秘密結社バリスタス第二部九州編第五話 蝗王来迎・後編〜赤いマフラー

「アバドーン・・・・っ!?」
突如現れタロンの小林教授を屠った、謎の敵。一見蝗の改造人間に見えるそれをマルレラが「アバドーン」と呼んだ途端、影磁の脳裏に大量の映像記憶が走った。博士がここに来る時に渡した「移植記憶」の覚醒。
それは、絶対の殺戮者。今は無き秘密結社インバーティブリット所属と思しき改竄無脊椎動物をかたどった改造人間を、次々と屠っていく。両手両足の爪、背中から生えた毒の鎌、そして額の第三の目から放たれるレーザー。圧倒的なまでに速く硬く、そしてダメージを追っても自己再生し、そしてより強くなる。
次々と、冷徹に、機械のように敵を殺すアバドーン・・・と、映像は途端に切り替わる。
何処かの図書館か研究室か、本棚に囲まれた部屋。
「間違いない。「黄金の混沌」末期「ルシファー戦役」において、そしてその後最ベテランヒーロー集団であったサイボーグ001〜009の謎の失踪・・・いずれにも間違いなく、この「仮面ライダー以外の蝗型の何か」が絡んでおる。」
分厚い資料を捲りながら呟くのは、灰色と青の白衣に身を包んだ、眠そうな目の青年・・・若い頃の悪の博士だ。プロトタイプの心理外骨格発生装置を、胸ポケットに突っ込んでいる。このころは、常時付けていられるほどの性能では無かったようだ。
「我等がコードネーム「アバドーン」と読んでいる、あれが・・・。」
こちらは、温厚そうな顔の四角い眼鏡をかけた教授だ。影磁自身の記憶では彼は有名な海洋無脊椎動物学の教授だったと思うのだが、その隣にいる人物から、彼もまたインバーティブリットの構成員であったと言うことが分かる。
「しかしだ。その時代の技術でも正体を解明出来なかったとなると・・・「改造人間」ではない「何か」。」
類い希な、威厳を感じさせるほどの美貌。ウェーブのかかった柔らかな髪と、海賊のような眼帯。インバーティブリット女王リリス。傍らには神爪大佐の人間形態と思しき、軍服を着用した男が無言で控えている。
「・・・まさか?」
教授が懸念の言葉とともに、片眉をつり上げる。それに、若き日の博士が答えた。
「そのまさか、だろう。「ロード」・・・いや、サイボーグ戦士達を「全滅」させたのならば、恐らくはその上位種、「エルロード」。」
語り終えてからその言葉に意味に気付いたように、博士は乾燥した唇を舐める。それはまさに、「絶対」への「絶望的」挑戦。
そして、女王リリスに尋ねる。溢れそうな感情を無理に押さえ込んでいると分かる、平板な声で。
「分かっていて、戦いを挑むと?」
そして、女王リリスは答えた。決然と。闇と優しさを含んだ、謎めいた笑みで。
「・・・ああ。挑まなければ、ならない。私の愛する世界を守る、そのために私は、世界を征服する。」

そこで映像はとぎれ、影磁は再び現在へと戻った。ほんの0,1秒にも満たない時間だったらしく、現状はそのまま。
一つ変化しているのは、影磁の心境だ。あの「移植記憶」を信じるならば、目の前の相手は間違いなく・・・今までバリスタスが戦った中で最強の敵ということになる。そして、アバドーンが立ち上らせる、独特の冷徹な死の気配が、それが正しいと直感に激しく訴えてくる。

咄嗟に身構える影磁、それを追い抜いてマルレラが飛びかかっていく。
「アバドーーーンッ!!」
突き出される甲殻の拳を、アバドーンは機械的にも見える動きでかわした。極端に動きの少ない、僅かな体の反らし。直後反撃とばかりに腕を振り上げる。普通ならそんなモーションのない、手先だけの動きでは有効な打撃とはならないはずだが。
「鞠華っ!!」
咄嗟にパラドキシデスがマルレラのもう片方の腕を引っ張り、その爪の軌道からマルレラを外す。そうしなければ、マルレラは死んでいただろう。軽く振り下ろしただけの腕が、足下どころか軌道上にあった物全てを衝撃波で粉砕したからだ。
「な・・・なんと・・・!」
眼をむく影磁。逆三連星達も驚愕し・・・しかして、二人の戦意は尽きる様子はない。
「一人で行くなっ!奴は・・・怒りだけで倒せる甘い相手じゃない!」
「わかったわ、なら二人で・・・いいわね、いくわよっ!」
「分かったっ!」
迷わず、再度突進するマルレラと、パラドキシデス。
「うおぉぉぉぉぉぉぉ!」
本物の三葉虫のように丸くなると、倒れたビルの斜面を利用して一気に駆け下り、甲羅の弾丸となってパラドキシデスがアバドーンを襲う。
タイミングを合わせて、挟撃するように鋏足での跳び蹴りを放つマルレラ。前後でありながら微妙に上下の差を付けており、跳躍などしてもかわせない連携だ。
「組織の仇っ、覚悟!」
「・・・オルタフォース」
ズガン!
「あっくぁ!」
「うぐっ!?」
悲鳴を上げ、マルレラが地面に叩きつけられる。弾き飛ばされたパラドキシデスが、防御形態を解除して何とか着地。
「神の目は、全てを見とおす。」
静かな、だがしかし感情のない合成音のような声で、アバドーンが口をきいた。「オルタフォース」と自ら呼んだ、梵字を思わせる文様で構成された光の壁が、二人を弾き飛ばしたのだ。まさしく、上位次元存在であるエルロードの証明・・・大量の神聖霊子を集中させた障壁だ。
(ここへ来てからの共時性霊子通信装置の不調は、あいつが原因だったのかっ!!)
無言のまま、再び爪を振り上げるアバドーン。
「まずっ・・・!」
一瞬の思考故、影磁の反応が遅れた。今度は二人同時に体勢を崩したので、かばい合うとは出来ない。だが影磁が遅れたことで、影磁もまた二人を助けることが出来ない。
「ごっ、ご主人様の・・ご主人様の仇っ!うわああああああっ!」
しかし、そのタイミングで丁度SU-MAH部隊の生き残り、ゆまがアバドーンに飛びかかった。コンクリートの地面に大穴を開けるたすく並の剛拳を振りかざし殴りかかるが、それも軽くアバドーンはかわす。
「おじーちゃんを、よくもぉぉぉっ!」
続いて、まはも飛びかかる。羽を思い切り広げ飛び上がると、両腕に鋭い爪を生やしてアバドーンの顔面を狙う。
「今だ・・・おい、マルレラ!パラドキシデス!」
その隙に慌てて走り寄り、二人を助け起こす影磁。
「いきなりかかって行くなど、無謀にも程が有るぞ!奴が組織の仇、エルロード・アバドーンだと言うことは承知している、だが今は時期が悪い!一端撤収して・・・」
影磁の提案は、現状を見るなら打問いと言えた。だが、パラドキシデスはそれを即座に否定する。
「ばっ、馬鹿違う!俺達がかかっていったのはそれだけじゃない!あいつはそんな生易しい奴じゃないんだ!」
影磁の腕を掴み、マルレラも必死の形相で言う。
「あいつは・・・アバドーンは敵と、悪と見なした者は絶対に許さない!何処までも追って、絶対に仕留める!倒さなきゃ・・私達に未来はない!みんな殺されちまうよッ!!」
マルレラがそう早口で言った、その途端。
ズバァッ!
グワシャアアッ!
「きゃああああああ!」
「・・・!!!!」
経験不足とはいえ上級改造人間である「逆三連星」を追いつめていたゆまとまはの二人が、あっさりとアバドーンに倒された。
また構えも無しに振り回された爪がゆまの宇宙刑事にも負けぬ強化装甲で覆われた右腕をあっさりと切り飛ばし、蹴りを見舞われたまはが地面にめり込む。一撃で肋骨の殆どを粉砕されたらしく、呼吸が出来なくなって白目をむき、口を必死に開閉して、呼吸しようとしている。
「然り、我は「生命」のエルロード・アバドーン。物見として地上に残り、この世界を神の意志の方向のままに留め置く維持者なり。世界の混沌と堕落が規定値を超えたと判断・・・これより浄化を執り行う。」
また、あの声。不気味な、感情のない深淵から来るような声。蝗型改造人間と違い真っ黒なアバドーンの複眼は、全く感情を読みとることが出来ない。
影磁は、今度こそ完璧に理解した。それがいかなる存在であるか。まさに、彼等が憎んできた絶対の正義、その究極のカリカチュア。定義に置いても存在に置いても攻撃に置いても、絶対であるモノ。

「うっくぅ・・・」
切断された右腕の痕を押さえながら、なんとか立ち上がるゆま。すっぱりと断ち切られたその傷口は、薄黄色の皮膜と中にぎっしり詰まった黒い粘土のようなもので、明らかに人間の体組織とは異なる。
「人の子が作りしまがいの土人形。お前を神の孫と認めるわけにはいかない。」
「ひ・・・!」
アバドーンが向き直った。血でぎとぎとの爪を振りかざす。
「塵に帰れ」
「いやあああああっ!!」
がぎっ。
硬いものどうしがぶつかる、少なくとも一方的に切り裂かれるのではない音。
「・・・あ?」
閉じていた目を恐る恐る開けるゆま。その瞳に写ったのは、アバドーンと同じ緑色の、だが後姿。
「ライダーキラー!?」
驚きの声を上げる影磁、そしてゆまもやはり驚いている。手合わせしてみたときのライダーキラーはいささか情緒不安定な感じがあって、とてもではないけどそんな行動がとれるとは思ってもみなかった。
「・・・?」
そして、やはり影磁の感想は当たった。ラフレシアのような腕でアバドーンの攻撃を受け止めたのは良かったのだが、そこで何故か動きが止まってしまった。自分自身の存在に違和感を感じているように、じっとその腕を見ているばかり。
無論アバドーンが、その隙を見過ごすはずがなかった。蹴りを見舞い、ライダーキラーを引き剥がす。否引き剥がすだけではなく、そのけた外れの脚力は一気にライダーキラーを通りの向こうまで吹っ飛ばす。
「!?・・・ダレダ・・・・お前は・・・誰だ?」
混乱した様子で呟くライダーキラー。
「蝗・・・戦う・・・正義か?仮面・・・違う、赤・・・赤が足りない・・・いや、赤は血?赤は・・・赤は・・・キッ・・・」
そのショックで惑乱はさらに激しくなる。瓦礫の中に蹴倒されたライダーキラーはそう呟きながら動かなりかけ。
ふと「気付いた」。
倒れた地面を染める、自分の物ではない、血。


そのライダーキラーを蹴り飛ばしたアバドーンが、未だ体勢を整えなおさない、まさに刹那の後。
「ムンッ!」
大気を風に変え唸らせ、斧が横なぎに振られる。そこに影磁が攻撃を仕掛けたのだ。
ガキッ!
「何ぃ!」
かっ、と装甲の奥の目を影磁は見開いた。
驚愕に。
剛斧を、アバドーンは素手で受け止めていた。掌の緑色の甲殻には、傷一つついていない。バリスタスの中でもその破壊力では大抵の者にひけは取らぬ改造人間AGの斧を。
ぶんっ
斧もろとも強引にアバドーンは手を振るい、AGを投げ飛ばした。素早く空中で体制を整え、着地するAG。
「影磁さん!」
叫ぶパラドキシデス。しかし、それ以上の行動がとれない。自分たちの攻撃は、さっき全然通用しなかった。
もう一度斧を構え、吶喊する。
同時に再び「移植記憶」が、今度は声だけで情報を伝えた。

「アバドーンの能力は、その異常に高度な身体能力を除けば主に判明しているだけでは三つ。一つは、額の第三の目から発射される高出力レーザー。理不尽なことに水中でも使用できるほどの高出力で、発射角が極めて読みにくい。
もう一つは、背中に生えた鎌だ。見れば分かるが突然飛び出すし切れ味も大抵の装甲は無力なほど鋭く、また猛毒を持っている。
そして最後の一つが、特に厄介な自己再生・自己進化だ。奴は少々の傷ならば自分でそれを修理し、そしてその部分を強化してしまう。あの猛毒の鎌も元は羽だった部分だ。この後、どう進化するかも見当が付かない。」
(それならば!)
得た情報を元に、影磁の頭脳は一瞬で作戦を立てる。
「てぇぇぇい!」
再び、先ほど寸分たがわぬ正確な動作でアバドーンは攻撃を受け止めた。が、今度はAGは斧から手を離し、拳を握りアバドーンの腹を思い切り殴りつけ、さらに楯の鋭い端を思い切り下から殴りあげた。
拳のほうは胸部の厚い装甲に阻まれた。これは予想通りだが、楯まで通用しなかったのは多少影磁の脳に焦りを覚えさせた。
楯の鋭くとがった下端は、見事にアバドーンの咽喉笛にめり込んでいる。バリスタスの対仮面ライダー戦術においては(その大半が実際に仮面ライダーと戦ったカーネルの情報から構成されている)仮面ライダーの装甲で最も厚いのは胸部、ついで頭部。それ以外の手足、首などの装甲は普通の改造人間の攻撃でもダメージを与えうるということだったが・・・
目の前に居るこいつは全身を均一な外骨格で覆っていて、そのどこもがこちらの攻撃を防ぎうる。
同時にアバドーンは腕を振り上げた。こちらの攻撃は自分にはきかないと見て、反撃に出てきたのだ。
それを見て、影磁は笑った。
「かかった」
炎が、渦を巻いた。影磁の全身の甲殻がスライドし、人の作ったメキドの炎が至近距離から神の使いを焼く。
「オルタフォース・・・」
しかし、再び蒼く輝く奇怪な文様が現れ、アバドーンの全身に広がりそれを防いだ。思わず苦渋の表情を作るマルレラだが。
影磁の笑いは、消えない。
「かかったと・・・言った!!」
その、全身から発している炎。それを、突き出した両腕で指揮するように、一気に絞り込む。
「拡散収束・二段メキドフレイム!!!」
「・・・・・・!」
広範囲を防御するために展開されたオルタフォース。それは霊子による障壁故、ほぼ全ての兵器に対して防御力を発揮する。しかしおおよそ感情を持たないアバドーンは悪の博士の心理外骨格と異なり、自分の心でそれを制御しているのではなく、単なる装置として上位次元から一定量この世界に流入している神聖霊子を集めている筈。
己の心に負荷を掛けることで瞬間最大の霊子を、持久力が無いが行使する博士と、正反対ならば。消耗することこそ無いという利点があるなら。一度に防御できる破壊力の絶対量に、限りが存在するのではないか。
そう読んだ影磁の考えは・・・当たった。
オルタフォースを突き破った収束メキドフレイムは、見事にアバドーンの胸部を貫通、人間の頭大の、無効の景色が見える大穴を開けそのまま射角を上げ、えぐるようにアバドーンの頭部も吹き飛ばしていた。
自己再生や能力を行使する前に、一撃で中枢を破壊する・・・影磁の作戦は、具現した。
「殺った・・・!」
「駄目っ、影磁さん!!」
勝ちを確信した影磁に、マルレラの叫びが遠く聞こえ。

直後、影磁の両腕の感覚が消えた。
「え・・・」
一瞬、何が起こったのか分からない。上半身の真ん中を頭ごと削り取られたアバドーンは、何故か倒れずに立っている。そして、新たな血に濡れた、背中に生えた二本の鎌が折り畳まれる。
たった今、影磁の両腕を切り落とした、鎌が。
「がぁぁぁぁぁぁっ!!!」
両腕を切り落とされ、激痛に絶叫する影磁。肩の装甲の継ぎ目から切り落とされたので関節部に組み込まれた出血抑制機構が作動、傷口をシャッターのように塞ぎ失血死の危険を軽減するが、それでも血がだくだくと湧くように流れる。
「ひ、ひあああああっ!!」
「きゃあああああ!」
「うそ・・・」
揃って悲鳴を上げる逆三連星。影磁の負った手傷のあまりの大きさもあるが、それよりも。
目の前であっと言う間に再生していく、アバドーンのあまりのおぞましさに耐え切れて。
あっと言う間に胸の穴が塞がり、そこから首が、頭が生えてくる。そして胸部の欠落が塞がった部分には何か強力な顎を思わせる器官が新たに発生し、新たに生えた頭部も目や顎、外骨格の形がより戦闘的に変化している。
「ば、馬鹿な・・・!」
おおよそ生物であってはいくら改造を重ねてもあり得ないその力に、影磁は失血のせいだけではない戦慄を憶え。
「しまっ・・・!」
咄嗟にアバドーンの手足の間合いから離れ、胸部の火炎放射器で応戦しようとする。だが、遅かった。
「シャッ・・・!!」
ズガッ!、から、がらん・・・
振り上げられたアバドーンの足、その臑の鋸刃と爪が、影磁の胸部を存分に抉り、分厚い装甲を引き毟った。そして全く容赦なく、振り上げた足をアバドーンは、その無防備になった胸部に振り下ろす。その一撃で自分と違って再生能力など無い影磁を胸部から両断し、殺すために。

「あ、ああ・・・!」
目の前で繰り広げられる光景に、逆三連星達は言葉を失っていた。
あまりに残虐、そして一方的。バリスタスの大幹部が、最強クラスの改造人間であるはずのAGが、自分たちの親も同然の影磁が・・・為す術もない。
そして、為す術がないのは彼女たちも同じ。
いや・・・!
「いや・・・嫌だぁっ、そんなことぉぉっ!!」
叫んでたすくが立ち上がり、だっとばかりにはしろとアバドーンに飛びかかった。素人同然の下手なタックルだったが、生来の馬力と奇襲効果が功を奏し、アバドーンはよろめいた。
「・・・・・!」
それでも振り下ろされたアバドーンの一撃を、しぇるが盾となってかばった。防御力に特化して作られたその装甲すらアバドーンの一撃は打ち破ったが、しかし一撃では致命の傷に到らない。
「うくっ・・・でも!」
苦悶しながら、しかししぇるは視線をそれにむける。
ありったけの呪札を構えた、ういんぐが、必死の形相で、全ての術を一度にアバドーンに叩き付ける。

ズバァーーーーン!!

三人は、理解していた。
何故、影磁やマルレラ、パラドキシデス達はあれほど必死に戦っていたのか。
そして何より、このままでは死ねない。この世界のことも、敵も、自分たちの存在の意味も、仲間達の心も、何も分からないままで。死ぬわけには、いかない。

しかし。
「くっ・・・」
「やっぱり・・・」
「駄目、なの?」
アバドーンは倒れない。倒れないどころか、ダメージを受けた様子すら見せない。
「大人しく消去されろ、生き足掻くな。生まれない方が、お前達のためには良かった。」
冷徹に呟くアバドーン。三人は、その無表情な昆虫面を睨み付ける。
必死に。せめて出来る、それを。
何が分かる、決めつけるなと。最後の抗いを。
そして、額が、レーザーの輝きを発し。

ジャアアアア!
鈍い音を立てて、遮った者の腕を灼いた。
「未熟かも知れないが・・・なかなかの戦いぶりだったな、お嬢さんたち。ここからは、俺が引き受けよう。」
そしてその遮った者は語る。先程までとは違う、静かな声で。
「あ・・・」
唖然と声を漏らす逆三連星に念を押すように一瞥を加えると、今度はゆまとまは、たった二人のタロンの生き残りに目をやる。
「ライダーキラーさん!?」
驚きの声を上げるゆま。先程アバドーンに吹き飛ばされたライダーキラーが、返ってきていた。
「まはをつれて逃げろ。こいつは、俺が食い止める。」
かくかくと首を縦に振ったゆまは、あわてて気絶したまはを残った左腕で脇に抱える。
ビュウン!
振り下ろされるアバドーンの鎌を、レーザーを受け止めて焼け焦げた食虫植物状の腕で受け止め、そこから流れるようにアバドーンの腹に手を当て、突進力を利用して投げ飛ばす。
ズダァン!
激しく地面に叩き付けられるアバドーン。それはかつて、ライダー返しと呼ばれた技だ。
「お前がなんだかは知らないが、あの娘を殺させる気にはなれない。悪の組織の人造生物だろうと、なぜか、な。改造までされたというのに・・・」
タロンという組織を外側から語るような、その口調。そして先ほど披露したライダー返し。
ゆまは、はっと気がついた。
「あ、あなた、洗脳が解けたのですか?」
「たぶんな。だが別に、今更お前達と戦おうという気持ちはわいてこない。それより・・・こいつと戦わなければならない、そんな気がする。」
かつてとは様変わりした、その姿。つりあがった複眼、棘だらけの生体装甲で覆われた体、奇形化した右腕。そしてその装甲には、幾重にも今のも崩れそうな皹が入っている。
しかし、重傷を負って意識朦朧の影磁も、気付いた。その正体。HUMA極東本部壊滅時に風見から聞き出した情報、行方の知れない仮面ライダーの一人。
「仮面ラーイダ二号・・・一文字隼人!!」
「その通り・・・お見せしよう、仮面ライダー!」
言うなりライダーキラーは腕を回し、あの独特のポーズを取り。
直後皹だらけとなった装甲が吹き飛び、その下からヘルメットのような頑丈そうな頭部と革のジャンプスーツに似た強化皮膜に覆われた、蝗の改造人間の姿が現れる。
まさしく一文字隼人、仮面ライダー二号。今や伝説の存在となった十人の仮面ライダー、その二人目。装甲を取りつける時に邪魔だったのか戦闘で損傷したのか、象徴的な赤いマフラーが見あたらない以外は、往事のままに。
「カメンライダー・・・知っている。セイギノミカタ、だ、そうだな。」
目の前で姿を変えた存在に、アバドーンは僅か・・・ほんの僅か意表を突かれたようだが、再びその感情のない声でライダー二号に語りかける。
「お前、不完全だが、我等ロードと同じ・・・秩序を守る者だろう。人間の中からそのような存在が現れるのは、我等が神にとって喜ばしいこと。改造人間という存在は人の手に過ぎた代物だが・・・我等と共に来い、神の元へ。」
有無を言わさぬ様子で告げるアバドーン。
「違う!」
しかし、ライダー二号ははっきりと拒否した。
「俺は違う。俺は、俺達は・・・お前とは違う!」
何度も、何度も・・・とても強く、必死な意志を込めて。
「あっちに、さっき吹き飛ばされたとき・・・洗脳のせいで記憶は曖昧だったが、憶えている。メタモルXとか言う少女達と、市街安全保障局、秘密結社アクロス・・・皆、死んでいた。」
「な!?っ・・・くがっ!」
驚愕した拍子に気管に血が流れ込み、咽せ込む影磁。
対照的に静かに、アバドーンはその言葉を聞き。
「その認識は誤りだ、カメンライダー。」
「何だと!?」
淡々と、付け加える。
「電柱組とかいう連中も、もう消去した。」
「〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!」
ショックに悲鳴を上げかけるマルレラ、しかし恐怖に硬直した口がうまく言うことを聞かず、声にならない。
そして、そんな自分を情けなく思い、歯を噛み縛る。
「問おう、カメンライダー。我等と汝等、何が違う?」
「な・・・」
一瞬虚をつかれ怯むライダー二号。淡々と、アバドーンは言葉を続ける。かつてインバーティブリットと交戦していたときのアバドーンは、これほど喋ることはなかった・・・降臨者ガーライル本体の復活が、近づいているのだろうか。
「お前達も正義のために人を殺す者だろう?何が違う?」
暫くの、沈黙。
僅かにうつむいた仮面ライダー二号。
「たしかに俺達は駄目だったのかも知れない・・・だが、そうであろうとも!未来に生きる誰かがその答えを生み出すその時まで、世界を好きにされるわけには・・・お前にその可能性を消される訳にはいかない!!そして、俺もまたここで諦めはしない!俺達の、歪んだ写し鏡。いや俺達こそがこいつの鏡なのかもしれないが・・・俺は、俺達の・・・仮面ライダーの戦いがただの殺戮でなかったことを、お前と戦って証明する。してみせる!」
そして、ライダーキラー・・・いや、仮面ライダー二号は。両腕を一旦上に伸ばし、左腕を水平に右腕を垂直に曲げ、拳を握り締めた。
ライダーファイト。その臨戦の構えは、そう呼ばれていた。
「仮面、ライダー・・・」
その、気迫。その場にいた全員が、その気迫の輝くを、美しいと見惚れた。
アバドーンですら、気圧されたように半歩、後ろに下がりかけはっとしたように慌てて脚を戻す。
「あ、ありがとう・・・。」
思わず、感謝の言葉を呟くたすく。彼は今、皆を守るために戦っている。・・・そのなかに自分達も、含めてくれていると気付いて。
ひゅう、と僅かに風が吹き込む。舞い上がる土ぼこり、そしてゆまのエプロンのきれっぱし。血で赤く染まったそれを二号は掴み、そして首に巻いた。再びの風に、翻る。
まるで、赤いマフラーだ。

「所詮紛い物・・・消去」
そのつぶやきと共に、それまで会話していたアバドーンの声がぱたりと途絶えた。無機質な、機械の気配を取り戻す。
びび・・と、アバドーンの二本の触角が僅かに震えた。直後、アバドーンの周囲に幾つものオルタフォースの輝きが出現し・・・
「う、うそ・・・!」
そこから、更に別のロードが現れた。
それらは黒く光沢のある外骨格に身を包んでおり、蝗を思わせるアバドーンとは異なり、蟻のような姿をしていた。頭部は蟻の頭と人間の髑髏を融合したような姿で・・・それが、何十体も出現する。
「ひっ・・・きゃあああ!」
「キシュ、シュシュシュ・・・・」
ぞろぞろと次から次へと現れ、周りをあっと言う間に取り囲むアント・ロードたち。何人かごとに部分的に赤い色彩の、隊長の役割をするらしい特別なアント・ロードが混じっており、さらに最後に鋭く尖り、三つ又に分かれた槍を携えた、女王蟻のロードが現れる。
「くぅっ、これじゃ・・・」
ここまで十重二十重に取り囲まれては、とてもではないが傷ついた者達を逃がすなどおぼつかない。ましてや、相手は一体一体が桁違いの戦闘能力を持つロードなのだ。
焦りの色を見せるライダー二号。
「シャ・・・!」
そして、女王蟻が三つ又槍を振り上げ、号令を下す・・・

「させん!」
そこに、更に別の存在がわって入った。
軍服のような衣装に覆面を付けた男と、バイクに跨った、執事のような穏やかな風体の老人。
それが同時に・・・変身する。覆面の男は殆ど皮膚を露出させないのではっきりとその姿を掴めはしないがカメレオンのような皮膚と蝙蝠の翼を持つ合成改造人間に、そして老人は山羊が羊、それも家畜のそれではなく峻厳な山々を駆けめぐる野生のそれを思わせる姿となる。
「むんっ!」
忍者を思わせる身のこなしで、クナイに近い形の短刀を一度に何本も何十本も、それこそ機関銃のように投げつける覆面男。しかも周囲のアントロードの目、触角、そして口の中など急所に的確に命中させてだ。
「ギィキッ!」
それでも倒れる味方を乗り越え、赤いアントロードが新たな敵に襲いかかる。
しかし、確かに爪が突き刺さったと見えた男は、まるで空気中に分解した課のように消えてしまう。
「はっはっは、ここだここだ〜〜〜〜!」
刹那の後、直上より声。空中に翼を広げ静止する・・・バリスタスの改造人間では他にゲッコローマしか持っていない、光学迷彩能力だ。
ぎらりと男の目と、両手から生えた蝙蝠の羽を思わせる優美なシアを描く刃を展開し、まるでプロペラのような高速回転を行う。
「奥義・・・疾風怒濤!!」
刃の竜巻と化して一気に急降下し、地上のアントロードたちを蹴散らす。
「ふぅ・・・っほう!」
同時に、山羊型の改造人間の姿を現した老人も動く。俊敏なキックボクシング系の動きで攻撃をかわし、逆に的確に拳と蹴りを叩き込んでいく。
素早く二人は周りの敵を蹴散らすと、背中合わせになり隙無く構え、そして余裕のあることに言葉を交わす。
「流石でございますな、ナハト=シュバルツ様。」
「ふ、貴方こそ・・・未だ現役ですな、ラム=カプリコン。」
そしてその丁寧な言葉遣いのまま、ぽんとラム=カプリコンと相方に呼ばれた老人が、停止させていたバイクに手を起き語りかける。
既に包囲網は遠巻きになり、影磁たちとの間に敵は少ない。
「デイビット様。影磁様をお頼みましましたぞ?」
どぅるっ・・・どるるるるん!
そう言葉をかけられた途端、バイクが突如勝手に動き出した。
誰も乗せないままに走りだし、あっと言う間に敵陣を突破、影磁のすぐ側にたどり着く。
直後、それまでバイクだったものが、変形した。金属にしか見えない構成材料がぐにぐにと変形し、バイクのハンドル部分から人間の上半身が出現し、素早く影磁を抱え上げる。
「ギシュウ!」
そうはさせじと、アントロードの一体がバイクに飛びかかる・・・と、再び変形が、今度はバイクの全体におこる。
金属で構成された馬のような姿となると、その蹄でアントロードを弾き飛ばす。
「ギャロップ・ブレイク!」
そう叫ぶそれは、かなり変則的な姿をしてはいるが、紛れもなく人間の知性を持つ改造人間だ。
さらにその三人は協力して、アントロードの大群を寄せ付けない活躍を見せる。
「也威馬(やいば)、ラム=カプリコン、ナハト=シュバルツ・・・」
驚きを、叫ぶほどの余力がないので呟きで現す影磁。連絡が取れずにいた、O.O.Bの改造人間達だ。
「すいません影磁様、少々遅くなりまして。」
丁寧に頭を下げるラム=カプリコン。しかし直後体をひねり、後ろから迫っていたアントロードの顎を蹴り砕く。
「い、いや・・・絶妙のタイミングだ。」
幸いアバドーンほどにはアントロードたちは強くはないらしい。新たに出現した三人の怪人はインバーティブリットの二人と逆三連星を守りながら、次々と襲い来るアントロードたち相手に互角以上の戦いを繰り広げている。
「・・・話は聞いた。さあ、一文字隼人!」
一体のアントロードを刃で切り倒し、ナハト=シュバルツは大音量で呼ばわる。
仮面ライダー二号に。
「応!!」
そして、叫ぶ仮面ライダー二号。その紅く燃える瞳が、アバドーンを見据える。
振り下ろされるアバドーンの爪と鎌。

それを、仮面ライダー二号は真っ向から受け止めた。その赤いグローブをはめた手で。


「・・・よく見ておくがいい・・・」
逆三連星に、影磁は静かに呟く。そしてその後を、ナハト=シュバルツが続けた。
「奴の拳は悲しみの血涙を浴びて、真紅に輝く・・・っ!」
「ライダァァァァァァァッ、パァァァァァァアンチッ!!」
大気との瞬間的な摩擦。音速を超えた拳が衝撃波と熱と光を放つ。

ドガァァァァァァァァァン!!

「ギ・・・ィッ!??!」
その一撃は、オルタフォースの障壁を紙のようにぶち破り、命中したアバドーンの腕をまるで爆弾が炸裂したかのように吹き飛ばした。
「シャーーーーッ!!」
すぐさまその腕を再生させつつ、反対側の腕で二号を狙うアバドーン。
「ライダーチョップッ!!」

斬!!

それを、二号の手刀が、まるで刀のような鋭い一撃で切り落とす。
しかし、同時にアバドーンはレーザーを放っていた。それが仮面ライダーの分厚い胸部装甲「コンバーターラング」を貫通し、一瞬血を吐く二号だが。
「おおおおおおっ!!」
構わず、二号は突き進んだ。
「ライダァ!パンチッ!!パンチッ!ライダァァァァァッ、パァァァァァァンチッ!!!!」
ドガドガドガドガン!!
「ぎぃぃぃぃぃぃ!?!?」
嵐のような、拳の連打、連打、連打。
その一撃ごとにアバドーンの体が砕け、爆ぜ、引きちぎれる。持ち前の再生力でその傷はあっと言う間に塞がっていくが、その速度よりも僅かに二号がアバドーンを削る速度のほうが早い。

「すっ、すごい。あれなら勝てる・・・!」
歓声を上げるマルレラだが、ナハト=シュバルツの声は苦々しい。
「いや、まずいかもしれん。」
「な、何で?」

たすくの問いと同時に、それは起きた。
「おおおっ・・・!!」
何十発目かのパンチをアバドーンに見舞った、仮面ライダー二号の拳。それが唐突に、砕けた。アバドーンの再生した装甲を打ち砕くと同時に、腐った果実が落ちたように、ぐしゃりと潰れ金属と融合した骨格を露わにする。
「ぁ・・・!?」
「改造人間といえど・・・その初期のタイプは、それほど長く全盛期の力を保ちうるわけではない・・・既に変身能力を殆ど失っている本郷猛とほぼ同時期に改造を受けた一文字隼人が、今あれだけの戦闘能力を発揮しているのは不自然なのだ。」
蝙蝠をベースとした故の超聴覚で、その様を目で見るよりもリアルに捕らえたうぃんぐが呻き、そして影磁がかすれ声で、その原因を告げる。
「つまり、あれはタロンに捕獲され、ライダーキラーとして再調整を受けた結果、一時的に回復している故の力なのだ。外部から彼を拘束・規制していたSU-MAHと同類の生体装甲が破壊された今、その力はもはや残り少ないはず。」
「うおおおおおっ!!」
「シャアアアアアアアアアア!!」
アバドーンが反撃に転じた。崩れた拳を顎で食いちぎり、引きちぎられた鎌や腕の部分から巨大な鋏を何本も突き出して、二号の全身を切り刻む。
「い・・・一文字さん!やめて!もうそれ以上は・・・逃げて下さい!」
悲鳴を上げるゆま。しかし、一文字は立ち続ける。
もう一度ライダー返しでアバドーンを投げ飛ばすと、身構え。
「分かっている。だけどやらねばならない。生命とはそう言うものだ。」
その決意の言葉に、頷き以外に何が要るだろうか。
せめてとばかり最後に、シュバルツが。
「何か・・・言っておけねばならぬことなど、あるか?この戦いの恩義を果たすため我等バリスタス、悪の誇りを持って、約束を遂行させてもらうが。」
起きあがろうとするアバドーンを見ながら、二号は答えた。
「ああ、実は俺には子供が三人居てな、そいつ等を頼みたい・・・お前達の情報収集力なら、見つけられるだろ。」
「了解した。」
そして、仮面ライダー二号は、跳んだ。
高く高く、天空すら突き抜けるほどに、高く。

「ライダーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!キーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーックッッ!!!!!」

そして、アバドーンは完全に砕け散った。吹き飛ばされ、自己再生機能が停止。オルタフォースが暴走して体の上に構成された光の文様が解け、その幾多の血を吸った体が、爆散する。
仮面ライダー二号はライダーキックを成し遂げ、着地し、大地に降り立つ。
そして最後まで、立っていた。

その時・・・遥か離れた、東京、警視庁、警視総監室。
そこに座っていた男が、突如目を見開き、椅子を倒して立ち上がった。
しばらく呆然と立ちつくした後、無言のまま机の引き出しを開けあるものを取り出すと、机から歩み去って窓を開けた。風が吹き込んでくる。
その風にあおられ、男が手に持っていたものが、はためいた。
「隼人・・・逝ったか・・・」
赤いマフラーだった。
かつて仮面ライダー一号を名乗った男は、そう押し殺すように呟いた。呟くことしか、出来ることはなかった。


しかし。だが、しかし。
それだけでは終わらない。終わるはずがない。

「お前達・・・お前達はあれが、敗北に見えるか?」
「見え、ません。」
ナハト・シュバルツの問いかけに、しぇるは答えた。
それを聞き、ナハト・シュバルツはもう一度、念を押すように問いかける。
「見たか、お前達。あれが、仮面ライダー。我々の敵。どうだ、お前達。アレを超えられるか?」
三人の瞳に、それはどう映るのか。
絶望を胸に秘めながらも他者には希望を与えるため戦い、倒れても尚そこに立ちつくす、男の背中。
「仮面ライダー二号、あれが・・・。」
暫く、無言のまま時は流れる。
その時間は酷く・・・そう、神聖な感覚を憶え、ナハト・シュバルツも、無論ラム=カプリコンも静かに立ち、待つ。
そして、三人は答える。
「わからない・・・!でも。あの背中に追いつきたい!追い越したい!私の中の何かが、激しくそう叫んでいます!」
「ならば・・・何をなすかはわかっているな!」
「はい!」
間髪入れぬシュバルツの言葉に、頷くういんぐ。その一瞬の間も無い頷きに、シュバルツは頷いた。
「私の訓練は、厳しいぞ?」
「はい!」
覆面の下から覗く瞳を真正面から見据え、答えるたすく。たすくの目は捕らえている。鋭いシュバルツの瞳の奥にある、心に。
そして、シュバルツは頷くと、手を取って三人を立たせ、言った。
「分かった。では征こう。明日を、掴むために。」
たすくが言う。
「世界征服の、為に。」
悪が、正義の味方の勇姿に心震わされ、再起を誓う。
ういんぐが言う。
「私達のような罪深き者も生きうる、世界のために。」
ある意味では、とても奇妙な・・・いや。
そしてしぇるが言う。
「もう二度と、孤独な正義を作り出さないために!」

そう、それは何も可笑しいことではない。彼等は、元々は同じ夜闇から生まれた者だから。ゆまとまはの姿は、いつの間にか見えない。しかし、彼女たちもまた、この戦いを胸に抱いて生きるだろう。
それを、単調な光ごときに、灼かれてたまるものか。
三人は、決意した。

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