機動戦士ガンダム非公式歴史研究〜動物NT、MS忍者、魔法のMS、根性MS、そして木星圏の怪異〜



今は昔の物語である。
「サイバーコミックス」という漫画アンソロジーが存在した。ガンダム系列(ガンバスターなど、その当時の流行もそのつど取り込んでいたようだが)の漫画を、いろいろ載せていた。
内容は玉石混交といった印象が強いのだが、何気に長谷川祐一、島本和彦などの有名作家も参加していたりして。

そして、「とんでもない作品」も多かった。「トニーたけざきのガンダム漫画」「犬ガンダム」「ガンダムさん」「妹ガンダム」などを掲載する現代(2006・9・1現在)の雑誌「月刊ガンダムエース」のようなノリだったといえばいいだろうか。しかもそれらの「パロディ的とんでもなさ」に加え、ガンダム世界の設定を積極的に解釈し新規に付加しようとする「革新的とんでもなさ」を持っていた。
さらに言えばその中での長谷川祐一の作品は、「木星」と「ジュドー=アーシタ」(正確に言えば木星爺さんことグレイ=ストークという変名を名乗り、恒星間航行船建造による地球権脱出を目論む、ニュータイプでダブルゼータガンダムをベースにした旧式改造MS・ガンプを駆る男・・・なのだが、諸々の要素からするに恐らく年取ったジュドーと思われる)という二つの要素を持って後の作品へとつながり、「クロスボーンガンダム」シリーズにまで至るサーガとなりガンダムエースで現在進行形というから、決して「過去」の作品というわけではないのだ。

以下の文書は、それら公式と非公式の狭間をたゆたう作品を、それら一連の作品に見られる不思議な偶然の一致から、ガンダム世界の歴史研究的に(大馬鹿真面目・似非オカルト疑似科学歴史風に)語ってみようという試みである。


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・・・宇宙世紀の歴史における、公式の年表に現れない不可解な事件・・・ただの極秘事項、秘密作戦などではない、科学では説明できない事件・・・
泡沫的なとるに足らぬうわさと思われる数々の中、連続性を持って、関連性を持って語られる事例が確かに存在する。
その頻発は、一年戦争の時期から散見することが出来る。


一つは、ジオン・連邦の間を巡る諜報戦闘に暗躍したとされる、「MS忍者」。
もう一つは、連邦軍特務艦隊が行ったジオン本国サイド3に対する破壊工作を撃退したと言われる「魔法の少尉」である。

宇宙世紀に忍術だの魔法だの、あるものか、と思われるだろうし、それが普通の正しい反応だろう。

だが。
この二つの現代科学とミノフスキー物理学を超越した存在には、奇妙な類似が見られるのだ。

まずはMS忍者から語ろう。彼らMS忍者の活動は、別に一年戦争時のみに限定されるものではなく、確認される最後の大規模行動は第二次ネオジオン戦争開幕前夜であり、グリプス戦争など継続して活動を続けていたらしい。
その最大の特徴は、通常のMSの限界を遥かに超える戦闘能力・移動能力である。
「一夜にして3光秒を駆けた」などというのは虚報という説もあるが、地球から木星までをMS単体で航行し「忍びであれば赤子でも駆ける距離」と称したと言う。

(なお虚報といえば、彼らはミノフスキー粒子を散布するとき「松の実ケシなどを混ぜ粉末状にすることを好んだ」という目潰し薬でも調合しているかのようなわけの分からぬ記述が散見されるが、これは恐らく特殊な粒子や電波妨害を兼用することを指す隠語ではないかと思われる)

また彼らは独特の戦闘方法を用い、MSの使い方も特殊を極めたという。グリプス戦役初期に既にアクシズ最新兵器であったはずのMS・キュベレイの改造型を所持していたものが居たという話はうらの戦い故の試作機投入・最新鋭機実験などで説明がつくかも知れぬ。
だが一年戦争時代のMSが第二次ネオジオン戦争時にも現役MSを遥かに上回る力を発揮したとか、水中戦闘用MSの改造機が宇宙で活動していたとかいうのは、明らかに単純な機械的改造などでは説明できない事象である。

その原理は全く説明されておらず、仮にこれを事実だとするならば、きわめて断片的な情報からその理屈を探るしかない。

強いてヒントになりそうな要素を挙げるならば、ラグランジュポイントの片隅に人知れず存在するという「忍の里コロニー」で行われているというMS忍者独特の訓練方法であろうか。
そこではコロニーの回転速度を利用して負荷をかける訓練が幼少のときから行われるとされ、「最低8Gの重力下で通常の常人並に動けてこそ真の忍び」であるとされる。
また、忍びの者による連邦試作MS強奪における忍び同士の内紛において、奪ったばかりで改造を施されていない試作MSが、他のMS忍者と互角以上の速度で動いたという事例があるという。

上記の特殊訓練と改造なしでMS忍者特有の機動をなしうるという点、水中用MSなどが宇宙空間で活動すること、ならびにそもそものMS忍者の常識を超えた機動能力から考えるに。
「MS忍法」の真髄とは、機体の周囲に術者(パイロットである忍者)本人が何らかの手段で特殊なフィールドを形成し、その内部においてMSの挙動を自らの常人の数十倍の効率で鍛え上げた肉体に同調させることにより機体自体を加速・強化しているとするならば。
そのようなフィールドが存在すると仮定するならば、大気圏突入を装備なしでこなしたり、太陽表面などというとんでもない環境で戦闘を行うなどという破天荒で事実無根な噂とされるMS忍者の行動にも、法則性を見出すことが出来るかもしれない。
(最も、上記のような事例は失敗するもののほうが多いどころか成功するものきわめて稀とされるところからすれば、このフィールド形成能力は資質や鍛錬によって相当左右されるらしいと考えられるが。)
科学的根拠など絶無であるが、そもそもニュータイプとよばれる力とて科学的根拠がほとんど無いまま、経験則と人体実験でその力を増幅するサイコミュシステムやその力を人工的に模倣した強化人間という形で利用されているように、この力も(仮に実在するとすれば)理論立てされぬままに忍びによって培われた科学を超えた技術の体系であると考えるべきなのだろう。

一方「魔法の少尉」のほうは、「赤い彗星の人」から魔法の力を与えられたのだと言う。だがその「魔法のふとんたたき」(!?)によって生み出される力は、MSをその限界を超えてくどうせしむるなど、MS忍者のそれに酷似している。
恐らく、原理も同一のものなのではないだろうか。
そう推理できる理由は希薄でこそあるが複数存在する。

一つは、鍵を握る「赤い彗星の人」、についてである。「赤い彗星の人」は、シャア=アズナブルでは無いらしい。同一人物にしか見えないのだが、劇中でシャアがララァと一緒にベッドで寝ているのと「同時」に、「赤い彗星の人」が別の場所で別の人間と会話している事実が確認されている。
彼は、自らの正体をこう語ったという。
「その昔・・・この世にはシャア=アズナブルなる者は存在しなかった。だがある男がシャア=アズナブルを名乗り全ての過去と共にその名を捨てた・・・家族や愛するもの希望や夢などと共に・・・私はその捨てられしもの・・・私はあの男の過去・・・私の名は・・・キャスバル=レム=ダイクン!!」
と。
いかなる力によるものかは分からない。ニュータイプの力の特殊な発現とも、それこそ魔法忍術の類とも言えるだろう。
ただ、この言葉に前後しての彼の言葉から、彼が「シャア=アズナブルが捨てた人類を、人と人の絆を、分かり合える可能性を信じる心が形を持ったもの」とでも言うべき存在であると、辛うじて言うことができるかもしれない。
そして第二次ネオジオン戦争前夜、MS忍者の棟梁・幻斎の元をシャアと呼ばれる人物が訪れたというが、その際彼は「MSの振り回すビームサーベルを真剣白羽取りした」という、まことありえないというか非科学的なエピソードが残されている。
いくらニュータイプでもそんなことが出来るはずも無く。だとするならば、並びにこの第二次ネオジオン戦争前夜におけるシャア=アズナブルのいくつかの普段の彼らしからぬ純粋な行動から考えるに、ここにMS忍者と「赤い彗星の人」の間に相通ずる意思が感じられるような気がする。
(そうだとすると後述の「伝説巨神」事件におけるシャアも「赤い彗星の人」だったのではないかという説も出てくるが、それはさすがに不明である)
そしてもう一つは、ブラスターマリと戦ったという、サイド3内への空襲、コロニー外壁に穴を開けるなどの破壊工作で悪名をはせた連邦特務隊である。
公式記録には残っていないこの部隊は、ジオン軍の試作MSジュアッグのような発想で造られた「地底戦用ジム」などのほかに類を見ない装備を所持していたとされるが(かつてはこれらの装備は非現実的の一言で済まされてきたが、近年発見された「MSイグルー」と呼ばれる資料に記されたジオン軍の驚くべき珍兵器に比べれば、さして非現実的とはいえないという意見が出始めている)、その中に興味深いものがある。
「強行偵察型GM」と呼ばれる三機セットの丁度ジオン軍のアイザックなどの機能を複数に分散することで強化したような機体、それぞれ直接偵察用、通信傍受用、情報統合分析用と見られる「みるちゃん」「きくちゃん」「なんだろうくん」という緊張感に欠けるペットネームで呼ばれていた機体なのだが。
そのうちの「みるちゃん」「きくちゃん」そっくりの機体が、最後のMS忍者大規模作戦「百機夜行」において「メザル」「ミミザル」というコードネームで投入された、という当時その行動を黙認していたネオジオン艦隊の目撃情報がある。
ここから、そもそも件の連邦特務とは「MS忍者」だったのではないか、あるいは最低でもその一部にMS忍者が存在したのではないか、と考えることは出来る。無論、発想の飛躍の可能性も高いが。

これら事例は、無論「MS忍法」と「魔法」という、不確定な力同士を結びつけるにはあまりにも希薄。
だが、ニュータイプに代表されるように、「物理法則を超えた力」は、歴史に確かに見え隠れする。ニュータイプという事象のみがもてはやされ、その他が影に隠れただけ・・・とは、いえないだろうか。
そして人類が把握する「ニュータイプ」というものも、決して確かにとらえきれているものではないとする意見もある。
物理法則の超越の三つ目の事例。詳しい時期は不明だが、恐らく連邦主力が宇宙に上がって以後。
連邦側のニュータイプとジオン側のオールドタイプが交戦中、ジオンのオールドタイプが駆る整備不良のいびつなザクは腕がもげようが下半身がもげようがかまわず動き続け、あまつさえオールドタイプのままでニュータイプと感応したという。
これはまた違う、より直接的に思い、そのジオン兵に言わせるところの根性が物理力として作用した事例。そしてニュータイプという概念の不確かさの証明。
ニュータイプの不確かさの証明にいたっては、一年戦争からグリプス戦役の間に、MS忍者の中には動物のNT化(犬、だったらしい)に成功し四足歩行感応制御のMSに乗せて投入したという噂がある。
人の革新が犬に宿るものかというだろうが、時代を遥かに下ってコスモバビロニア戦争とザンスカール戦争の間木星戦役直後、一年戦争時にさるジオン高官(ガルマ=ザビ説が有力?)が発案した「猿を調教しMSを操縦させる」という計画を元に猿を培養していた小惑星基地が数十年周期で帰還、暴走しMSで暴れた猿たちはNT能力に覚醒していた、などという話すら存在するのだ。
目撃者の一人は「ニュータイプとは人類の進化、新たな革新だったはず!猿がニュータイプになしまってはつじつまが合わぬ!っていうか全否定!!」とそのショックを叫んだというが・・・
まあ、「そう」なのであろう。ザンスカール戦争時には未確認記録ながら「嘘をつく」ニュータイプ、つまり「わかりあう力を悪用し相手の心に嘘のイメージを投入する」、ニュータイプの意義から外れた能力者すら居たという。
「そんなもの」なのであろうな。

さて。

それら、歴史の影に見え隠れする、超常の力の中に・・・

超ド級の、それこそ人類全宇宙の存亡にかかわるといわれたものが存在する。

それも、二つも。奇しくも両者共に時は第二次ネオジオン戦争前夜、所は木星。それ以外にもいくつもの共通点を持つ、実に不気味な暗合。

その一つは・・・「伝説巨神」と呼ばれた。普段はアムロ=レイやジュドー=アーシタなどの「歴史小説」を書いている木星帰りのニュータイプ、ヨシユキ=トミノが描いた小説の中の存在であったはずの、分かり合えぬ人類を宇宙ごと滅ぼした無限力の巨神。
だがしかしその巨神に接したアムロ=レイは言ったという。
「木星にニュータイプが多いのは、何らかの力場が作用しているしているのではないかという説がある。その源は奴ではないのか。かつてシャリア=ブルが、パプティマス=シロッコが幻視したという血まみれの巨神・・・奴が警告として滅ぼした宇宙の記録を、ヨシユキ=トミノの脳に吹き込んだのではないのか。」
と。そしてそれを裏付けるように、巨神を構成する物質は、通常の物質とは真逆に、放射性物質が半減期ごとに「増大」するというありえざる反応を示した・・・すなわち、無から再び生まれ出ようとしていたのだ、とも。

そしていまひとつは、MS忍者最後の大規模行動「百機夜行」の目標であった、木星宙域に現れた異星異界の存在。
奇怪な生命の如き姿を持ち、異形と幻覚で人の心を破壊する存在。人の意思を、あらぶる本能を嫌い、ゆえに人を滅ぼすというもの。
・・・その姿は、「伝説巨神」と同じくヨシユキ=トミノが書いた小説「無敵鉄人」に登場した、地球を狙う侵略者かと思われていたが実際は「悪しき知性を滅ぼす」存在でしかなかったという「生体コンピューター・ドール8号」に、不気味なほど類似しているように見える。

これまで取り上げてきた「力」の奇妙な連続性とはまた違う、恐ろしい「連続」。
あるいはそれらはニュータイプだけではなく、この世界のさまざまな「力」とすら関係していたのではなかろうか。人の可能性を測り業を断罪する無慈悲な神として。

だが、しかし。
「伝説巨神」は、分かり合えずともそれでも共に戦うニュータイプと、ニュータイプであることすら超えようとする少年の前に活動を停止し(一説によればその後、第二次ネオジオン抗争で落下するアクシズを食い止めた謎の光は、その「無限力」が人を認め守ろうとしたものであるという)。
「生体コンピューター・ドール8号」は、MS忍者伝説の男「Gの影忍」の最後の突撃により姿を消した、という。


それらの真偽は、全て定かではない。だが、こういった噂、説、風聞は、さながら争い絶えない宇宙世紀に対する、絶望と希望を写す鏡のようでもある。
力を求める裁かれるべき罪人、されどなお、信じ、手を取り合い、己の全力を良きありようへと向けようとする者。

そんな人間を、これからもこういった鏡は映し続けるのだろう・・・・

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(参考作品「Gの影忍」「なぐりあい宇宙(そら)」「魔法の少尉ブラスターマリ」「機動戦士対伝説巨神・逆襲のギガンティス」など)


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