そして、時間はたっていく。水平線に近くなった夕日が、廃墟となった建物を照らしている。そのうちの地盤陥没を起こして、真っ二つに切れている道路をトヴァがとぼとぼと歩いている。
 道端に自販機が並んでいる。汗だらけのトヴァ、金を突っ込んでジュースを買おうとするが、出ない。
 思いっきり自販機にパンチを加えると、自販機が割れて缶ジュースがごろごろでてくるが、コインは帰ってこない。
 なんだよ。コーヒーねぇのかよ。と言いつつ、7UPに手を伸ばすトヴァ。
 トヴァ、ぶつぶつ言いつつ歩いていると、頭上に影が。
「ばばばかな!? ばばぁがばばあが! 」
少なくとも数十メートルは跳躍しているババァ。それがトヴァに突っ込んでくる。
トヴァは銃のグリップに手を伸ばすが、空なのを思い出して指鉄砲を突き出す。

 やはり、彼は最高だった。
 キスやダンスと同じぐらい、あたしが望んでいたもの。
 ストラティバリウスの、セロ。
 キスは、君の演奏を聞いた後にするよ・・・。
 だけど、あたしは強引に彼の唇に唇を重ね・・・。

トヴァを直撃しそうになるババア。
とっさに身を転がして避けるトヴァの横にあるセロケースを掻っ攫うババア。
しかし、その時銃声が。

ババアの額に穴が開いて、セロケースごと海へ吹っ飛ぶ。

 「危ねーとこだったなー。」
 言いながら、道の向こうから出てくる賞金稼ぎ。
 トヴァ、あ、ああ・・・と答えながら、彼女が落ちていった方を見ている。


 まるで、空から落ちていくように、海の中を沈んでいく老婆。
 その後を、まるでなつく子犬のように落ちていくセロケース。
やがて、ケースの鍵が開き。

彼女は愛しい名の人をつぶやき

トヴァ、老婆たちが消えていった海面を見つめる
水中の様子は、まったく見えない。
「・・・また、ただ働きか・・・。」

ケースの中から、薔薇の花があふれてくる。
水泡のような、透き通る水色の薔薇。
まるで祝福しているように、老婆を包み込み
老婆は少女になり。
眠るように海底に横たわる。
そして、そこには、水面に沈んだバー「Remember the time 」が。

地上。水平線にほとんど日が沈んでいこうとしている。
トヴァ、沈む夕日に照らされる海面を見ている。賞金稼ぎ、トヴァに話しかける。
「まー、よかった。怪物を操ってるあのババァが死んだんだ。後は真珠を生むわにを・・・。」
「そんなものは、青い薔薇。絶対ありえない幻さ。」
トヴァがつぶやく。しかし、それは賞金稼ぎには聞こえない。
「とにかく、あんたも、白わにを・・・」
「・・・あの電車だ。」
首をかしげる賞金稼ぎ。
「・・・あの列車なおさねぇと、帰れねえだろ!? 」
賞金稼ぎ、あきれた顔をして、
「へー、安全に宝探しができるようになったのに、みすみす見逃すのかい? 悪いが、帰るんだったら、一人でやってくれ。」
行ってしまう賞金稼ぎ。
トヴァ、箱からタバコを取り出す。
それはもう最後の一本。


「で、白わにの真珠なんてガセだったと。」
取調室で向かい合う篭手とトヴァ。
「ああ、そうらしい。」
「で、電車が動かなかった、と。」
「ああ、かけてもいいぜ。この世で一番腕っききの修理工でも、あの電車は直せない。」
「で、船もなかった。」
「そう、探してたらミサイルがあった。弾頭部を空にしたら、何とか人が一人入れるサイズになった。」
「そう。だからといって・・・。止めてほしいな。こういう方法は止めて欲しい。」
警察署に思いっきり突っ込まれているミサイル。
「で、俺の器物破損はどれくらい増えた? 」
「そうね、無期懲役だ。そこで、ひとつお願いを聞いてほしいんだか? 」
そういって、彼女はセロケースを取り出す。
「まったく別の事件だが、こいつを・・・。」
それは、次の事件の始まりだった。


おわり(ジブリ風に)