怪獣大戦ガメラ2026


第十・最終幕

ズン!
逞しい太い足が、歩む。
ズン!
街の大通りを堂々と、歩む。
ズン!
それは古「最後の希望」と呼ばれたもの。
ズン!
それは今につらなる人を三度救ったもの。
ズン!
それは・・・潰えたはずの希望。

ズズン!
「ヴィアアアアアアアオオオオオオオオオオオンン・・・・・!!!」
青みを帯びた灰色の巨躯が屹立する。激烈な牙を持つ口が咆吼する。翡翠色の瞳が睥睨する。
そう、その怪獣の名は。
「が、ガメラ・・・!」
「ガメラだと!?」
「嘘だろ、まさかあのガメラが・・・!?」
様々な立場の人間が、様々な意志のこもった、様々な声でその名を呼ぶ。その姿を見る。
そんな中を、ガメラは高々と咆吼しながら進む。
「グゴグゴグゴゴ、ゴゴゴ・・・!」
一方突如現れたガメラに混乱する人間達と対照的に、そのくびきから離れたギロンは極めて明確鋭敏に対処した。
身を低めるとその赤い目を爛々と光らせ、唸りながら闘犬のように構える。陽光を反射して、黒いが先程プラズマ火球が直撃した部分以外鏡のような艶のある刃がぎらりと光った。
そのギロン目掛けて、ガメラは進んだ。身構えるギロンの前に立つと、じっ、っと緑の目を据えて凝視する。
じりじりとにらみ合う両獣。甲羅と刃、まるで矛盾の故事の矛と盾のように。
「ヴヴルロロロ・・・」
「ゴゴゴゴゴグ・・・」
互いに、低く唸りあう。視線もあいまってそれは、どこか会話を試みようとしているようにも見えた。
しかし、その唸りの調子が違うように、その会話も・・・かみ合うことはないのだろうと、見るものに思わせざるを得ないほど、両者は全てに置いて対照的だった。
「グゴッ!!」
やがて・・・、耐えきれなくなった香のようにギロンが跳躍、街の防護壁を飛び越えて姿を消した。
酷く厳粛に、ガメラはその場に立ち続ける。

「ガメラ!ガメラだ!ガメラ・・・ガメラ・・・!」
まるでそれしか言葉を知らなくなってしまったかのように、海は何度もその名を呼び、叫び続けた。瞳に僅かに涙すら浮かべて、今日まで彼女がそうあろうと演じ続けた存在を、見つめる。
何度も、何度も。
あまり叫びすぎてしまいには喉を枯らし、けほけほとせき込んだ。
それを見る、緑の瞳。
「え?」
一瞬大迫はぎくりとした。間違いなく、ガメラが「こっち」を見たのだ。
そして。
「ぎゅうおおあああああああああんん・・・」
不意に、天を仰いだガメラが、それまでとは違う吼え方をした。より響く、しかし幾分柔らかな、呼びかけるような咆吼。

「あっ、アレ・・・!?」
不意にきょとんとした海は、喉を押さえ、それから手をぐるぐると動かすとおそるおそる立ち上がった。しかし転ぶことも倒れることもなく、ついさっきまで絶対安静で寝込んでいた体とは思えない。
試しに跳躍してみても、華奢な体は少女の年齢相応の軽やかさで動く。
「体が、苦しくない・・・直った?」
それだけではない。
ギロンに切り裂かれたイリアスの体も、まるでフィルムを逆回しにしたように元に戻っていく。
「これ、って・・・」
海は、母から聞いた話を思い出していた。若き日、イリスに命を吸われ果てたはずの母の命、それが救われた・・・
「ガメラの許し・・・」
だが、他にも尚。
「ああっ・・・!ジ、ジャイガーも・・・?!」
海達にとって全く予想外なことに、ギロンにずたずたにされたジャイガーまでもが、急速に回復し始めた。
「そんな、何で、ジャイガー、シュラまで・・・?」
疑念と共に振り仰ぐ海。しかし、ガメラは答えず。代わりに、視線を、意外にも穏やかな視線を注ぐ。
またジャイガー=シュラも、一体何が起こったのか分からない様子で身を起こすと、警戒するようにガメラを睨む。
「何故じゃ、何故助けた・・・こんな、道化を・・・」
呻く。その声は震え、泣き出しそうなほどに弱々しい。しかし、、突如その声が、大きく張り上げられる。
それは虚勢。しかしそれは意地。涙に震えながら、自暴自棄のように、しかしシュラは大声で怒鳴った。
「滅んでしまえ、こんな世界・・・私もろとも・・・滅ぼしてやる、何もかも!!」
最後は歯ぎしりのようにあるいは唸るように言い捨てると、シュラ=ジャイガーは飛び跳ねて防壁を越し、街の外へと消えていった。


結局この後、反乱は鎮圧された。ギロンの暴走と逃亡、そして清川教授ら指導者層の壊滅により、前線の兵士らがあっさり降伏したための、事実上の自然消滅という形で。
しかし、窮地がそれで終わったわけではない。否むしろ、ウィリデ02が来たのは「もう一つ」の、それも「より一層の危機」のためだ。

「欧州、それに最大汚染地であったアメリカからもイリアスは転進、太平洋の日本近海へと結集しつつあります。」
冷静に報告するウィリデ02。彼女の存在と性能は日本でも認識されているため、居並ぶ自衛隊の指揮官達も少女の言葉を真剣に聞く。
「原因は殆ど不明といっていいのですが、ただ1999年のギャオスハイパー大量発生時にも同様の行動が確認され、またガメラ、ギャオス、レギオン、イリスなど大半の怪獣がこの日本に現れたことから、恐らくここに「何か」が存在するのではないか、と。欧州連合の科学者の中にはこここそ怪獣を作り出した古代アトランティスなのではないかという説もあるほどです。」
「ま、まさか・・・そんなことがあるはずが・・・」
あまりに突拍子もない可能性。しかしこの日本に過去幾多の怪獣が終結したのもまた紛れもない事実である。
「いえ、あながちないとも言い切れません。」
そして、参謀の一人が決定的な情報をもたらした。
「偵察機からの情報なのですが、旧首都東京沖合、岩戸島から更に南の海域で謎の大規模隆起現象が確認されました。それもただの海底の隆起ではなく、現れた土地には何か建物のようなものが見えるとかで、そこにイリエス達が集合しているとのこと・・・」
「むう・・・!」

そして、この情報と現状を元に群議が開始される。
一方、怪獣を操る力があるとはいえ基本的にいずれも尉官待遇、兵士としては末端に近い海やウィリデ達は、あのガメラによる治癒の降下を見るために身体検査を受けた後は会議に加わるわけにも行かず、待機、と相成る。
メカガメラとイリアスが整備・・・といっても、殆どガメラの力により直ってしまっているため調整とデータ収集のようなものだが・・・されている広大な整備場で、ふと忙中閑有りの状態で佇むこととなる。
そしてそんな会話は必然的に今の状況そしてたった今見たガメラの事となる、のだが。
「私のお母さんのことは、知っているでしょう?」
一見ガメラと関係ないようなことをぽつり、海は言う。
「え、うん・・・」
「データにある。」
それぞれ頷く大迫とウィリデ02だが、それ以上は言わない。実に複雑微妙なことであると認識しているからだ。
そして、それを知っているが故に海はその下りを、ガメラを憎み邪神を蘇らせ、結果として死亡寸前になったところをガメラに助けられた海の母の少女時代の事件。
「ガメラが居なければ、その時ガメラがお母さんを許してくれなければ、私は居なかったんだって思うと・・・」
複雑な気持ちになる、海はそう呟くと続けた。
「だから、私はガメラになりたかった。知りたかった・・・何をと言えるほど明確じゃないけれど。何故、何故、ガメラは何故って、沸き上がる思いがあった。」
そう言うと同時に、ふと溜息をつく海。
「私自身の理由を、分かってもいなかったのにね。何だか色々考えさせられちゃった。・・・馬鹿だよね私、そんな考えのない人の行動が、こんな世界を作っちゃったのに」
そして、その言葉を続けてしまう。
「ガメラの敵は本来、ここまで地球を荒らしちゃう原因になった私達なのかも・・・」
うつむき、短い黒髪がはらりと揺れた。
少し長い、沈黙。暗くなった空気をどうにかしようと、話題を変えようとする大迫。
「それにしても、さ。この後どうするんだ?」
「戦略的に言って、はっきり言えば手詰まりよ。逃亡したギロンとジャイガー、隆起した旧アトランティスに集合したイリエス。メカガメラが直って海の体調が回復したのはいいけれど、イリアスとメカガメラの二体でこれだけの相手には攻めるに数は不足、しかし守りに入ってもこのままでは戦闘の巻き添えでこの街が滅ぶ方が早い・・・」
冷静に言うウィリデ02。結果として、更に空気は重く、暗くなる。しかしウィリデ本人はそれを気にすることもなく相変わらず・・・
・・・いや。
「どうしよう・・・」
戦闘機械として作られ生きてきたはずのウィリデ02が、不意にそう弱音を漏らした。
華奢な肩を抱え、怯えた小動物のように身を丸めて呟く。
「ウィリデ?」
「私は・・・あの時、ギロンに襲われたとき、捕食されるかと思ったとき・・・混乱した、どうすればいいか分からなくなった、多分・・・恐怖した。今までこなしてきた戦いの本質を、知ってしまった。」
機械の心と、生物の肉を持つという矛盾。それに、苛まれる。
「うん、そうだね。戦うって、怖いよね、でもさ。」
ちらり、ウィリデに答えながら海は、傍らの少年の顔を見た。
「守りたいとか、心のためとか、そういう理由が有れば怖いなんてどうってことないって、今まではそう「思ってた」けど今は「分かった」。ウィリデだってそうなったら大丈夫だし、絶対なれると思うよ。」
言い終えてから照れくさそうに頭を掻く海。
「大迫の受け売りっぽいケド。」
そんあ二人の様子を見てウィリデの顔が和んだ。
「時には、馬鹿の方がいいか・・・」
「馬鹿って何だよ!」
むくれる大迫だが、別に本気で怒っているわけではない。少し嬉しそうに、暗い空気を完全に吹き飛ばす。
ふ、と微笑む海。
「大迫、ありがとう。」
「え、えっ!?」
その笑みが自分に向けられていることに気付き、大迫はどきりとしてしまう。
「シュラから守ってくれたこと。戦う理由を示してくれたこと・・・本当、ありがとう。」
「あ、うん、その・・・」
うまく返事できず、どもりがちに曖昧な相づちしか出てこない。
しかしそれで十分、と言うように、海は頷いた。

そんな、迷いに対しての思索をしたことにより、ふとウィリデは呟いた。自分と似て異なる、あの存在について。
「ガメラ・・・か。」
あいつは何を思うのだろう。滅びた者の意志を継ぎ、地球を守り、一人ただ戦い続ける。
「そういえば、ガメラ、ジャイガー・・・シュラまで治癒したんだろう?あれ、何でかな。」
過去のデータではなく、海達が初めて直接見たガメラは余りにも意外な行動を取った。
「ガメラは、シュラは死ぬべきではないと考えたってことだよね。」
それは確実だろう。
「ひょっとして、女の子に甘い、とか。」
「おいおい」
大迫の言葉に思わずずっこけた海だが、ふと気付けば最初にガメラと感応したのは草薙浅葱という少女、ガメラが治癒したのも海、ウィリデ、シュラと全員女の子だ。
あながち否定できない・・・さらに、「巫女」という、女性と感応することを常とするメカガメラやイリアス、ジャイガーも。
ちょっと怖い考えになったので、棚上げして話を先に進める。
「やっぱり、被害者だから、かな。」
「少し、可哀想だったよなシュラ。自分が何であるのかも生きる目的も、利用されていたって・・・」
彼女と最初に戦った海が、少し遠い眼差しで呟く。そして二度目に戦ったウィリデがそれにつなげた。
「可哀想だからというより、あの場で終わらせたくなかったからかも。ガメラも、作られた存在、と推察されているね。古代文明がギャオス駆逐・地球環境守護の為に作った、生物兵器。」
「つまり、自分を重ねて?」
少し驚いたように、大迫が目を丸くする。
「生物兵器としての使命よりも、それを優先した?確かにガメラは今まで人類相手とかにしばしばそう言う要素を見せたりしていたけど。」
その言葉を聞いた、途端ウィリデが叫ぶ。
「当たり前だ。ガメラだって、作られていたって命だ。生まれ持ってどうしようもない宿命なんて、有るはずがない!戦いは、自分の意志だ!」
「ウィリデ・・・」
明らかに、ウィリデはここで己をもさしていっているのだろう。そして、それは過ちではない。
むしろ成長である故、頷いて二人はウィリデを見守る。
と。
「じゃあ、イリエスは?」
「え?」
全く予想だにしなかった大迫の言葉に、目を丸くする海とウィリデ。
「い、いや、ギャオスやレギオンみたいな過去の怪獣や、ギロンでもいいんだけど・・・そもそも、「怪獣」って、何なんだろうな。」
ふっ、と。三人共に、考える顔になった。
怪獣、この大いなる脅威にして人知及ばぬ不可思議。今まで戦うのに必死だったが、考えたことはなかった。
「・・・生命体である、という意外分からない。分からないが・・・ひょっとしたらそれが答えなのかもしれないと、私の「感情」が言っている。」
と、答えを発したのはウィリデだった。
「彼等の行動は、生きること、子孫を残し生き続けることに集約されている。それが人間を滅ぼす形になっているだけで・・・彼等は、この星の生物と、そして人間と、基本に置いて何ら変わることはない。」
呟くウィリデ。
「同じか。同じものと、戦うのか。」
そうなることは、あきらかであった。都市に立て籠もるにしろ反撃に打って出るにしろ、最終的に戦いが待っていることは理解できた。
不意に心を襲う、虚しさと苦さ。それを、しかし克服する。
「それでいいじゃない。むしろ、だからこそ戦えると思う。うまく言えないけど・・・命って、他の命と戦い合って生きるものだけど、それは憎むとか恨むとか悲しいとか、そういうものじゃなくて、きっと・・・ううん、うまく言えないけど・・・でもきっと、同じであるほうが、いい。」
かみしめるように、誓うように。
海がいい、そしてウィリデと大迫が聞いた。
「そして、同じなら・・・きっとギロンも、シュラも、来ると思う。そして、それは悲劇にならない。」
確信の口調で、海は言い切った。
「何で?」
「分かんない。ただの、勘。」
ふっ・・・と、海は笑った。
健やかに、晴れやかに。
「ただ、命は、何度傷ついても、間違っても、例え死んでしまうと分かっていても、立ち上がって、何度も何度も立ち上がって、変わろうと足掻き続けていくものだと思う・・・人も、怪獣も。」


数刻の後、自衛隊の決定が下された。
持久戦で市街をれ以上巻き込むわけにはいかない。イリアスの来訪とメカガメラ復活を好機とし、全力を持ってイリエスの集結した旧アトランティスを叩く。


そして発進体制を整えたメカガメラ、イリアス、そして自衛隊。
それこそ残存の戦闘機部隊戦車隊どころか、整備用のクレーン車両まで繰り出されている。クレーンと言ってもメカガメラの整備用だ、下手な軽い怪獣など掴めば投げ飛ばせるほど大きい。反乱事件の際特殊部隊相手に使用された経緯から、使えると判断されたようだ。それにメカガメラ達の移動修理も出来る。
その軍団が、一路イリエスが集結した決戦の舞台、再隆起した古代アトランティスを養陸艇に分乗して目指す。海を越え突進する、揚陸護衛のため亜細亜の残存戦力を全て結集した多国籍連合艦隊。
イリアスとメカガメラは、上空を飛行して周囲を警戒している。本来パイロットの生命を燃費として削るためこのような贅沢な運用など出来ない決戦兵器であるはずのメカガメラだったが、今回は違っていた。ガメラが市街に置いて行った、マナ放出による治癒行為・・・それのデータを取ることができたことにより、マナエネルギーによる海とメカガメラ回復が可能となったのだ。
これで、戦闘による損傷は避けられないにしても起動するたびの海の寿命損耗は避けられることとなった。前者、傷つくことは戦場では当然の有様と考えれば、メカガメラは何とか「完成」に到ったと言える。
故に集う軍団にはまさに憂い無く、この一戦に全てを賭ける。

そして、天空を翔る光の戦輪と羽衣の鳥を、やや離れた地から見上げる影。
「あやつら・・・」
シュラだ。ジャイガーから降りて、空を見上げている。荒野にぽつんと立ったその姿は、華奢な肢体も寒風を防げそうに無い薄い衣も、酷く弱々しい。
しかし、その瞳だけは、凛と燃えて、天空を見続ける。

そして、その先。集結したイリエスに生存競争を挑む獣が一匹。
「ぐこごごごご!」
蛙のような奇怪な叫び声を上げて、真っ二つに両断したバルゴンタイプ・イリエスの肉を貪り食うギロン。
不意に、その血にべたべたにまみれた顔を上げる。がしがしと顎をかみ合わせ肉を咀嚼している。しかし、その三つに分かれた口からはぼたぼたと殆どの肉がこぼれ落ちてしまう。顎の動きがまるで出来の悪い玩具のように制限されていて、巧く食べることが出来ないらしい。
それどころか、時々咽せ返しては食べたものを全て吐き出してしまう。兵器として、道具として作られた命、それ故に、あまりにギロンの体は不完全だったのだ。
しかし、それでも尚何度も肉を食いちぎり飲み込む。
生きようと、足掻く。足掻き続ける。


そして。
「当艦隊に接近する反応有り!速度、レーダー反射、マナパターン照合・・・ガメラです!」
「ギュオオオオオオオオオオン・・・」
吠える、ガメラが吠える。あの日のように。
「ええっ!?」
メカガメラの体内で目を丸くする海の傍らに、その体をぴたりとつけて。
だが、それはあの日とは決定的に違った声だった。
猛りの中にあるのは、ただ一人で数百匹のギャオスの群と戦ったあの日の悲壮ではない。
喜びを。
傍らに轡を並べる物の居る喜びを、十全に現している。

あぁ・・・
メカガメラの中で、海は静かに感銘の息を付いた。
これだ。これでいい。
私は、私達は今此処にいる。あの日の背中に、ようやく私達は追いついたんだ。
無論それで何もかもが終わったわけではない。これからは私達は共に進み、いつか私達のほうが前に出て、あの頑丈な甲羅が背負っていた重みを、幾分かでも肩代わりしよう。
さぁ。
「イリアス・・・」
「メカガメラ・・・」
「全軍・・・っ!」
にぃっ、と大迫が笑う。
「いくぞぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」

そして、戦いが始まった。
艦隊に襲いかかるジグラタイプ・イリエスの群。速射砲・アスロックで応戦する艦隊に、ジグラもまた強烈な超音波法を放とうとする。
そこに上空直援に当たっていたイリアス・メカガメラがたちまち川蝉のように急降下、海面目掛けて凄まじい猛射を加える。海は沸騰し、その中に潜んだジグラタイプごと海をあたかもモーゼのごとく断ち割った。
直後、反転急上昇。雲霞のごとく展開していた上空のバイラスタイプの群に、返す刀で一撃お見舞いした。
地上から一斉に殺人光が迸り、同時に上空に雲のように群れなしていたバイラスタイプ・イリエスが一斉に襲いかかってくる。
しかし一瞬後にはその場にはメカガメラの姿もイリアスもない。一瞬で反転、突っかかったバイラスをかわして二体一緒に攻撃態勢を取る。

イリアスの触手から、一斉にプラズマ弾が放たれる。同時にメカガメラも口をかっと開き、プラズマガトリングを発射。

連続して空に散る、生命の火花。

そしてそれと同時に、不思議なことがおこる。イリアスが戦い、バイラスを一匹落とすたびに全身から不思議な光が放たれる。そしてオーロラのようなその光は大地にしみこみ、その場所に・・・次々と緑が芽吹いていくのだ。
イリアスの、戦闘以外のもう一つの力。戦う相手のマナを吸収してエネルギーとし、余剰分を放出して地球環境を回復する。同時に僚機のメカガメラにも活力を与える。
その間にも戦いは続く。
反撃とばかり放たれた大量の超音波メスを、メカガメラは「悪魔の笛」の高周波で防御する。その防御範囲にイリアスを入れて守るのも忘れない。そしてその高周波の防壁の中から、それには影響されないプラズマ弾で反撃するという戦術を見せる。
しかしバイラス達も馬鹿ではなかった。効果が無いと知るとすぐさま超音波メスの攻撃を取りやめ、その巨大な衝角型頭部を槍のようにして突進を仕掛けてくる。負けじとイリアスが触手を伸ばし側面からその柔らかい胴をぶち抜くが、いかんせん数が多い。
身を翻してかわし、反転降下・・・と見せて、メカガメラの悪魔の笛から離脱したイリアスが超音波メスを一斉放射、巨大な剣を振り回すようにして空いっぱいに広がっていたバイラスの群を両断する。
その勢いのママ、着地。
同時に体勢を立て直す隙を狙って集まっていたバルゴンの群を、追いかけて着地したメカガメラのジェット噴射が吹き飛ばした。空中を舞う途中のその体を、追撃にイリアスの触手が貫く。
今回が初めての共闘とは思えない程、完璧なタイミングのチームプレー。

そして、ケタの違う破壊力を持ったガメラのプラズマ火球。
一撃で数匹のバイラス・バルゴンを吹き飛ばしていく。

さらに、上陸した自衛隊残存部隊の一斉砲火が援護射撃をする。
人類の生存を駆けた、猛進撃だ。加えて彼等の戦女神であるところの海とメカガメラの復活により、その戦意は極限まで高まっている。
「おおおりゃああっ!!行くぞっ!」
「はいっ!」
整備兵長と大迫が操作する巨大クレーンのアームが、バルゴンの角を掴んで振り回し投げ飛ばす。地面に叩き付け装甲に皹に入ったところに、追撃の175mmレールガンの弾幕が蜂の巣にした。
しかし、イリエス達もまた己が種族の生存のため、全力を集中して応戦する。乱れ飛ぶ超音波メス、そしてバルゴンの武器である電子冷却ブレスと背中からの大出力熱線。さらに突進したバルゴンのプラズマホーンがかわしそこなった戦車を輪切りにする。
「さ・せ・る・かぁぁぁぁぁぁっ!!」
窮地に駆けつけたメカガメラが、側転をするような体制でプラズマジェットを噴射しながら甲羅を回転させ、突撃してきたバルゴン共の首をギロチンのように刈る。同時に甲羅を盾として、敵の射撃を防いだ。
「っ、と!?」
大技の最後バランスを崩しかけたメカガメラを、すかさず大迫達のクレーンとイリアスが受け止めた。体勢を立て直すまでの好きを、戦車隊の弾幕が稼ぐ。
「ありがとっ!」
「どういたしまして!」

同時に海上に未だ残存していたジグラタイプが体勢を立て直して集結し、包囲の形を取ろうとして護衛艦隊と砲撃戦になる。
と・・・!
「見てっ、あれ・・・!」
「ギロン!?」
その全長1キロに余る巨体が、次々まな板上の活き作り見たいな有様に、ばらんばらんになっていく。
それを行っているのは、あの漆黒の刃・・・ギロンだ。そのままイリエスの群をぶった斬って駆け抜けると、今度は一気に自衛隊に襲いかかる・・・どちらの味方でもない。作られ生まれてしまった命をこの星に定着させるため、全力で生存競争を挑んできたということだ。
「ええいっ!!」
轟と音立てて振り下ろされる刃を、甲羅の縁でがっきと受け止めるメカガメラ。そのまま寸胴な体を器用に機動させ、全身刃の巨体を投げ飛ばす。
着地しかけるギロン、それが唐突に横に飛んだ、否吹っ飛ばされた。それを行ったのは・・・
「ジャイガー・・・シュラまで!?」
一度メカガメラを叩きのめすほどの強さを店ながらも、その後は数奇な運命の弄ばれた褐色の闘神。
「言ったろう、滅ぼすと・・・!!貴様等も、ギロンも!」
ダンと地面を踏みならし、躍りかかろうとするが、そこにそれに数十倍する轟音。
ズゴォォォン!
そのシュラの行く手を塞いだのは、彼女を蘇らせたガメラの火球。
「っ・・・!」
そこに明らかな「意志」を感じながらも、尚、退かず突進するシュラ。ジャイガーの巨体をまるで質量を捨てたかのように軽やかに跳躍させ、蹴りを見舞う。同時に、それまで使わなかった、恐らく最後の武器と思しき鋭い蜂の尾針のようなニードルを左腕に発生させる。
ズシュッ!
突き刺さったのは・・・蹴り倒されたガメラではなく、その背後に飛びかかろうとしていたバルゴンタイプ・イリエス。
「フン!借りくらいは返してやる・・・!お前等との戦いはこの次だ!」
ほんの僅かぎこちなく叫ぶと、シュラ=ジャイガーは身を翻してイリエスに立ち向かった。

「うおおおおおおおおおっっっ!!」

「ハァァァァァァッ!」

「ヴォオオオオオオオオオオ!!」

「ッ、射(テ)ェェェェェ!」

「グゴゴゴゴゴゴゴゴ!」

「ガァァアアアアアアアアッ!」

ガメラが、ギロンが吼える。
シュラが、ウィリデが、海が、叫ぶ。
自衛隊の兵士達が、鬨の声を揚げる。

それぞれ別個の理由・意志・望みで、だがいずれも命を燃やして、戦っている。
「グゴォオ!!」
「ヴァアッ!」
共に作られた命であるガメラとギロンが、ぶつかり合う。それぞれに正反対、しかしそれぞれに目的に突き進む命。
「海っ!大丈夫!?」
「うん、まだまだ!」
声を掛け合う、海、大迫。
そうだ。
「貴様、何のために戦っている!?我にはもう何もない・・・お前にも同じ虚の匂いがするというに、何故お前はそうまで戦う!」
「虚ろ、だからだ!それを埋めるために!埋めてくれる仲間のために・・・!貴方も、そうすればいいのに!」
物理的には一時休戦しながら舌鉾を交わし、そして同時に意の争いだけではない何かを感じあうシュラとウィリデ。
何であろうと、どんな運命が待っていようと、どんな苦しみに襲われようと。


生きよう。


ガメラ4 怪獣大戦ガメラ2026、怪獣達と人間達の物語は、ひとまずの完

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