『対成す者』


夏休み9日前。
「あ〜ん、なんであんな本読んじゃったんだろ!」
文句を言いつつ、帰り道を走る鈴璃。
夏休みの読書感想文用の本を借りに図書館に行ったのが運の尽き、偶然見つけた変な本を読み耽っている内に、外は真っ暗になっていた。
「ユキも迎えに来てくれたっていいのに〜」
関係ないのに文句を言われる雪瑠。
そんなことを言いつつ十字路を曲がろうとした時
「え?」
唐突に頭上を何かが横切った。
慌ててその方向を見ると、大魔法研究会の機魔神と思わしき影とそれを追う見覚えのある人影が見えた。
「柾と・・・陽極神!?」
驚いて名を叫ぶ鈴璃、そして後を追うべく変身する。


「たしかこの辺りに降りたはず・・・」
追跡して近所の空き地近くに来て、辺りを見回す。
「あ、いた!って、え?」
ようやく発見した時、鈴璃はその状況に驚いた。
少し離れた場所で、陽極神と思われる人影の傍らに、機魔神が魔方陣で捕縛されていたからだ。
フチコやカルラから聞いた話では、陽極神は攻撃技が主体で結界の類は使えないとのことだったからだ。
ところが今目の前で機魔神は結界に捕縛されている。
更に陽極神だと思っていた人影が、予想とは微妙に異なった姿をしていたのだ。
格好自体は同じだが、服は黒を基調とし、背中に金色の翼を生やして、剣の代わりに玉飾りの付いた杖を持っている。
そして
「C(コキュートス)・フリーズ」
「ガ・・・・」
周囲に響き渡る静かで透き通った声で唱えられた魔法、それを受けた機魔神が一瞬で凍りつき粉々に砕け散った。
「え?え?え?」
状況がまったく理解できない。
さっきの声とパステリオンアイで見た黒い陽極神の体は明らかに女性のもの、しかもほんの少し身長が低い様だ。
取り合えず声を掛けようとしたが、その時にはもう黒い陽極神は翼を広げどこかへ飛び去っていた。



翌日
「陰極神?」
「うん、帰ってからフチコに聞いたら多分そうだって」
学校で美砂希に昨日の出来事を話す鈴璃。
「それでね、柾利くんのこともあるし、ユキが正体を知ってるかもって思って聞いたら、いきなり真っ青になって倒れちゃって・・・」
後ろの雪瑠の席に目をやる。
「それで今日ユキちゃんが居ないのね」
帰ってきてからずっと、槍が降ろうが嵐が来ようが登校していた雪瑠が今日は居ない。
「うん、まだ目を覚まさないんだ、何だかうなされてるし」
「そうなんだ・・・ところでスーちゃん、今日このクラスに転校生が来るんだって」
適当なところで話を変える美砂希。
「え、そうなの?夏休みも近いのに?」
「う〜ん、私も職員室で話を聞いただけだから・・・」
そう2人が話てる内に、担任が教室に入ってきてHRが始まった。
適当な知らせだけしてHRが終わり
「あー皆、今日は転校生を紹介する」
担任の声と同時に、その転校生が入ってきた。
ザワつきだす室内。
黒板に名前が書かれ自己紹介
「天之 水奈です、これからよろしくお願いします」
なんともお決まりの挨拶だったが、教室の誰もがそのことを気にしない。
あどけなくも、おしとやかさを感じる整った可愛い顔。髪は背中の真ん中まであり、先端を大きなリボンで止めている。
そしてその屈託の無い微笑み。
クラスの大半が彼女に見惚れ、固まった。
そして鈴璃と美砂希も別の意味で固まった。
名字の「天之」、読み方は有り触れているが、この字を当てているのは人物は一人しか知らない。
(あの名字・・・)
(もしかして・・・)
2人が顔を見合わせ、互いに頷きあう。

放課後
2人は帰り支度をする水奈の所へ行って、気になったことを聞いてみた。
「あのさ、水奈ちゃんって上に兄弟いる?」
「え?うん、お兄ちゃんがいるよ、ずっと離れ離れに暮らしてて、ようやく再会出来たお兄ちゃんが・・・でも、なんで?」
「え〜っと、私達の知り合いに同じ名字の人がいるから、もしかしたらと思って」
間違っていたら困るので誤魔化しながら聞く。
すると水奈が2人のポケットに視線を落とし、納得したように頷くと顔を近づけ小声で
「・・・お兄ちゃんから話は聞いてるよ、これからよろしくね、パステルレッド、パステルイエロー」
「!!」
「じゃ、じゃあ・・・」
「うん、私がお兄ちゃん―陽極神と対成す者『陰極神』だよ」
胸に掛けた勾玉を見せる。
「よろしくね、すずちゃん、ミサちゃん」
「・・・・・・プ、アハハハハ」
「水奈ちゃん、「よろしくは」一回で良いと思うよ」
「え?え?あ、本当だ、やっぱり私ってどこかヌケてるのかな?」
「それに「すずちゃん」「ミサちゃん」って、水奈ちゃん意外とやるね」
「何が?思いついたまま言ってみたんだけど気に入らなかったかな?」
「ううん、それで良いよ、それと、こちらこそよろしくね」
「よろしく水奈ちゃん」
すっかり仲良くなった様子の3人。
玄関まで話しながら歩き、校門の所でそれぞれの帰り道に別れた。


裏山へと続く道、いつの間にか隣を歩いていた柾利に、水奈は今日の出来事を話した。
「そうか、よかったな友達になれて」
なでなでなで・・・
「あ・・・えへへ、うん♪これからは皆ずっと一緒だよ」
嬉しそうな水奈の頭を柾利が優しく撫でる。
幸せ一杯の兄妹の会話。
家に帰っても話す事はまだ沢山ありそうだ。





追記(蛇足)
「うう〜・・・ん、はっ!よかった、夢か・・・・って、私の出番こんだけ!?」







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