・おまけ
気が付くと、GS装甲をまとった状態で採石場に立っていた。
いや一見すればただの採石場だが、周囲から感じられる空気はただ事ではない。
正義のヒーローの放つオーラの残滓、倒された悪の戦士達の怨念、それらが渾然一体となって空間を満たしている。
「まさかここは……」
「“いつもの採石場”ってやつだ。俺もよく来たもんさ」
背後からの声に振り返ると……そこに伝説がいた。
たなびくマフラー、輝くベルト、悪を焼き尽くさんとする炎のような赤い両腕。
「仮面ライダー2号……一文字隼人」
思わず零れた呟きをよそに、無言のまま俺の前へと移動する2号ライダー。
「……」
「……」
そのまま無言で俺と対峙する。
立ち姿から感ぜられる歴戦の勇士の貫禄。立ち上る闘気には怒りの色がハッキリと映っている。
そんな様子を見て思った……もの凄く気まずいと。
いや、変身してヒーローの格好だけど、どう見てもこれは『娘に手を出されて怒る父親』だろう。
心なしかCアイの横に井桁が見える気がするし……
「おい」
「は、はいっ」
なんて考えてる内に声をかけられる。
声、上ずったぞ今。
「歯ぁ食いしばれ!!」
「っ!!」
赤い拳が振り上げられ、そして
「ライダーー、パーーンチッ!!」
「ごっ!!」
視界いっぱいの赤、後頭部から魂が飛び出すほどの衝撃、浮遊感。
地面を転がり仰向けになって止まるまでに、脳が認識したのはこれだけ。
揺れる視界に変身を解いた隼人、さんがこっちを見下ろしているのが見える。
妙に頭ががスースーするので触ってみると、仮面が無い。あと兜も。
砕かれたのか、恐るべしライダーパンチ。
「ほれ」
差し伸べられた手に掴まり、起き上がる。
まだクラクラする。
「これで勘弁してやる」
「あ、はい。どうも」
まだ不機嫌という顔で、ぶっきらぼうに言う隼人さん。
それに返事をしつつ、何となく現状がどういうものか理解する。
「しかし、初めて夢枕ってやつに立ったが、こんな感じなんだな」
そう、夢なんだ。だから妙に第三者のような感覚が……って
「夢枕、初めて?」
「ん? おう、今まで出来なかったからな」
そうか初めてか。そうなのか、そうですか。
「よし、気が済んだし、コツも掴んだから、これから紫暮のことろにでも」
「待てや」
ん? じゃないだろう。なんだその不思議そうな顔は。
この、このっ
「クソ親父がぁ!!」
「がふっ!」
横っ面にぃ、渾身の一撃ぃ! 吹っ飛べ無責任親父!
「な、なにしやがっ」
「俺なんかを殴る前に我が子に会いに行けよ! 散々育児放棄してたろうが!」
いくら憎らしいからって、他にやるべきことあるだろが!
「ぐっ……言うじゃねえか、二股野郎のくせによぉ」
「掛けさせるほど良い女だったんだよ。あんたが放っといた娘はな」
ああ、こんな気持ちは初めてだ。
心の底から許せない。同時になぜだか笑えて来る。こんな感覚は。
「は、ははは」
「くっくっくっく」
さあ、やろうか!
「上等だクソガキ! 親の苦悩ってやつを教えてやる!」
「反面教師として聞いてやるぞ義親父様よ!」
「誰が親父だ、コラ!」
「あんたの他に誰がいる!」
「てめぇに娘はやらん!」
「もう頂いた!」
「このっ……」
「なん……」
翌日。清々しい気分で紫暮に会いに行くと
「聞いてくれ村正宗! 昨日夢に父様が……」
と嬉しそうに話しかけてきて、すぐに止め
「どうしたんだその顔? そういえば父様にも」
おそらくボコボコになっているであろう俺の顔を指摘する。
そんな紫暮の両肩に手を置き
「紫暮」
「な、なんだ?」
頬を染める彼女に言う。
「子供は男の子を頼む」
とびきり元気で腕白なのをな!
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