神話とアニメの関係
神話とは・・・とりあえずガイガイガーFINALとか言わないように。
えー、しょっぱなからボケかましていては話が進まないので、もう一度。
神話とは。この世に知性と言葉、そして創造力を持って生まれた人間が、己の周囲を取り巻く世界を己の(
比喩的な意味で)モノとするために作り出した「世界の説明」であると同時に、「最初の物語」であった。
以後人は人たる証明の心を安んじるためにいくつもの物語を生み出してきたが、そもそも物語のみならず人
の行動は祖形の反復、1%の創造と99%の模倣から形作られているとするならば。人の創造の一形態であ
るアニメーションにおいて、神話が新たな形で再現されるのは一種の必然なのであった。
と。
逆に無意味に小難しくしても仕方がないような気がするし、読む人も書く人も疲れる。
従って真面目かつざっくばらんに、という、我輩には存在しないも同然のバランス感覚を要求される文体
で、率直に言うと。
アニメにおいて・・・いやアニメだけではなく漫画やライトノベルにおいても、神話をそのモトネタにし
た作品は多く存在する。神話だけではなく、神話に近いような伝説などの類(たとえば西遊記など)も、
同じようにモトネタにされる。
何故そのような作品が多いかというと、これは各個たる理由が存在する。
まず第一に、神話は面白いのだ。
伊達や酔狂で崇拝されたり数千年を超えて今まで語り継がれたりしてはいない。残るだけの価値が存在する。
何よりはるか昔のものなので、オリジナルな、一から作り出されたゆえのバランスの良い要素も揃っている。
第二に・・・著作権もくそもないので、原作料など要求される心配も無い(笑)
第三に、それでいて「神話伝説の類」を素材とした創作は、中々これでどうしてクリエイティヴで、やる気を
刺激するのだ。
全くそのままでは駄目である。さりとて、何が何だか分からないくらい変えては、素材の味を台無しにして
しまう。その匙加減は、一から造るのに遜色の無い知的興奮が味わえるというもの。
神話伝説から創作するにあたり、いくつかの手法がある。
一つはオーソドックスに、神話伝説の話をベースにして、絵や演出などをリニューアルし、キャラクター
に肉付けし、関係描写を強化するなどしてより面白くするというもの。
これの近年の成功例が「仙界伝封神演技」である。あれはまぁ原作漫画のほうがいいのだが、それにして
もヴィジュアル・ストーリーともに原作の味を殺さずに同時に驚くばかりの新しさを作り出しているのは
評価できよう。
あと、「ヤマトタケル」もまた忘れがたい。独特な絵柄の中で、重厚な巨大ロボットとして描かれる日本
神話の神々・・・ドラマも中々良質。
それとは別にあるのが、エッセンスのみを抽出しちりばめ、ストーリーの重みと香辛料とするもの。
これに関しては、それこそいちいちあげるのがめんどくさいほどの例がある。
「神八犬伝」「新世紀エヴァンゲリオン」など・・・って、これらはそれぞれ南総里見八犬伝とキリスト
教神秘学だから、微妙に違うかな?
そんな中、神話系アニメ(と言う分類は普通しないが)の最新作ともいえる「魔探偵ロキ」は、そのオリ
ジナリティにおいて中々卓越していると言ってもいい。
この物語、北欧神話をその根幹におきながら、最初はその要素をあまり出すことはしない。主人公の少年
探偵の名他登場人物が北欧神話の神々の名を持ち、限定だけど特殊な能力を持つこと、くらいしか。
だが、その物語が進むにつれ、徐々にその神話性が濃さを増し始める。神話に由来を持つ登場人物が増え
始め、それぞれの因果から物語が「本来の北欧神話」に徐々に近づき・・・ながらも、一ひねり二ひねり
効かせてくれる。
まず第一に、主人公の選択からして面白い。ロキという神は北欧神話の中では善なる存在とされるアス
ルト神に属しながらも、いたずらにしては度が過ぎるやりくちで場を引っ掻き回すのを主な行動とする、
いわゆるトリックスター。出自からして神々というよりはその敵である巨人族に近い。北欧神話において
はとうとう美の神バルドルを罠にはめて殺してしまい神々に封印され、最後の戦いの時には巨人族に子供
三人(世界を取り巻く巨蛇ミドガルズオルム、神殺しの宿命を持ち事実オーディンを食い殺した魔の狼フ
ェンリル、戦い以外の病死など北欧人にとって名誉の無い死に方をした者の魂を管理する地獄の女神ヘラ)
とともに神々と戦い、ともに滅んでしまう存在。
そんな不確定要素名存在からの視点で、北欧神話に沿っているのか沿っていないのか、極めて微妙な世界
観で物語をくみ上げる。
第二に、原作においてない要素を、味付けといえない大々的な範囲で盛り込んでいるということ。
たとえば東山和美=ヘイムダルとロキ、この二柱の神に原作北欧神話においてはそれほどの関係は無いが、
この「魔探偵ロキ」においては両者は微妙な因縁でしのぎを削ることになるし、フレイヤや(まだアニメ
には出てないが)運命の三姉妹「ノルン」もそう。
そして、(これもアニメにはまだ出ていないが、原作漫画に出ている以上そのうち出るはず)巨人族の王
ウドガルト=ロキ。北欧神話を読んだ人なら大抵思うであろう「何で名前似てるの?」という問い。
原作(北欧神話)では語られざるこれが、今後どうも話しに絡んでくるようだし。
そして第三。
普通、この手の神話原作モノにおいては、登場人物全員が原作神話からとられている。
しかし、この魔探偵ロキでは。
大堂寺繭良(だいどうじまゆら)をその筆頭に、神話外の「人間」が大々的に参加し、物語に関与してい
る。まぁ実際にはそれほどでもないが、今後どう転ぶかは分かったものではない。トリックスターのロキ
以上に、「神話」に対する不確定要素である。
ただでさえ「北欧神話+推理モノ」という面白い取り合わせだが、これらのひねりが、この作品独特の面白
さとなっている。
北欧神話は、神話としては珍しく明確な終末・・・神々の最後の戦い(ラナグロク)という「最終回」が
存在するという特徴があるが、この「魔探偵ロキ」においてはどうなるか分からない。
神話を原作的に活用したとしても、それに縛られる必要は無い。
アニメーションであれなんであれ、逆説的に言えば物語は皆、堂々たる神話なのだから。
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