続・名台詞

「ロスコー君・・・宿命というものは確かにある。人は場所、時代、環境を選んで生まれることは出来ない。・・・故に生まれた瞬間にそれぞれの人間の生きる条件は異なっている。これが宿命です。そして、世界が残酷なのは当たり前です。生の始まりは化学反応に過ぎず、人間存在はただの記憶情報に過ぎず、魂は存在せず、精神は神経細胞の火花に過ぎず、神のいない無慈悲な世界でたった一人で生きねばならぬとしても・・・なお・・・なお我は意思の名の元に命じる。
『生きよ』と!!」

発言者 ディスティ・ノヴァ
銃夢Last Order
村正宗殿から推挙された名台詞。
心底のマッドサイエンティストでありながら、「業(カルマ)」を研究するが故に実にしばしば人の生き方について鋭い発言をするノヴァ教授。
「銃夢」でも幾多の名台詞(目下資料失逸、されどおいおい公開の予定)を展開したが、この「銃夢Last Order」でもやはりそれは変わらない。
宗教的要素などの未確認事項(あえて偽りと書かないのは、完全に実存を否定されたわけでもないから)を取り除けば、確かに人間という者の物理的構成要素はまさにノヴァ教授の言うとおり、あまりにも悲しく儚く、そして怖い。
しかし。
しかし尚・・・!
生きよ、そう彼は言う。人の業を見続けてきた彼が。多くの殺戮を成した彼が。人の空しさを誰よりも知る彼が。狂気の彼が。
意思の名の下に。
確かに・・・それこそ、死の、恐怖の克服こそ、意思。


「道で知り合った動物が、ふと見たら死んでいた。そんな時なんで悲しくなるんだろう?」
「そりゃ人間がそれだけヒマな動物だからさ。だがな、それこそが人間の最大の取り柄なんだ。心の余裕(ヒマ)がある生物・・・なんと素晴らしい!!」


発言者 新一 ミギー
寄生獣

村正宗殿から推挙された名台詞。
人間以外から見た人間の心・・・それはとても不思議なのではないかと思う。
生物として存在し続けるための「判断」以上に、様々なことを「思い」、そして時に「悩む」・・・しかしそれが、時に人間に生命体としてのポテンシャル以上の力を発揮させたりする。
そういう「心の面白さ」を捉えた台詞であるといえよう。そして、心の余裕が大切である、ということも。
「忙しい」とは・・・心が亡ぶと書く。


「・・・・・・・・・・・・一つだけ言っとく!自分を虫ケラだと思って、そこから這い上がろうとする奴は、虫ケラとは言わない!それは人間だ。」

発言者 ジェームズ・ウルフ
MASTERキートン
村正宗殿から推挙された名台詞。
異論なし!の名台詞である。否、異論があるんだったらかかってこんかい!と言うべきか。
まさに、それは、それこそが、人間である。


「戦うことが罪なら、俺が背負ってやる!」

発言者 乾巧=仮面ライダー555
仮面ライダー555一、いや平成仮面ライダー全部あわせても相当上位に食い込むこと請け合いの名台詞である。
戦いを、命を助けるために命を奪うという理不尽を、受け止めることを決意したヒーローの叫びである。


「偽善者と呼ばれるのも、自分の不甲斐無さに辛くなるのも、みんなが苦しんだり悲しんだりするのの代わりだと思えば、大丈夫多分耐えられると思う。斗貴子さんやっぱりオレ、このまま戦い続けるよ。」
発言者 武籐カズキ
武装錬金 和月伸彦

上の乾巧の台詞と同系列だが、こっちのほうがより精緻である。
傷ついた少年の心を、そしてそれでも尚友のために己の傷を甘受しようという覚悟を、静かに、だが強く、表す言葉。


「夢が見られない、未来を想えない、そんな世界はそれ自体で間違っている。でもそのことと戦うのは、残念ながらぼくではない。君や宮下藤花自身なんだ」
発言者 ブギーポップ
ブギーポップは笑わない  著・上遠野浩平

正義の味方(ブギーポップはそういう存在とは微妙に違うけど)が民事不介入(というかなんというか)を貫く理由がこれかな。
社会を変えるのは、あくまでその社会に生きる「人間」の仕事である、そういうことだ。
それと夢も未来もない社会は間違っている、という発言も珍しい。珍しいがしかし確かに紛れも無く正しい、故にこの台詞の価値はいや増す。


「そこなんですよ、みいこさん。ぼくは……ぼくは、これまで、たくさんの人を傷つけてきたんです。たくさんの人を不幸にして、たくさんの人に辛い思いをさせて、たくさんの人をないがしろにしてきたんです。姫ちゃんも、その犠牲になったようなもんだ。今更、このぼくが……こんなぼくが、誰かの死を悼もうだなんて……何人傷つけたか、何人陥れたか、何人騙したか、何人謀ったか、ぼくはもう憶えていない。何人裏切ったか、何人利用したか、何人売り渡したか、そんなことは最初から数えてもいない。好意に対して悪意を返し、恋愛に対して憎悪を返した。誰のことも信じちゃいなかったし、ぼくを信じる奴はみんな大嘘つきにしか見えなかった。誰に何といわれようと、誰に何を言ったところで、ぼくは全然平気だった。自分のことを無条件で好きでいてくれる人がいるなんて、考えたこともなかった。ぼくはとんでもない、そんな欠陥製品で、ずっと昔に手遅れで、だから今更、今更、哀しみを感じようだなんて、そんなこと――」
「いい加減にいろ!」
「戯れ言だかなんだか知らんが、そんなガキの御託が私に通じるかっ!まともに人と向き合ったこともない奴の言葉なんて誰の心にも響かない!そうやって自分には何もできないと決めてかかって落ち込んでるのはさぞかし気楽で気持ちいいんだろうがな!だけど、それを傍で見てるこっちの身にもなってみろ!そんなことじゃだ駄目なんだよ、どうしてそれが分からない!?」
「みいこ、さん――」
「みじめったらしくても悪足掻きでもいいから、とにかく何かを成し遂げろ!みっともなくても、じっとしてるよりは遥かにマシだろうが!足掻け、もがけ、それでいいんだ!みんなそうやって誤魔化しあって生きてるんだよっ!自分だけが苦労してるみたいな姑息な生き方を選ぶな!」
「いいか、よく聞け!おまえが何人傷つけて、何人陥れて、何人騙して何人謀り、何人裏切って何人利用して何人売り渡してきたとしても!どれだけ傷つけてどれだけ不幸にしてきたんだとしても!どんな滑稽でもどんな無様でも!手遅れでも今更でも!人間不信の欠陥製品でも、たとえおまえが人間失格の殺人鬼だったところで!」

「――どうしてそんなことが、おまえが悲しんじゃいけない理由になるんだよ」

発言者 <戯れ言使い>いーくん 浅野みいこ
ヒトクイマジカル 西尾維新

紫木一姫という娘が居た。不幸で、でもようやく幸せになってきて、生きていることもまんざらではないと思えてきた娘。
その子が。死んでしまった。打ちひしがれながらも、己の罪深さに慄き、悲しむことすら出来ない主人公。それに対する、とても熱く激しく強い、そして優しい励まし。

「お前が何であったとしても。」

簡単なようで、言えるかどうかなかなか難しい言葉。これをいえるって、凄い。

我が弟から推挙された名台詞。この戯言シリーズは正直我輩の好みからは外れていて少ししか見てなかったのだが。最近こんな台詞が出たぞ、といわれ驚く。

ホントに戯言シリーズ!?と驚いたり驚かなかったり。特に最後の、少し間を置いての台詞、その「間」に、我輩暖かさを感じる。

「ASYはこれより全力を挙げて、城護衆基地に突入します。一人でも戻ってきた隊員が居たら、今度こそ人々のためになるASYをやらせてくれると、約束していただけますね。」

「我々ASYは、今日生まれる。」
発言者 中原克海
奇鋼仙女ロウラン

それまで「正義の組織」という建前で結成運用されながら、結局は野望と権力闘争のために使役されてきた組織・ASY.
その最後の出撃時に、司令官が言った言葉。
切実で・・・凄く格好いい。

「これより、NSXのすべての指揮権をサブコマンダー、ジェオ=メトロに委譲。FTO発進後、彼の指揮に従ってください。」
「・・・FTO,ゴーーッ!!」


発言者 イーグル=ビジョン
魔法騎士レイアース CRANP

イーグル=ビジョン。一見女の子みたいに笑顔が綺麗で華奢な青年(背はヒロイン=獅堂光よりも結構高く180近いと思うのだが、周囲の男ども、ランティスとかジェオなど軒並み2m超えてるので小さく見える)なんだけど。
その実かなり「漢」度が高いキャラクター。あと幾日で死ぬか判らぬ不治の病を抱えながらもそれを仲間にひた隠して祖国のために奮闘し、光を捕えたときも紳士的に扱うし。
病身であることがばれても尚毅然と「僕はファイターです、死ぬときは戦士として死にます。」と言い切る。
そして最後の最後。戦いの結末がどうあれ祖国を救うと約束した光たちを守るため、部下の制止を振り切って最後の出撃に望む。この台詞、文字にすると普通のように見えるが声優・緒方恵美の演技が上手く、また艦内放送という形から独特のエコーがかけられて凄くよく「響く」のだ。
出撃後は衰弱ゆえ今までの戦いのような華麗な機動を乗機・FTOに取らせられず、光たちの魔神(マシン)の楯となって血を吐きながらもがくような戦いを見せるさまも、またその決意の具現として作品を引き締める。

「何があったのか知らないけれど、貴方達裸になったらどっちも同じじゃない。」

発言者 天樹ミキ
超攻速グランドール

戦いの末身も心もボロボロになり、挙句雨でびしょ濡れになった天樹ヒカル=グラン王家伝説の鎧を受け継ぐ超攻速グランドールと、その力を狙うグラン星革命評議会の少女戦士シギル。
行き場をなくしたシギルはヒカルに彼女の家につれてこられるのだが、本来敵対関係にあるシギルは警戒を解こうとしない。
そんなシギルの濡れた服をイキナリ脱がしちゃったお母さんの台詞がこれ。

お母さんは事情を詳しく知らないのだが、この台詞はなかなか秀逸である。裸の、一個の人間として、対立する者とて何の違いのあらん。


「・・・悪いな。これが魔界にも天界にもいない、人間って奴だ・・・」
発言者 与謝野緋奈
ばいおれんす☆まじかる!〜九重第二の魔法少女 林トモアキ

「貴方のような美しい心の持ち主は天界でも魔界でも見たことが無い」と自分に惚れた敵魔族・エルシフを勝利のため心ならずも相手の愛に付け入っただまし討ちのようなやり方で倒さざるを得なかった緋奈の言葉。
その口調と表情は、あまりに苦く。
この後の別れも含めて、ヤクザで魔法少女、という存在の苦さと美しさがひときわ際立ったシーンだった。


「撃つがいい・・・憎しみによって放たれる魔力は、魔神への格好の貢物!」
「違うな。
義理、仁義、愛・・・言い方はいろいろあるけどな・・・お前に分かるか?あたしは今、知った・・・!」
発言者 エンペローペ 与謝野緋奈
ばいおれんす☆まじかる!〜九重第二の魔法少女 林トモアキ

第一巻最終決戦、魔族の長エンペローペは魔神復活のため、緋奈の憎しみをあおろうとするのだが、緋奈はその手には乗らずこう言い放つ。
これが、彼女の戦いの力だと言うのならば・・・彼女の強さの理由は誰にでも分かるだろう。この想いを抱いて戦う者ほど、強い者は無い。(無論ここでいう「義理」とはマイナスの意味ではなく、義理人情の義理。ヤクザ魔法少女と言う彼女の存在の特性である)

「正気か!?」
「私は機械だ。正気など持ち合わせてはいない」

「この国を守れと。私の記憶に残る、麻生博士の最後の言葉だ。この国はもう二度と、核で汚してはならない。戦火にさらしてはならない。そして、この命令はあなたの承認も得ている。」
「この・・・役立たずめがぁ・・・!」
「肯定しよう。私は一人も殺せなかったType・G(ジェノサイド)だ。」
発言者 ミスターB No1008A−Type・Gテトラ
ばいおれんす☆まじかる!〜核の花咲く日曜日 林トモアキ

ばいおれんす☆まじかる!の感想でも言ったが・・・格好よすぎるぞテトラ。ロボットだから言える言葉、戦うことを宿命付けられた第二次大戦中に生まれた鋼の兵士だからこそ際立つ態度・・・
正に、「鋼のダンディズム」である。



「・・・私もだ・・・・・・だから、戦う。」
発言者 レイラ=アシュレイ
AVENGER

いつも無口で、無表情で、目を鋭く光らせ復讐のためだけにさすらい続ける女レイラ=アシュレイ。
そんな彼女だが、旅のつれであるネイが病に倒れたとき、自分で思っていなかったほどの混乱を示す。復讐だけのために生きる、そのはずだったのに。守りたい、でも守れない悔しさ悲しさ、この思いは何だ。
そんなとき、都市での格闘戦に出て勝てば、薬が手に入るということが明らかに。
ネイは自分のためにそんな危険なことをしないでくれと言う。レイラに居なくなって欲しくないから。それに対してのレイラの答えが、これ。
いつものように言葉数の少ない低い声。しかしその口調は柔らかく、その目は優しく。守るための戦いを選択した、優しさが溢れていた。

「生きているなら、努力すれば何だって出来ます」
発言者 おキヌちゃん
GS美神極楽大作戦!(アニメ版)
気のいい幽霊少女(こういうとラブコメ向け設定とか言われそうだが、さにあらず。この手のいい幽霊ってのは江戸時代の落語に端を発する)おキヌちゃんが浪人生を励まして言った台詞。
暗に「死んでいる自分には出来ませんけど」といっているようで深い。

「この子は何も悪いことしてないのにね、かわいそうにね。」
発言者 ムツジロー
MOON

既存のRPGに色々と挑戦するゲーム「MOON」。勇者が人の家の箪笥をあさり、モンスターを虐殺する世界。動物を愛する老人・ムツジロー(誰がモチーフかは言わずもかな)が勇者が経験値稼ぎのために苛め倒したスライムを抱き上げ、こういうのだ。
確かに・・・モンスターつっても野っ原跳ねてるだけだし、ぽてぽてぷにぷにで人間に害を成しうるほど強くないし・・・

魔物ぶっ殺しゲームに堕するRPGへの警鐘といっていい秀逸なる台詞。

「あたしは変わりたかった・・・誰からも拒絶された忌まわしい自分の中に、別の可能性を秘めた自分の存在を夢見た。力があれば助けなんか要らない。強ければ・・・優しくされなくても・・・痛くない。そして奇蹟は起こった・・・!!もう誰もあたしに指一本触れられなかった!脆弱で卑劣な人間なんかにはね!今更負けらんないでしょ!あたしたちを要らなかった奴らなんかに!だからみんな・・・みんな消してやる!」
「・・・コーシュカ。それでもオレ達は気づいてる。やさしくしてほしかった・・・それが、「死」よりも「もういちど」を選んだ融合者の願いなのかもしれない・・・のに。ゴメンなミミカ。会わせてやれない・・・そんな気がする」

発言者 猫井コーシュカ 稲葉美守
うさぎちゃんでCYU! 著・佐野タカシ

とりあえず台詞とタイトルの落差に悶絶するのはさておいて。この漫画、ヤングキングアワーズで連載されていた奴で、最初のほうは割りと普通のお色気ギャグラブコメだったのだが・・・。
後半は結構凄いぞ。往年の「スケバン刑事」にも迫る、戦う孤独な少女達の荒々しき群像劇となっておる。
そもそも基本設定だってかなりまともなのだよな。世界を覆う、心の欠損を抱えた人間が動物と融合して新生物と化す現象「融合」。その現象を阻止せんとする厚生局の放ったエージェントと戦う、天涯孤独の不良少女にして兎のミミカとの融合体「稲葉美守」。
そして厚生局の手先として稲葉と戦いながら、最後に厚生局に捨て駒扱いされて裏切った、猫との融合体猫井コーシュカ。(そういえば兎VS猫って構図、「ナースウィッチ小麦ちゃんマジかるて」を三年先先取りしてるかも)

十重二十重の包囲網をものともせず大暴れしながら、
コーシュカが叫び。(猫井コーシュカ、という名は劇中で明確に記されてはいないが確か偽名・・・「コーシュカ」というのは融合の対象であり彼女のペットであった猫の名前のはず。そこまで彼女は人間を拒絶していた。劇中僅かに背景で明らかにされた過去を散見すると父親は殺人罪で死刑になり、母親はそれを苦に自殺。その後唯一愛を注いでいた飼い猫のコーシュカが殺された衝撃で融合体になるまで苛められどおしだったようだ。)
美守が呟く。(美守もやはり背景から見ると米兵が水商売の女相手に「出来てしまった」娘らしく、養育費も払われない貧困の中親に邪魔者扱いされていたようだ)

人を捨てようとして捨てきれない、悲しみの叫びを。


「ちっ・・しょ、ちくしょぉぉ、冗談じゃない!!こんな・・・二度と・・・もう二度と、アスファルトに這いつくばるなんて・・・っ」
「稲葉・・・ドジッた・・・ニャハハハ、けほっ、ケホッ」
「喋るなっ、いいから後はオレに任せろ!」
「稲葉ぁ、今更だけど、ごめん。ハンパな融合体は・・・あたしのほうだったョ。・・・だってあのコこれっぽっちも、こんなこと・・・望んでなかったっ、もう一度、生き・・・・・・・・・」
「うわああああああああああああああああっ!!!」

発言者 猫井コーシュカ 稲葉美守
うさぎちゃんでCYU! 著・佐野タカシ

そして、力によってのみ立とうとしたコーシュカは、結局最後に自分を上回る「力」に敗れた。
「二度とアスファルトに這い蹲りたくない」という、彼女の凄絶な過去を想起させる台詞も空しく。しかし、敗れてもコーシュカは心底いやだった、「アスファルトに倒れる」ことはなかった。稲葉が、コーシュカを抱きとめたからだ。
悲しいこの台詞だがそれでも、せめてもの救いがあった。


「やっぱり私は救われやしないよ・・・こんなになってもまだ泣くことが出来ないんだもの。出来るのは・・・代わりに血を流すことだけ!」
発言者 キリエ
キリエ-吸血聖女- 杉村麦太

ダンピィル(半人・半吸血鬼)でありながら南北戦争直後の新大陸を覆う「狂血病(吸血鬼化現象)」の元凶であり自分の父である吸血鬼王「黒衣の者」を倒すため旅を続ける少女キリエ。
しかし、狂血病を制御することで新大陸の支配者になろうとするソリア防疫修道会がキリエを襲う。キリエが世話になった教会の尼僧と彼女が引き取っていた狂血病と疑われた孤児達を皆殺しにする防疫修道会。
その敵討ちを決意したときのキリエの言葉。涙を持たぬ半吸血鬼故の、血の宣言。

「神様、どうして私なんかを生かされたのですか・・・私なんかを・・・私は、あの子達のために泣いてあげることも出来ないのに・・・」
発言者 キリエ
キリエ-吸血聖女- 杉村麦太

その戦いの後のキリエの言葉。このシーン、確かにキリエは涙を流せないのだが、返り血がまるで涙の後のように目じりから流れていて、とても象徴的な1カットとなっている。

「明日などありはしないのだキリエよ!」
「あるわ!明日はっ、
明日はお前の死体の向こう側だ、調律士っ !」
発言者 ソリア七会士「調律士」ルオー キリエ
キリエ-吸血聖女- 杉村麦太

「お前を倒して先に進む!」といった意味の言葉だが、凄く調子が強い。
死体の向こう側・・・この、「安易に詩的に逃げない生々しい表現」こそがキリエの「味」である。

「私に関わった人は皆死んでいくわ。死んで欲しくない人とは友達になりたくない・・・」
発言者 キリエ
キリエ-吸血聖女- 杉村麦太

そして、激しさとは対照的に、時折露にする「本音」は、とても優しい。
この台詞なんか、特にその最たるもの。そしてまた結局汽車の車輪の停止音に紛れて聞こえないように呟く、というのが「らしい」。


「人生の喜びの総てを捨てる覚悟は、とうの昔に出来ている!ただ一つの願いは・・・オレに描かせ続けろーーーーーっ!!!
発言者 炎尾燃
咆えろペン 著・島本和彦

のりにのった漫画家の叫び。
何だかこれ、凄く共感できる。我輩もノッて小説書いているときはこんな気持ち・・・本当にもう他の何もいらないくらいに、描くことが嬉しい。
それを理解できる、というのは人生の大悦楽の一つであるぞ、諸君。


「俺の求める花は・・・花こそ小さいかもしれないが、確かな実を作る!そんな花だっ!!」
発言者 炎尾燃
咆えろペン 著・島本和彦

過去の人気作家・大文字焼良に「自分が再び雑誌に返り咲くために、今の連載を停めてくれないか」と言われた漫画家・炎尾燃。
見返りを約束され一時は心揺らぎかけるが、「君の作品より大輪の花を咲かせて見せよう!」という言葉に反発し、こう言い放つ。
「じゃあ、実は!?」と。
実、とは売り上げや販売巻数やファンの数ではない。もっと重要で重大な、後の作品に繋がる種子、そう、精神性のもの。「実」のある漫画は・・・読み手にも、確かな輝きがあると分かるものだ。
その上でこの台詞をもう一度読み返して欲しい。

「俺は・・・俺の作品は・・・

遺伝子組み換え漫画だったのかっ!?」
「ほう、遺伝子組み換え漫画!!」

発言者 大文字焼良 炎尾燃
咆えろペン 著・島本和彦

で上の台詞で自分の過ちに気づいた大文字の台詞なのだが・・・

何よ、遺伝子組み換え漫画って。

どっちかっつーとギャグ台詞っぽいが、意味無く力強い。


「倒すだけでなく、もうこれ以上一人の犠牲も出さない、それがヤツラに勝つことだと思う!」
発言者 武籐カズキ
武装錬金 著・和月伸彦

犠牲を出さずに、戦いに勝つ。
それは、甘い。
しかしそれは、理想。

その甘さを認識しつつ尚、己の命を危機に曝すことを理解しつつ尚、尚その理想に進みうるのであれば・・・
それはまさに劇中言われるとおり「正しい戦士の資質」。故にこそ・・・強く、格好いい台詞である!


「初美の体は柔らかくて、暖かくて・・・。この幸せがいつまで続くだろうかって考えると、泣きたくなるほど悲しかったよ・・・」
発言者 葉月
ヤミと帽子と本の旅人

特に興味の或るアニメではなかった(絵は凄く綺麗だと思うけど)のだがなんとなく、この台詞は気に入ってしまった。
諸君等にも経験はおありと思う。お祭りなど散々遊んで楽しんで、それで祭りの閉幕まであと数分と迫ったとき、ふと感じるえも言われぬ寂しさ。
この幸せが終わることを知ってしまう寂しさ。この幸せが、いつか必ず終わる悲しさ。
祭りは別に例だが・・・例えばそれを人生と置き換えてもいい。不意に襲い来る「時間が過ぎ行く」という哀しみ。我輩は、それを、感じる。

そんな人の心を抉り出して見せた秀逸な言葉だ。独逸文豪の一人ゲーテの作・ファウストに言う、「時よ止まれ、お前は美しい!」に繋がる。


「戦え・・・戦えよ!私達から戦うことをとったら、何があるっていうんだ!」
「いいこといっぱい、あるじゃないか!」

発言者 アトロス イクサー3
冒険!イクサー3

「スーパーロボット大戦A」のラミア=ラヴレスとシロー=アマダとの会話を思わせるが、年代としてはこちらのほうが古い。
戦うために作られた人造人間という点では、本来変わりないはずのアトロスとイクサー3。しかしアトロスはイクサー3のコピーとして本当に戦闘以外のことを望まれなかったのに対し、イクサー3は戦闘以外を・・・戦闘の後、その平和を目指して作られた。
そしていずれも悲劇の道を歩いた、生真面目で不器用なイクサー1と、純粋過ぎてゆがみと脆さを見せたイクサー2という二人の姉のを轍を踏むことを、イクサー3はその子供っぽいが陽気な性格で避けた。
成長し、そして敵であるアトロスに、パートナー・霞渚とともに手を差し伸べた。
アトロス。考えてみれば、この娘初代であるイクサー1に一番似ているかも。陽気なイクサー3のくりっとした丸い目と違い何処かクールでありながら完全に成りきってはいないアトロスの目付きは、イクサー1に似ている気がする。不安定で、パートナーを必要とするところも。
イクサー1との相違は恐らく、本当に心通わせられるパートナーと、巡り合う時に差があったことだろう。それでもそれは救いであり、それを抱きとめた霞渚とイクサー3にしても、優しい力を感じさせる。



「私は、二度も妹の命を奪いたくはありません・・・」
発言者 イクサー1
冒険!イクサー3

再び自分の命を狙った、妹イクサー2。それに打ち勝ったイクサー1
しかし憔悴しトドメを請うイクサー2を、イクサー1はあえて殺さなかった。それがこの言葉。
何気ないようで、イクサー1というキャラクターの特性と、「戦え!イクサー1」からの成長を匂わせるいい台詞である。

そしてまた、他の「主人公とライバル」の関係と照らし合わせてみても、興味深いと思われるが。


「これが俺の仕事だ!誰一人守れなかった・・・誰一人守れなかった・・・!大切な人を守れなかった俺の、今やらなきゃいけない仕事なんだ!」

発言者 仮面ライダーブレイド
仮面ライダーブレイド

元々基盤研究所というところに仕えていた「仕事」としてのライダーであるブレイドであるからこそ言える台詞。
そしてこの台詞は基盤研究所が崩壊して後の台詞であることにも注目。それでもあえてそれを仕事と言い切る・・・覚悟が見えてくるだろう。

「百回裏切った奴より、百回裏切られた奴のほうが信頼できるじゃない」

発言者 記録紛失、情報求む
仮面ライダーブレイド

裏切られたとふさぎ込む主人公へのアドバイス。
一見当然なようでよくよく考えてもやっぱり当然なのだが、しかし何だか頷ける台詞である。


「あたし、怖かったんだ。何をやっても叶わなくて、自分が無力だって知って、ニュースを見ても、自分は何も出来なくても仕方ないって、他人事のように感じるようになるのが怖かったんだ・・・」

発言者 折原のえる
総理大臣のえる! あすか正太

いつも元気!強気!能天気!なのえるにしては、珍しく弱気な台詞。
しかし逆にここから「普段ののえるの行動の信念」が透けて見えるというのが、面白い。
「どうせ自分には出来ない関係ない」そんなふうになってしまいたくない。
それは・・・何と高邁な恐怖、か。そうなることになんら疑問を抱かない、この世界の殆んどの者には、染みる台詞である。



「すごい・・・すごいやナーガス!サルマリュート隊長よりかっこいいや!それがナーガスの本当の姿なんだね!?」
「・・・違うよカイル。この姿も今までの姿もどっちも本物さ。俺は半分が魔神(ディーバ)でもう半分は人間だ。そしてそのどちらも偽りのない俺自身なんだ!」

発言者 水魔神(ハイドロディーバ)カイル 霧山竜輝<ナーガス>
輝竜戦鬼ナーガス 著・増田晴彦

龍人の魔神(ディーバ)姿に変身したディーバと人のハーフ・竜輝に、純粋のディーバであるカイルが言った言葉と、それへの返事。
「両方とも自分自身」という、珍しくも極めて正しい納得の台詞。


「わかってきたぞ!何故ナーガスの体がこんなに強靱に出来ているのか・・・何故、こんなに強力な再生力を持って生まれてきたのか!敵を倒す為じゃない!この炎に耐える為に!どれだけ熱くても、決して踏みにじってはいけないものを守るために・・・運命が・・・最小限の装備をこの肉体に用意してくれたんだ!」

発言者 霧山竜輝<ナーガス>
輝竜戦鬼ナーガス 著・増田晴彦

説明は不要と思われる。「強者の体は弱者のための楯」ということだ。

「もしかしたら・・・もしかしたら通信が回復して命令が伝達するかもしれない。どこかの基地が敵を撃退して我々の指示を待っているかもしれない。
わ、私はここの指揮者だ、ここが生きている限り離れる訳にはいかないだろう。
インテグラ、私は駄目な男だ無能だ、臆病者だ。
自分でも何故こんな地位にいるかわからん程駄目な男だ。生まれついての家柄と地位だけで生きてきたも同然だ。
自分で何もつかもうとしてこなかった。
いつも人から与えられた地位と仕事(つとめ)をやってきた。
だから、せ、せめて仕事(つとめ)は、
この仕事(しごと)は全うしなきゃならんと思う・・・んだが・・・
行きなさい、行ってくれインテグラ。
君には君らには君らにしかできない仕事(つとめ)がある。」


発言者 英国海軍中将シェルビー・M・ペンウッド卿
HELLSING 平野耕太

吸血鬼軍団の襲撃で大混乱に陥った司令部、しかももうじきここにも敵が押し寄せてくるという状況で、あえて踏みとどまると決意しての台詞。
ごくごく凡庸どころか無能に近い男の、最後の最後に見せた意地。
もう、それより前は名前ついてるだけで風景の一部みたいだったのだが、この瞬間はしゃれにならんほど格好よかった。


「人間・・・何故、人間が・・・アジャンタに・・・イーデアに、そこまでできる?」
「ケ・・・そこまでじゃねえ・・・ガイスト・・・
そこまで以上!!!俺にとって・・・この命捨てても惜しくはない女・・・この世にたった一人の、大切な女だっ!!!」
発言者 N・ガイスト ギャンザ=マシュー
Z MAN 著・西川秀明

プロパガンダ・ユニットに洗脳され刃を振るう、イーデア(進化したロボット)の少女アジャンタを自らその体に刃を突き刺すことで抱きとめた・・・愛ゆえに。
登場した当初はすんげぇヤな奴だったギャンザが、「漢」になった瞬間。
「そこまで以上!!!」というのが肝要。

「私は今まで、何に駆り立てられていたのだろう・・・ああ、この世に悲惨も死も存在せず、ただ喜びだけを心から信じられるならば、祈らずにはいられない。この時が永遠に続けと。」
発言者 ディスティ=ノヴァ
銃夢 著・木城ゆきと

「現在は一瞬のうちに過去になり、人は何時かは死に、運命は人智をこえて荒れ狂う!まるでそれが当然と言わんばかりに!私はそんな世界の全てを憎む!熱力学第二法則を憎む!」
発言者 ディスティ=ノヴァ
銃夢 著・木城ゆきと

セットで紹介するべき台詞。
業(カルマ)の克服を研究主題とする狂気の天才科学者、ディスティ=ノヴァはその敵であるガリィを「対自核夢(ウロボロス)」という仮想現実の世界に誘い込み、精神的に抹殺しようと試みる。しかしその仮定でノヴァは逆にガリィと打ち解け、幻想の「ありえたかもしれない」世界に安寧を見出し、上の台詞を呟く。

そして下の台詞は、その世界にガリィの仲間が介入しようとして、それを阻止しようと戦いながら叫んだ。
熱力学第二法則とは、つまり放置したお湯はだんだん冷めるように熱はつねに拡散する、ということ。それゆえに宇宙はいずれすべての星が冷えきり、停滞し動くもの無き熱量的死を迎えるという・・・一種の「滅びの運命」である。
それを憎む・・・

その意味は各自考えるべし。

「私はここにいたよ・・・私はここに生きたよ・・・」
発言者 ガリィ
銃夢 著・木城ゆきと

数奇な人生をたどったサイボーグ・ガリィの伝記を通じて語られる世界、とでも言うべきこの「銃夢」。
その最後に相応しい、ガリィの言葉である。


「戦場ではいつも一人だ。今までも・・・そしてこれからも・・・・・・!」
発言者 水島一純
突撃!パッパラ隊 松沢夏樹

「戦争中に生まれて戦争のためだけに作られて、戦うことしか知らないなんて・・・・・・つまんないぞ。」
発言者 水島一純
突撃!パッパラ隊 松沢夏樹

「平和は闘って勝ち取る物なのよ!」
発言者 江口夏海
突撃!パッパラ隊(アニメ版) 松沢夏樹

「私、博士と一緒に戦えるのが嬉しいんです!だって私、戦うために生まれたんですから!」
発言者 鋼鉄重装女子学生桜花
突撃!パッパラ隊(アニメ版) 松沢夏樹

「あなたはいつも私に優しくしてくれたと思うわ。こんなわがままな娘に、17年間も仕えてくれて、ありがとう」
発言者 ミラルカ=ボーダー
突撃!パッパラ隊(アニメ版) 松沢夏樹

「水島様、これが・・・あなたの救って下さった地球ですわ・・・」
発言者 ミラルカ=ボーダー
突撃!パッパラ隊(アニメ版) 松沢夏樹

突撃!パッパラ隊関連の名台詞。詳しくはこちらへ。


「殺せ・・・私を、殺してみろ・・・」
発言者 レイラ=アシュレイ
AVENGER
「臓物(ハラワタ)をぶちまけろ!」
発言者 津村斗貴子
武装錬金 和月伸宏

・・・最近のヒロインは、物騒だ(笑)

「よしっ、今までのことは水に流そ!子供のめんどー見るの大人の責任だからねー。」
発言者 後光院ランコ
突撃!パッパラ隊 松沢夏樹

この台詞を読むに重要な点が一つ。この発言をしている後光院ランコの年齢は十九歳。
すなわち未成年であり、本来大人ではないということだ。
それはつまりいかなることを意味するか。すなわち、

大人であるかなしかを決定するかは、その者の心がけである、ということだ。

最近は子殺しだの虐待だの、大人たりえない年ばかり食った独活の大木どもが巷に氾濫しておる。
「大人」と年齢は関係ないということ。


「怖くないよ・・・水島君が一緒だもん。」
発言者 後光院ランコ
突撃!パッパラ隊(アニメ版) 松沢夏樹

殆んど確実に死が待つ任務に赴いた水島に、ランコはついていってしまう。いつものように能天気に騒ぐランコだったが、水島がふとその体に触れると・・・震えていて。しかしランコはこの台詞を言うのだ。必死に笑って。
上のとは対照的で愚直なまでに一途であるが、ランコの愛の深さを感じさせる台詞である。

「水島君が言ったんだもん。待っててくれ、って!」
発言者 後光院ランコ
突撃!パッパラ隊(アニメ版) 松沢夏樹

そして、こちらも一途。無理やり置いていかれたランコだが、「待っていてくれ」といわれたが故に、誰もが水島は死んだと諦めたところを、ずっと南極で待ち続けるのだ。
それは未練というよりは信仰にも似た、彼の言葉を宝物と抱いたからであろう。
故にこそ、奇蹟も起こる。


「俺には夢が無い、でもな夢を守ることは出来る。」
発言者 乾巧
仮面ライダー555 

「あなたを信じる私を信じて・・・」
発言者 菊池真理
仮面ライダー555 

「どけよ、俺たちの道だ。」
発言者 乾巧
仮面ライダー555 パラダイスロスト

何気に555、名台詞が多い。上二つは説明不要、下のは劇場版ラストでオルフェノクの園からオルフェノクと人類の共存を求め去る巧と真理(これを楽園を追われるアダムとイブになぞらえたが故の副題「パラダイスロスト」なわけだ)が、立ちはだかっていたオルフェノクたちにむけて言った一言。強い決意が感じられて大変いい。

「かつて童話や物語の中で狼は諸悪の根元とされてきた。しかし・・・・・・・・・本当に全ての狼達が悪なる存在だったのだろうか・・・」
モノローグ
キメラ 著・緒方てい

「善悪」、それも極限にそれが求められると同時に穢され、すなわち試される場である「戦い」
それをテーマの一つとする「キメラ」のオープニングに、正に相応しいモノローグである。

「隊長・・・隊長は戦場で怖いと感じたことはないんですか?」
「そりゃああるさ・・・戦場は・・・死ぬことは誰でも恐ろしい。守るべき者・・・だよ。守るべき者の存在が、人間を強くする。たとえ折れた剣でも、恐ろしい戦場へと一歩踏み出す勇気をくれる。なあにお前もそのうち分かるさ。」

「この娘は確かに俺より強い・・・俺の助けなど必要ないかもしれない・・・
だが・・・理屈じゃない何かが俺を突き動かす!この娘は、俺が守る!」
発言者 タキ 隊長
キメラ 著・緒方てい

男ってぇのはこうでなくちゃ!というべき台詞。タキは極めて「普通の人」なのだが、そうであるが故にこの辺は実に格好いい。


「私は、この血の宿命を受け入れよう。」
発言者 リン
キメラ 著・緒方てい

そして、主人公のリン、戦闘種族キマイラの末裔という特異な娘は、逆にそれゆえに苦しむのだが。
しかしそれを克服し、優しき心を保ったまま、それを切り裂く戦場へその苦しみに耐えて剣を携え赴く、守るために。
この静かな決意、しかし同時に画面は動的な状況という取り合わせが良い。

「我が名は蒼の騎士団が部隊長(バナレット)!!仕掛け鎧のグエン!」
「私はキマイラの剣士リン!!」
「分断された大陸を元の一つにせんが為!!」
「今度こそ!!今度こそ私が大切だと思う人を守るため!!」

「「お前を、斬る!!!」」

発言者 「仕掛け鎧」のグエン リン
キメラ 著・緒方てい

「グエンさん・・・ここで兵を退いてはくれませんか?」
「それは出来ん・・・私は、再びこの大陸を一つにし戦争を終わらせたい・・・例え犠牲を払ったとしてもだ。」
「それは違うと思います。貴方達が何かを犠牲に平和を得ようとする限り、たとえそれが小さな犠牲であったとしても・・・手にした平和はながくはつづかない・・・犠牲となった人達の哀しみや憎しみは、また新たな戦いの火種を呼ぶ。」
「そんな事は先刻承知だ!だが・・・誰かが・・・!!誰かが手を汚さなければこの戦争は終わらない!!」
「グエンさん・・・あなたはこの子が現れた時攻撃を躊躇しましたよね・・・」
「私は力無き民に刃を向けた事はない。」
「おそらくは・・・この子の父親は今、前線で戦っていることでしょう。戦場でこの子の父親にもしもの事があれば・・・それはこの子にとって不幸が訪れたと言えるでしょう。
「・・・・・・・」
「グエンさん・・・前線で戦う兵達に刃を向けるということは・・・この子達に刃を向けると言うことと、何ら変わりはしない。」
「ぬ・・・」
「私はそんな子供達を沢山見てきた。あの子達もまた、今を懸命に生きている。これ以上そんな子達を増やさないで!その子達が抱えた憎しみや憂いはまた新たな戦いを呼ぶ!」
「ならばどうすればいいのだ。ならばどうすれば・・・この愚かな戦争を止められる!!このまま何もせず手をこまねいていろというのか!!答えろ!!答えてくれ・・・キマイラの騎士よ。」
「それは・・・・・・解らない・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・そうだな・・・・・・・・・」

発言者 「仕掛け鎧」のグエン リン
キメラ 著・緒方てい

敵・味方の真っ向からの激突。身体的にも、思想的にも。
それぞれの立場、それぞれの思考、それぞれの経験、それぞれの信念、そこから導き出されるそれぞれの結論。未だ見えぬ答えというリアリティ。

それとその差異と対立をきちんと描き出す、緻密な台詞である。

「確かに私は死ぬことが怖い・・・だけどそれは・・・それは、きっと、まだ私にやり残したことがあるから、そして、まだ私に出来ることがあるから!!!」
発言者 リン
キメラ 著・緒方てい

リンというキャラクターの魅力は、本来決して精神的に強くは無い彼女が、折れても折れてもそのつど再起する、その時の輝きにあるのではないかと思わせた台詞。死の恐怖というものの付き合い方として、これはなかなか面白い。

「男ってぇのはね、「気に入るか気に入らないか」で決めればそれでいいのよ!!」

発言者 小沢澄子
仮面ライダーアギト 原作・石森章太郎

迷ったときに思い出して欲しい名台詞。台詞では男と限定しているが、別に女の人でもいいと思う。
何だか元気が出ます。


「ここで逃げ出すことは私が許さない。いえ私が許しても貴方の中の「男」が許さないはずね、そうでしょう!」
「逃げ道が無くなるようなことを言うな・・・」

発言者 大槻ナオミ 仮面ライダーZO
仮面ライダーZO(漫画版) 著・島本和彦

情けない主人公を鍛え直す、師匠なお姉さんのセリフ。確かにこんなこといわれたら逃げられないですぞ。


「この岸部露伴が金やちやほやされるために漫画を描いていると思っていたのかァーーーッ!!ぼくは『読んでもらうため』に漫画を描いている!『読んでもらうため』ただそれだけのためだ。単純なただ一つの理由だがそれ以外はどうでも良いのだ!」

発言者 岸部露伴
ジョジョの奇妙な冒険第4部 著・荒木飛呂彦より

こだわりのある漫画家の魂の叫びの図。JOJOっぽい台詞回しとクリエイターのこだわりがいい感じにマッチしておる。


「風よ!雲よ!太陽よ!心あらば教えてくれ!俺は何故生まれてきたのだ!?」


発言者 メタルダー
超人機メタルダー

悩めるロボットの主人公・メタルダーを象徴するような台詞。
心を持つ機械が己の存在意義・存在形態を問う台詞は数あれど、ここまで壮絶なのはそうそうない。

「これ以上付き合うと後悔しますよ」
「試してみよう」
「え?」
「後悔するかどうか、試してみようじゃねーの」

発言者 小牧ノブ 榊裕
妖精作戦 著・笹本祐一

説明不要の名台詞。「後悔するよ」という言葉で突き放して、相手を安全な場所に置こうとする優しさと、危険でも構わないからという台詞の男らしさがいい感じに交錯しておる。

「犬は餌で飼える。人は金で買える。だが壬生の狼を飼うことは何人にも出来ん。」
発言者 斎藤一
るろうに剣心 著・和月伸宏

るろ剣でその目付きの悪さだけではない、妥協の無い凄みで主人公よりもしばしば格好いい元新撰組の斉藤一。その言動の中でも一番格好いいのがこれであろうと(キメ台詞の「悪即斬」はともかく)我輩は思う。
壬生の狼というのは新撰組の渾名。元々は壬生村にたむろしているなんかうさんくさい浪士と、教徒の人間は壬生浪(みぶろ)と蔑むように行っていたのを、実力で畏怖へと変えた名前。
それをこういう風に使うのは実に上手い。犬と狼を対比させ、誰にも譲らぬプライドを示す名台詞。

「それは、夜が暗ければ暗いほど、闇が深ければ深いほど、燦然と輝く一条の光。あしきゆめよ、あなたと本来戦う希望は、たった今生まれました。」

発言者 結城小夜
式神の城

以前、「ヒーローとは何か」という研究の際に用いた台詞。
闇の中の光、明日への希望がヒーローである、と。

「人が明日を見ようと思った。ゴミのような街の中でそう思った。だから私が戦うのよ、命を懸けて。」

発言者 ニーギ=ゴージャスブルー
式神の城2

ヒーロー(ニーギは女の子だからヒロインか)が戦う理由を述べるシーンというのはなかなか難しいものだが、それゆえ凄い台詞は本当に良い。
このニーギ=ゴージャスブルーの台詞はその好例。実に詩的で、美しく、力強い。

「だからどうした!」
「え?」
「希望ってのはね、だからどうしたと言い続けるところからはじまるのよ」


発言者 ニーギ・ゴージャスブルー 結城小夜
式神の城II 著・海法紀光

何とも面白い「希望」に関する台詞。
極めて前向きで、ニーギの立ち位置を表す台詞でも在る。

「推理するとは、疑うことだ。しかし、探偵するとは信じることだ」
発言者 朱月宵三郎
浪漫探偵朱月宵三郎・無謬邸は暁に消ゆ 著・新城カズマ

何とも粋な台詞である。そして孤高である。そして暖かい。

「連れていって!早くあたしを連れていってよ!この街から!この街で戦いはじめる前に!大好きなみんなを・・・あたしのことがきらいになったみんなのことを、今度はあたしが嫌っちゃう前に!連れていって!」

発言者 森塚詩乃
狗狼伝承・流斬少年スオウ 著・新城カズマ

わけあって異能の者の戦いに巻き込まれ、それに協力した少女が、しかしその事件の聖で周囲から白眼視され虐めを受けることになってしまう。
そして少女は旅立つことを決意する。その理由が優しい。
それは逃避であるともいえるが、優しいが故に肯定されるべき逃避であろう。


「傷つけちまった?ヒドい目に遭わせちまった?・・・だったら、次からもっと上手くやれってンだ!いっつも満点なんか取んなくていいンだよ。そのために大人がいるンだから。そういう頑張ってる莫迦を誉めて五十点をつけてやるためによ、大人ってのは無駄飯食ってンだよ!」

発言者 神酒坂兵衛
狗狼伝承・精霊少女ミュリエル 著・新城カズマ

何ともイイ大人の台詞である。若者への、そして同時に大人への、アドバイスであるなこれは。

「そんなに不安なら、あたしが一億人分信じてあげる!六十億人分信じてあげる!!」
発言者 折原のえる
総理大臣のえる! 著・あすか正太

信じてもらえなかった少女が居た。自分の命を捨てることで、信じてもらおうと少女はした。
それを助け、抱きしめ、のえるは叫ぶ。
・・・折原のえるという太陽のように広大無辺な優しさを持つ少女の、心の基本姿勢を示す台詞だろう、これは。またこのシーンの挿絵、相手を胸に抱きしめて、ぐっと空を睨むようにするのえるのこの悲劇への怒りの表情が、また男前(のえるは女の子だけど)で、凄く台詞と相性が良かったりする。
最近は割と明るい話が多かった中で、久々の「のえるの真骨頂」である。

村正宗殿からの頂き物です。

「試みに問う 魔人(デビル)とはなんぞや? 生命とは?進化とは!?生とは!?死・・とは!?
今や 凡百の学者共においてすら 神の設計図(ゲノム)の解読が可能な時代となり 生命の発生と死の科学的メカニズムはもはや解明の一歩手前にある
しかし 生命の神秘とは解明されればされるほど虚無的なものだ つまり生命とは つまるところ複雑に組まれた分子運動の集合体にすぎず
生も死も分子細胞レベル的にはこの宇宙に“ありふれたとるにたらない”エネルギー交換の一種にすぎず 熱エントロピー第二法則のままにゆるやかにエネルギーを消失していく
もし・・神という存在が本当にいるのなら彼は間違いなく我々・・・・いやこの“宇宙そのもの”を快く思っていないに違いない!!なぜなら全ての物理法則はエネルギーをいかに効率よく集積し 消滅させるかという一点のみに終始しているからだ!!
つまり・・・生命も物理法則も この宇宙にありとあらゆる現象はすべて 「死」のために設定されている
・・たった一つの 例外を除いてね  それが「キリンの首」の答えだよ」
「・・・・・・・・「進化」のみが 「生」への方向性を持っていると・・?」
「神(造物主)へのささやかなる反逆だよ 自然淘汰も 突然変異も ウィルス感染も 所詮 ただの
きっかけにすぎない “キリンは自ら望んでキリンになった”
進化とは 生命の意地  執念・・・・・・そして “あがき” 狂おしいばかりの「生きよう」という意思だ」

発言者 ハカセ 出虎一八
魔人〜DEVIL〜

生命と宇宙の哲学、とでも言うべきか。実際問題確かに、万物はいずれ滅びることを定められていて・・・以前紹介した「銃夢」のディスティ=ノヴァ教授の台詞を思い出す。しかしそれに「進化」を絡めたのが面白い。人類とて科学を億年兆年研鑽していけば、熱力学第二法則を超える方法を手に入れるやもしれぬ。

特に最後の「あがき」、狂おしいばかりの「生きようという意志」というくだりは、力が入っていていい。


「・・・・・・優しさが辛さの裏返しなのは悲しいことだけれど・・・・・・その心を失ってはだめ。あなたは乗り越えてきたんだから。」

発言者 綾代いづな
DADDYFACE冬海の人魚 著・伊達将範

辛さの裏返しの優しさ。実際良く見るそれをめげず踏み込んだ珍しい台詞である。


シャドー殿からご紹介いただいたセリフです。

「わからないなら先へ進もう、一歩でも先へ。そこが崖なら飛び降りよう。そこが海なら泳いで渡ろう。俺ははなからそのつもりだし、絶対春江を置いては行かないからね」

発言者 川島亮介
回路(小説版) 著・黒沢清

わけわかんないうちに滅びゆく人類。無か永遠かの選択を迫られる現世の人間。それでも生きようとする人々。
作品のラストにはもう一人の主人公による長台詞があるのですが、そのへんは個人で確認してください。


「男の道は捨てたとて、捨てきれぬのが人の道。それがあたしのおかま道(ウェイ)!」
発言者 ミスターNo2
ONEPIECE

義侠心に富んだおかまさんの自己犠牲的行動の宣言、なのだが。読めば大体分かるだろうか。
筋金入りのアホで変態で悪役なオカマなんだけど、このシーンのミスターNo2は凄く格好よかった。


「エッちゃん忘れないよ・・・・・・お兄ちゃん、だーい好きだもん!忘れないぞ〜!えいえいっ、オ〜ッ!」
発言者 生物体エックス
物体Xでいこう! 著・伊豆平成

・・・状況を説明するのは難しいのだが。生物体エックスは、女子中学生のような姿に擬態した生物である。まあ、見た目は可愛い女の子だ。頭は、それほど良くないけど。
秘密結社UNCRETの一員として、お兄ちゃん(首領・間竜太郎)と楽しく暮らしてきたのだが、ある時窮地が迫る。その窮地を脱する鍵を握っているのが彼女なのだが、同時にその鍵を握っている故に彼女は急速に記憶を失いことになってしまった。
それで、必死にエックスはお兄ちゃん=竜太郎のところにたどり着こうとする。お兄ちゃんの役に立つため、自分の知る秘密を彼に与えるため。何より、大好きな人の役に立つため。
その為にその秘密と、「自分にとって一番大切なこと」を必死に忘れないようにしながら、エックスは急ぐ。
グッとくる。


「可哀想なお兄様・・・神の使いっ走りになってしまったのね。さようなら、元お兄様。」
発言者 島原夕姫
南海奇皇ネオランガ

ひょんなことからランガという南海の神(というか怪獣)の主となった島原三姉妹の末っ子、夕姫。
そんな姉妹の戦いの最終決戦。
ランガを倒そうとする、宇宙神タオの使徒キュリオテスとなった三人姉妹の兄と、味方全員すらたばかって勝機を作り、勝ち誇ってのセリフがこれ。
神・タオの使徒となれば永遠を手にすることが出来ると言う兄に対して応じた振りをして裏切っての、この発言。天井知らずの独立独歩なプライドが格好良すぎです。


「僕が貴方のお父さんを殺しました。」
「僕のせいです。貴方のせいじゃない。決して!」
「あなたのせいじゃない、絶対に!」
「僕の、せいです。」
「いいですね?」

発言者 朱雀ハルカ
封神機伝マカリゼイン 著・神野オキナ

神野オキナの書く男性主人公は「いわゆる一般的な男らしさ」とは縁が薄いが、それとは別の心の強さとでも言うべき魅力を持っている。
特にこの、朱雀ハルカは。
彼、朱雀ハルカが助けようとした娘、明王梓は超演繹能力という一種の予知能力のようなもの(厳密には違う)を持っており、それ故に全てを知り、そして全てを諦めていた。
彼女は自分の身を犠牲にして、ある意味死に逃げることにより、現状を変えようとした。
それを、ハルカは助け。その結果、梓が助けようとした彼女の父は、梓を庇って死んでしまった。

混乱する梓に対して、ハルカは上のセリフを言った。梓の心を守るため、梓の嘆きを受け止めるため、全ての罪を背負って。

これは、とても・・・うまく言えないが、強いて一言で言うならば覚悟のあるセリフだと思う。


「この勝負は、そんなんじゃねぇ!男と男の勝負なんだ!!」

発言者 神風大将
五星戦隊ダイレンジャー

神風大将と墓石社長、電話先生の三人はゴーマ怪人のなかでは落ちこぼれ、三人揃ってようやく一人前以下という認識をうけていて、その名誉回復のためダイレンジャーに神風大将は負けたほうの車が爆発する死のバイクレースで勝負を挑む。
あの手この手で互角の勝負をする神風大将だがその時ゴーマ幹部の一人ザイドスが唐突に「ここは負けろ」といってきた。どうせ神風大将が負けると踏んだザイドスは爆弾をマシンにではなくゴールに仕掛けて、先にゴールしたほうが爆死する仕掛けとしていたのだ。

だがそれを聞いた途端、神風大将はこの台詞を言うと逆に必死に走り、トップを奪った。
そして、くぐれば死と分かっているゴールに飛び込み・・・

愚かしい。愚かしいがしかし、あまりに美しく誇り高い愚かしさである。


「神風と、電話と、墓石の分まで怒りを込めて、てめえをブッ潰してやる!!大圧殺!!」

発言者 将児
五星戦隊ダイレンジャー

そんな神風大将の心意気に感動したダイレンジャーの怒りはいかさまレースを仕組んだザイドスに爆発。
大きく区切られはっきり抑揚をつける戦隊ヒーローらしい演技法が、この場合の各人の名前を言うくだりに怒りの力が篭るのを特にしっかり顕している。
さらに大圧殺・・・総てのメカを一つに合体させて、最大重量で相手を踏み潰すという攻撃の選択も怒りの表現には適切である。


「バカだぜお前ら・・・!バカでバカでしょうがねぇぜ・・・!バカで落ちこぼれで、どうしようもなくて・・・そんなの・・・そんなの俺そっくりじゃねぇかよ・・・!だから俺は、お前を・・・」

発言者 将児
五星戦隊ダイレンジャー

そして特に、自分も昔落ちこぼれであったという将児は、そんな三人に己を重ね合わせる。
熱く人間らしい、怪人たちに。

「確かに「力」は白を黒と言わせられるかもしれないが・・・お前にゃあ聞こえないだろう!?人は心の中で「白は白なんだ」と叫び続けて居るんだよ!」
発言者 根性きめる
最強無敵ド根性一家 作・神崎将臣/画・一本木蛮

この漫画、漫画自体は無駄に勢いがあるだけ(その勢いっぷりはなかなかではあるけど)の作品なのだが、この台詞はどうしてどうして珠玉である。
力で言わせる「白を黒」は、現実世界にもありふれて、いやに成る程転がっている。

それに「けど」をつけるこの台詞は、格好よく清い。



「−これは他殺です」
発言者 乙名探偵(おとなとるただ)
名探偵Z 不可能推理 著・芦辺拓

台詞自体は普通なんだけど、いろんな意味でぶっとんでいるんで。
陰々滅々としたこの声が響くたび、とんでもな過ぎる、通常の推理もののトリックの斜め上をいく事件が巻き起こる、まさに作品の象徴たる台詞。
またこの台詞を言いにくる乙名探偵(おとなとるただ)の登場シーンもとっぴすぎて、また。

「何でヨシオお兄さんてば自分のことさ、「ゴミ」とか「捨てられる」とかゆーの?誰の「モノ」でもないのに。んだから誰にも捨てられないしィ「いらねーゴミ」とか羅で課に言われたってさ「オメーの」じゃねーやバーカッ、ておもえばいーじゃんっ。「しあわせになって」「あいしてる」なーんちゃって!!こんな「うそっこ人間」に言われたって「不毛」〜ってか?でもさ。ヨシオおにいさんがさ。ごはん一杯食べて元気になったり、頑張ってお仕事できるようになったこととかは「ホントのこと」でしょ?でしょ?ねえ、ねえ。ヨシオおにいさんがやけになってこんな、ホントにあったいいことまでフイにしちゃったらえむ子、結局何の役にも立たなかった、ホントのゴミくずになっちゃうよ。「しあわせになれ」「しあわせになろう」「あいしてる」「あいしてる」「あいしてる」おぼえた?自分で自分にそう言って。ヨシオおにいさんが言うんだったらソレは、もううそっこでも不毛でも、な・・」
発言者 人造人間M1号=えむ子
GOD SAVE THEすげこまくん 著・永野のりこ

永野のりこの漫画ははぐれ者、孤独なもの、世間と違う者に焦点を当てた独特な味がある。
これは孤独な青年と共に生活したアンドロイドの少女が、最後に言った言葉なのだが。
とんちと、捻りと、ウィットと。
そして愛情に溢れたいい言葉である。


「沢口。私は何時でもどんな時でも貴方にだけは手加減しない!文句あるか!」
「・・・ない。ありがとう。」

発言者 一ノ瀬涼子 沢口
それいけ!!ぼくらの団長ちゃん 著・小野寺浩二

この漫画は応援団を扱った漫画で、作者独特の妙な熱さと激しさが横溢した怪作である。
若干下ネタもあるが、ある意味どおくまんプロなどの先達の応援団漫画に近いという点では正しいのかも。

それはともかく、これは応援団の主人公達ではなく、水泳大会での選手の台詞である。
一之瀬と沢口は水泳競技で県内一ニを争うライバル同士。この大会でも接戦を繰り広げるが、アクシデントで沢口が負傷してしまう。
血を流しながらもそれでも棄権せず頑張る沢口だが、流石に速度は落ちる。
しかし手負い相手に本気でやるつもりかと非難されながらも、一之瀬は全力で沢口を抜いて勝利する。
そして試合終了後、沢口にこう言うのだ。

貴方にだけは手加減しない。

ライバルとして認めるからこその常に全力。

その真剣さ。下手に哀れまないことで(時として哀れみは見下しの裏返しに通じる)相手のプライドを守る優しさ。

そしてそれに、感謝で答える度量。

素晴らしい!

「勝ちを知り、負けを知り、そして人は
好敵手(とも)を知る!!」
発言者 藤堂源一郎
それいけ!!ぼくらの団長ちゃん 著・小野寺浩二

上気の状況を見たその学校の校長の一言。実際は一言ではなくその後調子に乗った校長は六時間ぶっ続けで演説し顰蹙を買うのだが、それはともかく。
簡潔だが力強い、中々の名言である。

村正宗殿からの頂き物名台詞です。

例え相手が人類最強であろうとも、私の名前は萩原子荻。私の前では悪魔だって全席指定、正々堂々手段を選ばず真っ向から不意打ってご覧に入れましょう

発言者 萩原子荻
クビツリハイスクール 戯言遣いの弟子


「死ね」だの「失せろ」だの「気にくわねー」だの「出てけ」だの「お前には居場所がない」だの 
「チケットがない」だの 「入場お断り」だの!おまえらなんかに歓迎されなくたってなあっ!
あたしがここに「いたい」って思やぁ 思えりゃソレが りっぱなチケットなんだよっ!!

発言者 原
電波オデッセイ

よーしわかった!!百(万)歩ゆずってキタモリの妄想どーり「全世界全人類が おめーの自滅を面白がってる」としよう!!で!?なんだっておめーは そいつらを喜ばすようなことばっかしてンの?どーして おめーなんかの自滅ごときが世界のエンターテイメントなんだよーっ!!!

同上

どいつもこいつも濃いですねぇ・・・永野のりこの漫画の名台詞をしばしば取り上げてたのに、電波オデッセイをチェックしていなかったのは痛恨の不覚。


「もうこれ以上、誰かが泣くのは嫌だから・・・だから、力を!」
発言者 大鳥居つばめ
アキハバラ電脳組

「ひばり・・・お前が私にくれたもの・・・今この力で返そう・・・」
発言者 大鳥居つばめ
アキハバラ電脳組

戦うこと、強くなることだけを教わって育ったが、外の世界、そして友の思いに触れることにより改心し大鳥居つばめが戦いに赴くときの台詞。
それまでの「ただ力を振るう」のではない、「何のために力を使うのか認識した強さ」の溢れる台詞。
しかし、文面だけ見ると13歳の少女というにはあまりにサムライチック、ある意味男らしい。

「貴方が人間に絶望するなら好きにするがいいわ、だけど、いくなら、あたしを踏み潰してからいけぇぇ!!」
発言者 花小金井ひばり
アキハバラ電脳組

大鳥居つばめの心の扉を開いた少女、アキハバラ電脳組のリーダー、花小金井ひばり。
恋に恋する夢見る少女の面が多大である彼女だが、本気になった時は凄い。

地球人類総てを見限り、アニマムンディと呼ばれる純粋な魂の持ち主達のみを新天地に連れて行こうとした、自分がかつて恋をした男・クレイン=バーンシュタイク。
その際に手段を選ばず、町を破壊してまでそれを実行しようとした彼に対して、吼え猛るが如きこの一言。
中々どうしてただのヒロインではない、己の足でしっかりと地を踏みしめて立つ強さがある。


「人間としてはいい奴なのかもしれないが、軍人としては失格だな。」
「軍人としては失格かもしれないが・・・人として立派だッ!!」

発言者 エルドラード 日向真鉄
新海底軍艦・巨鋼のドラゴンフォース 著・飯島ゆうすけ

地空人という地下空間に住む異種族が作り出した驚異の技術・重力炉により地中・空・海を駆ける無敵の兵器・海底軍艦。
地上に姿を現した二隻目の地空人の海底軍艦ソビエツキー・ソユーズ。それに壊滅寸前に追い込まれたアメリカ第七艦隊の艦長だが、最後の手段である核兵器が残されていた。
しかし使えば気流海流の関係上ハワイあたりまで放射能汚染が発生する。ために結局艦隊司令官は核発射の命令を下せず、敗北。
それに対してソビエツキー=ソユーズ艦長の地空人エルドラードは上のような言葉を言い放ち。
対して唯一人類側にわたった海底軍艦・ラ号の艦長である日向真鉄は、それと一見似ているようで全く逆の言葉を発する。
両艦長の解釈の差、そして性格の差を上手く顕した名台詞である。


「誰にも嫌われないで生きていける、なんて思っている人は、それ自体イヤミだわ。あなたにそんなつもりがなくても、嫌われたくないとしか思っていない人間は、他の人の"嫌いになる権利"を侵害してるのよ。わかるかな?侵害よ、シンガイ。」
発言者 末真和子
ブギーポップ・リターンズ VSイマジネ―ターPart1

皮肉がぴりりと効いた台詞である。「嫌いになる権利の侵害」というのはまあ屁理屈ではあるが、実際問題どんなに頑張ったって誰にも嫌われないなんてのは無理だし、そうしようとしてもそれは「八方美人」という風になるだけのことであるからな。

MaskTheRed赤影(文庫版)の名台詞は感想と共にこちらへ


「何故だ!何故だ、何故だ、何故だ!何故なんだ!神よ答えろ!わしらに何の咎がある!?お前が自分に似せて人間を作ったように、我々が新しい生命を作ろうとしたことが罪だというのか!?ならば、何故人間に知恵を与えた!?科学を与えた!?それとも知恵は、蛇によってもたらされた原罪だというのか!?だから、我々を罰するのか!?だが、お前は全能のはず!蛇も知恵の実もそれを食する人間すらもお前の手の内にあったはずだ!それなのに、おまえは・・・。」
発言者 不乱拳博士
空想科学小説鉄人28号 著・重馬敬

神に対する、新しい命の形を作ろうとした科学者のどうこくのなかでは、これはかなり秀逸な部類に入る。
神が全能であるならば、人に原罪など与えよう筈もあるまい。同種の考察は明治期江戸の禁教の後初めてキリスト教に接した日本人が抱いた疑問を記した文献の中でも見うけられるが、その後消えていった問いである。
当時のこれに対する反論としては「神は人が己で罪を乗り越えるのを期待しているのだ」というのがあったが・・・それはある意味酷く根性の悪い話であるともいえる。何しろ、人が苦労してるのを楽しくご覧遊ばされているというのだから。
その辺の矛盾を突いたのが当初はキリスト教・ユダヤ教がごちゃごちゃだったころ存在した異端神を無能ないし悪とし人に知恵のみを与えた蛇を崇めたグノーシス派だったりするのだが。

そう言う意味で、この尽きせぬ慟哭はやはり名台詞である。

「わしゃ、嬉しいんですわ。いや、本当に嬉しい!」
「・・・何がだ?」
「だって、あれでしょうが、ほれ、空想科学小説かなんかだと、意思を持ったロボットは、決まって人間を滅ぼしたり支配したりしようとするでしょう。だのに、レナーテさんは、人と同じ優しい心を持っておる。父一人子一人とはいえ、博士のご教育がよかったんでしょうなぁ。どうですか、人とロボットが共に手を取り合うあの光景!美しい、本当に美しいじゃありませんか!」
「・・・警官の癖に、随分と単純な男だな、君は。」
「単純なくらいで丁度いいんですよ、博士・・・わたしゃね、博士。職業柄、それこそ醜いものを一杯見てきましたよ。人の世の膿みたいなものばかりをね。だからこそ、美しいものの本当の価値が分かると思っているんです。そして、出来る限りそのことを、正太郎君に伝えてきました。そして、今、正太郎君は、レナーテさんに伝えようとしている。ねえ、博士。闇ばかり見ていては、素晴らしい花の色を感じることなど出来はしませんよ。日の光の下で、まっとうに生きる人の営みというものに目を向けてみてはいかがでしょう。明るい青空の下、ともに手を取り合う正太郎君とレナーテさんの姿を、親として見てみたくはないですかな・・・・」
「むう・・・」
「貴方と金田博士の未来予測は、確かに卓越したものです。現実は、その方向に動いているといっていい。ですが、あの二人の姿を見ていたら、別の未来も信じられそうな気がしませんか?彼等に託す未来の姿を・・・」
「・・・・・・・・過去に生きるものは、未来に生きるものには勝てんと・・・・・・、そういうことか・・・」
発言者 大塚署長 不乱拳博士
空想科学小説鉄人28号 著・重馬敬

人類の未来のため、神の不在を確信した不乱拳博士が、人工の神として最強の力を持って人を支配させるべく作ったロボット・ブラックオックス。
しかしその試みは、ブラックオックスの電子頭脳であったアンドロイド・レナーテの「優しさ」故に失敗に終わる。不乱拳博士に娘として育てられたレナーテは優しすぎて、鋼鉄の神に成りきることは出来なかったのだ。
その後鉄人28号に協力して川の氾濫を防ごうとするレナーテ=ブラックオックスに呆然とする不乱拳博士に、大塚署長の常識の上に根を張り、様々なものを見ても尚それを信じられるが故の明るさを持つ言葉がかけられる。
この大塚署長の健全に前向きな明るさは、今の日本人にとって取り戻すべき要素であるように思える。

「帝国の歴史上ここまで頼りない帝王はいなかったが・・・ここまで皆に愛された帝王もいなかった。」

発言者 宰相ジャバ
GOGO!ぷりん帝国 著・くぼたまこと

懐かしのGOGO!ぷりん帝国最終回の台詞。
ごっつい鎧と仮面をつけてて見た目の迫力はあるくせに実は子供っぽくてジャージと芋羊羹を愛する何とも上手く説明しにくいこの漫画の主役?帝王の魅力を、上手に表現しておる。


「わたし、シェイクスピアは嫌いなの。あの人は主人公が破滅するエンディングでしか傑作を書けなかったんですもの。わたしが好きなのはハッピー・エンドの物語だけよ」

発言者 橋爪涼子
眠り姫 著・貴子潤一郎

厳密に言えばシェイクスピアは悲劇ばかりで傑作を生み出したわけではない(「夏の夜の夢」とか「からさわぎ」とか)のだが、しかしそれでも悲劇のほうが目立ってはいる。
そこをついた悲劇礼賛への皮肉、としては中々良く出来た台詞である。実際何某という昔の批評家(名前忘れた)は「シェイクスピアは人間の悲劇を書くことには長けていたが人間の偉大さを描くことは出来なかった。「マクベス」は名作だが「ジュリアス=シーザー」は駄作である」と言っているし。


「すみません。でも駄目なんです。殿のような凄い人が何でもしてくれて、それも、正しいことを。それに頼りきりじゃ・・・それじゃやっぱり駄目なんです。」

発言者 丹羽新一郎
殿がくる! 著・福田政雄

この作品は現代社会に織田信長が突如タイムスリップして起こす大騒動をそれに接した少年少女の目から描きつつ、同時に戦国の人織田信長の視点から現代日本の諸問題を見る一種の政治活劇なのであるが。
総ての問題を力強く解決していった信長だが最後の最後、売国を計った総理を倒して現代日本における天下取を成し遂げようとした信長の前に立ちはだかったのは、この時代に現れた彼に最初に接触した少年であり、信長と仲が良かったとはいえ平凡なはずの男の子、丹羽新一郎だった。
この台詞は実に面白い。単純な英雄待望を打ち砕く言葉である。
大切なのは、極普通の沢山の人間がどうするか・・・なのだ。諸君、肝に銘じよ。

負けることが恥なのではない!戦わぬことが恥なのだ!
発言者 劇中ナレーション?
覚悟のススメ 著・山口貴由

けだし明言。負けることを恐れて戦わぬことは、あまりにもみっともない。
負ける可能性を感じつつも尚挑むこと、敗北から何かを掴み取ること・・・其れが成長だ。
そして、負けることを恐れて戦わないのは・・・敗北以上に心根を腐らせる。

「あたしはあたし、世界にただ一人だもん。誰かに似てるって言われるの全然うれしくないの。」
発言者 堀江罪子
覚悟のススメ 著・山口貴由

有名人の歌手に似ていると褒められて、返した言葉この一言。
何者もうらやまず、何者も模倣せず、あるがままの己を高め行く。人として難しいことを、さらり一言。

「雑草がうようよとざわめいておる、これ以上おぞましい光景はない。おぞましきを一掃することが散の夢じゃ」
「雑草などという草はない。」
発言者 現人鬼・散 葉隠覚悟
覚悟のススメ 著・山口貴由

十把一絡げの抹殺など赦さぬ、という強い気概を現す名台詞である。
余談ながらこの「雑草などという草はない。」と言う台詞、モトネタは実は昭和天皇陛下であらせられるとか。
なんでも植物学者でもあった先帝陛下が、「雑草を刈り取りました」という侍従に、雑草などという草はない、それは人間の勝手な纏め方でありそれぞれ別の草なのだよ」と仰せになったとか。


「おまえー 何でボクの大切な個性もやしたー」
「有害だからだ」
発言者 戦術鬼・毒魔愚郎 葉隠覚悟
覚悟のススメ 著・山口貴由

個性、というのは重要なものではあるが、それを過度にのさばらせるのは考え物である。
人間を改造して作られた兵器、戦術鬼・毒魔愚郎は人間のエゴを極端に肥大化させた戦術鬼の中でも特に自分の個性を肥大化させた奴で、その「個性」とやらで次々に人を殺していく。
其れに対してスパリと言い切る放埓へのアンチテーゼは清々しい。


「もしも願いがかなうなら・・・俺は君の歌になりたい・・・」
発言者 葉隠覚悟
覚悟のススメ 著・山口貴由

歌の得意な恋人に対する愛の思いなのだが・・・
格好よすぎである。またこれが普段きざなことなど言わない朴訥とした漢の言葉なのだから、ここ一番で正に効く。

「人の上に咲く花などはこの世になし!葉隠一族(われら)を花にたとえるならば、人も通わぬ山奥に、咲いた紅葉の心意気!」
発言者 葉隠朧
覚悟のススメ 著・山口貴由

紅葉は花ではないのだが・・・
そんなことは些末なことと思わせる名台詞。人の上に絢爛と咲き誇ろうとする悪の華に挑む台詞・・・
人に知られぬ心意気による対峙が渋い。


「あたしの王さまはあたしだもん」
発言者 堀江罪子
覚悟のススメ 著・山口貴由

「王などいらん、人はただ己れに仕えるのみ! 」
発言者 山崎宅郎
企業戦士YAMAZAKI 著・富沢順

奇しくも揃った、同じ意味の台詞。
盲従せず、己を律する。実に気高い。


「”人”が”動く”と書いて”働く”と読みます。お互い”人”として生きたいものですね。」

「ビジネスの本道とは、他人を活かす事によって自分も生きる事。」

「損得の得! 美徳の徳! 本来相反するこのふたつの”トク”を両立させる努力をせずして、人の幸福はどこにある!

発言者 山崎宅郎
企業戦士YAMAZAKI 著・富沢順

台詞を三つ。仕事に向かう大人の心構えと倫理、である。
徳を持ち、自分だけではなく他人も生かすことが仕事の本質、というのは考えさせられる。
何故なら昨今の企業は利のみを目的とし、「より多く儲けるためにより多くの人を不幸にする」という矛盾にいたっているからだ。
だからこそこの言葉は重い。何故なら・・・

「利己主義など無人島で一人暮らすようなもの。人と人の絆もなしにどうして幸福が実感できる。」

「”人間”という字は、”人”の”間”と書きます。動物である”ヒト”は他者との関係によって”人間”に成長する−、想いあい、傷つけあい、許しあう事で、初めてお互いを理解するのです。そしてそこに生まれた大切なコミュニケーション、人はそれを”愛”と呼ぶ! 」

発言者 山崎宅郎
企業戦士YAMAZAKI 著・富沢順

続いての二つがその答え。人間は、「人・間」だから。人は人と共に生きることで人間と呼ばれるから。
其れがただ他人を只管利用するなど、寂しすぎる。


「完璧な答えなどありませんよ。ならば今の自分にとって最高に”カッコイイ”答えを出すしかない。それは間違っているかもしれない。他人から非難される事も、笑われる事もあるでしょう。しかし、間違いに気付いた時に、その都度修整してゆけばいいだけの事。つまりそれが、”成長”なのではないでしょうか。 」

「人はいつだって次回作こそが最高傑作のはず! 」

発言者 山崎宅郎
企業戦士YAMAZAKI 著・富沢順

人間の成長に関する金言を二つ。どちらも座右の銘にしていい台詞である。


「いいか?優。男ってのはな、格好悪い自分を知ってるからこそ格好よくなれるんだぜ・・・」
発言者 近衛優一郎
まほろまてぃっく

主人公への祖父のアドバイス。真面目な気質の主人公に対し、それだけではいかんという言葉なのだが、それまでの不真面目なシチュエーションからまさに一転、その不真面目さに意義を付加する。

「玲二は、殺させない!神様も、悪魔も、知ったことじゃない。玲二の命も、あたしの命も・・・誰にも渡してやるもんか。」
発言者 キャル=ディヴィンス
ファントム 虚淵玄

善悪を超越する愛の名台詞である。愛する人のため似た叩くこと、そのために殺すこと、愛も、己の罪も、善も悪も。
総てを受け入れ受けとめる覚悟を示す、激烈なる名台詞である。


「いいか若造。地球にはお前には理解できない者が二つある。一つは俺。もう一つは、ゴジラだ。」
発言者 ゴードン大佐
ゴジラファイナルウォーズ

轟天号を使ってゴジラを蘇らせ、怪獣軍団を操るX星人に決戦を挑む艦長ゴードン大佐がX星人統制官に向かって啖呵切ったセリフ。
お前如きに俺とゴジラはどうすることもできん・・・という、男らしさ横溢のセリフである。

村正宗殿から頂いた名台詞です。

「私はもう抗核バクテリアも、ビオランテも作りません」
「何を言っているんだ!?もう一度やるんだ白神くん!ゴジラ細胞は幾らでもある!!」
「ゴジラでもビオランテでもない、本当の怪獣はそれを作った人間です」


発言者 白神源壱郎 大河内誠剛
ゴジラVSビオランテ

怪獣よりも恐ろしいのは、それを生み出してしまう人間、ということ。怪獣映画の裏のテーマを明確に切り取った異例の名台詞。


「分かった。・・・勘違いしないでくれ。僕は・・・お姫様にさよならを言いに来たんだ。」
発言者 時野和人(ときのかずと)
円盤皇女(ユーフォープリンセス)ワルキューレ(アニメ版)

意表を突かれた台詞。円盤皇女ワルキューレ自体は極ありきたり、うる星やつら〜天地無用のラインを継承するスペオペラブコメなのだが、この台詞とその後の展開には中々普通のラブコメにはない「予想外」があった。
ヴァルハラ星の皇女であるワルキューレの婚約が内定し、第一皇女メームに強引に本星に連れ戻されてしまう。
そしてそれを追う、今まで一緒に暮らしていた仲間達。それぞれに警備の軍をひきつけ食い止め、最後ワルキューレと同じく和人に抗議ころを抱いていた七村秋菜が、その想いを吹っ切ろうとするように「さあ早く、お姫様を迎えに行って!」と叫ぶのだが、それに対して和人が言った台詞が、意表をつくコレだ。

誰もが(見ている人間も)彼のそれまでの行動は、ワルキューレを愛していて、それを取り返そうとするための行動だと信じるだろう前提を、突然覆すこの謎めいた言葉。

その後のワルキューレとの会話で、その真意が判明する。

ワルキューレは地球に来たときの事故で時野和人と魂の半分を共有しており、普段は小さな女の子の体と心で窮地のときだけ元に戻っていた。
その理由は、地球に逃亡するきっかけとなった責務に対するプレッシャーからの現実逃避だったと明かし様々な迷惑をかけすまなかったと詫びるワルキューレに対する返事、和人は。

「謝るのは僕のほうだ。僕は天女の幻影ばかり見て、本当の君を見ていなかった。」
発言者 時野和人
円盤皇女(ユーフォープリンセス)ワルキューレ(アニメ版)

と言う。初めて出会ったときの、ワルキューレの美しい姿。魂の共有により会えぬその姿を追うばかりで、心に抱えたものに気づけずにいた、と。
その上での。

「あの小さなワルキューレは、もう何処にも居ない。けど居るんだ、大きくなった君の中に。僕は、両方の君に出会えてよかった。」
発言者 時野和人
円盤皇女(ユーフォープリンセス)ワルキューレ(アニメ版)

我侭も強さも、本音も建前も総て愛する、という宣言。

そして最後には
「大人になった私は、王女としての勤めを果たさねばなりません。私は、もう逃げません。」
「分かっています。だから僕は、お別れを言いに来たのです。」

発言者 ヴァルハラ星皇女ワルキューレ 時野和人
円盤皇女(ユーフォープリンセス)ワルキューレ(アニメ版)

と、「互いに相手を想っているからこそ別れる」という、いい具合にヒネったラストへと最終的に台詞が繋がるわけである。

もっともこの後さらに王室側の陰謀と偶発の事故という二段のどんでん返しが待っていて、この辺は割りとうやむやになってしまうのだが。


「悪魔にだって友情はあるんだ―――っ!! だってそうだろ?あのたくさんいた悪魔超人のほとんどが正義超人に倒された中で 俺達二人だけが生き残って正義超人打倒のために力をあわせて戦ってきたんじゃないか! いくら悪魔だからって苦しい戦いを共に戦い抜いてきたパートナーを見捨てられるものか―――っ!!」
発言者 サンシャイン
キン肉マン 著・ゆでたまご

単純なバトルものであるキン肉マンであるが、この台詞は何だかいい。
悪役の苦労というか悲哀というかがに滲んでおり、長い連載の歴史を効果的に重石として使った、比較的初期から登場している悪役だからこその台詞。
そういえばサンシャイン、キン肉マン2でも人情路線の似合う奴だったなぁ・・・。


「正義・・・正義だと・・・?確固たる正義などこの世には存在しない。そう・・・存在するはずもない。」

「そう・・・誰も皆自身の選んだ道を信じ生きる。例え正義など幻想だと分かっていてもだ。そして幾度と無く自問を繰り返す夜を越え、時として自分をも裁き戒めることで、迷い悔やみながら前へと進んで来たのだ!!グエンも、リンも、そしてあの小僧もだ!そして・・・」

「そうだ!皆己自身と対峙し今も何処かで戦っている!他者を開くとすることでしか保てぬ正義とは訳が違う!」

「私には正義の何たるかは解らない。だがこれだけは言える。自らを完全者などと妄信し、考え、苦悩することを放棄した者共の掲げる正義が、正義である訳がない!!!」

発言者 疾風のガラハット
キメラ 著・緒方てい

絶対正義を騙りながら非道をなす宿敵・白の鉄槌兵団の一人、「遠撃ちのトリガ」相手の名台詞。
ただただ踏みにじり塗りつぶすだけの絶対正義の否定、「問い続けること」の価値を叫ぶこの名台詞、まさに現代の混迷を強く打つ素晴らしい台詞である。

「ではお前は過去と未来・・・どちらを選択する。」
「・・・私が選択するのは・・・現在(いま)だ!過去を想いながらも未来へ必至に行きようとする、今、この時だ!」
「力を持って望む先は過去も未来も破滅だ。現在を生きようとする異なる文明の子よ・・・それでいい。汝の世界には希望が見える。」

発言者 審判の門プログラム サムス=アラン
メトロイドEXサムス&ジョイ 著・出月こーじ/原作・任天堂株式会社

過去と未来の選択・・・という、割とよくある二者択一に対する第三の回答の秀逸例。暴走した超古代の遺産、宇宙のあらゆる場所に自在にブラックホールを出現させる超兵器「審判の門」。そのプログラムは問う。過去と未来どちらを選択すると。
宇宙海賊グリードは、力により己が総てを支配するという「未来」を選択し、結果力に飲まれ消滅。

それに変わり装置を制御しようととしたサムスに、繰り返される問いかけ。それに対するサムスの答えが、「今日」であった・・・

作品自体は子供向けであるコミックボンボンにおけるメトロイドのコミカライズなのだが、マガジンZ版が「サムスの最初の物語」ならば、こちらは「サムスの最後の物語」とでも言うべき物語。
サムスに憧れる少年の主人公と伝説の戦士であるサムスが旅をし、主人公が徐々に成長してサムスを助けるようになっていくというつくりは王道ながらもいい出来であるし、だからこその最終回、サムスが正体(いつも強化装甲服を着ているから分かりにくいが女性)を明らかにするくだりが映える。
その超古代の遺産の中枢、審判の門の内へと向かう後姿に少年主人公が「あの後姿を忘れない」と誓うシーンなど、この種の「世代間に継承される過去と今日と未来の物語」の、まさに完成形であろう。

力だけではない明日のための今日。そういう「時間軸」をテーマにしているが故に、成る程と頷ける台詞でもある。

「大人になるということは・・・夢を捨てることではない。夢を叶えようとすることだ。」
発言者 アニマ=アニムス
めんたるダイバー 著・こやま基夫

他者の精神内部に己の意識を入り込ませ、夢を操る特殊能力者、サイコダイバー。その力を悪用する組織ナイトメアに対抗する少年・眠田明と少女・千堂まなみの自我が融合することにおいて具「幻」化する、精神世界の超人。
それがアニマ=アニムス。その戦い方は劇中ナレーションを抜粋すると、
「理論武装、それはサイコダイバーにとって生死を分けるもっとも重要な要素である。意志の強さが雌雄を決する精神世界では、論破されることはすなわち敗北なのだ。」
となるそうで・・・力づく混じりの口げんかといった風に見えなくも無いが、それゆえに面白い台詞も多い。劇中、虚空蔵菩薩(知恵・記憶を司る菩薩)と比喩されるだけのことはある。
これは幼児的人格を持ち、大人になることを拒むサイコダイバー・具幻体(イドノイド)童夢(ドウム)に対して叩き付けた言葉。
夢という一つの単語を元に、大人の意味を問うこの言葉は中々に面白い。


「虐げられし者の怒りそれは理解しよう、されど戦う場所はここではない。日本のお父さんよ、お前が現実の世で戦い続けたのは何のためか!守るべき家族のためではなかったか!?」
「家族は私の信頼に答えてくれない、だから私はっ」
「なれば!!戦う場所はそこに在る。屈服させるための戦いは空しいが、愛と信頼を勝ち取るための戦いは・・・美しい。」
「ああ・・・」

発言者 アニマ=アニムス 並野凡平
めんたるダイバー 著・こやま基夫

最近サイコダイバー能力に目覚め、ナイトメアの具幻体・堕夢(ソドム)にそそのかされた平凡なサラリーマンに対する説諭。
愛と信頼を勝ち取るための戦い。
成る程、確かに。そのような、建設的な戦いであるならば、過程において苦しみがあるとしても・・・確かに、「美しい」だろう。


「思いやってこそ支えあってこそ人は生きる。利己的な結びつきは仮初のものでしかない。人の本質に確かに悪は潜むやもしれん。大事なことは人と人の間にあるものを見つめること!!故に我々は自らを人間と呼ぶ。」
発言者 アニマ=アニムス
めんたるダイバー 著・こやま基夫

愛と信頼に基を置く人格融合であるアニマ=アニムスに対し、具幻体・猫夢(ビョウム)と幻夢(ゲンム)が欲望を元に人格融合した、ドグラ=マグラ。
人類の総ては欲望に基づき、故に悪こそが正しいと主張するドグラ=マグラ。その強敵に対し、アニマ=アニムスは叫ぶ。

人単体ではなく、人と人の間の「関係」に着目した論理展開というのは、社会的存在である人間存在をある意味で人間単体を見るより深く捉えているといえ、流石である。

戻る