「おお〜〜〜〜いっ!!」
突如現れた黒い影につばさをさらわれ、呆然と立ちつくすクロスレンジャー達。そこに不意に、大声で呼ばわりながら走ってくる人がいた。
「陽司〜っ、つばさ〜っ!・・・くっ、遅かったか。この大天才たる俺ともあろう物が。」
「天晴兄ちゃんっ!?」
陽司は目を丸くした。走ってきたのは誰有ろう、彼の兄にしてクロスレンジャースーツの開発者・天堂天晴だからだ。
これが以前ならばそう驚きはしなかったに違いない。だが、彼はここ最近家を留守にしており、ちっとも帰ってこなかったからだ。それに今の口調、どう考えても・・・
「何か、今のこと何か知ってるのか!?」
叫ぶ陽司。対して天晴も。
「ああ・・・こんなこともあろうかと、とな!」

爆裂機甲天使クロスレンジャー第X3話「忍風」

「第一任務、完了いたしました。ええ、成功です、ご依頼の通りに。」
当て身を喰らわされたつばさがようやく目覚めたのは、昼だというのに随分薄暗い廃ビルの中だった。内装も何もない、コンクリート打ちっ放しの空間に、手足を拘束されて転がされている。
先程から聞こえている声が気になったつばさは、芋虫のように体をよじってむきをかえ、声の聞こえている方向に顔を向けた。
そこにいたのは、彼女を拉致した張本人。小型の通信機を用いて、誰か、口振りからするに黒幕と話しているようだ。相手が誰なのかは解らないが、今目の前にいるものが何なのかは確認できた。が、ちょっと突飛なその姿に、暗がりでつばさは目をしばたかせた。
「・・・忍者?」
そう。そう言うしかなかった。背格好と僅かに覗く顔から女、それも一見つばさとそう年齢が大差ないような少女。だが、その装束は漫画やゲームに出てくるようなちゃらちゃらした派手で露出度の高い「くのいち」ではなく、「忍者」のものだ。
しかしそうであっても、今時「忍者」とは。そう思いかけたつばさだが、今までも常識から外れた敵と何度も戦ってきた上に、長兄の研究所の設備を見て育ったつばさは気付いた。
肌など欠片も見せず全身を覆う艶消し黒の服と覆面。だがそれは時代劇に出ているような旧弊なものではないようだ。服と部分部分についた装甲の構成材料からして単なる布と鉄ではなく何らかの高分子素材、口元には小型の防毒マスク、露出していると見えた目の部分にも何らかの細工がなされて気密を保っているようだ。
そこまで観察したつばさに、突如その忍者は声をかけてきた。
「気が、ついたみたいね。」
ぼそぼそとした語り。覆面越しでくぐもっているだけではなく、感情の欠落している声だ。
「あにゃっ、あ、はい。あのっ、貴方達一体・・・・にゃっ!?」
慌てて話し出すつばさの喉に、不意に鋭く冷たい何かが押しつけられた。口を閉じ、そろそろと眼球だけ動かして、それを見る。つばさが想像したとおり、それは刃だ。暗闇で光って発見の原因とならぬよう、刀身を黒く塗ってある。
そして、目の前の少女とは違う、低い男の声が耳元でささやかれる。それだけ近くにいたにもかかわらず、つばさに今までその存在を気付かせなかったのだ。
「お前達の使っているこの強化服転送システム、使い方を教えろ。」
そういって、つばさの手首から外したらしいブレスレットを目の前に差し出す。さもなくば、等という無駄は言わない。この状況だけで普通は解る。
「は、はい。手首につけて、蓋あけて、ボタン押すだけです。」
素直につばさは教えた。そうしなければ確実に殺される。今まで闘ってきた敵・・この間のヴァジュラム、その前の地底昆虫王国や宇宙人たちとこの連中は、雰囲気が明らかに違う。
今までの連中も確かに魔力で動くロボットだの、巨大昆虫だの宇宙船だの、強い力を持っていた。彼等の力も相当な者だろうが、それらの中で必ずしもトップという訳ではないはずだ。しかし、それでも彼等は今まで相手にした敵の中で一番恐ろしい。何というか・・・「本物」なのだ。
実際に今まで何度も闘い、何人も殺してきた、そして闘い殺す行為に熟達し、かつそれを一切ためらわない。それがはっきり解る殺気に、つばさはぞくりとした。
「配置につけ。依頼どおり、ここで追いかけてくる残りのクロスレンジャーを殲滅する。」
と、通信を行っていた少女が、、背後に立っていた忍者に命令を下した。忍者もうなづいて、素早く姿を消す。意外にもこの少女が、忍者達の中でトップの地位にあるらしい。
そして、部下があれ一人と言うことはあるまい。恐らく相当な数が、この廃ビル内に潜んでいることだろう。クロスレンジャーを殺す、殺せるだけの装備を携えて。
「お兄ちゃん達・・・大丈夫かな・・・」

「タロン?」
兄の説明に、陽司は首を傾げた。
「そうだっ。今までお前達が相手にしていたのとは桁違いに大きな秘密結社だ。それが今までの戦闘で、クロスレンジャースーツの力に目を付けたらしい。折角風見長官と話がついたというのに・・・」
既に彼等は、この世界にそういう「秘密結社」がいくつも存在することを知っていた。それどころか異星人だの地底人だの異次元人だの魔法使いだの、もっととんでもないものが存在するということまで。
それはこの世界に置いては、密かに語られ続けていたことではあった。昔からTVでやっていた正義のヒーローだの悪の秘密結社、荒唐無稽とも思えるそれが実は本当に存在しているのではないかという都市伝説。夜の街をバイクで疾走する、昆虫と髑髏を合成したような仮面を被った男。怪人。巨大な企業が、ライバル会社を潰すために放つ、表の社会では到底あり得ない技術で作られた機械仕掛けの傭兵。
それらは事実であった。それどころかTVのヒーローものは、それをカムフラージュするためにこそ存在したのではないかとも、その「裏」の社会ではささやかれている。実在の「ヒーロー」の一人に出会った漫画家が、その活動に感銘を受け、彼を見た人が漫画を見たが故の見間違いだと思い、かれの正体にふれないように、そして同時に、その英雄的行動を忘れさせないために、物語をつづったのだ、と。
「くそっ、俺の作品を金も払わずぶんどろうとしたあげく、つばさまで・・・」
いらいらとくわえ煙草を上下させる天晴。この破天荒で金にがめついマッドサイエンティストも、肉親に対する情は厚かったのだ。その割にクロスレンジャーにして闘わせたりしているが、それは自分の作ったスーツの力を信じているからだろう。事実彼の話では、巨大ロボットとも格闘できるような高性能な強化服は、そうそう存在しないらしい。
「つばさをさらった連中はタロン自体ではなく、連中に雇われた忍者らしい。」
「忍者?」
つばさが驚いたように、雅もまた驚いた。
「ただの忍者じゃない。大昔から余人に先駆けて超科学を持ち、それを発展させ続けていた連中だ。」
「仮面の忍者赤影みたいな?」
「いや、後天的な人体改造による力だから、どっちかっていうと変身忍者嵐の敵に近い。」
流石ヒーローものの実存形のような存在なので、番組名で話す事が出来る。
「ともかく、けっこう手強いようだ。気をつけろよ。」
「あれ?新装備は?さっきこんなこともあろうかとって・・・」
普通、そういうことを言うときには何かしら科学者は新発明をよういしているものなのだが。
「ああ。あれな・・・」
そうしばし言いよどむと、天晴はにんまりと笑った。
「あれは、最終決戦用だ。」

「さて・・・」
「あ、あの。貴方はいかないんですか?ええと・・」
「ひのえ。日向忍軍頭領、日向丙。貴方の名前は知っている、天堂つばさ。
消えた部下達を見送るように暫く黙っていた忍者少女におそるおそる話しかけたつばさ。すると意外にも、答えが返ってきた。
「依頼主の命令は、「クロスレンジャースーツを奪い、かつその使用法・戦闘データを入手した上で始末しろ」ということ。だから私はまずデータを収集せねばならない。」
そういうと、先程通信に用いていた小型端末を、壁からたれたコードに接続した。随分ぼろぼろの廃ビルのように見えていたが、意外にも監視システムが生きているらしい。そのカメラからの映像、それと忍達の服にも小型カメラが仕込んであるらしく、上からではなく水平の視点の映像も写し出される。
それを説明する口調は部下を信頼しているが故に安心している、というよりも、心配しても無駄でしょうがない、と諦めているような空虚さ、とつばさには感じられた。
「貴方も殺す。でも今はまだ利用価値があるから生かしてして置くわ。その前に、こちらの質問に今度は答えてもらう」
「は、はいぃっ!」
しかしつばさにはそのことについて考える時間はなかった。いきなりのこの冷徹な発言に、返事するのと同時に息を呑んでしまい、奇妙な高音が喉から絞り出された。
そして。
「正義、って、何?」
真っ直ぐに、つばさの目を見ながら。
彼女はとんでもないことをきいた。
「へ?」
「だから、正義って何、と訊いたわ。」
あまりのすっとんきょうさに、目をしばたたかせる。
「わ、わかんないの、正義?」
「聞いたことはあるわ。でも意味は分からない。貴方達は知っているのでしょう?サキの戦いは見た。正義の味方を名乗っていた。私達には理由の解らない行動パターンをとった。その理由を知りたい。」
ひのえの口調は、捕らえた相手に対する問いとは思えないほどに真摯だった。嘘を付いては居ない、からかいでもないことがつばさにもはっきり解る。
「いや、そりゃ正しいこと・・・。」
「正しい?依頼を裏切らないこと?任務を遂行すること?」
つばさの説明に、彼女は首を傾げる。だがはっきりいって、つばさのほうが首を傾げたい思いだった。
「違うよ、それは。えっ・・・と。むしろ道徳?みたいなものかな?」
「道徳?」
どうやら彼女は、道徳の存在も知らないらしい。
「え〜、人のふみ行うべき正しい道、と辞書にはあるけど・・・」
「人のするべきこと?生存のこと?それは本能?私達は任務のためには死ぬことも手段の内として含まれている。それは集団の、より沢山の命への危険性を排除すること。それでいいの?」
「あ〜っ!そうじゃなくて!」
二人が使っているのは同じ日本語のはずだ。それなのにまるで言葉が通じないか、それぞれの単語の意味が一定の法則に則って入れ替えられているように、話がかみ合わない。
そんなつばさを、更に苦悩させるモノがこの状況に追加される。ひのえの操る監視システムのディスプレイに、クロスレンジャー達が登場したのである。
遂に戦いが始まったのだ。

「ぐはっ、がほ!」
コンクリートの天井を突き破り、大慌てでクロスレンジャー達は飛びだしてきた。下の階全体は、既にガス室になっている。忍び達が仕掛けたトラップの一つだが、口の部分が露出しているクロスレンジャーにとっては致命傷に成りかねない、。
「ふぅ、ミケの助が気付いてくれなきゃ危なかったぜ。」
「ぴゃー!」
陽司の安堵のため息に、ぱたぱたと翼をはためかせてミケの助が胸を張る。・・・といっても丸い体なのでどの辺が胸なのか解らない、クロスレンジャーのマスコットキャラ。
・・・と!
ズドドドドドドッ!!
「わ!?」
コンクリートの壁面を、手裏剣が容赦なく貫通して襲いかかる。
無論、普通の鉄の手裏剣を、普通の人間が投げるのではこんな芸当は不可能だ。手裏剣自体の材料は内部亀裂のない単一結晶鉄・・・ウィスカーで出来ている。
そしてそれを投げる者は、いずれも人外の姿。黒装束の下から僅かにかいま見えるからだだけでも、それが解る。昆虫のような外骨格をもつもの、獣毛の生えたもの、蛸か烏賊かはたまた蛞蝓か、ぬめぬめした軟体の体を持つ者など。体全体が機械に成っているものも数多くいる。
そして、それらが、クロスレンジャー以上の巧みなチームワークで攻撃を仕掛けてきているのだ。
「くぅっ!」
雅・・・ブルーが剣を振るい、咄嗟に自分のほうにとんできた手裏剣を叩き落とす。だが手裏剣とぶつかった剣も刃こぼれし、反動で上に弾かれる。
そこに大柄の敵が体当たりを仕掛けてきた。たまらず吹っ飛ぶ雅。
とどめとばかりに敵は鋭い爪を剥き出し、壁に打ち付けられた雅を突き刺そうとする。
「ちぇえりゃああああ!」
気合一閃!
スーツの力で増強されたとはいえ、凄まじい勢いの蹴りが突進してきた忍を真っ向から十メートルは吹っ飛ばした。
「らあああああっ!」
そのままの勢いで敵中に突入し、忍び達を蹴散らしていく。
軽快なイエローの、元々のデザインからは大分アレンジが施され、かつ着用者の女性としては長身な背丈に合うように改修されたスーツ。それを纏うのは・・・何と、覇王会の長・龍王子。
元々生身でもクロスレンジャー達とある程度渡り合えたほどの腕の持ち主である。その戦闘能力は間違いなく五人の中では最強クラスだ。
「ありがとっ、王子さん!」
本来、敵と呼ぶべき存在のはずだったのだが、彼女は今自分の意志でクロスレンジャーに協力している。イエローのクロススーツを着てはいるが、別に見返りにスーツを要求したわけでもない。
「なぁにっ!いいってことよっ!単に・・・礼をしているだけさっ!」
「?」
王子の返事に、陽司は少し戸惑った。彼自身は、特に礼をされるような行動をした覚えはないからだ。だが王子のバイザーの下から覗く顔は、確かに一種すがすがしく、彼女自身の言った闘う理由に満足しているようにも見える。

ごひゅ!
「っぐ!」
反撃とばかりに、忍のうちの一匹が攻撃してきた。機械仕掛けの体の持ち主らしく、拳の部分だけが独立してロケットで飛び、ワイヤーを引きずりながら龍王子の鳩尾に吸い込まれる。
「やらせねえっ!」
即座にレッドが飛んだ。拳を巻き戻し、もう一度放とうとしている機械忍びを全力で蹴り飛ばす。
「ひろみっ!」
「うんっ!陽司君!」
陽司が叫ぶと共にひろみがごつい図体を思わせない丁寧な言葉遣いで答え、即座に持っていた中型のバズーカ砲で追撃を加える。
そのひろみに、たちまち他の忍び達が殺到した。刀で、爪で、体に仕込まれた様々な刃物で、次々とひろみの巨体を切り刻む。
「うわあああっ!」
「ひろみぃっ!く・・・!」
救援に向かおうとする陽司にも、攻撃が集中した。各種改造手裏剣の他、無音銃、衝撃波、高圧水、斬鋼線、針、指弾、流体金属刃など、静かで光を発さない、極めて交わしにくい武器達がさんざんに陽司を打ち据える。
ちぎれたスーツの布や背中の羽のパーツが舞い散る。

「陽司兄ちゃーんっ!!」
窮地に陥る兄の映像に、我を忘れて悲鳴を上げるつばさ。
その様子を淡々と観察していたひのえは、覆面のせいだけではない無表情のまま、静かに結論づけた。
「解った。やっぱり、正義、ってないのね。空虚な、罪悪感を抹殺したり支持を集めるために使うスローガン。そんなところでしょう?」
「違う!違うよ!!」
その言葉につばさは、後ろ髪を引かれながらも兄の姿を見続けるのをやめ、またともえに向き直る。
「当たり前の事じゃない・・・友達が、お兄ちゃんが心配なの!それで、どうして・・・?」
「そう、当たり前。その感情は、私にもあるもの。」
つばさの言葉に、ようやくひのえは同意を見せた。だが、この状況での同意はますますかみ合わない二人の思考を現すものでしかない。
「結局貴方達も私達も同じ。同じように仲間を心配し、生存のために他者を排除する。闘いに生き、敵を殺す。どんな目的を掲げても、結局正しいのは勝ったものの言い分と歴史は証明している。そしてしまいに自らも、仲間も死ぬ。肉も、骨も、心も知恵も、無様な感情も何もかも、皆無明の闇へ帰るだけ。・・・貴方達も、私と同じ。」
「っ!!!」
絶対零度の冷たさを持った、ひのえの視線と声。それに、つばさの意識と言葉は一瞬にして凍り付いた。
「・・・つまらないわね。そろそろ、私も「準備」に入りましょう。」
そう呟くと、ひのえはつばさから奪った変身用ブレスレットを操作し、変身用カプセルを出現させた。
扉を開けると中からつばさ用のピンク色でミニスカートという、戦闘用とは思えないデザインのスーツを取り出した。その派手な原色の色使いに眉を潜めると、ひのえはどこからともなく、まるで手品のような手つきで塗料のスプレーを取り出すと、クロスレンジャースーツにまんべんなく吹きかけ始めた。彼女の装束と同じ、艶のない黒い色に。
ピンク色のスーツも、ヘルメットも、白銀色に輝いていた背中の翼や銃・剣など装備まで。迅速かつ丁寧に彼女は黒く塗りつぶした。
そしてその出来映えを確認すると、彼女はするりと自分の纏っていた忍者装束を脱ぎ捨てた。「道具」としては、クロスレンジャースーツの砲がより強靱なのだ。
「・・・・・ぁ・・・・・」
その様子を見たつばさの目が、見開かれる。彼女とほぼ同年代とおぼしき、少女の体。
その皮膚は幾重にもうけた傷跡で引きつり、同時に苛烈な訓練に寄って作られたのであろう筋肉の束が確認できた。
つばさの体とは、まるで違う。ひのえ自身もそれを認識したのか、ちらりとつばさのスカートから覗く白く柔らかな脚に視線を走らせると、覆面を外した顔に僅かに翳りを浮かせた。
そして、もう一度つばさの瞳を、ひのえは見た。
自分でも何故そのような行動に出たのか、一瞬ともえには解らなかった。自分の全ては、意志の管理下においているはず。そして今なすべき事は、この少女を人質にするにしろ使わずこの場で殺すなり、とにかく依頼通りにデータ収集の終わったクロスレンジャーを殺すこと、のはず。
だがともえは、あえてクロスレンジャースーツの着装を一時中断してまで、つばさの瞳を覗き、そして。
そこに彼女は、見たこともない涙を見つけた。
痛い、苦しい、不安などの自分だけの感情ではない。そして、感動だの哀れみだの、そんな通り一遍の言葉で形容できるものでもない。
その両方を持つそれが、自分の為に流されていることに辛うじて気付きながら、ともえは何かを待つように立ちつくした。
「・・・・・・・・・ごめんね・・・ごめんね・・・。」
そして、つばさの言葉が涙についで溢れはじめる。
「私達、全然馬鹿で、未熟なヒーローだから、ひのえちゃんたちに答えることが出来ない。私達自身が正義について解らないのに、闘うなんて酷いことなのかもしれない。でも、私、闘わずに入られないの。見過ごせないの。理屈には、出来ないけど・・・」
泣きながらも、その言葉は震えも、しゃくりあげもせず、静かにともえの心に届いていた。
「でも、でもね。正義が何か答えられないから、正義はないって私は言い切れない。解らなくてもその正義を「求めて闘う」、それが「正義の味方」なんじゃないかな・・・?。でね、ともえちゃん。ひのえちゃん聞いたよね。「正義って何?」って。ひのえちゃん言ったよね。「貴方達も、私と同じ」って。」
頷くひのえ。顔が下がり、上がる。そしてまた向き合ったつばさの顔は。
涙と微笑みを、共に輝かせていた。
「ひのえちゃんも、正義を知りたかったんだよね。それで、私達が同じ存在なら・・・。ひのえちゃんもなれるよ。正義の味方に、ヒーローに。」

!!

その言葉を聞いた途端、ひのえは世界全てが光となって自分を包んだかのような感覚に襲われた。
目を何度も瞬かせる。何が起きたのかわからない。だが、何かが自分におきた、ということは解った。世界がまるで、今初めて見るもののように見える。呼吸の一吸い一吐き、全てが奇跡のように感じられる。
今自分の前にいるのはなんだ。いや、誰だ。人・・・天堂つばさ。与えられた情報で定義される「目標」ではない。天堂つばさという、自分と同じ、愚かで、悲しい、闘う・・・それ故に輝く、人間。
「ああ・・・っ。あああっ!」
何度も頷き、感嘆の声を出し。
「っ・・・っっっっ!」
そして、今得た新しい世界の心が、良心が、過去の自分に悲鳴を上げる。
その様子を見て咄嗟につばさは、ひのえを抱き留めようとした。だが、縛られた不自由な姿勢ではそれは出来ない。それでも必死に近づこうとしたとき、ひのえの掌が彼女の顔の前で広げられた。そして、ゆっくりと、つばさの頬を撫でるように触れる。
「大丈夫・・・大丈夫・・・大丈夫。」
静かに、つばさと自分に、言い聞かせるように、そして刻み、二度と忘れないようにするように。ひのえはゆっくりと、しっかりと言った。
その様子に、つばさの目からさっきとはまた違う涙が流れつたい、頬を覆うひのえの手を濡らす。
「凄いね、ひのえちゃんは。私達なんかより、よっぽど強いんだ。」
「ありがとう、つばさ。」
答えるひのえの声はまだ平板な感じが若干残るが、明らかに機械的なそれまでとは違う。心を持つ人間の声だ。
それからひのえは、あわてて通信装置のほうに駆け寄る。
その背中を見て、つばさは彼女の意志を悟った。戦いをやめさせるつもりなのだ。彼女が知ったことを、仲間達にも伝えるために。

ドン!!

不意に、重い打撃音とともに通信端末が砕け散った。
そして、ひのえも。
「ひ、ひのえちゃん!?」
吹き飛ばされたともえが倒れ込んでくる。それを自分の体をクッションにして受け止め、つばさは悲鳴を上げた。
下着しかつけていない無防備な少女の体。その胸が何か目に見えない力のようなもので撃ち抜かれている。銃弾などによるきずよりもっと大きな穴から、だくだくと鮮血が溢れている。
「ふん・・・困るな。「道具」に意識を持たれては。役に立たなくなる。役に立たなくなった道具は・・・捨てねば、な。」
「っ!?」
目の前の空間に突如割り込むように、男が一人姿を現した。彼という存在がそれまでその場にいなかったことを示すように、急に体積を持つ物質が出てきたために、その分押し出され等空気が風となって吹き付ける。
黒い服と、白いマント。褐色の肌とがっしりした体躯を持った、かなりの大男だ。左右で角のように逆立った髪と片目の義眼、目の下から頬には知る隈取りのような二本ずつのラインが顔に威厳以上に凶悪な印象を与えている。
「タロン特殊兵器部門重幹部、サグ・・・。このタイミングの良さ、はじめから我等を使い捨てるつもりだったな。」
肺腑に達した傷のせいで血にむせながら、ひのえが何とか言葉を吐き出した。
「否定も肯定もせんな。道具に語るべき言葉など持たん。」
「そんな!人を・・・心を持っているものを、道具だなんて!」
サグの冷酷な言葉に、頬を怒りに紅潮させてくらいつくつばさ。
と、その体を戒めていた拘束具が、一斉に外された。それを行ったのは・・・
「ひのえ、ちゃん・・・」
そして、ひのえは傷ついた体でよろよろと立ち上がり、サグとつばさの間に割ってはいる。その意図は、解りすぎるほどはっきりしていて。
このサグという男は確実につばさとひのえを殺すつもりだ。座して二人とも死ぬよりは。
「私は、大丈夫。化身忍者だから。逃げろ。」
必要最低限の声でそう言うと、ひのえは胸を覆う下着に隠していた煙幕玉をつばさの前の地面に叩き付けた。
「ひのえちゃ・・・!」
たちまち濃い煙幕が発生し、つばさを包む。噴出するシュウシュウという音が、その足音もサグの耳に届かないようにした。

「ほう・・・」
その様を予定の行動を見るように、そして無駄なものをみるように、無感動な視線で眺めながらサグは、口先だけでわざとらしい感嘆をしてみせる。
「どういう心理的変化なのかな?今までの君たちの行動とは
「道具に語るべき言葉など持たないんじゃなかったの?」
つっけんどんに、ひのえはサグの言葉を遮った。胸の貫通創など何ともないかのようにその表情は決然としている。
空っぽだった心がいっぱいになったのだ、体に穴が開いたところでどうという事はない、ということか。
その様にサグは不快げに眉をひそめ・・・掌をひのえにむけてかざした。

ドォッ!

打ち砕かれるコンクリート。ひのえは素早く横に飛び、見えない打撃をかわしていた。
サイキック、PK、念動力、超能力・・・色々な言い方はあるが、それがサグの武器だ。ひのえ自身も裏の世界の人間として何度もそのような能力を持つ者と渡り合ってきたが、サグの能力はその中でも確実に最強、それに先程テレポートで現れたように、この程度は小手先の力でしかあるまい。
素早く、かつ安定した姿勢で走りながら、ひのえは素早く印を刻み、精神を集中した。
「日向忍法・群散心気!」
言葉と同時に、走るひのえの数が増殖していく。あっと言う間に、ひのえは二十人ほどの数に分身していた。彼女とてまた、ただの少女ではない。
「しゅっ!」
その増えたひのえ達が、一度にサグに飛びかかる。鉤爪の形に構えられた手は、まるで獣の爪や牙のように生身の人間の胴や首を引き裂くという荒技を何度もしてのけたことがある。
四方八方からの攻撃、残像などではなく体の外形にそって霊子(魔法などを理論づける素粒子・極めて不安定で、人間の脳波に反応する)を残して作った霊的な実体、一体か二体迎撃しても残り全員がサグの体をずたずたにするはず。
「ぬうおっ!!」
しかしてサグはそれを一体一体迎撃するようなまねはしなかった。腕を胸の前で交差させると、全方位に向かって先程以上の衝撃波を放射した。
「・・・・っ!」
「ぬ?」
ひとたまりもなくかき消える不安定な分身。だがその中にサグの予期したもの・・・波動に全身を叩かれて昏倒するひのえ本体・・・はない。
殺気を感じて振り向くサグ。視界に漸く写ったひのえは、分身を囮に自分の忍者装束の所に移動していた。服を着ていないのが恥ずかしいとか、この修羅場に場違いなことではない。その特殊素材の忍者装束は着用することにより防御力を目に見えて上昇させることが出来る。だが、いくら忍が素早いとはいえ強力なエスパーを相手に悠長に服を着ている暇はない。
彼女がそこにいったのは、武器を取るためだ。
「白鶴乱斬撃!」
叫びと共に、白い鋭角の影が無数に飛ぶ。戦いの場に似つかわしくない、それは・・・一見、折り紙の鶴にしか見えなかった。
だがそれはただの折り鶴ではない。迎撃しようとするサグの念力を、一羽一羽が意志を持っているかのように回避し、一斉に襲いかかる。斬、と名のつくからには、恐らくその鋭角的な縁には、ぶつかった者を切り裂いてしまうだけの鋭さが込められているのだろう。
だが、サグは笑った。いくら沢山飛んできても、結局先程の分身の術と同じ事。全方位に攻撃を繰り出せるサグにとっては、どんな攻撃でも叩き落とすまで。
「ふんっ!」
再び全方位波動を放つサグ。空気を振動させる「力」が、折鶴の群と接触し、
ひのえが笑った。
「・・・爆!」

ドドォォォォォォン!!

そうくると、彼女は読んでいた。故にわざわざ名前を叫ぶことで相手に攻撃のタイプに先入観を持たせ、技をアレンジして内部に仕込んだ爆薬に点火させたのだ。
炎が渦を巻き、衝撃で砕かれた直上の天井が崩落する。だが、まだだ。
「ふっ・・・ぐぅ!?」
火炎をかき分けるようにバリアを展開し、余裕の笑みを浮かべながら現れたサグの表情が凍り付いた。

ぎりぎりぎりぎりぎり・・・・

球状の、超能力によって保持されたバリア。それ自体に、金属箔の帯がぐるぐると巻き付き、締め上げてきたのだ。
「これは・・・っ!」
その片一方の端は、ひのえが握っている。この金属箔は紛れもなく彼女の武器、それも先程のようなフェイントではない真っ向勝負の得物だ。
ぎりぎりと、ESPバリアが締め上げられる。能力者自身の力で構成されるそれは瞬間的で有れば物凄い剛性を発揮するが、こうした長時間居座り続ける攻撃の場合、維持し続けるには相当の力が必要になる。
そして。
「ぬっ、くっ・・・」
「・・・・・・・・・」
金属箔のもう一方の端。それはまるで毒蛇のように鎌首をもたげ、巻き付いたバリアから一旦離れたあと、垂直にバリアに突き刺さっている。他の部分の面積のある圧迫と異なり、それはほとんど「線」であり、従って単位当たりの力は遥かに増す。
それまでと比べて静かだが、同時に互いの死力を振り絞った闘い。この攻撃の正否が、決着を決める。

ぎ・・・ぎ・・・
キィン!!

遂に、ひのえの金属箔がバリアを貫いた。壁を突破した箔はそのまま刃の鋭さで突進する。

ズドン!

「・・・・・っ・・・」
「ふん。ふははっ・・・」
しかし、笑ったのはサグだった。
バリアを突破した箔の刃はひのえの意志に反して軌道をそれ、狙ったサグの首を外して後ろの柱を切断した。
「くっ・・は・・・」
ひのえの手が、握っていた金属箔を取り落とす。そのまま力尽きて膝を突いてしまう。
最初に受けた一撃。それによる出血が限界に達して攻撃の手元を狂わせ、また立っているだけの体力も奪ってしまったのだ。
「はははっ・・・どうやら、最初から私の勝ちは決まっていたようだな。」
笑いながらサグはずかずかと大股で歩き、膝を屈したひのえの頭をわしづかみにして無理矢理立たせた。
「あぐっ・・・」
大男の手で頭蓋骨を締め付けられ、うめき声を上げるひのえ。そしてそれと同時に、脳味噌に直接手を着けられるような嫌な感触が湧いてくる。
「とはいえ、流石に日向忍軍頭領、大した腕だ。記憶も感情も消去してすべてこそぎだし、もう一度一から道具にしてやろう。」
「うあっ・・・」
(また・・・戻るのか。私は・・・つばさ・・・逃げたかな・・・)
かすれた声が弱まると共に、意識が、ようやく得た心が消えていくのをひのえは感じ。

キュンッ!

「む!」
突如放たれるレーザー。用心深いサグが事前にもう一度張り巡らしておいたESPバリアに引っかかって拡散したが、それはひのえをギリギリで救うのには役に立った。
ひのえの頭から手を離したサグは、隻眼を睨ませて、もう一人の相手に身構えた。
「つ・・・ばさ・・・」
「ひのえちゃんから離れてっ!」
彼女は、逃げては居なかった。煙幕で仕切られた場所の中、闘いに加わるべくクロスレンジャースーツを装着していたのである。ひのえが実戦むきに目立たない黒に塗った、クロスピンクのスーツ。
可愛い顔を精一杯険しく引き締め威嚇しようとするつばさに、サグは獲物を見つけた猟師のように笑った。
「ふっ、何かと思えば。そんな強化服程度で私と闘うつもりか?量産してやれば使えるだろうと思ったが、たった一人、それも素人同然のお前など、相手にもならんわ。」
「一人じゃ・・・ない。」
ヘルメットから覗くつばさの口元。僅かに緊張の汗が顎をつたうが、そこから伺える表情は絶望していなかった。
「なに・・・!?」
咄嗟にサグは気付いた。片手にレーザーガンをもったつばさ、その空いた手はヘルメットの側頭部あたりにそえられ、何かを操作しているように見える。
「貴様まさかっ、通信装置を・・・!!」

「クロス・ファイヤーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!」

ずぐおおおおおおおおおおおおん!!!
「ぬああああああっ・・・!!」

絶叫、轟音。
光の大群の突進、とでも例えられそうな攻撃が、それまで傲慢に勝利者ぶっていたサグを一撃で吹き飛ばした。そのままビルの柱と壁をぶち抜き、外にまで一気に貫く。
「大丈夫かっ!つばさ!ひのえちゃん!」
「陽司兄ちゃんっ!」
振り返るつばさ。そこには四人がかりで呆れるほど巨大な大砲・・・クロスレンジャー必殺武器・スーパークロスバズーカを構えた、彼女の兄と仲間達の姿。
バズーカを放り出し、走り寄る陽司。体勢は逆であったが今度こそつばさもそれに答え、兄の胸の中に飛び込んだ。
「つばさ・・・」
名前だけ呼んで、あとは言葉にならない陽司。彼女の通信により事情が発覚、日向忍軍もタロンに見捨てられたと知りまた党首の判断を理解し、戦いをやめてくれた。それで駆けつけることが出来たのだから、互いに助けたとも助けられたとも言える。
「陽司兄ちゃんっ!陽司兄ちゃんっ!・・・ふぇえ〜ん・・・」
つばさも、泣き出してしまって言葉にならない。それまでの様々な感情が、必死に張りつめてきた緊張が解けた勢いで全部涙になって出てきたのだ。
「ひっく、ああっ、そうだ!ひのえちゃん!」
それでも短期間で泣きやむことが出来たのは、その時間を共にした少女の安否が心配だったから。
もっと抱きついていたかった兄の胸から顔を離し、倒れ込んだひのえを見る。
「な〜に、大丈夫だ。この大天才・天堂天晴二十七歳にまかせろ!」
その傍らには相変わらずの、もう一人の上の兄の姿。サングラスを光らせてにやりと笑うと、白衣の袖口に仕込んだ様々な手術道具を光らせる。
「・・・うんっ!」
安心し、つばさは頷いた。この兄は大言をしばしば言うが、決していったことを裏切りはしない。
「・・・そっちは天晴さんに任せておいていい。俺達には、どうもまだ他にすることがあるみたいだ。」
と、壁に空いた風穴から外を眺めていた雅が、油断のない声で告げた。
「どうした、雅?」
「あのサグとか言う男、まだ生きているみたいだな。この廃ビル、囲まれて居るぞ。それも相手はアームスレイヴか何か、ともかく巨大なロボットだ。」
「何だって!?」
ひろみが驚愕する。アームスレイヴといえば今や戦車も攻撃ヘリもしのぐ陸戦の最強兵器だ。だが、既に手術に入っていた天晴は対照的にやりと笑った。
その顔を見た陽司も、また兄の考えを理解して笑う。
「そうか、兄貴。最初に言ってた最終決戦用の新兵器って・・・」
「ああ・・・その通り!」

スーパークロスバズーカの一撃をすらバリアで防ぎきったサグは、その反動を利用して廃ビルの外に出ていた。
自分が突入した時点で念を入れて周囲の人間を「不発弾が見つかった」とデマを流して、この建物を世間から隔離している。
すなわち、今ならどれほど大規模な攻撃を掛けてもバレはしない。
「私だ。ビルごと叩きつぶせ、以上!」
それだけ無線機に怒鳴る。
「へいへい、解りましたよ。・・・せいぜい楽しませてもらおうか!」
連絡を受けたAS部隊の隊長・・・タロン通常兵器部門組織・アマルガムの構成員・ミスターFeアイアンこと、国際テロリスト・ガウルンは軽薄な口調とは裏腹の餓狼のような笑みを浮かべた。根っから戦争好きなのだ。
組織の開発した最新型アームスレイヴ・人工的なESP能力発生装置・ラムダドライバを持つコダールと、身長40mを超える超巨大AS・ベヘモスを主軸とした、強化服五体を屠るには過剰すぎる軍団を突撃させる。
一斉砲火の前に、ぼろい廃ビルはあっさりと砕け散り崩壊した。強化服を着ていればその中から脱出できるかも知れないが、それならそれで楽しみが増えるだけだ。
ガウルンがそう考えたとき、それは現れた。崩れ落ちるビルのむこうから立ち上がる、ベヘモスに匹敵するほどの巨大なロボットを。

羽ばたく巨大な白銀の翼。いわゆる戦隊ロボの類だが、箱を継いだような角張ったデザインの通常のそれと違い、巧みな曲線の装甲を持つ引き締まった優美な姿をしている。そして決して華奢ではなく、中性的であると同時に独特の力強さを持っていた。

「巨大な魔手を打ち砕き!空の果てまでも勇姿を示す!!翼甲超機人ウルトラクロス、ここに参上っ!!」
名乗りを上げ、機械の大天使は陽司の声で吼えた。
「さんざエグイ真似しやがって・・・許しゃしないよっ!」
柳眉を逆立てて決意を示す、その声音は龍王子のもの。特殊な操作システムを有し、搭乗者五人の意識を一旦融合、そののち一番強い意志が行動として反映されるため、クロスレンジャーは全員搭乗し、精神を集中させている。
「見てて・・・ひのえちゃん!」
うって代わって凛々しく、つばさは呟いた。既に日向忍軍の手で脱出し、天晴に治療を受けるひのえが、地上からロボの勇姿を見上げこくりと頷く。
(準備よし!いつでもいけるよ!)
(陽司!)
同時に融合意識内ではひろみ、雅が手早く調整を終えてメイン操作を担当する陽司に知らせた。
(ああ・・・いくぞぉっ!!)
「おおおおおっ!!」

突進するウルトラクロス。コダール部隊が一斉にラムダドライバを起動し猛射を加えるが、びくともしない。
「インパクトフェザー!!」
力を貯めるように一旦畳まれた翼が、勢い良く開く。同時に翼から「羽毛のような形をした光」が当たりに降り注ぎ、敵のコダールだけを集中して打ち砕く、一見軽いようなその羽は、当たった瞬間に名前の通り激烈な衝撃を生み出すのだ。
「たああああああっ!!」
スクラップになったコダールの群を飛び越え、背後に控えるベヘモス達に挑みかかるウルトラクロス。身長せいぜい10mクラスのコダール達と違い、厄介な相手だ。
身長では互角だが体の太さでは優に三倍はベヘモスのほうが大きい。だがその質量差を無視するように、ウルトラクロスの蹴りは最初の一機を木っ端微塵に粉砕した。

ゴォォォォッ!
僚機が破壊されたのを見た他のベヘモス達が、主武装の強力火炎噴射機・ドラゴンブレスをウルトラクロスにはきかけた。
翼を盾のように使って、ウルトラクロスは耐える。
「・・・貴方達は何故、こんな事をする?」
不意にそんな最中、ウルトラクロスが口をきいた。それはつばさのようでもあり、陽司のようでもあり、龍王子、雅、ひろみ、皆の声が入り混じったもののようにも聞こえた。
聞こえないのか、聞いては居ないのか。ベヘモス達は攻撃を続け、既に現場を離脱したであろうサグからは当然何の音沙汰もない。
「・・・解った。私達は、私達の思いを乗せて。必ず貴方達の元へ行き・・・闘う。貴方達と私達のため、答えを、求めて。」
いいながら、ウルトラクロスは翼を開いた。チャンスとばかりにベヘモス達が更に火炎をはくが、その時には既にウルトラクロスはその場にはなかった。その巨体は既に天空、太陽を背負って光り輝いている。
その輝きの中、光自体から一振りの剣を作りだしウルトラクロスは構えた。
そして、羽ばたきと共に加速急降下。その勢いで剣を、振るう!
「光風剣・翼人十文字斬りっ!!!」
光が、風が、翼持つ人の心が舞い、ベヘモスの群はまとめて切り裂かれた。



そして、ひとまずの戦いの終わり。
ウルトラクロスから降りた陽司たちは、家へと帰ってきていた。
龍王子やひのえ、日向忍軍も一緒である。
「さて・・・」
全員を集めて、天晴はまたにやりと笑った。かれが何かとっておきのことをしようとしているとき特有の笑い方だ。
「当然だがお前達。タロンとの闘いは終わってない、そうだよな?」
「ああ。」
頷く、面々。
「クロスレンジャースーツは最初、あくまで商品にするつもりで作った。だが、そうも行かなくなった。・・・俺自身、気付いてなかった部分に火がついちまったからな。お前達も、だろ?」
一旦言葉を区切ると、サングラスを外した天晴は意味ありげな視線を見せた。
「それで、スーツを売るつもりで接触した他の正義の味方や組織から得た情報で、タロンの連中の次の作戦情報をある程度つかんだ。何でも学校に関連した作戦で、プロイェクトタウベと言うらしい。」
「解ったぜ。」
今度は天晴より先に、陽司が笑った。
そして、続いて天晴が。
「そうか・・・わかった。ならば・・・秘密結社バリスタス第二部へ続くっ!!」
「え!?」
「いや、途中で共通の設定が出てたろ?気付かなかったか?作者の奴が、もっともっと大きな状況でやってみたい」って乗り気でな」
「おいおい!?」
「何しろ一部設定に関しては、バリスタス第二部よりこっちのほうが先に出てるくらいだしな・・・」

「そうじゃなくて!・・・・まあいい、考えたって仕方ない。いくっきゃねえか!!他の道とクロスしてようが、俺達のヒーロー道を!!」


とりあえず・・・まだ見ぬ未来へ、続く!!(秘密結社バリスタス第二部・学校編へリンク予定・・・現在執筆中)

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