<艦隊これくしょんZero「エピローグ」>

ところ変わって、現代の鎮守府。
「そ、そういう事があってから、うっ、艦娘への白兵兵装の搭載と白兵突撃は、戦果もあるが危険も多いってんで、少なく、ひくっ、けど、俺、三笠さんに憧れてたからさっ・・・ううっ・・・」
「あうあう・・・かわいそうなのですっ・・・」
「ふええ〜っ・・・」
己が知る三笠の物語を語っていた天龍とそれを聞いてきた駆逐艦娘たちであるが、天龍が自分の話で泣いてしまうのと前後して悲劇の物語に一緒に泣いてしまっていた。
「そ、それで、その後三笠さんは・・・」
「それが、よく分からねえんだ。調べても・・・生きてるって、信じたいんだけどさ・・・」
涙をぬぐいながら質問する駆逐艦娘たちに、天龍は答える事が出来なかった。
深海戦争が始まってからの直後の記録の混乱だけでなく、第一世代の艦娘に関する記録にも、色々な理由から、操作や極秘扱い等があり、断片化されているのだ。

「やれやれ。天龍の奴・・・」
そんな艦娘たちを、窓の外から眺める者が二人。一人はこの鎮守府の提督。そしてもう一人は。
「あとで涙を拭いてやれ・・・心理的な意味でもな。そういう提督が、艦娘には必要なのだ。」
真面目そうな青年提督と並ぶ彼女は、提督より多くの勲章をつけた上位階級の女性提督であった。片手を手袋で被い、腰に軍刀をつっていた。
上官の女性の発言に、青年提督は背筋を伸ばして答える。単に上官であるからというだけではない。彼女には、それをさせるだけの威風と実績がある。
「肝に銘じます、『美坂(みさか)』大将。」
「それにしても、相変わらず私は艦娘を泣かせてしまうものだな・・・とはいえ、上層部の裏も闇も知りつくし、かつ、艦娘としての力も限定的にではあるが残っている。となれば、名前でも変えて、暗黙の了解として三笠は消息不明となったのだということにしておかねばな」
今は美坂、かつては、同じ音で構成された名を持つ艦娘であった提督は、今も戦っている。
知りすぎたものとして、上層部に加わる事で、艦娘たちが今度こそ、提督の元後顧の憂いなく戦えるように。
「最も、お前は、私と違い未だに轟沈者を出していない。私のアドバイスなど最早不要か。」
「いえ。美坂提督にご教授いただいた戦訓があればこそ。」
しゃちほこばる青年提督。彼女とその仲間たちが切り開いた情報とノウハウに、どれほど助けられたことかと。
美坂は微苦笑し、その肩を叩いた。
「固くならんでいい・・・あの子たちを頼むぞ。特に、天龍は責任感が強すぎるがゆえに意地っ張りの向こう見ずで、物腰は違うがそう言うところばかりは昔の私に似ているからな・・・」
「はいっ!」
青年提督の敬礼の声が、かつて第一世代の艦娘たちと深海棲艦たちが見上げた青空に響いた。

その青空に、美坂提督は手袋を脱いだ掌を翳した。あの日の傷跡を。重大な決断の時は、いつもこの傷に問うてきた。あの日の戦姫の魂と結魂し、旧式な儀装の限界を超えた力を齎し続けるこの傷に。
あの日の戦いに。あの人に、恥じる事無き己として振舞えておるか、と。
提督制度の確立に尽力した日々は、間違いではなかったと今ならば胸を張って言える。

深海戦争が、第二局面を迎えて、しばしの時が流れた現在。

艦娘たちは戦っている。心を結んだ提督と、ともに。


艦隊これくしょんZero 完



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