時計屋が話してくれた話は次のとおりだった。
ヤコブの梯子前の停留所から、77番線のバスに乗り、シェリル通りで地下鉄に降り、そこから港へ行って、穴が開いている赤い貨物船に乗り込み、そこの男子便所で用を足すと、穴が開いてどこまでも落ちていく。流れに逆らってはいけない。運命は決して、お前さんを悪くはしないんだから。で、落ちきったところに秘密の地下鉄の通路がある。そこから出ている、どこへ行くか分からない、ひょっとしたらどこへも行かない秘密の地下鉄に乗れば、白わにの天国、「試練場」島がある。
で、そこのわにのほとんどが、何の因果が尿道結石を起こしてる。え? どういうことか分からないって? わかんねぇ奴だな。真珠だよ真珠。何でも尿道結石って奴は真珠とよく似てて、で、時価一億もくだらねぇでかい真珠を生むんだって。え、何で結石が真珠になるんだって? 知らねぇよそういう話が流れてるんだから。
なんでも、その島の狂った狂王が、世界に戦争吹っかけようとして、その資金源にしようとしたそうな。まー、何でもその島の住民すべてを改造して兵士にしたって噂だからな。えっ、奴の目的は世界征服かって? そんなモン知るかよ! 俺はサイコ野郎じゃねぇんだからよ。ただ、奴は孤独だったのは間違いねぇ。そうでなきゃ世界すべてを憎むわけがねぇじゃないか。
おっと話がそれちまった。肝心なのは・・・。
「わーったよ。その島行って、そのワニの卵だか・・・。」
「真珠、だよ。」
「それを取ってくりゃいいんだな? 」
「ただ、問題がある。狂った王は孤独に死んだけど、かわいそうなのが改造兵士にされた奴らだ。やつら、いまだ臨戦態勢にあって、王の秘宝を狙う奴に平等に死を与えてるんだって。」
「なんだよ、そりゃ。」
「特に厄介なのが、お宝とおんなじぐらい有名になったババァだ。何でも島の化け物の頭で、入ってきた奴をミートパテにしなきゃ気がすまない。凄腕だってよ。」
「何言ってるか分からねぇ。」
「そうだろうな、言ってる俺にもわけがわからん。だいたい、その島への行き方もよく分からねぇ。狂王が死んでから、まったくその島がどうなったかさえ分からないしな。馬鹿げたトンちきな噂話さ。」
「じゃあ、どうして俺に言うんだよ。」
「馬鹿げたトンちきな話なら、お前の領域だろ。」
「この話止めようよ。もっと楽しい話しようよー。」
「例えば、あんな風な? 」
トヴァが振り返る。そこにはゴシックロリータファッションもまぶしい少女、トヴァの相棒、クリオネが泣きそうな顔で立っている。
「ましろー。」
右手には手錠につながれたセロケース。
トヴァの顔が引きつる。
時計屋が叫ぶ
「萌えぇぇぇぇぇぇっ! 」
続く