第二部大西洋編最終話続・激闘!倫敦の狼王
大型飛行船の墜落の炎が、遠くから照らし出す夜の倫敦。
そこを今支配するは、大西洋上の空母で戦っていたはずのアーカードを倒してこの場に恐らくは転移の、人の世にあらざる超越の力で現れた、六体の豹頭人身の戦闘天使・ジャガーロード。
それに真っ向から立ち向かうは、同じ種族である「最後の大隊」の暴挙を停めるべくこの倫敦に訪れた、夜の秩序と昼との調和のために吸血鬼や人狼が団結して作ろうとしている国・夜真徒の群主フェンリル。
主として、国民を守るため、衰えた血脈に人狼の力を十全以上に発揮させるための改造を施されたその体を楯となし立ちはだかる。
全身に懸命に闘気をめぐらし、刹那の緊迫が戦いへと変化するのを待つフェンリルの意識に、不意に働きかけるもう一つの意識。
(怖くは無いのか。お前も私のようになるかもしれないぞ。)
舞い散る灰に僅かに残った、アーカードの残留思念。かつて戦った好敵手。戦闘直前のギリギリまでの緊張故に感じ取ることの出来た僅かな霊子の流れ。
(どんなに怖くても、無様を曝しても・・・)
微苦笑し、フェンリルは思い答えた。総身の毛は逆立ち圧倒的神気に威圧されてはいるが、それでも。
「守りたいものがあるから・・・だから・・・退かないぞ!ロードォッ!」
フェンリルの咆哮と同時に、ジャガーロードたちが突撃を開始した。
ガギッ!
受け止める、総てを焼く神聖霊子を纏った一撃を。そのフェンリルの腕は、赤を基調としたデザインの装甲・・・彼女が超人獣イミールに変化したときと同じ装甲で受け止められている。
半光子・半霊子の光の巨人=ウルトラマンと同じ構成のこの装甲ならば、確かにロードの攻撃にある程度抵抗することが出来る。だが同時に、装甲の内側からぶすぶすと湧く煙・・・完全に肉体を変換するのならともかく、長時間戦闘のため装甲をまとうだけにした場合、その強すぎる光は直接ロードの攻撃を受けるよりはましだが、じわじわをフェンリルの体を焼いていく。人間で言えば、真っ赤に灼熱した鎧を纏っているようなものだ。しかしそれ以外に対抗手段は無い。
覚悟して、フェンリルは戦闘を開始した。
無論同時それを見守っていたバリスタス大西洋支部も動く。
「ちぃぃぃぃっ・・・!バリスタス大西洋支部全軍!出撃!目標英国首都倫敦に展開し夜真徒と戦闘を繰り広げるロードの殲滅ッ!」
叫ぶと同時に、博士は翼を広げると飛び出した。
未だ力の充填が100%までは至っておらず、また短距離テレポートである「望みの一歩」では現場に一瞬のうちにつく、ということも出来ず、連続テレポートでは燃費が悪すぎて倫敦に着くまでにへばってしまう。歯噛みしながらも、最高速で飛行する悪の博士。
「備遺徒他輸送部隊は夜真徒軍の待避を急がせろ!空蝗兵・騎蝗兵部隊並びに飛行可能な戦力は私に続けっ!」
また戦術指揮官・マシーネンカーネルも同時に行動開始。怪人形態になって長距離進攻空中戦闘用ユニットを腰部に装着、空中に躍り出て部下達を誘導する。
またその他陸戦用の部隊を高速で移送するべく、移動要塞「神刺塔」も発進体勢に入った。
「『神を突き刺すバベルの塔』飛行モード緊急発進シークェンス!構わん、格納庫壁をぶち破って出ろ!」
轟音を立ててマリネラの地下格納施設が崩落し、そのから現れるは小型の山一つ分の体積を持つ移動要塞。既に主翼を展開し、その長大な翼長でさらに破壊を巻き起こしながらも水面上を滑走、離陸した。
しかしそれでも、マリネラから倫敦までを移動するのに時間は確実にかかる。
「耐えろよっ、フェンリル・・・!」
その間は、倫敦のフェンリルが頑張るしかない。
「ハァァッ!」
「ギ・・・シュ!?」
最初に攻撃を加えてきた、鋭い爪を武器とする黄色のジャガーロードに、カウンターを入れるフェンリル。上から振り下ろされた爪を弾き、隙の出来た腹に拳を一撃、ニ撃、そこで腹部を守ろうと降りてくる腕ごと横から胴に回し蹴り。その流れを一瞬の遅滞もなくやってのけるフェンリル・・・相当に戦闘を学んだ結果の、夜真徒群主として相応しい以上の高い戦闘力。
宙を舞うイエロージャガーロードに、トドメの超高熱プラズマ噴射ムスペルヘイム・エン。本来巨大な超人獣時に使う強力な一撃に、さしものロードも一溜まりも無く爆散消滅する、その崩壊の際ロードの体の構成要素の一つであった霊子が、天使の輪のような輪状の輝きを見せて。
それにカモフラージュしたオルタリンク展開の向こうから、白のジャガーロードの弓矢が突き刺さった。
「あぐっ・・・!」
ただ一撃というのに突き刺さった左肩が吹き飛びかねないほどの衝撃。事実強烈な神聖霊子の奔流が炸裂し、左腕が殆んど千切れる寸前のぶらぶらになり使えなくなる。それでもこの被害はまだましなほうで、半超人獣化していなければ腕丸ごと吹き飛んでいただろう。何とか二発目の矢は超低温爪ニフルヘイム・ザンで叩き落すが、同時に残り三体の黒、赤、青のジャガーロードが絶妙の連携でそれぞれ得物を構えて突撃してくる。
「ガゥゥゥゥゥッ!」
と逆にその三体に目にも留まらぬ速度で飛びかかったのは深緑の影、仮面ライダーアマゾンだ。
「アマゾン!」
南米からついてきたとはいえ本来彼女とは敵対する正義の味方、未だ半信半疑だったフェンリルが意外な加勢に嬉しい驚きを感じる間に三体を撹乱してすり抜けると、アマゾンはその野性の闘争本能により迷わずそれを指揮していた敵の頭目・・・錫杖を構えた黒い女性型、クイーンジャガーロードに喰らいついていった。
「オ前達、食ベルタメ狩ルデナク殺ス!悪ダ!ケケェーーーンッ!」
巨大な断頭台を思わせる鋭い顎でクイーンジャガーロードの錫杖をくわえ込んで押さえると、両腕の爪を振るって斬りつける。さしも強靭なロードの皮膚も仮面ライダーの一撃には抗しきれず切り裂かれるが、同時にクィーンジャガーロードはその瞳を走らせ、アマゾンライダーの腕についた腕輪を認識した。
ギギの腕輪。南米最大の「千切られし過去」の遺産、ガガの腕輪と対となることにより強大な力を発揮する・・・かつてロードたちの敵となった力。
「シューーーッ!」
アマゾンを敵と認識し、ジャガーロードたちが反撃する。クィーンジャガーロードが脚でアマゾンの腹を蹴り飛ばし、後ろに吹っ飛んだアマゾンの左右から、赤と青の剣を装備したジャガーロードが襲い掛かる。
「らぁぁっ!!」
その二体を一度に打ち据えるフェンリル。拳を使って空気を叩き作り出した衝撃波だ。ダメージにはならないが、体制を崩すには充分の打撃。
「ケケーーーーン!ダイ・セツ・ダァァァァァンッ!」
「ニフルヘイム・ザン!!」
その機を逃すまいと、このロードたちを未曾有の強敵と感知したアマゾンが必殺技・大切断を繰り出し、フェンリルも一気に走って間合いを詰めると超低温爪を振るう。
しかし、多勢に無勢の状況がそれを阻む。ホワイトジャガーロードの矢が突き刺さってアマゾンの大切断を潰し、フェンリルの爪をブラックジャガーロードの槍が阻む。通常物質であれば殆んど一撃で破砕できよう超低温も、ロードの武具を砕くことは出来なかった。
「ギガアアアアアアッ!」
苦鳴を上げるアマゾンに、体制を立て直した赤と青のジャガーロードが迫る、どちらか片方を倒しても、もう片方の剣が致命傷を与えられる布陣。そしてブラックジャガーロードの槍を抑えようとするフェンリルに、ホワイトジャガーロードが矢の照準をあわせる。
絶体絶命の窮地に、ロード六体の猛攻で壊滅寸前に陥った、夜真徒たちは。
「うっ、ぐ・・・!」
のろのろと、しかし必死に、歯を食いしばったセラス=ヴィクトリアが30mm対化物砲「ハルコンネン」を持ち上げて、ジャガーロードたちに向けた。
主たるアーカードが死した今、その継嗣とはいえ吸血鬼になって一度も血を吸っていなかったセラスの体は、極端に不安定になっていた。
だが、必死に銃を構え、主の仇そして今自分達をも襲わんとしている敵を狙おうとする。
しかし以前は軽々と振り回すことの出来た砲の重さに、力を失いかけているからだがふらつく。
「わっ・・・!」
「無理をするな。共闘は嬉しいが・・・何ゆえか?それを聞きたい。」
その体を支えたのは、妖魔の君アセルスだ。彼女自身も負傷しているため何とか支えきれたといった所なのだが、表情にはおくびにも出さずにセラスに話しかける。
「分からない・・・私はいつだって状況に流されてきたですから。ただ自分で吸血鬼になって生きることを決定したけれど、それを背負いきることもできませんでした。だけど・・・!これだけは、今の私とこれからの私のために、そして出来ればこうして庇ってもらっている皆さんへのために、しなければならないと思うんです・・・!」
そしてそのセラスの答えに。
「・・・良く言った、セラス=ヴィクトリア。ノーライフプリンセス、アーカードの継嗣。力を、貸してやろう。」
そう呟き、深い微笑を浮かべると、アセルスはセラスに口付けた。
セラスが驚く暇も無く、セラスの口腔内に肺を傷つけられたアセルスの血が流れ込んでくる。それは暖かく、優しく、吸血に対しセラスの抱いていた負の印象などまるで無くて。
咽喉がこくりと鳴る。血を、飲んだ。
「っ・・・!」
セラスの体に、力が漲った。魔力に長けた妖魔の血が、崩壊寸前だったセラスの体に力を与えていく。セラスの肉体に潜んだ本当の力、アーカードの継嗣たりえる彼女の力が覚醒していく。
「さあ・・・セラス!」
戸惑うようなセラスに、命令でなく、促すアセルス。
そして。
「ウォアアアアアアアアアアアアアッ!!!」
セラスは引き金を絞った。撃った。撃って撃って、撃ち続けた。
30mm対化物弾の連射は、連射という方法にも関わらず一発も外さずロードたちに命中した。「ノーライフキングの継嗣」と「妖魔の君」の力の融合故の力だ。
「シュ!?」
「シャアア!?」
30mmの、「砲」の直撃を受けても、その程度ではロードにダメージは与えられず、戦局は挽回しない。しかしいかな奇蹟の技を持つロードといえど、地上に物質として具現している以上、ある程度ならば物理法則の影響を受ける。それを考えて、否直感的に感じてセラスが狙ったのは、ロードの所持している武器だ。
ガギギギン!
流石に衝撃で武器がロードの手から落ちる。そしてその隙を見逃すフェンリルとアマゾンではない。
「おおおおおおおっ、ムスペルヘイム・エン!!」
槍が吹っ飛んでも体制を崩さずそのまま爪での攻撃に冷徹に移行するブラックジャガーロードの腹に潜り込むように間合いを詰めると至近距離から超高熱ムスペルヘイム・エンを叩き込むフェンリル。胴を両断される格好で、流石に「天使の輪」の輝きとともに消滅するブラックジャガーロード。
その際放出された爆熱と霊子がフェンリルをさらに傷つけるが、構わずさらに全力疾走、取り落とした矢を拾おうとするホワイトジャガーロードに迫る。
突進の勢いを載せたフェンリルの拳。いかなロードといえどこの踏み込みならば、拾って構えてさらに弓に矢をつがえる時間はない筈。
そう読んだ自分はまだまだ未熟だと、フェンリルは奥歯を食いしばる。ホワイトジャガーロードは矢だけを拾うと、それを手槍のように構えて待ち構えていたのだ。その矢が狙う先が自分の心臓にあることを、フェンリルは悟る。
だから。
ブシュッ・・・ザグッ!
フェンリルは殴りかかる拳の軌道を変更してその矢を手で受けた。これで右手は使えない。
だから、狼らしく、牙を使った。すれ違うようにして、ジャガーロードの首を食いちぎる。
再び爆発。撃破三体目。
食いちぎった肉を吐き出し、フェンリルは呟いた。
「未熟でも、退くわけには行かないんだ。けど・・・」
ぜいぜいと荒く息をつく。半超人化でかかる負担とロードの攻撃と爆発による神聖霊子の大量被曝が、頑強なはずの人狼の体を蝕んでいる。
「ギャウッ・・・!!」
その時、押し殺したような悲鳴。赤と青のジャガーロードと戦って居たはずのアマゾンライダーのものだ。反応して即座にそちらを見たフェンリルは、眼前の光景に戦慄した。
武器を失った隙をついて反撃に出たアマゾンライダーだったが、何と赤のジャガーロードがアマゾンに組み付いて動きを封じ、その隙に武器を拾ったブルージャガーロードが、味方であるはずのレッドジャガーロードごとアマゾンの体を刺し貫いたのだ。目的のためには自分達の存在などまったく考慮しない、意思無き機械のような冷徹さ。
それで、アマゾンは倒れた。まだ死んではいないようだがそれも時間の問題で、既にぴくりとも動かず血を派手に噴出している・・・これでも生きていられるのは、アマゾンの体と融合したギギの腕輪が命を保っているおかげだ。
そのアマゾンを無言でクィーンジャガーロードは見下ろすと、つかつかと近寄り、ギギの腕輪、アマゾンの命を奪おうとする。
「させるかぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
雄叫びとともに、フェンリルが跳んだ。低く速く砲弾のように、両腕が動かないながらも健在の足でロードに立ち向かう。
(アマゾンは僕達を助けてくれた、だから助け返す!)
ロードとは正反対の感情でフェンリルはアマゾンの前に立ちはだかり、結果それが幸運を招いた。一瞬ロードの動きが遅滞したのだ。互いの戦況を利用しあうことはあっても基本的に別個の勢力と考えていたらしく、「助けに来る」とは思っていなかったらしい。
頭突きで、クィーンジャガーロードを吹っ飛ばす。それでフェンリルの体勢が崩れたところにブルージャガーロードが剣を振りかざした。
身を捻り屈めるフェンリル、輝く剣、振り下ろされ、血が飛び。
フェンリルの脇腹が切り裂かれるのと、ブルージャガーロードの顎が下からのフェンリルの蹴りで砕かれるのと、同時。
「るぉあららららららららっ、ラァッ!!」
体を切り裂かれながらも絶叫とともにフェンリルはさらに蹴りを連発し、倒れたジャガーロードの頭を踏み砕いた。
バシィィィン!!
「がっふ・・・・ぐぅうう!!」
しかし、そこまでだった。戻ってきたクィーンジャガーロードの錫杖での一撃。鎧の腹が破れ、地面を転がる。咄嗟にアマゾンの背鰭をくわえて打撃の勢いを殺しつつ一緒に待避するが、もはや立ち上がるのが精一杯だった。迫るジャガーロード。背後には、アマゾンと夜真徒の仲間達。腕をなくし体重を支えるので精一杯の震える足で立ちはだかるフェンリル。
「く、群主・・・!」
ラルヴァが、呻く。もはや夜真徒にまともな攻撃手段は殆んど無い。このままでは折角生まれた夜族の住める国が、滅んでしまうと。
しかし。
「いや、勝った。」
フェンリルは、笑った。直後ラルヴァもその理由を感知する。
後方より接近する多数の飛行物体。夜真徒の友、秘密結社バリスタスの部隊だ。
だが、同時に現れたあれは何だ。月を背負い、飛来するもう一つの軍団。
それは・・・夜族と改造人間の軍団。バリスタスと同じ存在。
そしてそれを率いるのは・・・
「あ・・・」
それを見たフェンリルが呟く。幼い日の記憶の発露に。
「お、おおお・・・」
それを見た夜族たちがざわめく。伝説の存在の顕現に。
「・・・・・・・・!」
悪の博士は無言だった。涙を捨てた身でなければ、嬉し涙を滂沱と流していただろう。
金色の髪に白い肌、赤い瞳の女性。その者、神祖の裔、純白の吸血鬼、月色の姫君。
アルクェイド=ブリュンスタッド。
「手助けにきたよ、夜真徒、バリスタス!」
そう叫ぶと同時に、アルクェイドは力を発動させた。一瞬でアルクェイドが睨みつけた視線の先のロードの周囲の空間が変容し、空気が灼熱のマグマへと変化してクィーンジャガーロードに襲い掛かった。
固有結界・空想具現化(マーブルファンタズム)、自然に働きかけあらゆる無機物を一瞬で想像したままの別の無機物・現象に変換する、神祖の末裔たるアルクェイドのみに使える超越の力。以前は良質の輸血用や人工の血液が手に入らず永きに渡り吸血をしていなかったため使えなかった力。それすらも使いこなす完全な復活。
空想具現化攻撃により大ダメージを受けたロードに、さらにバリスタス怪人軍団とアルクェイド率いる夜族部隊、そしてともに現れた黄道十二宮の正座を象った改造人間たちが一斉に攻撃。さしものクィーンジャガーロードもこれには絶えられず、天使の輪のような輝きを残して爆散。
この戦いが、黄金の混沌最後にして最大の組織BADANの後継者、十二天星とその仲間たるもう一つの夜族の園・蒼月の住人との共闘の始まりであった。>>秘密結社バリスタス外伝参照
そして戦いが終わった。と、そこに現れた人影が三人。モノクルにコート、シルクハットにステッキという紳士スタイルでありながら、何故か腰にミスマッチナ日本刀を佩びた禿頭の壮年男性とそれに付き従っていると思しき赤毛で全く同じ顔をした、恐らく双子と思しきメイドを・・・片方は普通のメイド服、もう片方はえび茶色の和服。
それを目に留めた悪の博士が、話しかける。
「卿がアーノルド=ラスキンか。夜族や下位次元族をも治療する魔術師にして医者にして居合術の達人、そして英国政府に隠然たる影響力を持つ円卓会議のリーダー・・・噂には聞いていたぞ。」
「ふむ、光栄だな。」
軽く会釈をすると飄々とした仕草でラスキンは戦いの終わった場に割り込むと、鞄を開いた。その中に入っているのは医療器具、それも極めて特殊なものや魔術的な処理を施されたものだ。
「さて琥珀、翡翠、怪我人、それと夜真徒の方々。治療するから怪我人を集められたい。バリスタスでも治療を受けられようが、私も手伝おう。」
「な・・・サー・ラスキン!?」
ラスキンの言葉にそれまで蚊帳の外だったインテグラが咎め立てる。彼女は吸血鬼を狩る機関の長、それが吸血鬼を治療するなど許せるはずも無い。そんなインテグラを、ラスキンはきっぱりたしなめる。
「最後の大隊を停めたのもあの化け物を倒したのも彼等だぞ。その礼をかえさないのは紳士とはいえぬ。イギリスから紳士をとったら何も残らぬ。故に、これは我等の義務だよインテグラ。」
そしてバリスタスからもイカンゴフや白戦闘員達の医療班が到着し、また戦場の後処理も始まっている。
悪の博士は・・・遠くから、フェンリルに抱きしめられ抱き返すアルクェイドの姿を見ていた。