OVA第二期シリーズ・第二巻「HV団、動乱」
あの日、それは突然にやってきた。

そして、居座った。

そびえ立った。

それは、昨日もそこにいて、今日もそこにいて、そして・・・明日も、そ
こにいる。

みんなが、そう思っていた。

あの日・・・一つの時代が今まさに終わろうとしているその時、遅すぎた自称援軍は、やってきたのだ。



カット1
「諸君!奴らは敵だっ!!殺せっっ!!!」

バターン!

扉を蹴り倒して会議室に唐突に現れ、博士は怒鳴った。
物凄い剣幕だ。金属とも生物とも付かない仮面は憤怒に怪獣じみた形に変化し、鋭い牙で形作られた口の端から一息ごとに炎が漏れている。

「な、何ですか博士、いきなり・・・」

扉の下敷きになったゲドーが、呻くように誰何する。

「そうです、大体奴らって何ですか?」

同室して会議をしていたらしきラディルが、少し緊張した様子では言う。

「分からんか馬鹿が!!」

大学教授が生徒に馬鹿な質問をされたときの目で博士はラディルとゲドーをにらんだ。気が立っているせいか、目つきも悪ければ口も悪くなっている。
もっとも、口の悪さと、頭の回転が速すぎて過程をすっ飛ばして結論だけ話し、周りの人間を困惑させるのはいつものことであったが。

「奴らとは、マスターZ及びその親衛隊に決まっておろうが!先のカマドウマ騒ぎのさいにきゃつを援護し!我が基地に妨害攻撃を仕掛け!あまつさえ今度は我々がHV団のために粉骨砕身してクラヴィ団と闘っているときに現れて赤毛の若造(クラヴィ)もろともに我が輩を闇に葬ろうとしたのだぞ!我が輩の天才を恐れてのこの蛮行!これが敵でなくて何であろうか!害毒でなくてなんであろうか!憎むべき、滅ぼすべき敵でなくて何であろうか!!!」

「それは、博士から先に「マスターZ抹殺」宣言出したせいなのでは?」

ガスッ!
「ぐわっ!!」

問答無用で、鋭くとがった鎧のつま先でラディルを蹴りとばす博士。涙を流して、倒れたラディルの襟首を掴んで持ち上げる。

「このままマスターZに従っていればいずれ使い捨てられる、それがわからんのか!?奴の目的は「破壊」!自らの手でそれを行えないがためにそのために「世界征服」をもくろむ我々を使って世界を混乱させ、破壊を行っているだけに過ぎん。奴が復活したら、我々は不要の存在どころか奴の破壊の対象となるだろう。親衛隊の活動の手段を選ばない活発化は、それが近いことを示している!これだけ言えば分かるであろう、特に貴殿ならな!!」

怒鳴りちらすだけ怒鳴り散らすと、ばさりとマントを翻して博士は足早に去っていった。
「カーネル!我が輩はこれから総帥代行に謁見してくる!貴様は先に帰って装備を整えておけ!それと、研究室を使えるようにしておけ!」

不必要なまでにでかい博士の声は、彼が廊下に消えた後もはっきりと聞こえた。

「・・・・・・」
ゲドーは沈黙した。
そして、博士が来る以前にラディルが告げた事柄・・・悪の博士はクラヴィ団と内通しているという情報・・・と、今の博士の発言、どちらに信を置くべきかを考え始めた。
机の上に置かれた、クラヴィーアに何かを手渡す博士と、クラヴィ団所属の二体のアンドロイドを修理する博士の写真をひねくりまわした。

ラディルも沈黙した。
博士の最後の発言・・・それは明らかに、彼が灰に脅かされて博士を告発したことを見抜いていることを告げていた。
これから博士がそのことをどうするか、自分はどうするべきなのかという問いが、ラディルの重くのしかかった。

沈黙は、暫く続いた。


カット2 返信
かたかたかたかたかた・・・
悪の博士謹製のメカネズミが、部屋の中を縦横無尽に動き回る。
それを見つめる、キラキラと輝く猫の瞳。
「・・・にゃっ!!」
ぱし、と肉球の付いた手の爪が、メカネズミを押さえつける。
「お見事!」という旗が立つが、それと一緒に出てくるはずの賞品・・・マタタビ、鰹節、煮干しなど猫好みの品・・・は、とっくに空っぽになっている。その事実に、自分がいかに長い間この遊びをしているかを露骨に告げられ、アークはごろっと足を投げ出してひっくり返った。

からっぽの、玉座。

「ああ〜あ、退屈だにゃ〜〜〜・・・」
HV団総帥代行アーク・ダーマ。
実際はまだまだ子猫の猫又である彼女は、暇を持て余していた。



此処最近、HV団の様子がおかしい。警備が物々しくなるし、ゲドーやハッハノなどの幹部が四六時中難しい、いやむしろ何かを恐れているような顔で会議を開いている。アークには何も言わないのは、総帥代行と位だけは高いけれども実権はゲドー等四天王や参謀に握られてお飾り状態のアークには慣れっこだったし、本人もそれで満足していた。
だが今回は、怪人軍団も神刺塔にひっこんでしまって出歩かなくなった。
博士も、前はいつもおいしいものや玩具をもって遊びに来てくれたのに、最近は全然来ない。フェンリルもイカンゴフも、ドコを探しても居ない。人に聞いても、悲しそうに首を振るだけ。そして、どうも怪人軍団とHV団の仲が変だ。ぎすぎすしている。互いに互いを疑い、監視し会っているような雰囲気さえ有る。
ときどき理不尽なことを行って来る「ますたーZ」についての話らしいんだけど、一体何がどうなっているのか、アークには見当も付かなかった。
ただ分かるのは、こんなのはいやだ、ということ。
それにしても、こうなるまでは博士は実によくしてくれた。 玩具を食べ物を、大好きなマタタビも、博士はよく沢山もって遊びに来た。そして、、臣下として礼儀を尽くしながら、アークの好みに合わせての気さくさも忘れずに接し、友達として仲良く語らい、相談に乗ってくれる。。
それだけではない。本来HVとは全く関係ない人間なのに、一緒に闘ってくれること自体そもそも大変なことだ。
それも、ほとんど自分の軍団だけでAフォースを、ツナヨシを、新鮮組を、各企業国家軍を壊滅寸前に追い込み、日頃日の当たらない暮らしを強いられるアーク達結社構成員を、海外旅行が出来るまでに解放した。
それでいてスーパーヒーローが山ほど攻めてきたときも、カマドウマ男が現れたときも、結局ほとんど自分たちだけで解決してしまった。
それで居て博士は、二人きりの時にアークにわびるのだ。
「我が輩の助けが間に合わず先代総帥ミスターTを死なせてしまい、慚愧の念に耐えない」
と。
正直キャッツガイを押しつけられたことを除けば、アークには博士がどうしても皆の言うほど悪い人間には思えなかった。

一度、アークは博士に聞いたことがある。
「何で、ここまでしてくれるにゃ?」
と。
博士は答えた。
「我が輩は、アーク殿が好きなのです。生栗も、えーちゃんも反崎も黄泉もゲドーもハッハノもJUNNKIも、皆愛しくかけがえのない友なのです。勿論、我が家族たる怪人達も。・・・我々は皆、様々な理由で闇に隠れて生きねば生きていけない人外の者です。アーク殿のように体のせいでそうならざるを得なかった者、世間より迫害を受けた者、信念に殉じた者、故あって罪を得た者・・・進んで入った者もおりますが、結局その理由は悲しみに彩られております。・・・我が輩も含めて。同病相哀れむと世間の者に言われようがかまいません。日の光の下で生きられる者に分からぬ苦しみを抱えて生きる同志達を、我が輩は見るに忍びない。我が輩は、皆と共に、日の光の下共に笑い、共に泣き、友と語らい、恋をし・・・誰にも追われることなく、・・・我が輩は、皆に「幸せ」を与えたい。ただそれだけにございます、総帥代行。それ故に正義を名乗る横暴に怒り、我等を拒むあの世界を手に入れんとするのです。それが、我が輩がアーク殿に仕える理由にあります。」
と、博士は言った。



そんなことをアークが思い出すともなく考えていたとき。
ぐらぐらっ、と自信のように大地が揺れた。
「何にゃ!?」
衛兵がかけだしていく音。
これ幸いとアークは抜けだし、そして・・・



カット3
いらいらしながら、博士は大股で廊下を歩く。
博士は気付いていた、自分がクラヴィーアと内通しているのではないかと疑われていることを。
伊達に目が八つも付いているわけではなく、ゲドーは自分の入室と同時に隠した写真に何が写っているのか博士はしっかり見ていた。
が、それだけを理由とするわけではなく、総合的な推理により、博士は親衛隊の計画を読んでいた。
(相も変わらず姑息な手だ・・・)
だが、同時に有効な手でもある。最精鋭であり、事実上命令系統が独立しているという特性から、怪人軍団はそういう疑いをうけやすい。
HV団と怪人軍団が仲間割れすれば、その混乱は一気に拡大する。HV団弱体化に応じて各勢力が挙兵し、地上は阿鼻叫喚の修羅の庭を化す。
それでは、敵の思うつぼ。
(何としてもこの事態、大事にならない内に納めねばならぬ・・・)
まったく・・・
腹立たしげに、実際の出来事を思い出す。



「クラヴィーア、こうなってしまったからには貴様と闘っている場合ではない、分かるな?」
「・・・ああ、仕方がないが、な。」
戦いの終わった戦場、すすに汚れた顔を背け、すねたようにクラヴィーアは博士に答えた。
「少なくとも、互いに親衛隊に捕まった者達を助け出すまでは休戦、いや協力しようではないか。親衛隊とは共闘し、情報は教えあう。」
「分かっている。だが、どうすりゃいいんだ?どうやって助け出す?」
もっともな質問をするクラヴィーア。人間は、異次元に行く技術などもちあわせてはいない。よしんばあったとしても事実上無限に存在する次元階層のどこに敵が居るのか、皆目見当が付かない。
「くははははは・・・我が輩の科学力をなめるなよ。」
ゆっくりと博士は笑うと、クラヴィーアに奇妙な機械を手渡した。灰色の一抱えもある箱で、オープンリールデッキの様なパーツと、いくつかのボタンが付いている。
「これは何だ?」
「次元振動探知機だ。」
「次元振動探知機?」
「次に親衛隊が現れたとき、これを使うのだ。すると・・・」
「そうすると、どうなる?」
「くっはっはっはっはっは・・・親衛隊がどの階層の次元に潜んでいるかが分かる。そうすれば・・・言わずとも分かるだろう?まさか、此処まで出来て「次元移動はできない」などという馬鹿なオチが存在するものか。後は突入し、闘うのみ!」
轟然と胸を反らす博士に、クラヴィーアは安心したような、心持ち呆れたような声で言った。
「えらく便利な機械だな・・・」
それに対し、ややあざけるような口調で、博士。
「なめるな、といったはずだ。それに、我が輩がどれほど前から奴らと闘っていると思う?貴様ごとき若造とは年期が違うわ。」
「けっ・・・」
クラヴィ団の戦艦が、ゆっくりと接近してくる。
神刺塔も。
そして、共通の敵を持つ二つの軍団は、それぞれの戦いに戻っていった・・・



とどのつまり、博士とクラヴィーアの「内通」とは、この程度の者であった。ゲドーの苦悩、ヘルバーチャの疑い、それ全ては、無駄なこと、親衛隊によってねつ造された疑惑だった。
「まったく・・・!?」

ドドーン!

鈍い爆音、地震のような震動。
「何だ!?」
(近い・・・)
明らかに、この基地内で起こった爆発だ。
「ちっ、謁見は取りやめだ!」
マントを翻し、博士は駆けだした。


カット4
「むっ!?」

燃えさかる炎、煙、瓦礫、なおも続く破壊音と爆発。
博士が駆けつけたとき、奇襲を受けたHV団筑波支部の基地の地上部分は、既に半壊していた。
相当の量の軍団でなければこうはなるまい、と普通の人間が思うだろうその破壊をなしたのは、煙の向こうに立つ、わずか一体のVR・・・いや、その側にもう一人、人間大の小さな影、その二体だけ。

「あ、あれは・・・」
その影に、博士は見覚えがあった。
普段の博士なら、すぐさま確認に走っただろう。
だが、信じたくないと言う思いが勝り、しばし躊躇し、博士は立ちつくす。

だが、そうしている間にもその二つの影は破壊を繰り返している。
「・・・これも、親のつとめか・・・」
ぎりり、と博士の牙がきしみ、両の拳が握りしめられる。
「ええい、仕方がない!!」
叫ぶと、博士は黒煙のなかに身を躍らせた。



怖かった。
ただひたすらに、怖かった。
知らなかったから。こんな目に遭わされることがあるなんて、こんな目に人を会わせることが出来る人がいるなんて、知らなかったから。
思っても、みなかったから。
負けると言うこと。苦痛。恐怖。絶望。
闘うことが、命の取り合いで、それがこんなに怖いことだなんて、思いもしなかった。
博士から与えられた力に、博士に頼っていればいいんだ、大丈夫なんだと思っていた。
それでボクも強くなったんだって、勘違いしていたんだ。
でも、ボクは・・・本当は今も、森の中でひとりぼっちだった、あのころの、ままで・・・



「きゃぁぁぁぁぁっ!?」
煙の中の小さな影・・・フェンリルは、目の前にいた大きな影・・・狂詩曲がいきなり何かにはじき飛ばされて転倒するのを見て飛び下がった。
見ると、狂詩曲の装甲はまるで巨大なものに殴り飛ばされたようにひしゃげている。
「折角わざわざ直して上げたんだんだかぁら・・・壊したらお仕置きなぁの」
送り出される前の「主人」の言葉を思い出し、フェンリルは震え上がった。きっとエアは、酷い目に遭わされるだろう。
「あ・・・!」
負けたら、自分も同じ目に遭わされる。それを思い出し、フェンリルは更に怯えて後ずさった。尻尾が震えながら下がり、涙のたまった目が見開かれる。
臆病にきょときょとと辺りを見回す、フェンリルの目。それはかつての彼女の様子殻は見るに忍びない・・・屈従しきった奴隷の目。
ゆらり・・・
「ひぃいっ!!」
煙の中、巨大な影が立ち上がる。数十メートルの背丈の、鋭い角を持ち翼を広げた、長い尻尾の怪獣の姿。
「ひゃああああああああっ!!」
慌てて逃げようとする。だが、目の前の影よりももっと恐ろしい「主人」への恐怖がフェンリルの体を突き動かし、半泣きで目の前の敵に殴りかからせた。
「わ、わぁぁぁぁぁぁっ!!」
ばしっ!と乾いた音を立てて、フェンリルの拳は受け止められた。
金属質のまるで鎧のような、だがそれでいて生物のように暖かい掌に。
「あ・・・・・・」
忘れていたものを思い出す。熱風が煙を吹き払い、拳を受け止めたもの・・・悪の博士が姿を現す。先程の怪獣は、煙に投影された博士の影、フェンリルはそう「気付いた。」
「あ・・・ああ・・・・・・」
「フェンリル、何だそんなに驚いて。恐怖の余りとはいえ、父の顔すら見忘れたか?」
変わらぬ笑みを浮かべる博士。
「あああ・・・・・・」
フェンリルは、自分が何をしていたのか、悟った。
裏切り。理由はどうあれ、それに変わりはない。
「ああああ・・・」
身をよじり、逃げようとするフェンリルの頭を博士は優しく撫でた。
「・・・」
無言でしばしフェンリルの頭を撫でると、撃って変わって博士は鋭い目つきになった。
以前はなかった、フェンリルの首を締め付ける物・・・大型犬用の首輪を睨み付ける。
奇妙なことに、首輪から延びた鎖の先は、ちぎれるでもなくふっ・・・と、虚空に消えている。
「居るのだろう、カオス・・・出てくることもできないのか?臆病者め。」
「それ、一体誰に言ってるぅの?」
じゃらじゃらじゃらじゃら・・・
鎖の音が響く。異次元空間に続いていた鎖が、それを持つ手が、そして、その手につながる体の持ち主・・・カオスが三次元空間に出現する。
「少なくとも、この犬より臆病な奴なんて、居ないと思うぅよ?」
言うなり、鎖を鞭のようにふるってフェンリルの背中に叩き付ける。
じゃりん!じゃきん!じゃっきぃん!
「きゃあああっ!痛い、痛ぁああああっ!」
「んきゃきゃきゃきゃきゃ、人間の言葉で泣くぅな負け犬!上手に鳴かないともっと虐めるぅよ!」
たまらず、フェンリルは叫ぶ。言われたとおり、負け犬の声で。
「きゃいん!きゃいん!きゃいいいいいん!!」
「んっきゃっきゃっきゃっきゃっきゃ・・・ぐぇ!」
ご満悦の体で笑うカオス。その喉笛を悪の博士が鷲掴みにした。
「貴様ぁ!!」
鋭い爪がカオスの喉を締め上げるが、カオスはにやにや笑いを崩さない。強引にふりほどくと、更に笑い声を響かせる。
「んきゃきゃきゃきゃきゃきゃ!犬があっさりかおすの玩具、いやペットになったからって、怒らないぃの悪の博士!異次元空間ではこっちの時間の流れは関係ないぃし、とぉ〜ぜんの事なんだから、んきゃきゃきゃきゃ!」
「犬ではない、フェンリルだ。北欧神話に出てくる、神を滅ぼす狼の名前だ。」
怖いくらいに冷静な声音で、博士は言う。
「これの、どこぉが?」
「ひ、ぎゃいん!」
薄笑いを浮かべながら、カオスはフェンリルの耳をねじり上げる。

「・・・イカンゴフは、どうした?」

博士の不意の問いに、カオスの余裕の笑みが消えた。
「あんなか弱い娘一人屈服させられない小物が、いっちょまえの外道気取りとは笑わせる。エア・・・とか言うあの娘はクラヴィーアに任せるように、イカンゴフにフェンリルを任せても大丈夫そうだな。」
博士のあざけりに、苦々しげにカオスは言い返す。
「虚勢を・・・。本当は心配でたまらないくせぇに。まあいいぃの、今度はあの子も玩具にになったところを見せてやるぅの。それに・・・もう、お前は終わりなぁの。んきゃきゃきゃきゃきゃきゃきゃ・・・・・」
笑いを響かせながら、ゆっくりとカオスは異次元に消えた。遅れて、エアの狂詩曲とフェンリルも消え始める。

「は、博士、ボク・・・」
「・・・迎えには行く。だが、最初の一歩は自分で帰るのだ・・・」

それだけの会話をかわす間に、完全にフェンリルは消えた。

「終わりは、そっちのほうだぞカオス。」
博士は呟くと、黒衣のポケットからクラヴィーアに渡したのと同じ次元振動探知装を取り出した。装置は、作動している。

「悪の博士、反乱及び内通容疑で・・・貴方を、逮捕します。」
「!」
ポケットに装置をしまおうとしていた博士は、不意にかけられた声にゆっくりとその方向を向いた。
ゲドーとラディル、それにハッハノがいた。戦闘員達が、おそらくは特殊弾を使っている世界征服長銃を構えて博士を包囲している。
「監視カメラに、クラヴィ団と一緒にフェンリルが・・・博士の怪人が基地を破壊している様子が映っていました・・・残念です。」
博士は、監視カメラを見た。おそらく、カオスが現れる前にそうされていたのであろう、破壊されて機能を停止している。
「・・・博士を連行しろ。」
ゲドーに命令され、戦闘員達が一歩包囲の輪を狭めた。

「な・・・何、を・・・しているにゃ、ゲドー?・・・博士?」

「あ、アーク!?」
「総帥代行・・・」

部屋を抜け出したアークが見たのは、まさにその光景だった。




カット5 返信
「怪VR、発進準備急げ!マダムXにAs部隊派遣の依頼を!」
アークが現れた途端、博士は白煙をまき散らして瞬間的に消えた。同時に、彼方に見える神刺塔が動き始める。
それを見たゲドーは慌てて指令を下していった。
「しかし・・・」
「何だ、ハッハノ。」
だが、参謀のハッハノは命令を遂行するでなくただ首をひねっていた。
「あれ程我々に対して「忠」や「義」を説いてきた博士が反乱って・・・おかしくありませんか?」
「・・・どういう意味だ?確かに俺はクラヴィと奴が話しているのを見たし、事実博士の怪人とクラヴィ団のVRが一緒に基地を襲撃したではないか。これが反乱でなくて何なんだ?」
ハッハノの疑問に、妙に力んでラディルが反論する。
「それは、そうなんだが・・・。」
「管理不行き届きだぞ、参謀。そのためにお前を神刺塔勤務にしたというのに・・・」
「あれ?」
「どうした、ハッハノ?」
「いや、監視といえば、何でラディルはそんなところにいたんだ?」
「・・・え?」
「おかしいじゃないか。増援要請は出ていなかったし、特に作戦も遂行していなかったんだろ?」
「・・・」



激しく鳴り響く無線の端末をを、ブリキの玩具のようなデザインの手が操作した。
「マダム、ゲドー様からです。」
「・・・お切りなさい」
形のいい眉をしかめ、部屋、いや屋敷の主・・・マダムXは執事のセバスチャンに命じた。普段なら無条件に従う主人の言葉に、今回は珍しくセバスチャンは問い返した。
「しかしマダム、至急の陸戦部隊派遣要請で、怪人軍団謀反とのことですが・・・よろしいので?」
「かまわないわ。あたしのメイド達は、馬鹿な仲間割れに参加させるために有るんじゃなくてよ?」
「かしこまりました、マダム。」
関節をきしませて優雅に一礼すると、ロボット執事セバスチャンは無線を切った。
「とはいえ、手をこまねいているつもりはないわ。・・・アークちゃんの部屋に無線をつないでちょうだい。」
「は。」
憂いを含んだ表情で、マダムは呟いた。
「今一番助けが必要なのは・・・あの子だと思うから。」



「今戻った。準備は出来ているな?」
神刺塔の司令室に、マントを翻して博士が帰ってきた。
ぴっと敬礼したカーネルが答える。
「はっ。既に準備は万端整っております。」
「ご苦労。」
「は、博士!!」
カーネルと一緒に司令部に生栗が、弾けるように叫んだ。
「何だ、生栗?」
「何なんですか、この物々しい準備は!本当に反乱でもする気ですか!?」
「そんなわけ有るか、この大馬鹿者。その程度の洞察力ではまだまだ娘をやるわけにはいかんぞ 」
尊大に胸を張る博士。焦る様子が微塵も感じられない博士に、生栗はいらだった。
「だ、だとしたら、早急に弁明をするべきじゃないんですか!?」
動転する生栗を落ち着けるように、カーネルが説明をした。
「これは、誘いだ。」
「誘い?」
「親衛隊の目的はHV団と我々を仲違いさせ、戦い会わせることだ。反撃しなければ我々は壊滅するし、反撃すればHV団との同盟関係は解消、全面戦争に突入するように、し向けたのだ。人質を取ってラディルを脅迫し、偽証をさせてまで。」
「!」
「確かに、今回の我々とクラヴィ団の接触は、敵にとってのチャンスだ。だがこれは同時に、私達にとってのチャンスでもある。」
横合いから、博士も口を挟んだ。
「チャンス・・・ですか。親衛隊壊滅の?」
「ああ。危険な賭だが・・・。ともかく、作戦はある。やってみようじゃないか。少なくともこのまま座してHV団が滅びへの道をひた走るのを見るわけには行かない。カーネル、電波ジャック準備。」
命ずると、博士はばさりとマントを翻した。
「さて行くか。付いてこい生栗。」


._ カット6
「にゃあああ・・・」
戦闘員が廊下を走る靴音や、VR発進の轟音が響き渡る筑波支部。
昨日まで味方だった者達が、今まさに骨肉相はむ戦いを演じようとしている、その時。
アークは、ただ自室で途方に暮れていた。



何も、分からなかった。
何故、こんな事になってしまったのか。
何故、こんな目に遭わなければならないのか。
一体、自分はどうするべきなのか。
そもそも、自分には何か出来るのか。


「にゃうう・・・」
立った一人自室にこもり、膝を抱えて座る。
普段の陽気なアークから、想像もできない姿。

「アーク、聞こえて?」
「マダムにゃん!?」
だから、マダムXから通信が入ったとき、アークはうれしさの余り涙が出そうだった。マダムなら、何かいいアドバイスをくれる、どうすればいいか教えてくれる、その願いと共に受話器に飛びついた。
「マダムぅ・・・何でこんな事になったにゃ、一体どうすればいいにゃ・・・何も分からないにゃ・・・何とかしてにゃ!」
「アーク・・・」
マダムXの声は、アークを安心させるために、意識して落ち着いている。
「貴方は、どうなりたいの?みんなを、どうしたいの?・・・つまり、どんな未来を夢見るの?落ち着いて、それを考えて頂戴。そうすれば、答えは見つかるわ。」
「でも・・・」
戸惑うアークに、更に何かマダムXが言おうとした、その時。
不意に電話が切れた。それもマダムが切ったというよりは、電話線自体が切れたと言った感じ。
「何にゃ?」
がちゃ。
不意に鍵をかけたはずの扉が開き、戸惑うアークの心を一気に驚愕までまで跳ね上げた。
「初めまして、アーク・ダーマ総帥代行。」
そう言いながら入ってきたのは、七三分け、眼鏡に灰色の背広を着た、ドコにでもいそうな平凡なサラリーマン。
「だ、誰にゃ!?」
震える声で問うアークに、男は笑いながら答える。
「あ、これは失礼。私、こういう者なのですが・・・」
そういうとその男は、背広の内ポケットから名刺を差し出した。
思わずにそれを読み上げ、驚愕するアーク。
「マスターZ親衛隊、諜報担当、灰・・・ふみゃっ!!」
びくりとするアーク。博士から聞かされた親衛隊像、HV団を利用する悪魔のような連中というイメージと、目の前で温厚な笑みを浮かべる会社員のような男がどうしてもかみ合わず、それでも、その笑いには何か嫌な感触を受けた。
「はい。それで、本日の用事ですが・・・」
再び背広の中に手を突っ込む。そして、灰が掴みだしたのは・・・角張ったデザインのサブマシンガン、イングラム。
「死んでいただこうかと。」
「な・・・」
笑顔と銃口、そして突然の死刑宣告に一瞬頭が空白になる。
「な・・・何でにゃ!?」
一瞬の後、口をついて出た言葉は、今までの事態全てにアークが抱きながら、どうしても答えを得ることが出来なかった、尽きせぬ疑問。
「簡単なことですよ。」
灰は笑いながら答えた。まるで、猫又相手に表情を変えることなど無意味勝つ不要だとでも言うように。
「まだHV団は博士の反乱に対する疑念を捨てきれずにいますからねぇ・・・此処でもう一押ししないことには。悪の博士怪人軍団の刺客に襲われて総帥代行は御崩御。これで、完全にHV団は怪人軍団を敵と見なすでしょう。」
その言葉で、アークは全てを悟っていた。
そして、それを知ってもどうしようもない自分に、悔しさが溢れる。
「まあ偉大なるマスターZ様のエネルギーを浴びたとはいえ、もとを正せば社会的に何の役にも立たない路傍の野良猫。せめて我等親衛隊の役に立って、死んで下さいね。マスターZ様のお役に立つために、貴方も、HV団も存在するのですから。」
にこやかな笑み。
「そ、ん、にゃ・・・」
(アークには・・・HV団のみんなには・・・その程度の価値しか、無いって言うのかにゃ・・・)
「それでは・・・」
ゆっくりと、引き金にかけた指を絞る灰。
「「「そうは、させないっすよぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」」」
「そうです!」
「んな!?」
「にゃ!?」
バーン!と派手な音を立てて天井が破れ落ちる。
逞しい三つの影と、小さな一つの影が、アークを守護するがごとく立ちふさがった。

p24-dn02hasimotob.aomori.ocn.ne.jp 悪の博士 2001/09/11火13:19 [311]
._ カット7 返信  △ ▽
「アーク姐は!」
「わしらが!!」
「守るんじゃあああああっ!!!」
アークを守るために立ちふさがり、叫ぶ三人の屈強な「漢」、キャッツ・ガイ。普段だったら爆笑のネタでしかないネコミミも気にならないほどに、真剣な雰囲気で立っている。
そして、アリエッタ。お気楽メイドである彼女も、今回は眼光鋭く敵を睨み付けている。
「通信がとぎれたので、駆けつけてみれば案の定・・・。マダムの名において。許しませんです!」
「に、にゃ・・・」
驚いているアークに、キャッツガイ長男が説明した。
「我等キャッツガイ三兄弟は、いずれこのような事があるだろうと予想された博士によって、派遣されました。」
続いて、次男。
「今までの御無礼すべては、みな自然におそばに仕えアーク姐を守るため。」
そして、末っ子がふっと笑う。
「でも・・・わしらやっぱり、アーク姐のこと、好きっす。仲間として・・・一匹の猫として・・・」
そして、三兄弟そろって。
「「「だから、絶対守るっす!!」」」
その様子を、驚いたように見る、アーク。その瞳に徐々に生気が戻り始める。

「・・・おやおや・・・」
だが、それを見てもなお灰は笑みを崩さず呟いた。
「これはこれは・・・実に好都合じゃないですか・・・」
「好都合だと?」
キャッツ長男が眉をひそめる。
「あなた方に、下手人になってもらえばいいんですから。」
「ぬうっ!!」
「このイングラムは対改造人間用の改造が施して上げます。あなた方全員、0.2秒で挽肉に出来ますよ・・・。犯人も駆けつけた親衛隊により射殺、真実は闇の中、というわけです。」
「にいいい・・・」
それを聞き、アークは真剣に怒った。まだ短い人生の内で、これ以上ないと言うほどに怒った。それは、理不尽へのもえたぎる怒り。

「「「っふっはっはっはっはっは・・・」」」
唐突に、キャッツガイが三人そろって笑い出す。アリエッタすら、笑みを浮かべている。「・・・?」
状況を飲み込めないらしく、けげんそうな顔をする灰。
胸を張る、キャッツガイ次男。
「悪の博士の法則格言、その十一!『冥土のみやげを早まるな!』」
末っ子が、ひょいとアークの耳に手をやった。その後ろから取り出したのは・・・アンテナのついた、小さなマイク。
「っな!?」
「既に貴様等の奸計は、全HVアジトに放送された!博士も、HV団に真相をあかす演説をされた頃、・・・終わりだな。」
渋く、長男が笑う。
「おのれ!」
咄嗟に引き金を引こうとする灰。だが、発射する前に銃は手から飛んでいた。
落ちたイングラムに突き刺さる、猫の描かれたカード。
「見たか、キャッツガイカード!」
末っ子が叫ぶ。
そして次の瞬間にはアークを次男が小脇に抱え、アリエッタを長男が背負い、一息にジャンプして天井の穴に飛び込んだ。
「・・・やられましたね・・・」
残された灰が、呟く。
「だが、このままではすみませんよ・・・」

p05-dn01hasimotob.aomori.ocn.ne.jp 悪の博士 2001/09/14金03:37 [314]
._ カット8 返信  △ ▽
神刺塔の第一艦橋にあたる洋館部分、そのバルコニーに立った博士は満足げに先程まで続いていた放送のスイッチを切った。マイクに切り替え、放送中うち切っていた演説を続ける。
「我が同胞、我が戦友よ。これが真実である!これが我等が愛し、忠誠を誓い、命を捧げたる組織HV団の、目を背けろ事の出来ない真実の姿である!」
攻撃を停止し、立ちつくす怪VRを前に獅子吼する博士。
「奴らは我々を度具としか考えていない、それも使い捨ての。これでいいのか!?いいはずがない!!」
ガシン、とバルコニーの手すりを博士の金属製に拳が叩く。
「抗わねば、我等のに与えられるのは死のみである!悪にかせられたこの運命の枷を破壊しなければ、我々に明日はない!悪の運命に逆らえ、悪逆せよHV団!!」
そう博士が締めくくったとき、不意に博士の後ろから予期せぬ声がかかった。
「そのとおりにゃ。」
戦闘員達がざわめく。
「あ、アーク総帥代行!?」
驚愕して振り返った博士は、付き従うキャッツガイに怒鳴った。
「キャッツ・ガイ!狙撃のおそれがあるから司令室のほうにお連れしろと命じたではないか!!」
それに対して、アークはゆっくりと首を横に振った。
「いいにゃ、博士。アークが無理に頼んだにゃ。・・・どうしても言いたいことがあるから。」
その言葉にまた驚く博士からマイクを受け取り、アークは皆に呼びかけた。
「みんな、聞いてるかにゃ?・・・HV団「総帥」のアークにゃ!!」
「アーク殿・・・」
博士は目を見開いた。そして、アークを庇護すべき対象と思っていた己の不明を恥じた。

「アークは、マスターZとか三次元とか親衛隊とか、まだ難しくてよく分からないにゃ。でも・・・」
決然と、アークは言った。
「でも、こんなのは・・・嫌にゃ!だから、アークは闘うにゃ、総帥として!いやHV団団員・・・みんなの仲間として!」
うおおおおおおおおおっ、と戦闘員達が歓声を上げる。
「そうだ!俺達の居場所を、HV団を、守るんだ!」
「アーク総帥、万歳!!」
「HV団、万歳!!」
叫ぶ戦闘員達。

「ゲドー様・・・やりましょう!」
詰め寄る生栗に、・・・ゲドーは頷いた。
「ああ。やってみようじゃないか。」
「当然っ!」
にっと笑うソドム。無言で頷くゴモラ。
「ふっふ、戦闘メイドの血が騒ぐでふ。」
「科学的に面白そうですね。」
「きゃは!」
「ロマニウムが、Zを倒せと輝き叫んでいるにゃ〜」
次々と賛意を表す、HV団団員達。

「しかし博士・・・」
ゲドーが期待半分不安半分に尋ねる。
「親衛隊と、マスターZに戦いを挑むとして、勝つ策はあるのですか?」
「もちろんだとも。」
博士は笑いかけ、不意に表情を険しくした。
「総帥っ、危ない!!」
身を投げ出すようにアークを突き飛ばす。
ぎぃん、と青白い火花が博士の側頭部に散った。
「甘いわ!!」
叫ぶと同時に博士の指が伸び、遙か彼方から狙撃をした灰をからめ取り、引きずり寄せる。「相変わらず姑息よな、親衛隊・・・くっく、我等が戦いの初めの景気づけとして、まずは貴様から血祭りに上げてくれる!」
恐ろしい笑みを浮かべる博士に対し、平然とした無表情の笑みを返す灰。
「無駄ですよ、もうじき此処に親衛隊の大部隊が押し寄せます。それに、私も貴方なんかには捕まりません。それでは、さようなら。」
そう言った灰だが、一瞬後にその表情は引きつった。
「あ、あれ・・・」
「くぁ〜〜〜〜〜〜っはっはっはっはっはっはっはぁああああ!!!おおかた異次元空間に逃げようというのだろうが、そうはいかん!!」
大悪笑いと共に、自分の胸をがんと叩く博士。
「我が体内に格納されし新発明、次元壁固定装置の威力により、次元間移動は不可能となった!」
見る見る青ざめる灰。
それまで騒ぎに参加できずに、一人うち沈んでいたラディルに、博士は右の三つの目でウィンクする。
(これでもう大丈夫であろう?)
そんな声が、はっきりとラディルの頭の中に響いた。
(え!?)
慌てるラディルに、博士は解説した。
(なに、ちょっと神経電位とか脳内電流とかそう言うのを外部から電気的に刺激してテレパシーもどきしてるだけじゃ。)
(博士・・・すいません。)
(全然。むしろ好都合だっわい)
一瞬でこの会話を終え、灰に向き直りにらむ。
「後は・・・貴様を始末してからゆっくりと新装備をHV団全員のVRに搭載し、ゆっくり異次元に行く準備を整え、それから次元壁固定装置を解除して、確実に貴様等をひねり潰す・・・と言うわけだ。分かったな、分かったら・・・素粒子すら残さず物質として完全に消滅し、己の不明を恥じるが良いわっ!!」
「ひい・・」
じたばたともがく灰。
「博士・・・、大丈夫か?」
つ、と博士の横に立ったえーちゃんが心配そうに話しかける。
博士は豪快に笑いとました。
「くはははは、我が思念次元装甲は我が輩が敵意を抱く者からの攻撃をいっさいはじき返す。心配要らぬわ。」
その言葉に、えーちゃんは悲しそうな顔をした。
「そう・・・」
す、とえーちゃんが博士の懐に潜り込むような動きをした。

どん。

博士は、不意に何かに驚いたように口を大きく開けた。
「が・・・?」
博士の背中、マントを突き破って、血に濡れて鈍く輝く日本刀の刀身が突きだしている。
「え・・・」
皆一瞬何が起こったか分からずに立ちすくむ。次の瞬間、博士の大きく開けられた口から大量に血が噴き出した。
悲しげな顔で、ゆっくりと後ずさるえーちゃん。



「は、博士ぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!」
ようやっと全員が事実を認識し、絶叫する。
「え、えーちゃん、一体何を!?」
「それは、見ての通りですよ?」
博士の手から解放され、背広の襟をなおしながら 灰がこともなげに言った。
「な・・・何故?」
「それは、こういうことなぁの。」
「!!」
かしゃーん・・・
次元の壁を破り、現れるカオスと牙喰丸、ライシス。
そして・・・親衛隊の大部隊が、空を覆う。それは、博士の体内の次元壁固定装置が破壊されたという証拠。
すい・・・とカオスの手袋に包まれた手がえーちゃんの顔を撫でる。
「情にかられて裏切るかと思ったけど・・・よくやったぁの。」
「ご苦労様です。」
「え?・・・え?」
硬く冷たい無表情を作り、振り返ったえーちゃんが告げる。
「私の正体は・・・親衛隊なのじゃ・・・」
「!!!」
HV団全員の驚愕する顔を、嬉しそうにカオスは見回す。
「さ、A.T、とどめさすぅの。」
カオスに促され、引きつったような無表情のまま刀を構え、呪文を唱える親衛隊員、魔女将軍 A.T。
自分を殺す相手に、博士は・・・笑いかけた。
「行け、そしてなすべき事を成せばいい、えーちゃん。
「・・・・・!!」
目をつぶる、「えーちゃん」。



大爆発。



一斉に攻撃態勢に入る、親衛隊。
「ん〜〜〜〜〜〜っきゃっきゃっきゃっきゃっきゃっきゃっきゃっきゃぁぁぁぁぁぁあっ!!!」

狂ったようなカオスの笑いがこだました。

エピローグにして予告
「何ぃ!?」
副官沖田からの報告を受け、Aフォース長官・三笠屋機械は驚愕した。
「それは本当か!?」
「はい。」
頷く沖田。
「HV団内で内乱が勃発しました。悪の博士怪人軍団が総帥代行アーク・ダーマを擁立してクーデターをもくろむも、親衛隊に鎮圧され逃亡。首謀者の博士は死亡したとの情報が・・・」
「チャンスだっ!!!」
皆まで言わせずに三笠屋は叫んだ。
「は?」
「分からんか沖田!「内乱は、組織崩壊の序曲」だ!!お約束だろうが!!」
「な、なるほど!!」
博士が危惧したとおりの反応を、三笠屋はした。
「HV団撃滅の最終作戦を発動する!即刻準備したまえ!!」
「はっ!!」
敬礼し、退出する沖田。



「わんと!こ、これは大変だワン!今こそHV団を倒すチャンスだワン!そうすれば彩ちゃんもAフォースにいる必要が無くなって、あげくに喜んで、きっとワンの居ぬっぷりに惚れて妹志願だワン!ワンワンワン、ワーン!」」
その三笠屋と、似たような反応を、あーる・犬・イイ!はした。
だが。
「でも、変だワン・・・犬魂が、何故か悪猫を助けろと言っているワン・・・何故だワン?」



「・・・・・・」
部下の報告を、Drオカモトは無言で聞いていた。そして、報告が終わった途端、その部下を射殺した。
「これ以上、アーク・ダーマを連中に預けておくのは危険だな・・・」
呟くと、ぱちっ、と指を鳴らした。闇の中から一匹の犬が現れ、オカモトの横に座る。
「計画を早める。即刻「老人共」・・・いや、ツナヨシの全人猿共を殲滅しろ。」
「はい。」
オカモトの命令に、犬はまるで言葉が分かるかのように・・・あの「あーる・犬・いい!」のように知性を持つかのように頷いて、退出した。
「遂に始まる・・・第二の、ノアの洪水が・・・くくく・・・」
笑いながら、退出した犬と反対側に立つ女性・・・いや、人に似ているが、何処か決定的に違う気のする何か・・・の手を握る。
それは・・・かつて、岡本真理といわれた女性に、歳こそ多少若いが酷似していた。
「くくく・・・あーっはっはっはっはっはっはっはっはっはぁ!!」
笑うDrオカモト。その眼前に群れなす、巨大な影・・・。
VRではない。それは、明らかに生物だった。



「ちっ!!」
通信を傍受し、一部始終を聞いていたクラヴィは舌打ちした。
「糞っ、これじゃ、どうやってエアを助けろっていうんだ、あの馬鹿!」
「エアさん・・・」
「エアちゃん・・・」
「姉さん・・・」
絶望に、クラヴィ団は包まれた。



そして。
「さて・・・いよいよ、だな・・・」
Aフォース本部地下と、彼方なる異次元空間。
二つの場所で、同時にこの言葉が話された。

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