「紫暮4/1悪の博士Ver」
「ふぅ・・・」
健康診断を終えて、紫暮はため息をついた。
多くの罪を重ねながら、生き残った実感は、未だに複雑な感情を胸に渦巻かせる事もある。
だが、そのたびに思うのだ。自分の視野の、なんと狭かったことか。と。
「今回も、回復が進んでいますよっ」
と、バリスタスの医療チームと共に看護婦と一緒に診断を手伝ってくれたゆまが嬉しそうに笑う。
罪と責任と家族だけを見つめて背負い込んで、それを抱いたまま沈んでいこうとしていた自分に、何と多くの瞳が向けられていた事か。
何と多くの人が、この罪深い身を思い、生きよと祈ってくれたことか。それを思えば、生きずにはいられない。
(そうだ。こんな身でも・・・死にたくないと、生きていたいと、思わせてくれる。)
そしてそんな中で、一際強い思いが、この病んだ身の、青白い肌の、それでもまだ肉付いて次代の命を育める可能性のある、女であることを主張する胸の内で渦巻いている。
村正宗。
彼には、家族がいる。彼を思う人も、たくさんいる。そんなことはわかっている。
村正宗。
強制的な主従であった。だけれども、心を取り戻す前から、私の心を救ってくれた。心を取り戻した後も、あの刃を私の為に振るってくれた。崩れ落ちそうなこの身を、あの腕が抱き、あの声が励まし、あの暖かさが私の命をつないでくれた。
泣きたいほどに有難く、この華奢な身を投げがしたい程に好いている。彼は私を好いてくれているだろうか。
「・・・それにしても、おめでとうございます、紫暮様」
「何、か?」
物思いしながら聞いたゆまの言葉に、ふと顔を向けて。
「御懐妊、おめでとうございます。」
「・・はぁっ!?(///)」
ブッ飛んだ。少ない血の気が全力で赤面に集中して、まずい、頭脳に血が足りなくなる、と一瞬感じる。
「はい。DNA確認が済みました。間違いなく村正宗様との御子で御座います・・・ゆまも、ゆまもうれしゅうございますっ・・・」
「へ、ぁ、え!?ぁ、な、な・・・!?」
感涙に手を添えて目を伏せるゆまに、あまりに唐突でありながらあまりに当然というその言葉に、本気で惑乱した紫暮は、藪から棒に全裸で往来に放り出されてもこうはなるまいというほど狼狽して己の身をかき抱いた。
(どどどどういうことだ!?私は、その、村正宗と、あの、えっと・・・!?)
「・・・紫暮様?」
「あ、ああ、分かった・・・診断はこれで終わりだな?む、村正宗にも教えてくる!」
と、ゆまの言葉にぎくしゃくと紫暮は答えると、そのまま右手と右足が一緒に出る動きでその場を後にした。
・・・車椅子に頼らずある程度歩けるようになるように回復していたが故だったのだが。
(ええと、その、わ、私は・・・私は・・・!)
いつの間に、というか、心当たりがあったのかなかったのか、あるいは心当たりになるかもしれない程度のことはあったのか、そこは、紫暮のプライベートということで秘密にしておかざるをえないだろう。
ただ。
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ・・・・・♪♪♪(///)」
動揺が引くのに合わせて、どんどんとでれでれした表情がその下からにじみ出てくるのが見えてきて・・・
その後。
エイプリルフールだ、と、ゆま他関係者が言いに行ったとき。
「大丈夫だ、責任は取る。何割かは失ったが、タロン幹部時代の給料は大半貯蓄してあるんだっ。カンナたちには悪いが、二人の子供の為にも・・・」
「いや、待て。暮らしの面倒は此方が見ても構わないが、いろいろ待て。おかしいだろう?!」
舞い上がって村正宗に口づけの雨を降らしながらそういう紫暮と、突っ込みを聞いてもらえない村正宗を目撃して。
「・・・・ヴァーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!(泣照)」
そのあとで紫暮さんが全盛期もかくやという大暴れをしたそうである。というのが、終戦一年後のエイプリルフール事件であったそうな。
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