天之兄妹小説【クリスマス編】



12月24日、クリスマス・イヴ

一般的には特別な日なのだろう、現に水奈が部屋の飾り付けをしている。



だが俺の脳裏には惨澹たる光景しかない。

水奈が居なくなってからの7年間、クリスマスといえば“アレ”だった。





《回想》





クリスマス・イヴの夜

俺の家には2人の客が来ている。

一人は(一応)親友のユキ、もう一人は月夜(旧姓:高原)刑事。

2人とも浮かない顔をしている。

ユキは昼間にバカをやったと、外食に連れていってもらえなかったそうだし。

月夜刑事は上司のミスで非番なのに出勤し、ピアノ発表会に行っている家族と入れ違ったそうだ。

お互い遅くまで帰って来ないらしく、寂しい者同士 苦しみを分かち合おうと家に来たらしい。

丁度良かった、毎年一人空しくやってた うっぷん晴らしも人数がいると違う。

テーブルの真ん中に特製極辛ケーキ「サラマンダーX」を置き、大ジョッキに青汁を注ぐ。

最初 月夜刑事が難色を示したが、日頃のうっぷんに比べれば軽いと言ったら乗ってきた。

ユキは隔年で同じ事をやっていたので慣れている。

3人揃ってジョッキを手に取り、腹の底から雄叫びを上げた。

「「「クリスマスのバカヤロー!!!

カンパーーーイ!!!!」」」



ガシャーーーン!!




割れるほどジョッキをぶつけ合い、一気飲み、そしてケーキをヤケ食いする。

口中に広がる不快感、思わず吐きそうになる。

俺が最後の一欠けらを食べた瞬間 全員揃って気絶した。



そして数時間後に目が覚め、各々の家に帰る。





《回想終了》





まぁ、毎年こんな感じだった。

たしかコレは一昨年の事だったな・・・



でも今年は違う。

水奈と一緒にクリスマスを過ごせる。

俺にとって、これが一番のクリスマスプレゼントだ。



そして俺は料理を作りに、キッチンに入る。

来年も再来年も、こんな風に過ごせるなら幸せだ。

誕生日は散々だったからな・・・。



(中途半端ながら)終