超光戦士シャンゼリオン

最近DVD化されようやく人目に触れる機会が増えた(後シャンゼリオン=涼村暁役の役者さんが「仮面ライダー龍騎」で最凶最狂の仮面ライダー・王蛇の役をやったことでも有名になったか)が、それ以前はある意味「知る人ぞ知る」といった印象だった、通好みの特撮ヒーロー作品。

この作品、とにかく超能天気な主人公・涼村暁が鍵であり要である。何しろ異次元からの侵略者・人の生命エネルギーを食べる怪物であるダークザイドと戦うために作られたエネルギー・クリスタルパワーを偶然浴びて超光戦士シャンゼリオンになっておきながら、「ラッキー!」と思ってしまう能天気振りである。戦いの重みとか人で無い体への苦悩とかそんなのはまるで無く、「これで俺もヒーローだぜ、イェイ!」である。ダークザイドと戦うためにクリスタルパワーを作り上げてきたSAIDOCのメンバーは皆「そんな〜!」である。

ダークザイドにしても、ステロタイプな悪役ではない。人間世界に人に化けて潜り込んだはいいものの職場に溶け込めず虐めに遭うもの、趣味に没頭してマニア化してしまうもの、ヒーロー番組に嵌ってオタク化するもの、音楽に興味を示す者など・・・

それらを束ねるべき幹部達もそんなダークザイドを纏めるのが精一杯で、とても有効な侵略やヒーロー対策など出来ないでいるし、祖国が滅んだが故にこの世界にやって来て、まるで亡霊のようにこそこそしなければならない己の立場を憂いたり・・・

ライバルキャラに分類される(筈なんだが、こいつも相当変。「知っているか!」と妙な薀蓄を語るのが大好きだったり、ライバルの座を他の連中に剥奪されそうになったり)暗黒騎士ガウザーなど、「人間世界に不慣れなダークザイド相手の相談所を開いて地盤を固め、ダークザイド東京都知事選挙に立候補し当選、合法的に地上進出を目指す」というある意味とんでもなく凄いことをしでかし、最終的には武力で東京を独立させその皇帝になろうとした。

そして、基本的に全篇ギャグの嵐なのだが、主人公・涼村暁が惚れて、生涯をともにしていいと思った女がダークザイドで、倒さねばならない敵だった「さよなら、ジロウ」など、時々相当な傑作が混じっているのが曲者。前出の暗黒騎士ガウザーも覇道を目指しながら人の女に惚れてそして失恋し、それでも必死にその女を守ろうとして、恋が芽生えかけるものの結局は互いに立場を超えることが出来ず、戦いの中で死んでいく・・・

そしてある意味最大のギャグ編である「ヒーローの先生」も、見方によっては実は悲劇だ。「ヒーローらしいヒーローと戦って倒される」ことを夢見るダークザイド・ゴハットがシャンゼリオンのあまりのヒーローらしくない行動に文句を言う話なのだが・・・考えてみると彼、「最初から倒される」ものと諦めて、「それならせめて」と行動しているのである。そして結局その熱意?に負けて暁は宮内洋かと見まがうかっこつけの登場や、宇宙刑事系のアクションを駆使してゴハットを倒すのだが・・・このとき「ヒーローらいs区なる」ことを嫌がる暁という描写が、驚愕の最終回につながってしまうのである。

シャンゼリオンの最終回・・・それはなんと、今までのギャグたっぷりの面白おかしいシャンゼリオンの活躍は、現実には激しく悲しく苦しい、絶望的な戦いを強いられる戦士シャンゼリオンの見た、もう一つの可能性の儚い夢だった・・・という驚愕の展開。

しかしそれと同時に元のギャグ世界の暁も「自分がシリアスになった夢を見た」といっており、一体どっちが本当なのか分からないまま終わると言う、ある意味究極に前衛なストーリーだった・・・

是非、見るべし。

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