あの事件から数日がたち、早いもので今日は夏休み最終日。
毎年この日になると慌てる連中が必ず出てくるが、ここ天之家にそんな雰囲気はまっ
たく感じられない。
その代わり、何とも言えない異様な気配が周りに立ち込めている。
気配の主は、今、ダイニングでカレンダーを見ている柾利である。
「・・・ついに来たか・・・長年待ち望んでいたこの日が、ついに・・・」
そう呟くと、彼は朝食の準備を始めた。
カレンダーの今日の日付には、赤い丸が付いている。
魔女っ子戦隊パステリオン外伝
『柾利の悲惨な一日』
M7:05
「♪、♪、♪〜♪、♪♪〜〜・・・」
珍しく上機嫌な柾利、ハミングしながら目玉焼きを作っている。
顔もどことなく嬉しそうだ。
時折カレンダーを見ては、笑みを浮かべている。
普段の彼を見ている者が居れば、間違いなく我が目を疑う光景だ。
すると丁度良く2階から水奈が降りてきた。
「ん、ん〜〜〜っ・・・」
リビングに入って来て背伸びをする水奈。
「ザ・イ・ダ〜〜ベックは〜〜・・・♪」
突然、柾利がハミングから歌に切り替える。
ズルッ、ゴンッ!!
「我等の力〜〜♪、ん?」
後方からした鈍い音に、柾利が振り返ると、水奈が頭を押えながらこっちを見てい
る。
「はうぅ・・・、お兄ちゃん なんでザイダベック号の歌なんて知ってるの?」
「水奈こそよく知ってたな・・・、とりあえず おはよう」
「・・・おはようございます」
どうやら通常モードに移行したようだ。
何事も無かったかの様に朝食を摂りはじめる。
PM0:30
昼食を終え、ソファーでノンビリしている水奈。
柾利はキッチンで何か作っている。
(いい匂いだなぁ)
キッチンから漂ってくる香りに、うっとりしている。
「なぁ、水奈」
「・・・な、何?お兄ちゃん」
「今日、何か用事あるか?」
「えっ、ん〜・・・別に何も無いよ」
「そうか、じゃあ昼からにでもどっか出掛け・・・・」
RIRIRIRIRIRIRIRI・・・・・
「あ、電話」
柾利が言い終える前に、水奈が電話に出に行く。
〈電話中〉
数分後
「わかった、じゃあ1時には行くね」
水奈がリビングに戻る。
「誰からだ?」
「ユキちゃんから、夏休みの宿題手伝ってって」
「ユキが?」
「2人ともだって、あの事ですっかり忘れてたみたい」
「(盲点だった・・・)で?」
「1時に行くって言っちゃった、ところでお兄ちゃん何の用だったの?」
「・・・覚えてないか?」
「?、何を」
「・・・・・・」
バタッ!
「お、お兄ちゃんっ!どうしたの?!」
突然倒れた柾利、心配そうに水奈が駆け寄る。
「お兄ちゃんっ!お兄ちゃんっ!!」
肩を掴み激しく揺さぶる。
が、気が付く様子はまったくない。
「どうしよ、とりあえず床で寝かせるのも失礼だし・・・・よいしょっと」
柾利をソファーに寝かせる。
「ふう・・・、あっ、もうこんな時間!急がなきゃ!!」
時刻は12時45分。
出発しようとすると、キッチンに四角い箱が置いてあるのが見えた。
「あれ、これケーキだよね、うん、お土産に丁度良いし持って行こう」
そう言うと箱を持って出掛けていった。
しばらく後
「あぁーーーーーーー!!!!!!!!!!」
家中に柾利の叫びが響く
「ケ、ケーキが、丹精込めて作った特製ケーキが・・・」
消えたケーキの代わりにテーブルの上に書き置きが置いてある。
『お兄ちゃんへ
ユキちゃんが何かお土産持ってきてって言ってたので、ここにあったケーキ
持っていきます。水奈』
「ふ、ふふふふふふふふ・・・・」
肩を震わせ、不気味な笑い声を出す。
「ユキぃ〜、今日をお前の命日にしてやる!!」
そう叫ぶと、キッチンへ飛んでいき、数時間後に一個の箱を持って出てきた。
「タカミ。」
(一応)自分に従える神獣タカミムスビを呼び出す。
瞬時に現れるタカミムスビ(今日は龍のようだ)
「これをユキの家に持って行ってくれ」
無言で(喋る気が無い?)箱を受け取り、すぐに飛んでいく。
PM2:57
「はぁ〜〜、ようやく半分終わった〜〜」
「あと半分だね、そろそろ3時だしちょっと休憩しよ」
「「賛成〜〜」」
どうやら裾野家でやっているようだ。
「あ、そうだ、お土産にケーキ持ってきたよ」
水奈が箱をテーブルの上に置き、ケーキを出す。
「わあ〜、おいしそう、これ水奈ちゃんが作ったの?」
「ううん、お兄ちゃんが作ったんだよ」
「マサちゃん、相変わらず上手いな〜、あ、お皿取ってくるね」
「ジュースもね」
「人使い荒いよスズ姉ぇ」
「なにぃ〜、あ、コラ逃げるなっ」
「あははははっ」
いたって和やかな雰囲気だ。
「ジュース持った、お皿持った、あれ?」
雪瑠の前に白い箱が置かれている。
「ケーキの箱?手紙が付いてる、なになに・・・!!!っ」
手紙を見た瞬間、雪瑠の髪は自分の名の頭文字の様に真っ白になった。
「ユキちゃんお帰りぃ〜〜」
「・・・水奈ちゃん、今日のマサちゃん、いつもと違わなかった?」
「え?そう言えば、何か嬉しそうだったよ」
「やっぱり・・・・、て事はこの中には・・・」
「ユキ、何?その箱」
「ヤバイヤバイヤバイ・・・」
「ケーキみたいだね、なんだろ?」
鈴璃が箱からケーキを出した。
・・・赤い
それしか形容出来ないほど・・・赤い。
「な、何、このケーキ」
思わず後すざる鈴璃
「サラマンダーX・・・」
「えっ?」
「マサちゃん特製、怒りの超極辛ケーキ・・・クリスマス以外で見られるとは・・・」
怯えながらテーブルに手紙を置く
「手紙、え〜と『ユキ、スズ、残さず全部食え!!』・・・私も?!」
「お兄ちゃん・・・怒ってるの・・・?でも、何で・・・」
「覚えてない・・・今日 マサちゃんの誕生日」
(間)
「あぁ〜〜〜〜っ!!!!!!!」
「じゃあ、水奈ちゃんが持ってきたケーキは・・・」
「お兄ちゃんの・・・誕生日ケー」
ズズズズズズ・・・・ッ
突然、空から不気味な音が聞こえてきた。
「な、何?!」
慌てて空を見る
そこには様々な形をした怪物が何千匹も浮いていた。
が、強烈な閃光が走り一瞬にして全て消滅した。
「今のは陽極神のイレイザー・フォース・・・しかもいつもより強力な奴」
「そうとう怒ってるよこれは・・・」
(怒ってる、お兄ちゃんが怒ってる・・・)
水奈の脳裏に幼い日、たった一度だけ怒った柾利の顔が思い出された。
次の瞬間、水奈は持ってきたケーキを箱に入れ、物凄い速さで走りだした。
あとに残された2人は
「・・・・スズ姉、このケーキどうする?」
「捨てよう、食べられそうにない」
「・・・無理だと思う、さっきからずっとタカミムスビが見張ってる」
顔を見合わせ、座ってケーキを一口食べる。
「「っーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!」」
そして声にならない叫び上げた。
(お兄ちゃんごめんなさい!!せっかく楽しみにしてくれてたのに、忘れちゃって・
・・本当にごめんなさい、今すぐ帰るから、だから・・・だから水奈のこと嫌いにな
らないでっ!!!)
PM4:00
「お兄ちゃん!!」
リビングに駆け込む水奈
しかし、リビングに柾利の姿はない
「そんな・・・、お兄ちゃん・・・」
その場に座り込み泣き出す
「・・・・水奈」
突然後ろから抱き締められる
振り返ると、そこに柾利が居た。
「お、お兄ちゃん・・・ごめんなさい」
俯きながら謝る水奈
「ごめんなさい・・・」
しばらく黙っていた柾利だったが、おもむろに水奈の肩を引き寄せ抱きしめる。
「水奈・・・」
「ごめん・・・なさい・・・」
今にも消え入りそうな声で謝り続ける
「いや、許さない・・・」
厳しい言葉に、一瞬水奈が震える。
「だから暫く こうさせてもらう」
一層強く抱き締め、右手で頭を撫でる。
(お兄ちゃん・・・)
水奈も体の力を抜き、全てを柾利に委ねる。
しばらくして、柾利が抱擁を解く
「お兄ちゃん・・・」
「水奈・・」
見詰め合う2人
「お兄ちゃん・・・お誕生日「「「おめでとう!!!!」」」
いつの間にか、窓の外にみんながあつまっていた。
「み、みんな、いつの間に?」
「ついさっき、それにしても大胆だねぇマ・サ・ちゃん」
「悪かったな」
さすがに少し照れてるようだ。
「まっ、良いでしょ、誕生日だし」
((私達は納得いってない!!))
鈴璃と美砂希は恨めしそうにこっちを見ている(ちなみに美砂希の出番これだけ)
「はぁ・・・」
「お兄ちゃん・・・後で・・ね」
「そうだな」
小声のやり取り、でも結構聞こえてる
「後で何するのかなぁ?」
無視
「さて、パーティーを始めるか、さぁ、みんな入った入った」
ぞろぞろと家に入る
何時もは静かな天之家、でも今日は賑やかな雰囲気に包まれている。
「「「「お誕生日おめでとう!!」」」」
「みんな、ありがとう!!」
みんなの祝いの言葉に、満面の笑みで返す。
笑顔だけは出来るのだから。
終わり
追記
夜が更け、そろそろパーティーもお開きになるころ、急に天寺姉弟が叫んだ。
「「あーーー!!そういえば宿題まだ半分残ってたーーーー!!!」」
「まだ終わらせて無かったのか・・・・」
結局、全員泊り込みで宿題を手伝ったのだった。
あとがき
まずは、このような駄文を送った事、心より謝罪いたします。
元はギャグにするつもりだったのに、出来てみたらほのぼの恋愛モノに・・・。
一応、短編は他に短文レベルの(クリスマス編)と(シリアス編)、
以前書いてた掲示板で貰った、滅殺・守李兄妹の物があります。
現在は保留中。(その内書く予定)