数十分後、トヴァたちは件のぼろアパートに来ている。クリオネをたぶらかそうとした男が住んでいたアパートに、だ。そうしないと埒が明かないから。時計屋は何故かバイオリン・ケースを持っている。
「・・・いいか、この鍵開けって奴はな、熟練者とそうでない奴の差がはっきりと出る。」言いながらバイオリンのケースからピッキングツールを取り出す時計屋。鍵穴に針金を突っ込み、開けようする。
「ライフルは馬鹿でも当てられるが、拳銃になるとそうはいかねぇのと同じさ。トヴァ、お前は何分で開く? 見てろ、5秒で開けてやる・・・。」
ドアに勢いよく衝撃が走って、吹っ飛ばされる。トヴァが思いっきり蹴ったのだ。
騒ぐ時計屋を無視し、中に入るトヴァ。
誇りっぽい室内。キッチンを改造した暗室、そして天井に張り渡されたロープには、チャイルドポルノの世界が広がっているが・・・。
「・・・死体がねぇぜ。」
「私が食った。」
突き出される45口径ジェットジャイロ・リヴォルヴァー。
部屋の薄暗いところから出てきたのは、鼻息荒い、まだ少年のような若い警官、通称「子犬」と、落ち着いた雰囲気を見せる年長の赤毛の女性警官、通称「篭手」
「・・・その銃は止めろと、忠告したことなかったっけ。」
「ないっ! お前こそ、357マグナム・リヴォルヴァーでカウボーイ気取りは止めろといいたい! 」
「とりあえず、グロッグがあればいい。たくさん撃ったら、当たる率も増える・・・。あと、フランク・ザッパもいい。不思議な音楽をやる。で、どうしてお前らがこんなところにいる? 」
トヴァは答えた。
「われわれには黙秘する権利がある。」
篭手、仏頂面で
「雄弁は金なり、沈黙は銀なり。されど愚者においては必ずしも銀ならぬ。いいセロケースを持っているな。くれ。」
「やらん。」
トヴァ、即答する。
「公務執行妨害で逮捕だっ! 」
子犬、激昂して叫び、トヴァの手に手錠をかけようとする。その一瞬。ウサギの改造人間のすばやさを生かしてクリオネの手を掴み、伸ばす。
勢いあまって、クリオネの手に手錠をかける子犬。
「あ」に濁点がついたような声を上げる子犬。
なんて事をしてくれたんだ、これは立派な操作妨害だぞ云々、叫び続ける子犬を無視し、トヴァ、クリオネに話しかける。そーいや、お前ジーンミクスドの改造人間だったっけ? じゃ、イカの遺伝子とか入ってないわけ?
「あ」に濁点のついたような声を上げるクリオネ。そして軟体化させた手をセロケースの手錠から抜く
よかったよかった。とはしゃぐクリオネ。篭手もうれしそうに
「よかったなー。おめでとう。それじゃそのケースを改めて没収させろ。」
トヴァは
1 「そうだな。とっとと疫病神とはおさらばするか。」 セロケースを渡した。
2 もうちょっと相手の出方を見よう。