「通信」
その日村正宗は、普段は睡眠にしか使わない私室で何者かと通信していた。
壁の一部の丁度長方形に配置された剣の内側、そこに相手の姿が映っている。
「・・・ああ、こっちの方は何も問題ない。そっちはどうだ?」
『順調だよ。主力の4人もちゃんと来てたし、いつでも迎撃体制を取れる状況になってる。』
通信の相手は村正宗の直属部隊である「カムイ衆」最強の改造人間にして、村正宗のパートナー
である御雷 神奈ことカンナカムイ。
十二天星本部「地天星」からバリスタス北海道支部「カムイチセ」へと移った彼女は、村正宗の副官
としてカムイ衆の統括と、その状況を伝える役目を負っている。
「4人・・・将真さん、レプンカムイはまだ見つかってないのか?」
『うん、こっちでもコロポックル隊を使って探してるんだけど・・・』
「そうか・・・見つかったら連絡してくれ、失敗したことの謝罪がしたいし、あの戦力は絶対必要だ」
『了解!ところで村正宗』
「なんだ?」
『いつぐらいならこっちに戻れる?』
「カムイチセに?どうだろう、戻れるならそうしたいが時間あるか分からんし、・・・しかし何でまた?」
『え?いや、まぁその・・・』
「どした?」
『・・・撫でに・・来てほしいな、頑張ってる私に「いいこ、いいこ」って・・・そしたら更に頑張れそうだから・・・あぅ(赤)』
「・・・・・・・・・・・・・」
『あ、いや・・・カムイ衆って村正宗直属でしょ?一度くらい来た方が士気が上がるかなって』
「ふっ・・・分かった、時間が開いたら行く」
『うん、じゃあ今日はこのぐらいにして』
「ああ、また何かあったら連絡くれ、頼むぞ相棒」
『むぁ〜かして!そっちも頑張ってね、お兄ちゃん♪』
「誰がお兄ちゃんかっ!」
『あはははは』
ブツッ
通信終了と同時に映像が消え、剣が元の配置に戻る。
「まったく・・・・」
やれやれといった感じの村正宗。いつもは生真面目を通す村正宗も戦友(とも)である神奈と
話す時はどうしても地が出てしまう。
しかし、その顔はどこか晴れやかだった。
じーーーーーーーーーーーーっ
その様子をいつからいたのか、部屋の隅に座ったレン(猫型)が何か言いたげに見ていた。
それから数日後
「ピ、ピピ」
とあるビルの屋上で体長20cmほどの一体の小人ロボットが、その足下に目標らしき者を
発見した。
「ピ、ピピピ、ピー(霊子反応大、波形計測・・・目標“レプンカムイ”確認)」
笛の音のような電子音を鳴らし目標を確認、同時に背中に背負っていた蕗の傘を下に落とす。
「ピッピッピ(任務完了、総員帰還)」
降りしきる雨の中、ビルの間にボロボロのコートを着た男が一人・・・
何をするでもなく地べたに座り込み、曇った空を見上げている。
「・・・・・」
その足下には一匹の子猫、コートの下で男と同じ様に空を見上げている。
雨が小降りになってきた頃、頭上に何かが落ちてきた。
男はそれを手に取り、仲から紙を引き出す。
「戦いが・・始まる・・・か・・俺は・・・」
広げた紙を握りつぶし、立ち上がる。
そしてまた空を見上げ・・・
「俺は・・・こんな身体だ・・・だが」
顔を下ろし、伸びた前髪を掻き揚げる。
「今度こそ・・・何かを、大切な誰かを・・・守れるなら」
雲の切れ間から日が差し込み始める。
男はビルの間から出て歩き出す。
(俺は、この命を掛けて・・・戦う)
男の去った場所では、子猫を迎えに来た親猫が濡れていない我が子を不思議そうに見つめていた。
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