第十四章 出撃
「出撃だな、カーネルクリーチャー。改造手術を受けたそうだが、お前も戦うのか?」
再び、カーネルは大首領閣下の眼の前に立っていた。出撃を報告するためである。
「はい、大首領閣下。今度こそ我らネオショッカーのために仮面ライダーの息の根を止めて参ります。そのためには、このカーネル命も惜しいとは思いません。大首領閣下、今までどうもありがとうございました。」
そう言って敬礼するカーネル。が。
「大馬鹿者!!!!!!」
突然大首領閣下の怒声がとんだ。壁の眼も激しく輝いている。
「貴様何を考えているのだ。死ににいくのではあるまい、勝ちにいくのであろうが!この馬鹿者が!その心がけは買うが、仮面ライダーを倒し、かつ帰ってくるのだ。解ったな。」
「は、ははあっ!」
カーネルは感動した。今まで、大首領閣下がこのようなことを部下に言うのは前例がないことだったからだ。
「そのとおりだ。」
さらに、魔神提督まで現れて言った。
「儂の首を引っこ抜きに来るんじゃなかったのか?」
そういうと、にやりと笑う。
つりこまれて、カーネルも笑う。
「そうだったな。しっかり洗って待っていろよ。」
そこで再び大首領閣下に向き直り、敬礼した。
「では、これより出撃します。」
「うむ」
そして去りながら、カーネルはふと不思議に思った。
(でもまた、なんでいきなり魔神提督は態度が変わったんだ?・・・嬉しかったけど。いいすぎたとも思ってたからな。)
もしそれを問うても、魔神提督は答えなかったに違いない。
昨夜のカブトジンとのやりとりを立ち聞きしていたからなどとは、口が裂けても言えなかっただろう。
第十五章 英雄
そして戦いは始まった。志度ハンググライダークラブの襲撃と同時に。
「ライダー、どこだっ!」
ドアを蹴破り、叫ぶカブトジン。そこには仮面ライダーこそいなかったもののやはりネオショッカーの大敵、志度博士がいた。
「うわっ、ネオショッカー!?」
「死ね、志度博士!」
慌てる志度博士にすかさず攻撃を掛けるカブトジン。が。
「とうっ!!」
志度博士の背後から飛び出した緑色の影がカブトジンを蹴り倒した。その影の名は。
「仮面ライダー!」
仮面ライダーの体には、前回のダメージの跡がほとんど見られない。ただ重力軽減装置は壊れたままで、セイリングジャンプは無理らしい。
素早く起きあがり、身構えるカブトジン。それに素早く飛びかかろうとする仮面ライダーだが。
「待て」
その耳をうち、動きを止める声。カーネルだ。カブトジンより更に前に出て、ゆっくりと顔の前で手を交差させる。
「変身、バッタンジン!」
体が光を放ち、緑色の改造人間へと変化する。
「むっ」
「いくぞ、仮面ライダー。二度まみえることになろうとは思わなかったが、今度こそ息の根止めてくれる!」
壁をぶち破り、外へ出る三体の改造人間。外へ出ると同時に強化アリコマンド部隊も戦闘に参加し、激しい戦いとなった。
「とうっ!」
仮面ライダーがチョップを放つ。それをカーネルは腕でブロックした。
「ぐっ!?」
途端苦悶の声を発する仮面ライダー。その手にはブロックしたカーネルの腕に生えていた鋸歯が突き刺さっている。
これこそが対仮面ライダーに格闘で有利に立つための研究成果である。更にこの鋸歯はとうとう前回の戦いには間に合わなかった人体改造用特殊金属で出来ており、見事ただでさえ胴体夜は遙かに薄い仮面ライダーの表皮をうち破った。
機械部品がこぼれ、鮮血が滴る。その光景はまさしく仮面ライダーが改造人間であることを示していた。
更にカブトジンのサブアーム、強化アリコマンドの蹴りが連続でたたき込まれる。
「食らえ!」
そしてバッタンジンの突き。同じ特殊金属で構成された爪が仮面ライダーに何度も当たる。
「カブトバズーカ!」
とどめにカブトジンが至近距離で大砲を発射、避けられるはずもなく仮面ライダーに直撃した。が。
それでも、それでも仮面ライダーは倒れなかった。普通の改造人間なら五回は爆発しているであろうダメージも、仮面ライダーにはほとんどダメージとならない。バッタンジンの爪と鋸歯が装甲の薄い手足にはある程度ダメージを与えるが、堅い頭部と胴にはほとんど効果が見られない。
反撃が始まる。
「ヒ、ヒャイーーッ!」
「ヒャイイーーッ!」
一人、また一人と強化アリコマンドが倒れていく。全滅してしまった。
「今度こそ死ね!」
更に、そう叫び、砲撃体勢に入ったカブトジンまでもが、自慢の角を捕まれ投げ飛ばされ、地面に叩き付けられた。咄嗟に仮面ライダーに組み付き動きを止めようとするバッタンジン。
が、遅かった。
「スカイキーック!」
ピーンピーンピンピン・・・バキュイーン!
吹っ飛ぶカブトジン。声にならない叫びを上げるカーネルの前で、スカイキックを受けたカブトジンは砲弾が誘爆し、いまわの一言も言えずに爆発した。
「くそおおおおおおおお!」
バッタンジンの額の冷却ランプが発光し、同時に腰についていた羽が羽ばたく。少し地上から浮き上がり、身構えるカーネル。
「はあっ!」
瞬間バッタンジンの体が目にも留まらぬスピードで地面すれすれを飛び、仮面ライダーに激突、押し倒した。
爪も腕も砕けよとばかりにマウントポジションで殴りまくるバッタンジン。
「死ね!死ね!死ね!どうして!どうして死なない!私達じゃ、私達じゃ絶対倒せないとでも言いたいのかぁ!!」
必死に殴りつけるバッタンジンの腹にキックを入れ、仮面ライダーは強引に相手を引き離した。
そして幾多の怪人を葬り、今またカブトジンを殺した技を放つ。
「スカイキーックッ!」
ぴーんぴーんぴーんぴんぴんぴんぴんぴん・・・
が、バッタンジン=カーネルクリーチャーは、それを見切った。それが出来たのは何百回何千回と研究を重ね、直前にカブトジンを倒すため放たれたのを見た結果、カブトジンの思わぬ置きみやげだった。
飛んでくるライダーの足を紙一重で避け、カウンターで爪を叩き込む!
バッキュイーーン!
吹っ飛んだのは・・・仮面ライダー!ネオショッカー怪人が何度もそうなったように、地面に叩き付けられる。
二、三回けいれんし、そのまま動かなくなる。
「勝った!仮面ライダーは死んだ!」
そう叫ぶカーネル。
「スカイキーック!」
え、とカーネルは思った。同時に、自分の体に非常に強い衝撃が走ったことを関知する。驚きに見開かれた眼に、何故かたった今まで瀕死だったのに起きあがってスカイキックを放ち、着地したライダーの姿が映った。
視点が回り、カーネルは地面に叩き付けられた。体が急速に熱を持ち、発光を始めた。
必死に顔を上げるカーネルの瞳に、再び仮面ライダーが映った。いかにも、自分が正義の象徴だと言わんばかりに堂々と立っている。
許せなかった。怒りが、既に改造人間として死を迎えようとしていたカーネルの体を突き動かした。
起きあがる。
「!?なな、なに!?」
仮面ライダーは慌てた。今までこんな事はなかった。
「うああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああ!!!!」
最後の絶叫と共に、カーネルの爪が、仮面ライダーに突き出される。
熱により赤熱化した爪は威力を増し、仮面ライダーの胸に突き刺さった。
「ぎゃおおおおおおおおおおおおお!」
痛みに仮面ライダーも叫ぶ。
爪は、確実に仮面ライダーを貫いていた。
それを感じたカーネルは、光の中、かすかに微笑んだ。
「やったよ・・・お父様・・・カブト・・・みんな・・・・・・・・・」
そして閃光が周囲を包んだ。
最終章 煙
「・・・どうなった?」
基地でこの戦いを見ていた大首領は呟いた。かつて聞いたこともないほどひどく沈んだ声で。
魔髪提督はディスプレイをのぞき込んだ。
カーネルの爆発は激しかった。彼女もまた父と同じく体に爆弾を埋め込んでいたのだ。それも、特殊な、非常に強力な。
「中心部は物質がプラズマ化する温度です。蒸発したはずです。」
絶対にカーネルは仮面ライダーを道連れにした。したはずだ。
だが。
煙の中から、仮面ライダーは出てきた。
「何故だっ!何故だっ!なぜだあああああああああっ!!」
再び大首領の沈んだ声。
「基地が自爆する。脱出するように。」
「は・・・」
魔神提督は脱出口に入った。白アリコマンド達が、それにむかって最後の敬礼をする。
脱出装置が作動し、基地もまた爆発した。
戦士達は死んでいく。
亡骸すら残せずに。
最後の煙が、風に巻かれ消えていく。
消えていく。
完