・機動刑事ジバンORE<カブキノイド>
「イヨォーッ!!」
芝居っ気たっぷりの叫びと共に地を踏み鳴らし、鞍馬山の天狗か源義経の如くカブキノイドガールが連続跳躍。天へ跳び、跳躍の頂点で空中に待機させた己の分身たる歌舞伎化粧面を蹴り飛ばし高速落下。コレにより彼女は、飛行とまではいかないが空中における擬似的な三次元機動が可能なのだ。そして、バイオノイドの筋力と異能による転移跳躍二回分の打撃力を込めた蹴撃が連続してジバンを襲う。歌舞伎能異徒戦芸、六方蹴撃!
「うむっ!?」TYOOOOONN!!TYOOOONN!
拍子木のような音と共に更に高振動と衝撃が炸裂し、ジバンの装甲を揺らす。重装甲を大出力で駆動せしむる鋼鉄の正義、機動刑事ジバンの装甲である合金特殊焼結体はそれに耐えるが、衝撃と振動は徐々に硬い装甲を、硬いが故に皹入らせ、そして同時に、内部の精密機器にダメージを蓄積していく。それを、正に六方を踏むように、カブキノイドガールは何度も繰り返し叩きつけた。
・・・・カブキノイドガールは本来戦闘専用型バイオノイドではない。それはキラーノイドやジサツノイドやマッド・ガルボの任務。歌舞伎とは傾き、その祖である女、阿国を象りし少女怪物は、本来華美なる傾き踊りで舞台型の異界を形成、異界と異形への憧れに人の心を傾けソレを以て相手の精神を魅了掌握、女の胎(からだ)で育んだ怪物細胞を魅了した相手に与え、異界の異形へと誘うが本業の異能。戦闘能力は本来余芸だが、構わぬと、檜舞台にカブキノイガールは笑い舞う。何故ならば芸の名を持つ己なればと、戦技を芸術として高め抜き、そこに能力を応用すれば、戦闘力も戦闘専用型に勝るとも劣らぬと自負するが故に!
「くっ‥‥ダメージがっ‥‥ふざけ回っていると見えたのは、引っ掛けだったのか!」
そしてそれは事実。火花と煙を散らし、ジバンはそれまでの楽し気に遊びまわり演じおどけ歌い燥ぐ様子から打って変わった戦闘力に驚愕する。しかし、それは引っ掛けではない。
「かんらかんら、否否!遊びも戦も、存分美々しく楽しくしてこその歌舞伎よ!」
傾き者は婆娑羅の裔、豪華絢爛反骨反発の金剛石。故に彼女は怪物でありながら人の美を讃え、そうでありながら戯れ笑いながら人を怪物へと変化せしめ、組織の意より離れ人の子と機動刑事に怪物細胞に抗いうる遊びを入れ、存分に遊び走り舞い輝く。故に彼女は思う。余芸をも全力で楽しみ、正義の化身をも楽しますべし。
「嗚呼、快なり、これぞ某が愛なり!いざや遊ばん鉄捕方いざいざ、いぃ〜ざ〜ぁ〜っ!」
咥えた喧嘩煙管が宙に舞う程の勢いでかんらかんらと笑いながら、着地した隙を突くべく機動十手を振りかざし突貫するジバンを迎え撃つ。宙に舞う喧嘩煙管をその手に取り、狂狂(くるくる)と回せば、あら不思議、大傘に変ず。これぞ怪物細胞の力。化粧面、蜘蛛糸、花吹雪、爆発、光、熱、拍子木や伴奏の如き音を齎す高振動衝撃波、それら全ては、怪物を作る細胞の作用によるそれを寄生させた物質とそれで構成する自己の肉体の変成に他ならぬ。汎用を過ぎ並の脳ではどう扱えばいいのか分からぬ万能の領域の力を、戦闘において即座に応用可能な形に落とし込む為の道こそが歌舞伎なのだ。故に理論上、技を磨き、歌舞伎を究めれば、歌舞伎の演目、要素、道具等ごとに、際限なくカブキノイドの能力は増えていく!
「傾きたり、白波の如き傘達と相踊り、咲かすは火花の波濤なりけり!これぞ、歌舞伎能異徒戦芸、白波五人傘!」
機動十手を開いた傘を盾として使って弾き、閉じて槍としジバンを突き、怯むところにぐるりと旋舞、同時傘を再び開いて回転させ、KAKAKAAAAAAA!と音を立てて、丸鋸と化してジバンの装甲を食む!
更に傘はカブキノイドガールが持つ一本だけではなく歌舞伎化粧面がついた四本が宙を飛び、四方八方から襲い掛かる!鋸として体当たりするだけではなく、爆撃機として怪物細胞で生成した爆発物を投下!PONPONPONPON!鼓の如き小爆発が連続して炸裂!
「ぐわっ!だが、負けない、人を怪物にさせたりはしない!負けるものか!」
たたらを踏みながら、機動十手を銃へと変じ、光弾を放つジバン。カブキノイドは回転し舞い踊りながらそれを傘の盾で受け、射撃が止むや否や、傘を肩に担ぎ、片手を開いて前に突き出し、地面を踏み鳴らしながら前方へ連続跳躍するように駆けて間合いを詰め、その掌を張り手として叩き込む!耐えるジバン!笑うカブキノイド!
「応とも応とも!そうでなければ面白くない!暫く暫く、今しぃいばぁああらぁあああくぅううっ!某と舞い踊ろうではないか、のぉうっ!魅入られ舞い始めるまで!」
派手な舞踊も、派手な技も、四方八方に出没しこの舞いを持ってばら撒いた怪物細胞により人が異形と化すまでの時間稼ぎも兼ねている。そして同時に、異形に魅入られた人が、人の正道を取り戻すかを試す為の傾き遊びでもある。
見得を切る。即ち、はったとばかりに見据える眼光、交わる視線から至近距離で繰り出される光条、歌舞伎能異徒戦芸、眼力光線!
HIIIIYOOOOOOO!大気が熱で鳴動し、笛の如く鳴り響く!
「くううっ!何て奴だ!」
赤熱する装甲。食いしばり、ジバンは正義の為に突き進む。輝ける正義の味方として。相対す輝く女に。感嘆と共に。
「嗚呼、感謝感激ぃ雨ぇ霰ぇ!!戦意、敵意、脅威、驚嘆、感嘆、感想、感激の観劇ぃ!それこそ我が舞い踊りが得たる御捻りなぁりぃっ!」
火花散らし交戦を回避し機動するジバン。泣く程笑う傾き女(カブキノイド)もまた、再び六方を切りながら、KA!KA!KA!KA!と太鼓の縁を叩く音のように足音を鳴り響かせ跳躍し、爆発交戦、蜘蛛糸を次々放つ。戦いこそ、人造の怪物が獲得し得る、生ける意味の花なりと。
我が先達たる死せる怪物生来生来死を求める者、物語に憧れた英雄、我が後輩なる出撃待つ怪物、非道を撒く任務を負わされし士道の化身、汝等の友輩として此処に叫ぼう。
「あ、絶景かな、絶景かなぁあああああっ!我等にも、檜舞台は此処に在らん!」
連獅子に髪振り乱せば、振り乱した髪が真紅に染まり、紅蓮の炎へと変化する。カブキノイドは、芍薬牡丹百合の花の如く、傾く程絢爛に、金剛石の如く咲き誇り笑った!