続・よく似た三人〜他人の空似編〜




この「続」で取り上げる三人は、先の三人と違い、ことさらの関係は存在しない。(うち一人は先の三人と同じ監督の作品に登場しているが)
だが・・・なんか似ているのである。それも、比較的出現時期が近く、先の赤毛三人と比べるとまた違う独特の女性悪役としての個性を持っている。
この三人はそういう意味で、先の三人とは異なる「何故類似したのか」という観点から、実に興味の尽きない存在である。

その三人とは。
「デビルマンレディー(アニメ版)」登場の「アスカ蘭」(原作とアニメ版ではそのキャラクターは、というか作品自体大きく異なる)。
「円盤皇女ワルキューレ」第二期に登場した「ワルキューレ・ゴースト」。
「ローゼンメイデン」並びにその続編「トロイメント」登場の「水銀燈」。

外見共通項としては色素の薄い髪(金乃至銀髪)、内側に向かい頬をぎざぎざに縁取るようにハネる髪型、鋭くも謎めき、嗜虐的な印象を時に帯びる瞳(余談だがアスカの瞳は青、ゴーストのは赤、最後発の水銀燈はその二人を混ぜたような紫色である)、独特の笑みを浮かべる口元、そして大人の色気を感じさせるプロポーション(水銀燈は前二者ほどではないが、7人のドールの中では一番年上の外見デザインを施されている)といったところだろうか。
目は口ほどにものを言い、そして口も言葉を発するだけではなく笑う、つぐむ、ゆがめるなどのさまざまな表情によって時に言葉以上に雄弁に「語る」。
彼女たちはみな、そういった「表情での語り」に強い印象を残す。鋭く細められた目元で、亀裂のような笑みを浮かべる口元で、せりふを解さずに彼女たちは強烈な悪意殺意を見せ付ける。そういった意味で、実に主人公に対する敵対者として魅力あるキャラクターたちである。
そして無論、単純な敵対者としてだけの存在ではない。いずれも、強い魅力を有している。
どこか常に影を、独特の陰湿な色香を纏い、それでいて爛れているのとは違う不意の鋭さを持っている。「よく似た三人」の面々のような直接的なサディスティックさではなく、より影の、闇の印象を纏いながら、常に見下すような高慢さを持ち、さりとてそれが単なる高飛車ではなく、貴族的な優雅さを持っている。
故に、見下すような視線、嘲笑するような口元が、同時に、しかも極めて強烈な印象を持って「決まる」。
だがそれだけでなく、そのように支配者然とした態度を貫きながら、どこか憎めないところがある。(「憎めない度」は、アスカ蘭が一番少なく、ワルキューレ・ゴースト、水銀燈と、年度を下るごとに増加しているように思える)
敵として強大であると同時にキャラクターとしての魅力・・・敵として、ライバルとして、黒幕としてのそれを除外しての・・・を感じることが出来る。それも特有の引力、支配的な威圧感と女性的な色香を両立して。

そんな彼女たちのキャラクター性の共通特長としてあげられるのは「飢え・欠落」とである。
アスカ蘭は、遺伝子変化による新たな存在・デビルビーストが増加する世界で、それとは違う人類の進化の可能性、オーキッド因子を唯一持つ存在であり、その孤独と言う恐怖から逃れようと己の中の因子を活性化しゴッドチャイルドとして覚醒せんとし、そのための道具として己が最後に執着した獣(デビルマン)不動ジュンを生贄として必要とした。
ワルキューレ・ゴーストはかつて自らを生贄として故郷の星を救った四皇女の悲しみの化身であり、得られなかった幸せを求めるため、理想の存在、「幻の恋人」に似た存在であるワルキューレの想い人・時野和人を手に入れるべく行動した。
水銀燈は互いに戦い完全な存在となるよう製作者から命じられた人形の内最も製作者たる父への想いを強く持っていたが、その一方でその体は不完全、未完成のままで、故によりいっそう「完全な存在でありたい・なりたい」という願望を強く持ち、それ故に他のドールへの襲撃を繰り返した。

水銀燈の腹部パーツ欠損からくる完全存在アリスドールへの渇望はその最も明確な例であるが、いずれも何らかの「飢え・欠落」そこから来る「渇望」を満たすため、悪と呼ばれうる道を歩むことになった。
これは完全な鏡だったり同等に同じような要素を別比率で持っている存在として生まれたが故に後天的な欲望で破滅する「よく似た三人」のほうの三人(イクサー2、ノヴァ、万華)とは、丁度逆と言うことが出来る。

対抗・対立するのではなく、欲するというより切実な要素を動機とすることによって、この三人は強大でありながら繊細、深い闇でありながらどこか脆さを最初から含有することになった。
そして後天的に、話の中で弱点が生まれていくのではなく、最初から、キャラクター造詣の基礎の部分に弱点を持っているということは、逆に強さになった。
途中で生まれる弱点は見えやすく突かれやすい。また当人も生まれたことにすぐには気づかないから防御するということを知らない。
だが最初から弱点を持っている彼女たちは、その上に拠って立つから、逆により強靭な存在となりうる。逆説的だが。

つまり弱点が明確な彼女たちは、その分弱点以外の面に関してはめっぽう強い。飢えを、欠落を衝かれるまでは、どれだけ他の部分を攻撃されても気にはしない。その一転以外は完全というのが、特徴なのだから。
そして、弱点の存在自体が、時として武器になる。弱点になるほど欲しているものがあるのだから、それ以外のものは彼女たちは何もいらず、それ以外の物事に関しては露ほども気にすることは無い。
故に「他の些事」に関してはどこまでも非情になれる。どのような手段もとりうるし、何者をも犠牲にすることが出来る。

そこから発生する旋律すら覚える鋭角な残虐美・冷酷美。それを生む決定的な欠落という儚さと、欠落ゆえの欲望と弱さが生む生々しさ、命ある人格としての存在感。

そのギャップ故に彼女たちは魅力的である、と言うことが出来る。


では、何故全く無関係なこの三人が、このような同種の魅力を獲得することになったのか。

ベースとなる作品世界、周囲のキャラクターを比較してみると。

・・・何やらワルキューレ・ゴーストだけ背景世界の第一印象が大きくとっ外れてコメディタッチな印象を受けるような気がするし・・・
・・・だがゴシック的な描写を覗けば水銀燈の周囲のキャラクターも面白い印象を受ける者が多く、寧ろ変り種なのは背景世界が一番シリアスでダークなアスカ蘭のような気もし・・・
・・・しかしキャラクター的な特徴からすれば寧ろアスカ蘭が一番背景世界になじんでいるというか周辺設定と調和が取れているかのようにも見えるが・・・


しかしここにおいて共通点を見出すなれば、それは、アスカ蘭、ワルキューレ・ゴースト、水銀燈の三人が、いずれも「それまでの状況を破壊する乱入者」であるということだ。
アスカ蘭は不動ジュンを普通の表の世界から獣の血飛沫舞い散る戦いと狂気の世界へと強引に連れ込み、そして最終的には世界の秩序すら破壊するまでに至った。
ワルキューレ・ゴーストはそれまでの日常と人間関係を侵食し、最終的に時野和人とワルキューレ、その周辺の人間をを地球とヴァルハラ星を巻き込んだ戦いを巻き起こした。
水銀燈もまた、ジュン(偶然だがこの少年、デビルマンレディーの主人公と同名)にとっては非常識の世界からの乱入者であったし、真紅にとっては再び始まるアリスゲームと言う戦いを告げる存在であった。


いずれも、二つの世界を・・・それも穏やかな世界と闇の世界を繋げ誘い騒乱を巻き起こす存在。

だからこそより強い闇、影、狂気を抱かせるに足る渇望がインパクトとして必要であり、そして渇望を生む欠落、すなわち弱さが、キャラクターとして必要であった。
異なる世界からの使者たる存在が完全な弱点も無い代わりに個性もない闇の徒であれば、それは実に単純なことになってしまい、その背景たる異なる世界までもが実に単純な、薄っぺらなものになってしまいかねない。

故に、一種の偶然の皮肉ではあるが、闇なる異界の者であるからこそ、人間的な弱さが必要になる、と。
そしてそれが強さになり、故に魅力になる、と。

必然であるが故に形態が生まれ、形態が魅力的であるが故にそれぞれ目立つようになり、目立ったからこそ共通性が見出されることになった。

以上が、今回取り上げた三人・・・アスカ蘭、ワルキューレ・ゴースト、水銀燈・・・が類似して見える理由とういうことになる。
この結論から見出される要素は、キャラクターを作成する前段階から来る周辺事情や立ち位置も、キャラクターに重大な影響を与えることがあり、そしてそれを生かすことによりキャラクターを魅力的にすることが出来る、と。

先の分析結果とあわせて使用することになり、よりいっそうキャラクター作成の一助とならんことを願うものである。以上。



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