第二部序章

目の前に、彼が立っている。銀と赤とに輝き、天を突くような巨体の英雄が、闇の中でも光を発する、宝石のようなその目で私を見つめている。
「やさしさを失わないでくれ。弱い者をいたわり、互いに助け合い、どこの国の人達とも友達になろうとする気持ちを失わないでくれ。たとえ、その気持ちが何百回裏切られようと・・・それが、私の最後の願いだ・・・」
低く響く、張りの有る声で彼は言った。彼の思い、真実の理想。
ああ。
そんなこと出来ない。そんなことは出来なかったんだ。今では私はそう解っている。
そう叫びたい。だが口は思い通りにはならない。
だから、言ってしまう。彼との別れの涙に濡れる頬を、精一杯微笑ませて。
「うん・・・うん!わかった!そうするよ!ウルトラマンがいなくなっても、僕達がこの星を守って、もっともっと平和で美しい星にするんだ!」
ああ。
今私は、全くそれとは逆のことを行っているというのに。
今、もう二度と帰ってくることのない彼等、ウルトラマンが私を見たら。
彼等は、どう思うのだろう。

やはり・・・倒すのだろうな・・・いや・・・倒す・・・あのころはそう言っていたが・・・

ウルトラマンは殺すのだろうな、私を・・・



「・・・博士、博士!」
「む・・・?」
どんどんと、イカンゴフが部屋の扉を叩いている。
「博士、そろそろ最終会議が始まります。皆様もう揃っておられますよ。」
そこでようやく、悪の博士の意識は覚醒した。場所は無駄に広大なバリスタス本部地下宮殿の一隅、最高幹部用の私室だ。
眠気を振り払うように首を二、三度振る。HUMA極東本部攻略作戦後連日連夜ぶっ通しで宴会をしていたため、流石にいい加減二日酔い気味である。
「少し・・・宴会で酒量を過ごしたか。」
そう呟く彼の声は、普段の声よりか幾分高い。それだけではなく爬虫じみた口蓋と金属のような質感の顎のせいで幾分人間離れして響く声と違い、今の声は紛れもなく人間のものだ。
声だけではない。姿も人間となっていた。節くれ立ち金属光沢を示す、指とつま先が鋭く尖った手足も、柔らかく薄い肌に包まれた人間の手足に。それは普段の姿と比べると角を覗く身長は変わらないが随分細く、貸し着のようにだぶだぶになった白衣のせいか体力など欠片も無さそうに見える。
顔も、そうだ。少し長めの髪は寝癖ではね、目は長い時間眠っていたにもかかわらずとろんと細く眠そうだ。
ふっくらした自分の顔の頬から目尻にかけてを、探るように撫でる。
「ふん、何を期待しているのだ、私は・・・涙など。一切合切、弱さは捨てたはずだ。侮られるより恐れられ、あざけられるより悲鳴を上げさせる。」
ゆっくりと、自己暗示をかけるように呟きながら、博士は「仮面」を手に取った。普段の博士の「顔」である、八つの目、三つの角、牙だらけの顎を持つ仮面。
「そして、哀れまれるより憎まれ、殺されるより殺す。」
頭部全体を覆う仮面を掲げると、博士はそれを被った。
一瞬で全身を仮面と同室の金属職の外骨格が覆い、手の中に長い杖が現れる。
「今はこれが、「我が輩」の顔・・・征くぞ。」
扉を開ける。

「遅れてすまぬ。さて・・・。会議を始めようか?」
博士が席に着いたときには、既に他の六天魔王と幹部候補生、戦術指揮官達が勢揃いしていた。
「ええ。」
やや緊張した面もちでlucarが頷いた。それはそうだ、今回の会議の議題は宴会の後始末とか予算会議とか、そんな些末なものではない。
今後のバリスタスの戦略を決める会議なのだ。
「では、まず現状の認識から。」
空中に投影された光コンソールを、ひらひらと手を動かすようにして操作するシャドー。
「HUMA極東本部壊滅後、状況は様々な推移を見せました。」
「第一に、正義側の機構の大幅な変化です。HUMAも宇宙刑事機構も共にトップ層は軒並み更迭。それぞれ仮面ライダーV3=風見志郎、宇宙刑事ギャバンが長官に就任。HUMAは風見長官の意向により、あくまで活動するヒーローの活動を支援するための小規模な組織に方針を転換、特別装甲機動隊は本来の所属である日本国の指揮下に直りました。宇宙刑事機構は組織内部の再編成のため、現状維持に最低限必要なだけの宇宙刑事を残し、そのほとんどが本部のあるバード星へ帰還しました。重要なのが、これが宇宙的な規模で行われたと言うことです。」
「そして、その日本政府ですが・・・」
ひょい、とシャドーは画面を切り替えた。
それまでの宇宙刑事機構やHUMAの映像を映していた画面が、今度は日本の、総理官邸の映像となった。赤い絨毯の敷かれた廊下に、燕尾服を着た閣僚達が並んでいる。政権交代の時とかによく見られる絵図だ。
だが、奇妙な点があった。大臣達がみな一点を横目で見つめ、苦々しいと言うよりは当惑したような、あるいは途方に暮れたような表情を浮かべている。
その一点とは、本来総理大臣が立っている場所。そこに立っているのは・・・光輝くような金髪をポニーテールにまとめた、活発さと美しさを両立させた容貌を持つ、中学生ほどの年齢の少女。
「なぜだかどういう訳かいつの間にか、日本の総理大臣が替わっていた。完全合法的な手続きがとられながらも、誰も承認した覚えがないというのに・・・折原のえる14才に。」
ふっと影磁が笑うと、隣に座った悪の博士を見る。
「貴殿の予想は当たられたな。確かにあの娘はとんでもない。」
「くはっ、そうであろう。」
「この件に関しては以前調査中ですが、どうも下位次元世界からの干渉があった模様です。いかなる意図で行われたかは不明ですが・・・何にしろこれで状況が更に変化しました。」
再び画面が切り替わる。
「以前闘ったネロス帝国のように、大企業・財閥の形を取る組織が最近は増加しておりますが・・・彼等は皆日本の政治界に相当深く食い入っていました。まぁ、どういう手段でというのはあからさまな上に陳腐ですので省略するとして・・・」
思わず幹部達の間に失笑が満ちる。
「そのパイプが、ほとんど全て断ち切られてしまいました。折原総理は実に自由奔放、まるっきり滅茶苦茶に政治を引っかき回しています。しかもそれがまた、役に立っているのですから面白い。」
世界地図とは別枠で、最近の新聞記事がウィンドウで表示される。とりわけ大きき表示されているのが、「消費税−5%に」というものだ。−5%ということは、すなわち買えば買うほど税金が帰って来るという前代未聞の税制だ。とはいえ消費はこの刺激で相当活性化しているし国民支持も政権誕生時の0,3%という記録的に低い数値から、一気に70%代まで上昇。それでいてシステムとしてはようは金の流れを逆にするだけだから問題ないし、消費活性化で所得税が増加するので財源も問題なし、という面白い政策である。
最も他にも戦車を乗り回してマクドナルドに買い物に行ったり、野球場を乗っ取ってボーイフレンド、あのバスジャック事件の時一緒にいた長谷川健太とかいう少年と一緒に試合に乱入し、114対98という何のゲームかわからんスコアを記録したり、奇行に類する行いのほうが遥かに多いのだが。
「結果、それまで海外から静観してきていた組織が、近日中に日本に上陸すると予測されます。」
「それと・・・」
影磁が、付け加える。
彼は思いだしていた。戦いの前、城町満が言い訳のように言っていた、あの言葉。
「降臨者ガーライルの復活が間近い、我々には確かめる術はないが、連中はどうも降臨者に近い上位次元存在の星獣や魔法少女から情報を得ていたようだな。それに降臨者が復活するならば、恐らく・・・」
「古代怪人も復活する・・・か。」
JUNNKIが、自分の腰に付いたベルトのバックルを弄りながら呟く。そこにはめられた光結晶ネオアマダムは「千切られし過去」の遺跡からその精製方法を発掘したものその時代の改造人間の技術は「黄金の混沌」時代のさらに礎となったもの、そしてそこで得た情報に寄れば彼等は死に絶えたわけではなく、封印状態となる復活の時を待っているのだという。
「さて、それで予測される敵戦力ですが・・・」
「海外から日本に侵入して来るであろう結社は、恐らく二つ・・・「黄金の薔薇」並びに「タロン」でしょう。二つとはいえこの組織、どちらも規模から言えばそれぞれ現在最大級です。「黄金の薔薇」は、中世から続く歴史を持つ組織で、ギア=グローバルという企業体を隠れ蓑にしている。中世時代からため込んだ錬金術などの、我等「衝撃を与える者」系列組織とは違う超科学を誇る組織です。そして、もう一つのタロンですが・・・これはそこまで大したことはないはずです。複数の大企業の総合組織で、財力で言えば「黄金の薔薇」とネロス帝国を合わせたよりもまだ多いでしょうが、それを生かせるだけの技術力を持っていません。組織としても寄り合い所帯で、付け入る好きはあるでしょう。ただ複数の中小組織を下請け企業のように取り巻かせているので、たぐっていくのは手間取りそうですな」
自分なりの分析結果を交えながら、すらすらと説明していくシャドー。その様は非常に洗練されていて、普段あまりそうとは思えないが彼も科学者であることを実感させる。
「他日本侵攻の意図は今のところ持たないが、海外に展開して居る組織は次の通り。まずはロシア・中央亜細亜に盤踞する秘密結社BF団。十傑集と呼ばれる最高幹部の戦闘能力は、クロノス十二神将に勝るかそれ以上。これが中国奥地・梁山泊に本拠を置く正義組織・国際警察機構と抗争しております。この国際警察機構にも九大天王という同等の力を持つ者共が居るのですが、両組織の秘密兵器・巨大ロボットはBF団が数を持っているのに対し国際警察機構はBF団から奪ったジャイアントロボと呼ばれる機体のみ。・・・とはいえ、このロボは相当の強さを持ってます。しかし通常戦力の点で、BF団のほうがやや優勢となっておりますな。」
次々と画面が切り替わり、情報を示していく。
「ヨーロッパにはイタリア・ヴァチカン市国に以前我々と交戦した異端殲滅機関イスカリオテ、イギリスにはそれと似たような存在ながら英国の防衛のみを目的とする英国国教会騎士団・HELLTHINGが存在。他「黄金の薔薇」の本営がオーストリアにあります。タロンは有機的なネットワークを持っており、明確な本部が存在しない模様。アメリカには同じく「黄金の薔薇」の最大規模の支部が存在します。それと、旧HUMAのアメリカ支部なのですが・・・」
「どうしたのだ?」
つまった報告に、博士がいぶかしんだ。
「風見長官の規模縮小命令を不服として離脱致しました。現在米軍並びに国連・世界保健機構などと結託し、新組織HA(ヒューマン・アライアメント=人類同盟)として再編成されました。軍や国がバックについてる分、ある意味もとのHUMAより厄介ですね。」
返答するシャドーの報告は、少しの懸念を含んでいた。
「あとは、南米にいくつか中小組織の存在が確認されています。」
「南米といえば、「黄金の混沌」期にもいくつもの秘密結社が存在したな。あそこにはアトランティスの技術の一部と古代神族の地上居住区があったしな。それを元に結成されたのが野獣帝国ゲドン、パルチア朝ガランダー帝国、それとウニャ・デ・パンテーラ・・・」
「ウニャ?何?」
きっどがきょとんとする。最初の二つ、仮面ライダーと闘った組織なので存在を学習していたが、最後の一つには聞き覚えがなかった。スペイン語のようだが。
「ああ、一般的には英語読みでパンサークロウといった方が通りがよかったな。最初は南米から略奪された財宝の奪還が目的の、遺伝子改造生物を使った国際盗賊団だったのだが、しまいに欲だけで関係のない財宝まで襲うようになってな。最後には獲物と狙ったアンドロイドに逆襲喰らって死滅したはずだ。」
「ふ〜ん・・・」
「して、現在存在する組織は?」
きっどが納得したのを見計らい、博士が続きを促す。
「ええ。一つは、ガイバーなどと同じ降臨者の僕になった人間・・・エヴァンジェリストの使っていた鎧仮面の複製を使いオリジナル仮面とそれに隠された上位次元への道を求める組織・「蝉の王」(タルヴァーン)。それと対抗し、彼等の狙うオリジナルの仮面を十三所有する正義組織「仮面武闘会」(マスカレイド)。」
「・・・そのタルヴァーンとかいう連中は、上位次元の危険さを知らないのですかね?」
「恐らく。」
しばしの沈黙。思案する姿勢の影磁。上位次元に関しては解っていないことが多いが、彼等のよりは我等の方がそれを理解している。
「・・・まずいな。それだけか?」
「いえ。他にも。今時ナチの残党などという冗談みたいな連中、「最後の大隊」(ラストバタリオン)が。こいつ等は人造吸血鬼を主力としていますが、総勢一千と一人という我等と同じくらいの小勢力、目標も欧州ことに英国での破壊活動に限定されているようです。」
「ふん。後先もなく破壊のみが目的か、つまらぬ虫けら共め。」
嘆かわしい、と言わんばかりに博士がかぶりを振った。彼は闘争を好む凶暴な性質の持ち主だが、それ故に闘争には哲学と美学ともって接する。故に護る物も求める理想もない戦いを、極めて嫌う。

「それで、日本の組織情勢ですが・・・以前闘ったネロス帝国とクロノス、これはもはや無視してもかまわないでしょう。」
「え?何で?」
唐突な発言に、JUNNKIが首を傾げる。
「それぞれ、もう我等にかまってはいられない事情が生まれたのです。ネロス帝国に対抗するため、風見長官は古賀博士が大東亜戦争中に制作した超人機、メタルダーを起動させました。おまけにHUMA・日本政府との癒着を失ったネロスに、より大規模な海外組織が日本の裏経済掌握のために襲いかかっていくのは必定。苦しい戦いになるでしょうな?」
「そうですか・・・。」
僅かにlucarは悲しげなそぶりを見せた。実際にネロスと闘った彼女は、ネロスが財閥系組織といっても前線部隊には戦士の心を持つものが多く居るのを知っていたため、それらがそんな戦いを強いられるのは嫌であった。出来れば、仲間に加えられないだろうか。そんな思いも頭に浮かぶ。
「クロノスに対しても、ガイバーが動き出しました。ガイバーTの強化外骨格が自己進化、ロム=ストールのパイカンフーのような二段階装着外骨格「ガイバーギガンティック」という能力を得ました。戦闘能力ことに火力はアルフェリッツ=ミリィ嬢に匹敵するでしょう。着用者は未熟ですが、クロノスにはいささか荷が勝つ相手です。あのガイバーV・巻島顎人とかいう男も何やら私兵を用意しているようですし・・・とはいえ、その他にも関東・そして何故か九州地方を中心に、中小秘密結社が山ほどございます。」
「宇宙犯罪組織ギャンドラーは?」
「あの人達は、所詮ただの盗賊に過ぎません。出先で偶然遭遇する、ないしは我等を狙うようで有れば叩けばよい、それだけです。それよりも問題なのはこの連中・・・」
また、シャドーの指が踊る。それまでの空間投影ディスプレイより大きな、壁面の巨大スクリーンに映像が投影された。
「これは・・・」
それは、凄まじいまでの破壊と殺戮の光景だった。場所はオーストラリア・トリントンと表示されている。
戦隊ロボクラスの大きな、鈍い銀色に光るロボットが町を破壊していた。恐ろしく無骨で機能最優先、飾り気などこれっぽっちもない。体の前に道路工事用のそれを何千倍にも巨大化したようなローラーがついていて、それで呆れるほど効率的にめしめしと町を押しつぶしている。
必死に逃げまどう民衆。だがそれを取り囲むように、今度は体長数メートルほどの生物共が現れた。
だが、その姿の何と醜いことか。先程のロボットと違い酷く装飾過剰で、それでいて何処か人間に似ている。でろりとした目、大きく開いた口、妖怪のように輪郭がぶよぶよとあやふやなその連中は、逃げてきた人間に襲いかかると、
食い始めた。
ばりばりと音を立てて人間を頭からかじり、飲み込む。ことに脳神経と骨髄液を好むらしく、執拗にそれをすする。あまりに凄残な光景にlucarやきっどが顔を背ける。
「・・・それで?我等の世界を勝手に食い荒らすこのケダモノ共は何処のどいつなのだ?」
冷徹なような影磁の口調にも、若干の怒りが見え隠れしている。
「この連中は滅人同盟を名乗っています。目標は地球環境を悪化させる人類の殲滅。使用する兵器は巨大ロボットとあの「戦術鬼」と呼ばれる人間を元にした遺伝子改造兵器、並びに動物を元にした生物兵器で構成される海軍も有し、破壊活動を行っています。意外にもこの滅人同盟は本部を東京近郊、恐らくロストグラウンドにおいている模様です。」
「ロストグラウンドか・・考えてみればあそこもまた厄介な土地だよな。」
JUNNKIが唸った。
ロストグラウンド。そこは「黄金の混沌」最終期、ルシファー戦争において下位次元族・大魔王サタンとヒーロー軍団との最後の闘いがされた土地といわれている。もっともどういう訳かその場にいたはずのヒーロー達はそのことについて多くを語ろうとせず、その時その場で何があったのかは未だによく分かっては居ない。
ともかくその戦いの結果か、はたまた何か別な力に寄るのか、その戦いが行われた土地・・・大体ヨコハマから少し西のあたり・・・が大きさ20キロほどの高地がちの島となって本土から分離・隆起してしまったのだ。
壊滅状態となったその地区は現在国連の統治下に入っているが、復興は一部「シティ」と呼ばれる隔離された市街地をのぞき遅々として進んではいない。
それは、そこに特殊な力を持つ者が存在するから。
アルター能力者、と呼ばれる存在。あの土地に生まれた者の0,2%に備わる特殊能力。物質を取り込み、それぞれ固有の形に変化させる。ある者は自分の意のままに動くロボットのようなものを、またあるものは自分の体を覆う鎧を、一瞬で造りあげる。
そのアルター能力者の戦闘力は高く、それが治安の低下・復興の阻止を招いていた。国連は武装警察HOLD、並びに徴収したアルター能力者を編成した特殊部隊HOLYをもってその鎮圧に当たろうと躍起になっている。
「アルター・・・それは不完全ながらもアギトの血の発現に近しい。あの土地には、恐らく上位次元の力が満ちあふれている。あれは、手に入れなければならない。アギトの力を持つ兵士達が、我等の元に集うメリットは計り知れない。」
アギトとは、古代遺跡のデータにあった上位次元族と人間の混血種のことだ。エヴァンジェリストのように後天的に降臨者から力を与えられたのではなく、「龍」や「髑髏」や「アルカンフェル」など、人を愛した上位次元存在と、彼等すら従えるほどの気高く強かった者達の子等。
存在としてはミリィたちガーライルフォースマスターに近い。その戦闘能力も。
それを知っている幹部達は、皆同意を頷きで示した。
「ふむ、一刻の猶予もない・・・と言ったところだが、同時にこれは好機でもある、な。海外の敵対勢力を牽制し、新たに上陸してくる者共を迎え撃ち、そしてこの日本を手にする。では、作戦立案に入ろう。」
そして・・・数日後。

「こんな・・・ところか。」
決定された戦略は、大胆不敵なものであった。HUMAを殲滅した余勢を駆って一気に侵略を進めるため、日本並びに世界にそれぞれ大幹部が統括する支部を拡大しようというのだった。

まずは既に事実上他の戦力を追い払い支配下に置いた日本中部地方統括・lucarとJUNNKIが守る本部。

秘密結社が乱立し、また隠れ蓑であるギア・グローバル社の日本支社の存在するが故に「黄金の薔薇」が上陸すると思われる関東地方にはシャドーと幹部候補生きっどを派遣しそれら組織と同盟を結び、「黄金の薔薇」を阻止する。関東地方統括支部・秘匿名称「関東軍」

同じく組織の多い九州地方には影磁怪人軍団が赴き、こちらは企業的組織が多いので武力での制圧を敢行する。九州並びに四国中国地方統括支部・秘匿名称「熊本鎮台」

そして海外にはまず亜細亜方面はまんぼうが担当。この地区の犯罪組織を壊滅させることにより資金を強奪により稼ぎ、ならびにBF団・国際警察機構に対処する。亜細亜統括支部・秘匿名称「義和団」

悪の博士は移動要塞「神を突き刺すバベルの塔」をもってインド洋を抜け大西洋へ。全欧州・南北米州・そしてアフリカに睨みを利かせる。大西洋沿岸統括支部・秘匿名称「北洋水師」

「さしあたっては以上だ。当面の目標は日本の完全征服、海外支部はそのためのサポートとして敵を牽制するということで。」
東北・北海道地方に関しては、何故か誰も触れようとはしなかった。何故なら過去に博士が明言したのである。
「あそこは、我が輩達の故郷なのだ」と。
これでは怖くて誰も手が出せない。そのせいかかの地方には秘密結社は存在せず、これも事実上既にバリスタスの支配下にあるといえるからだ。
「守備任務か・・・」
若干、JUNNKIが不服そうな顔をした。改造人間としての肉体の用途もあるが、彼は若い。やはり基地の置くに引っ込んでいるよりは前線で活躍したいだろうし、なにより幹部候補生のきっどを覗けば六天魔王で自分のアジトを持っていないのは彼だけとなるのだ。
「なに、本部基地が手薄になっては困るからな、どのみち活躍の舞台には困らないだろうが・・・それに、我が心理外骨格に秘められし力の一端・運命物語限外探査が告げておる。そのうち新たな戦場が生じ、貴殿はそこで指揮を執ることになるであろう。」
心配するな、と言うように博士が笑い飛ばした。彼の言う「運命物語限外探査」とはこの世界の未来や過去・運命を一つの物語としてその外側から眺めるという一種の予知能力なのだが、今の言葉でも解るように極めて大雑把なことしか解らず、故に正確な対策をとると言うことも出来ないようだ。あまり役に立たない力とも言える。
「して、本部・各支部への改造人間の配置は?」
「我々には怪人はいらんよ。」
自信たっぷりに、関東支部支部長となったシャドーが笑ってみせる。
「我々の任務は浸透工作が主となるだろう。そうなると身軽な方がいい。きっど殿の改造もすんだし、」
横目を使うシャドー。その視線に気付いたきっどは、依然と変化した外見特徴である額の一見宝石のようなコアユニットを光らせた。
「そして何より、戦力を即時拡充するあてがある。変な人脈を持っているのは悪の博士だけではないことをお見せしようではないか。」
「ほう、楽しみだ。」
のえるだのアルフェリッツ姉妹だのウルトラ警備隊だの科学特捜隊だの、妙な連中と接点のある悪の博士が、八つの目を細めて笑う。
「まんぼうの関東軍には、撹乱任務に適した仮面怪人を用いましょう。ああいう二つの勢力が拮抗している所では、そのバランスを迂闊に崩すと一方が巨大化して意味がなくなる。」
「それに加え打撃戦力としては我が軍団から蠍師匠を派遣しよう。十傑集・九大天王にも十分対応出来ようて。」
「まぼ!」
起きあがりこぼしのように体を斜めに前に倒すまんぼう。頷いたつもりらしいのだが首が無くて胴と頭が一体のためこうなってしまう。
「本部にはゲッコローマ、フリーマン、カナリアンヌ、カニンジャー、パラゲン、まめまん、オクトーガ、アクニジン、クリオネ女、ルストダイノ・・・」
多いようだが戦闘能力の少ない者、水中戦闘用の者など入り交じっており、純粋に戦力となるとどうなるかは解らない。そこまで勘定したlucarに、悪の博士が付け加えた。
「あぁ、そうだ。我が軍団のみみずおかま、あれも本部配属にしてくれ。ジャパニウム鉱山の発掘にはあいつの力が必要だ。」
「良いのか?悪の博士。それでは貴殿の戦力が不足しないか?」
一緒に行動することの多い仮面怪人とまんぼうは別任務、そのうえ主戦力の一体である蠍師匠にみみずおかままで外しては、博士の軍団の数は少なくなる。
「これくらい問題はない。アフリカの制圧は「エジプティアンズ」に任せられるしな。」
エジプティアンズとは、バリスタスが発掘したエジプトの「失われたピラミッド」の中に封印されていた怪人達である。「千切られし過去」にあたる超古代から復活したため何らかの情報が期待されたが、とぼけているのかまじぼけなのか、「忘れてしまった」との回答が帰ってきた。
まぁ、ミイラ状態だったのに水かけたら蘇生したような連中だから、余り期待は出来ないが。
「それに我が輩には、現在製作中の切り札がある。完成すれば心理外骨格や超人獣に匹敵するかそれ以上の大いなる力となろう。」
その博士の言葉と同時に、隣にすっと一人の少年が進み出てきた。この高い戦闘力を誇る改造人間たちの集いに、気取られることなく自然に。
(これは・・・やるものですね。)
影磁は少年を注視する。年の頃や身長はJUNNKIやきっどより幾分年上か。薄く細長い、瞳が露出するような長方形のメガネをかけていて、髪の色は黒で、前髪を横にピンとはねるように分けている。学校制服のブレザーに少し似た服を着用し、腰のベルトに一振りの日本刀をたばさむという出で立ちだ。
眼光は鋭く、やや怒っているような無愛想な印象を受けるが、気配からするにそう言うわけではなくこういう顔らしい。
「若き同士「村正宗」殿だ。此度の我が新兵器開発計画にも重要な役目を果たし、計画自体にも彼の名、「ムラマサムネ」が冠された。これでわが戦力は盤石となろうて。それよりも影磁殿のほうも大変ではないか?連戦で主力がメンテナンス中なのであろう?」
博士の言葉は確かに的を得ていた。これまで影磁が開発し実戦投入した改造人間、鎧武人・備遺人・妖桜姫・マギラ・マギリの五体はいずれも高い戦闘能力を持っていたが、それ故での前線での酷使で鎧武人とマギラマギリ夫妻、戦闘に置いて特に主力となる三人が長期整備療養を必要とし、戦線を離脱していたのだ。
「こちらも、ぬかりは有りません。我が組織O.O.Bより三名の改造人間がもうじきに到着いたしますし、新型改造人間「逆三連星」並びに重水中戦闘用改造人間「勢流鯨」がついに実戦投入可能と成りました。貴殿の三貴子に引けを取らないどころか、それ以上の戦力となりうる傑作と自負している次第。」
「それは頼もしい・・・では、これでよろしいな?」
頷きを確認すると、悪の博士はコンソールを操作し、基地の随所に立体映像と音声を送信した。
「諸君、我等の新たなる計画がついに発動した。我等はこれより、真の世界征服への歩みを再び加速する。指示はおって各幹部から下るであろう。諸君等は、ただ信念を忘れずにいて欲しい。「世界」に居られない者に、愛ある安らぎの夜を。戦場に、堂々たる闘争を。ジーク・バリスタス!!」
こうして、再び戦いが始まった。

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