを、いつかお前が得ると信じている!!ゆけリューネ!この地をこの海をこの空を!」
空を、ミサイルの噴射炎が切り取る。
「生きろ!」
そして荒れ狂う光が、すべてを飲み込んだ。
「お・・・親父ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」